有価証券報告書-第21期(2024/03/01-2025/02/28)

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2025/05/30 10:15
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108項目

(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当社は、前事業年度に臨床パイプラインが1本から3本に増加いたしました。当事業年度(2024年3月1日~2025年2月28日)においては、パイプラインの着実な開発進展と、社内・社外両方のソースによるパイプラインの更なる拡大に取り組んできた結果、前臨床段階のパイプラインを1つ新たに追加するに至りました。なお、臨床入りパイプラインが3本に増加していること等を踏まえ、事業開発と臨床開発分野のエキスパート人材を採用し体制強化を図りました。既存パイプラインの開発においては、2025年2月にCORXEL主導にてTMS-007(JX10)の第Ⅱ相/第Ⅲ相試験が開始され、当社では日本の臨床試験開始に向けた準備を進めております。また、TMS-008においては2024年12月に第Ⅰ相臨床試験における全ての被験者への投与・観察が完了し、当事業年度終了後の2025年4月にデータ・リードアウトを行いました。このような状況を鑑み、当社では万全な体制にてTMS-007をはじめとした各パイプラインの開発に臨むべく、当事業年度終了後の2025年3月にファイナンスの実施を決定いたしました。
A.パイプラインの概況
ⅰ)TMS-007(JX10)関連の活動
急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007(JX10)は、当社が前期第Ⅱ相臨床試験までの開発を行い、他のSMTP化合物ファミリーとともに導出した低分子化合物であり、現在はCORXELを主体として、グローバル第Ⅱ相/第Ⅲ相 臨床試験「ORION」が進められています。当社はTMS-007の日本における独占的な開発販売権と、日本を除く全世界における開発・販売に対するマイルストーン一時金及びロイヤリティを受領する権利を、CORXELから得ています。
TMS-007は、プラスミノーゲンの立体構造変化を介した血栓溶解による血流再建と、可溶性エポキシドハイドロラーゼ阻害を機序とする抗炎症作用に基づく虚血再灌流障害の抑制というメカニズムを併せ持っており、単剤で「血流再建」と「虚血再灌流障害抑制」の双方の治療戦略に対応する薬剤候補です。そのため、t-PA等の薬剤及び薬剤候補物質に対する優位性があると考えられます。
当社が日本国内で実施した前期第Ⅱ相臨床試験において、TMS-007は良好な結果を収めております。現在、急性期脳梗塞治療薬として認可されている唯一の血栓溶解剤t-PAには、頭蓋内出血を助長する副作用のリスクがあることが知られております。この副作用リスクを軽減するため、t-PAの使用は原則として発症後4.5時間以内に制限されています。これに対して、出血リスクが低いと想定されるTMS-007の前期第Ⅱ相臨床試験においては、発症後12時間まで(TMS-007群の平均9.5時間)被験者を組み入れました。その結果、プラセボ群では米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)4以上の悪化を伴う症候性頭蓋内出血の発生頻度が2.6%(1/38)であったのに対して、TMS-007群では0%(0/52)であり、TMS-007の安全性が示唆されました。また有効性においても、生活自立度を評価するモディファイド・ランキン・スケール(mRS)のスコアのゼロ(全く症候がない)又は1(症候はあっても明らかな障害はない)への転帰率において、TMS-007は統計的な有意差を伴う有効性を示し、急性期脳梗塞のゴールド・スタンダード・エンドポイントを達成しております。
当事業年度においては、CORXELを主体として実施されている次相臨床試験開始準備に協力してまいりました。グローバル治験となる次相臨床試験については、2025年2月にCORXELによって「ORION」(Optimizing Reperfusion to Improve Outcomes and Neurologic function)と名付けられ、第Ⅱ相/第Ⅲ相試験の開始が発表されました。当社においては、ORION試験に日本のパートナーとして参加する準備を進めております。
SMTP化合物関連の特許としては、「脳出血を治療又は予防するための薬剤及び該薬剤を用いて脳出血を治療又は予防する方法」について、2024年5月に日本で特許が成立いたしました(米国では2023年12月に特許成立)。
関連して、TMS-007の前期第Ⅱ相臨床試験に関する論文が、2024年11月に米国心臓協会(AHA: American Heart Association)/米国脳卒中協会(ASA: American Stroke Association)が発行する学術雑誌「Stroke」に掲載されました。また、2025年2月に米国ロサンゼルスで開催された「International Stroke Conference 2025」においては、CORXELがTMS-007(JX10)の発表を行いました。
ⅱ)JX09関連の活動
JX09は、治療抵抗性又はコントロール不良の高血圧患者さんの治療を適応とした、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤です。アルドステロン合成酵素阻害剤においては、アルドステロン合成酵素であるCYP11B2のみを選択的に阻害し、類似した構造を持つCYP11B1(コルチゾール合成酵素)を阻害しないことが重要と考えられていますが、JX09はCYP11B2に対する高い選択性を示しており、ベスト・イン・クラスの可能性があると考えられます。
JX09について、当社は、CORXELより日本における独占的な開発販売権を許諾されています。現在、CORXELによりオーストラリアにおいて第Ⅰ相臨床試験が実施されており、当社は、今後日本での臨床試験を実施することにより、グローバル治験の一翼を担う計画を検討しています。
ⅲ)TMS-008関連の活動
急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、血栓溶解作用をほとんど持たず、sEH阻害による抗炎症作用を有するSMTP化合物です。炎症性疾患を標的として広範な適応症が期待できると考えられます。
当社は、CORXELよりTMS-008における特定の適応に関して、全世界における独占的な開発製造販売権の許諾を得ています。
当事業年度においては、First-in-Human試験である第Ⅰ相臨床試験を開始し、健康な成人男性を対象として2024年6月19日に第1例目投与を実施、同年12月に用量5段階漸増試験の全ての被験者への投与・観察を完了いたしました。当事業年度終了後の2025年3月に薬物動態・薬物力学・安全性等について、解析、評価が完了し、同年4月にデータ・リードアウトを公表いたしました。足元では次相試験に向けた準備を開始しています。TMS-008の急性腎障害の治療に関わる用途特許については、日本(2023年10月)、中国(2023年12月)に続いて、2024年11月に米国において特許成立となりました。
ⅳ)TMS-010関連の活動
脊髄損傷を適応症とし、2022年7月に北海道大学とオプション契約を締結して評価を行ってきたシーズについて、2024年7月3日に同大学との間でライセンス契約を締結し、当社のパイプラインにTMS-010として追加いたしました。当社は当該ライセンス契約により全世界における独占的な開発製造販売権を取得しております。
脊髄損傷は、運動麻痺・感覚麻痺・排尿排便障害などに至ることがある重篤な疾患ですが、未だ効果的な薬剤がない状況にあります。北海道大学で見出された当該治療薬候補化合物は、血液脳脊髄関門(BBSCB:Blood-brain spinal cord barrier)の破綻を防ぐことで、脊髄の二次損傷を抑制する神経保護作用が期待できます。
当事業年度においては、当社は、臨床試験開始に必要な非臨床試験及びGMP製造レベルの製剤の検討を進めるとともに、臨床試験計画の策定を行っています。
ⅴ)パイプラインの拡充に関連する活動
当社は、当事業年度において、社内プログラム及び社外プログラムの2つの軸において、パイプラインの拡充を図るための研究開発活動を積極的に推進しました。
社内プログラムにおいては、当社がこれまでSMTP化合物の研究開発によって培った可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による阻害剤のデザインや天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を行いました。その中から有望な候補化合物を取得し、当該化合物の薬理・薬効評価及び毒性試験を進めました。また、TMS-008の開発対象となる適応の追加についても検討を進めました。社外プログラムにおいては、アカデミア等の研究機関や創薬企業等の早期研究開発段階にあるプログラムの探索及び評価を継続しました。前述ⅳに記載のTMS-010の他に、同じく北海道大学と独占評価を実施中のシーズについて、様々な観点からの評価活動を着実に実施しています。
B.体制強化
当社は臨床段階にあるパイプラインの増加を受け、臨床段階の製薬企業に成長しました。今後の更なる成長には臨床開発の迅速な進捗、事業開発や効率よい外部のイノベーションの獲得が必要であると考えています。そのため、臨床開発および事業開発の実績を有する経験豊富な人材を獲得しました。臨床開発に関しては、外資系製薬企業で研究開発の責任者としてグローバル臨床開発の豊富な経験を持つとともにstartupでの経験も有する人材を、また事業開発においては、大手製薬企業および国家機関において豊富な事業開発経験を持ち、グローバルな人的ネットワークを有する人材を、それぞれ採用することができました。
以上の活動の結果、当事業年度における営業費用は、TMS-008の開発費を主とする研究開発費として621,099千円、その他の販売費及び一般管理費として286,692千円となったことから、合計で907,791千円となりました。これらの結果、当事業年度における営業損失は907,791千円(前事業年度は943,253千円の営業損失)、経常損失は、営業外収益として受取配当金342,613千円を計上したため633,026千円(前事業年度は943,395千円の経常損失)、当期純損失は、特別損失として固定資産の減損損失26,572千円を計上したため660,548千円(前事業年度は960,040千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省略しております。
② 財政状態の概況
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ522,485千円減少し、3,032,269千円となりました。
これは主に、CORXELからの受取配当金の受け取りがあった一方で、研究開発費等の営業費用の支出があったことにより、現金及び預金が523,679千円減少したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ119,092千円増加し、216,781千円となりました。
これは主に、CORXELからの受取配当金の受け取りに伴う原権利者への特許実施料等の計上により未払金が58,081千円、TMS-008臨床試験費用等の増加に伴い委託先等への未払費用が61,132千円それぞれ増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ641,577千円減少し、2,815,487千円となりました。
これは主に、当期純損失660,548千円を計上したことに伴い繰越利益剰余金が減少したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度におきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、主に、CORXELからの受取配当金があった一方で、TMS-008の開発をはじめとする研究開発投資を積極的に行ったことで、税引前当期純損失を659,598千円計上したこと等により493,756千円の支出(前事業年度は822,814千円の支出)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、重要な設備投資は行っておりませんが、有形固定資産の取得による支出により30,843千円の支出(前事業年度は3,356千円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の行使により919千円の収入(前期は688,133千円の収入)となりました。
これらの結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ523,679千円減少し、2,922,950千円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
該当事項はありません。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析
当事業年度末における資産合計は3,032,269千円(前事業年度末比14.7%減)となりました。前事業年度末からの主な変動要因は、CORXELからの受取配当金があった一方で、研究開発費等の営業費用の支出があったことにより、現金及び預金が523,679千円減少したことによるものであります。また、負債合計は216,781千円(同121.9%増)、純資産合計は2,815,487千円(同18.6%減)となりました。前事業年度末からの主な変動要因は、CORXELからの受取配当金の受け取りに伴う原権利者への特許実施料等の計上により未払金が58,081千円、TMS-008臨床試験費用等の増加に伴い委託先等への未払費用61,132千円が、それぞれ増加したこと、及び当期純損失を計上したことに伴い利益剰余金が減少したことによるものであります。
b.経営成績に関する認識及び分析
・営業収益、営業費用、営業損益
当事業年度の営業費用は、TMS-008の開発費用をはじめとする研究開発費として621,099千円、その他販売費及び一般管理費として286,692千円となったことから、合計で907,791千円(前事業年度比3.8%減)となりました。その結果、営業損失は907,791千円(前事業年度は営業損失943,253千円)となりました。
・営業外収益、営業外費用、経常損益
営業外損益は、主に、CORXELからの受取配当金の計上により営業外収益は342,654千円(同10,194.2%増)、特許実施料等の計上により、営業外費用は67,889千円(同1,856.1%増)となりました。その結果、経常損失は633,026千円(前事業年度は経常損失943,395千円)となりました。
・特別損益、法人税等、当期純損益
特別損益は、固定資産の減損損失の計上により特別損失は26,572千円となりました。その結果当期純損失は660,548千円(前事業年度は当期純損失960,040千円)となりました。
c.財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費及び会社運営のための管理費用について資金需要を有しております。当社は、それらの運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は増資により資金調達しております。当事業年度末における現金及び現金同等物は2,922,950千円と当面の事業運営に問題のない資金水準となっており、流動性に支障はないものと考えております。
③ 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
④ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。

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