有価証券報告書-第20期(2023/03/01-2024/02/29)
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度(2023年3月1日~2024年2月29日)におけるわが国経済は、経済活動の正常化進展やインバウンド需要の回帰等により、緩やかな回復基調で推移しました。一方、資源・原材料価格高騰の長期化にともなう物価上昇や、各国の金融引き締め政策等を背景とした世界経済の下振れリスクが懸念されるなど、先行き不透明な状況が続きました。
このような状況の下、当社は従来にないメカニズムに基づく独自の医薬品を開発して上市につなげることを目指し、以下のとおり事業活動を進めてまいりました。
A.TMS-007関連の活動
2021年5月にバイオジェン社へ導出した急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007については、バイオジェン社において2023年上半期に後期第Ⅱ相臨床試験を開始する計画にて開発が進められ、2023年3月10日にClinicalTrials.govに当該試験の概要が登録されました(予想開始時期2023年4月17日)が、バイオジェン社は、2023年4月25日の2023年第1四半期決算発表において、TMS-007の後期第Ⅱ相臨床試験の開始を一時停止し、当該臨床試験を開始すべきかどうかを再評価すると発表しました。
その後、バイオジェン社から、当社とバイオジェン社が2018年に締結したオプション契約(以下「オプション契約」という。)の契約上の地位を、JIXINGに対して譲渡することを検討しているとの連絡があり、2024年1月11日に譲渡が行われました。これに並行して、当社はJIXING及びJIXINGの株式を80%以上所有する米国ニューヨーク所在の投資会社RTW Investments, LP(以下「RTW」という。)と協議に入り、上記のバイオジェン社からJIXINGへのオプション契約の譲渡と同時に、オプション契約の変更を含む一連の契約を締結し、JIXING及びRTWとの間で提携関係(以下「本提携」という。)を結びました。
本提携の概要は以下のとおりです。
a) オプション契約
・JIXINGは、バイオジェン社からオプション契約の地位を引き継ぎ、TMS-007及びTMS-008を含むSMTP化合物の全世界における知的財産権を取得します。
・当社は、JIXINGから、日本におけるTMS-007の開発販売権を無償で取得し、またTMS-008を含むグラントバック化合物の特定の適応における開発販売権を無償で取得します。
・当社とJIXINGは、Joint Development and Commercialization Committee(共同開発商業化委員会)を設置し、TMS-007の開発について定期的に情報交換と協議を実施します。
・当社は、JIXINGによるTMS-007の開発・商業化の進捗に応じて以下の対価を受領する可能性があります。
ⅰ.開発マイルストーンとして最大総額1,250万ドル
ⅱ.販売マイルストーンとして最大総額3億5,500万ドル
ⅲ.日本を除く地域のTMS-007販売高に対して一桁後半~10%台前半の段階的料率を乗じたロイヤリティ
なお、TMS-007の具体的な開発方針は、今後JIXINGにて検討されます。
・JIXINGは、TMS-007のグローバル開発の一環として当社が日本でおこなう開発費の75%を、1,000万ドルを上限として負担します。
b) JX09の日本における開発販売権の無償ライセンス
・当社は、JIXINGからJX09の日本におけるロイヤリティ・フリーの独占的なライセンスを取得し、JIXINGは、JX09のグローバル開発の一環として当社が日本でおこなう開発費の75%を、500万ドルを上限として負担します。
・JX09は、治療抵抗性又は制御不能な高血圧患者さんの治療を適応としてJIXINGが開発中の、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤であり、2024年2月に第Ⅰ相臨床試験が開始されました。JX09は、非臨床試験において優れたアルドステロン合成阻害活性及び良好な安全性プロファイルを示し、ベスト・イン・クラスの治療薬となる可能性があります。
c) JIXING株式の無償取得
・当社は、JIXINGの普通株式500万ドル相当を無償で取得します。
d) RTWによる当社株式の取得
・RTWが運用する割当予定先となるファンドは、当社が発行する株式を、1株当り株価187円、総額6億8,432万円で取得します。当該株価は、本株式の発行に係る取締役会決議の前営業日(2024年1月10日)までの直近5取引日間における当社普通株式の普通取引の売買高加重平均価格(VWAP)で決定されました。
・RTWは、2019年にJIXINGを設立し、その後の複数の追加投資ラウンドを主導しており、現時点においてJIXINGの80%以上の株式を運用するファンドを通じて所有しています。
・RTWは、ヘルスケア業界に特化した世界的に有力な投資家であり、2023年9月30日時点において約54億ドルの運用資産を有しています。
B.JX09関連の活動
JX09は、治療抵抗性又はコントロール不良の高血圧患者さんの治療を適応としてJIXINGが開発中の、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤であり、2024年2月にオーストラリアにおいて第Ⅰ相臨床試験の投与が開始されました。JX09は、非臨床試験において優れたアルドステロン合成阻害活性及び良好な安全性プロファイルを示し、ベスト・イン・クラスの治療薬となる可能性があります。
当社は、JIXINGとの提携に伴いJX09の日本における独占的な開発販売権を取得し、2024年2月23日付にてJIXINGとの間で正式なライセンス契約を締結いたしました。
C.TMS-008関連の活動
急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、第Ⅰ相臨床試験に向けたCMC(Chemistry, Manufacturing, and Control)面における準備活動、及びGLP(Good Laboratory Practice)に基づく安全性試験等を経て、当局(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)との事前折衝を完了し、2024年2月29日に治験計画届出書を提出しました。治験実施体制については、CRO(Contract Research Organization)、治験実施施設、及び検査測定委託会社の選定を完了し、治験開始に向けた準備を進めております。当開発にかかる特許関係については、日本での特許が2023年9月に、中国での特許が同年12月に成立しており、順次主要各国において審査される予定です。また、当社は当該特許について、バイオジェン社より無償使用許諾を受けておりましたが、上述のとおりバイオジェン社からJIXINGに契約上の権利が譲渡され、同社より引き続き無償使用許諾を受けております。
TMS-008のバックアップとして位置づけているTMS-009については、現在、具体的な製造方法の検討を進めております。
D.パイプラインの拡充に関する活動
当社は、引き続き、社内プログラム及び社外プログラムの2つの軸において、パイプラインの拡充を図るための研究開発活動を積極的に推進しました。社内プログラムにおいては、当社がこれまでSMTP化合物の研究開発によって培った可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による創薬の最適化や天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物を探索し、候補化合物の評価を進めました。社外プログラムにおいては、アカデミア等の研究機関や創薬企業等の早期研究開発段階にあるプログラムの探索及び評価を継続しました。また、2023年5月8日に、北海道大学との間で独占的評価及び実施許諾に関するオプション契約を締結した医薬品候補物質については、独占評価期間の第1期を終え第2期に入り、毒性試験及び薬効確認並びにメカニズム解析を行うとともに、市場性調査にも着手し、金沢大学を含めた三者共同研究契約を締結しました。2022年7月に同大学とオプション契約を締結して評価を行ってきたプロジェクトについては、GMP製造グレードの原薬及び製剤の検討を含む評価を継続しています。2023年4月に東京農工大学に開設した共同研究講座(以下項目E.参照)においては、大学との連携を活用して新たなパイプライン候補の育成を進めています。
E.研究開発体制の強化
当社の共同創業者であり取締役会長の蓮見惠司は、2023年3月31日をもちまして東京農工大学教授を定年退職し、同年4月1日より当社の常勤取締役として、研究分野を主導することとなりました。これを受けて、当社は、より強力な研究開発体制による事業の推進を目的に、取締役1名が研究開発全体を担うこれまでの体制から、2名の取締役が研究と開発のそれぞれの分野を担当する体制に変更いたしました。
また、当社は、研究開発機能の向上を図るべく2023年4月に東京農工大学に共同研究講座を開設いたしました。
| 新担当職務 | 氏 名 | 役 職 | 旧担当職務 |
| 研究担当 | 蓮見 惠司 | 取締役会長 | - |
| 開発担当 | 稲村 典昭 | 取締役 | 研究開発担当 |
以上の活動の結果、当事業年度における営業費用は、TMS-008の開発費を主とする研究開発費として607,728千円、その他の販売費及び一般管理費として335,525千円となったことから、合計で943,253千円となりました。これらの結果、当事業年度における営業損失は943,253千円(前事業年度は520,149千円の営業損失)、経常損失は943,395千円(前事業年度は861,471千円の経常損失)、当期純損失は、特別損失として固定資産の減損損失15,694千円を計上したため960,040千円(前事業年度は860,925千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省略しております。
② 財政状態の概況
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ235,460千円減少し、3,554,754千円となりました。
これは主に、第三者割当等による新株式発行に伴う払い込みがあった一方で、研究開発費等の営業費用の支出があったことにより、現金及び預金が138,037千円減少したこと、及び各種試験実施のための前渡金が89,056千円減少したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ21,527千円増加し、97,689千円となりました。
これは主に、外注先への試験委託に伴う未払費用が19,648千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ256,988千円減少し、3,457,065千円となりました。
これは、新株発行等により資本金及び資本準備金がそれぞれ345,662千円増加する一方で、当期純損失960,040千円を計上したことに伴い繰越利益剰余金が減少したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度におきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、主にTMS-008の開発をはじめとする研究開発投資を積極的に行ったことで、税引前当期純損失を959,090千円計上したこと等により822,814千円の支出(前期は688,423千円の支出)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、重要な設備投資は行っておりませんが、有形固定資産の取得による支出により3,356千円の支出(前期は13,721千円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式の発行による収入681,136千円があったこと等により688,133千円の収入(前期は1,688,809千円の収入)となりました。
これらの結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ138,037千円減少し、3,446,630千円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
該当事項はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析
当事業年度末における資産合計は3,554,754千円(前事業年度末比6.2%減)となりました。前事業年度末からの主な変動要因は、第三者割当等による新株式発行に伴う払い込みがあった一方で、研究開発費等の営業費用の支出があったことにより、現金及び預金が138,037千円減少したこと、及び各種試験実施のための前渡金が89,056千円減少したことによるものであります。また、負債合計は97,689千円(同28.3%増)、純資産合計は3,457,065千円(同6.9%減)となりました。前事業年度末からの主な変動要因は、外注先への試験委託に伴う未払費用の増加、新株発行により資本金及び資本準備金が増加する一方で、当期純損失を計上したことに伴い利益剰余金が減少したことによるものであります。
b.経営成績に関する認識及び分析
・営業収益、営業費用、営業損益
当事業年度の営業費用は、TMS-008の開発費用をはじめとする研究開発費として607,728千円、その他販売費及び一般管理費として335,525千円となったことから、合計で943,253千円(前事業年度比81.3%増)となりました。その結果、営業損失は943,253千円(前事業年度は営業損失520,149千円)となりました。
・営業外収益、営業外費用、経常損益
営業外損益は、主に、補助金収入の計上により営業外収益は3,328千円(同3,523.7%増)、株式交付費の計上により、営業外費用は3,470千円(同99.0%減)となりました。その結果、経常損失は943,395千円(前事業年度は経常損失861,471千円)となりました。
・特別損益、法人税等、当期純損益
特別損益は、固定資産の減損損失の計上により特別損失は15,694千円となりました。その結果当期純損失は960,040千円(前事業年度は当期純損失860,925千円)となりました。
c.財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は増資により資金調達しております。
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費及び会社運営のための管理費用について資金需要を有しております。当社は、第三者割当増資により調達を行った手許資金により事業用費用に充当してまいりましたが、2021年5月にバイオジェン社のオプション権行使による営業収益の他、2022年11月の株式上場時及び2024年1月の第三者割当増資により実施した資金調達により、現状の現金水準は、当面の事業に問題のない水準となっており、流動性に支障はないものと考えております。
③ 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
④ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。