有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/15 15:00
【資料】
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【項目】
124項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 経営成績の状況
第3期事業年度(自 2020年7月1日 至 2021年6月30日)
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けており、一部に回復の動きは見られたものの、感染拡大や度重なる緊急事態宣言の発出により、先行き不透明な状況が続いております。
一方で、当社を取り巻く環境としましては、企業の競争力強化や人材不足への対応から、AIやDXへの急速な注目の高まりや、国内企業のIT投資の拡大局面が続いていることなどが当社にとって追い風となっております。
そのような環境の中で、当社は共同研究開発や初期導入フェーズにおける課題特定や全社戦略策定の支援、PoCの実施、AIアルゴリズムの構築及びシステム実装等の準委任型の役務提供を通じたフロー型(非継続)の収益から、AIソリューション導入後のフェーズにおける運用保守料やサービス利用料、ライセンス利用料、コンソーシアム会費等のストック型(継続)の収益へのシフトを進めており、AIソリューション開発プロジェクトの獲得や研究開発、先行投資としての積極的な人材採用等に注力いたしました。
これらの結果、当事業年度における当社の経営成績は以下のとおりとなりました。
売上高については、大型案件の継続及び新規獲得、並びにAIソリューションの本格導入や前期から引続きAIソリューション開発の為の積極的な新規営業活動を行った結果、顧客数及びプロジェクト数が増加し1,089,424千円(前期比111.3%増)と前期を大幅に上回りました。新規営業活動については、金融機関や当社顧問である東京大学の教授経由の紹介等を通じて、各産業の大手企業へのアプローチを増加させております。結果として、継続顧客の割合(当事業年度に売上が発生した顧客のうち、前事業年度にも売上が発生していた顧客の割合をいう)は前事業年度の57%から73%に上昇しました。また、継続顧客のうち前事業年度と比較して売上高が増加した比率は9割となりました。
売上総利益については、案件の増加等により582,395千円(同111.6%増)と売上高と同様に増加しました。顧客から収益を獲得するプロジェクトに従事する人員の人件費や業務委託費が売上原価の大部分を占めており、フロー型及びストック型双方のプロジェクト数の増大に伴い売上原価も増加しております。
販売費及び一般管理費について、人材関連費用に関して人材採用を積極的に実施したことにより給料手当は86,214千円増加いたしましたが、一方でリファラル採用を積極的に推進したことにより採用費は18,850千円減少いたしました。またソリューション開発をさらに推進したため研究開発費が44,779千円増加したことを主要因として、販売費及び一般管理費は543,459千円(前期比52.2%増)となりました。
上記のとおり、先行投資や人材への投資等は引続き積極的に行っておりますが、売上高の大幅な増加により固定費を吸収し、営業利益は38,935千円(前事業年度は81,973千円の営業損失)、経常利益は27,825千円(前事業年度は81,945千円の経常損失)、当期純利益は27,719千円(前事業年度は当期純損失86,428千円)となり、創業以来初の黒字となりました。
なお当社は、AIソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
第4期第1四半期累計期間(自 2021年7月1日 至 2021年9月30日)
当第1四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けており、一部に回復の動きは見られたものの、感染拡大や度重なる緊急事態宣言の発出により、先行き不透明な状況が続いております。
一方で、当社を取り巻く環境としましては、企業の競争力強化や人材不足への対応から、AIやDXへの急速な注目の高まりや、国内企業のIT投資の拡大局面が続いていることなどが当社にとって追い風となっております。
そのような環境の中で、AIソリューションの横展開事例の増加に加えて、新規顧客獲得や既存顧客からのアップセル等もあり引続き好調に推移した結果、売上高は316,275千円となりました。
ソリューションの横展開事例の増加に伴ってノウハウが蓄積し生産性が向上した結果、売上総利益率は前事業年度と比較して10.9ポイント上昇し64.4%となりました。
AIソリューション開発プロジェクト(Joint R&D)の獲得、研究開発、人材採用といった先行投資も引続き積極的に進めておりますが、売上高の好調な推移により、営業利益は50,766千円、経常利益は50,774千円、四半期純利益は42,161千円となりました。
なお当社は、AIソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
第3期事業年度(自 2020年7月1日 至 2021年6月30日)
(資産)
流動資産は、2020年10月に実施した第三者割当増資により2,628,373千円の収入があったこと等により現金及び預金が2,764,237千円増加したこと及びオフィス賃料の前払いを当事業年度に解消したこと等による前払費用が38,462千円減少したことにより、2,715,417千円増加いたしました。
固定資産は、主に従業員が使用するPCの取得により、3,861千円増加いたしました。
その結果、当事業年度末における資産合計は3,188,388千円となり、前事業年度末に比べ2,719,278千円増加いたしました。
(負債)
流動負債は、事業拡大による未了プロジェクトの前受金や人員拡大による未払金が20,805千円増加したこと及び売上拡大により未払消費税等が23,184千円増加したことにより、53,709千円増加いたしました。
固定負債については大きな増減はなく、その結果、当事業年度末における負債合計は136,507千円となり、前事業年度末に比べ52,689千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は3,051,881千円となり、前事業年度末に比べ2,666,589千円増加いたしました。これは主に、第三者割当増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ1,319,435千円増加したことによるものであります。なお資本金は、2021年4月20日開催の臨時株主総会決議により資本金1,319,435千円を減少しその全額をその他資本剰余金に振り替えたため、当事業年度末においては100,000千円となっております。
第4期第1四半期累計期間(自 2021年7月1日 至 2021年9月30日)
(資産)
当第1四半期会計期間末における資産合計は3,206,443千円となり、主に事業規模拡大に伴い売掛金及び契約資産が27,081千円増加したこと等により、前事業年度末に比べ18,054千円増加いたしました。
(負債)
当第1四半期会計期間末における負債合計は111,487千円となり、前事業年度末に比べ25,020千円減少いたしました。これは主に、消費税納付の時期により未払消費税等が24,492千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は3,094,955千円となり、主に四半期純利益42,161千円の計上により、前事業年度末に比べ43,074千円増加いたしました。
③ キャッシュ・フローの状況
第3期事業年度(自 2020年7月1日 至 2021年6月30日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、主に2020年10月に実施した第三者割当増資及び黒字化により、前事業年度末と比較して2,764,237千円増加し、3,015,655千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、150,315千円の収入(前事業年度は72,933千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損益が前事業年度の81,945千円の損失から27,282千円の利益に転じたこと、オフィス賃料の前払いを当事業年度に解消したこと等による前払費用の減少額38,462千円(前事業年度は31,078千円の減少)及び未払金の増加額21,542千円(前事業年度は2,330千円の増加)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、14,451千円の支出(前事業年度は21,542千円の支出)となりました。これは主に、前事業年度と比較して支出が減少した要因としては、従業員増加数が緩やかになったことにより、PC購入による有形固定資産の取得による支出が15,203千円の支出(前事業年度は19,066千円の支出)となったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2020年10月に実施した第三者割当増資による株式の発行により、2,628,373千円の収入(前事業年度は177,955千円の収入)となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスには生産に該当する事項がないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスは、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当事業年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
前年同期比(%)
AIソリューション事業(千円)1,089,424211.3

(注)1.当社は、AIソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
2.最近2事業年度及び第4期第1四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2019年7月1日
至 2020年6月30日)
当事業年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
第4期第1四半期累計期間
(自 2021年7月1日
至 2021年9月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
学校法人駿河台学園213,16641.4324,50029.893,50029.6
株式会社トーハン80,95015.7----
合同会社ネコリコ62,28812.182,7117.621,0006.6
ダイキン工業株式会社--144,00013.212,8714.1
イオントップバリュ株式会社21,0004.1117,50010.833,24010.5
DCM株式会社--26,7142.556,00017.7
株式会社カッシーナ・イクスシー--53,4834.936,90311.7

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」基づき、一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積り、当該繰延税金資産は回収可能性があるものと判断し、繰延税金資産を認識しております。なお、将来減算一時差異やスケジューリング不能な将来減算一時差異については、評価性引当額としております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
売上高については、大型案件の継続及び新規獲得、並びにソリューションの本格導入や前期から引続きソリューション開発の為の積極的な新規営業活動を行った結果、1,089,424千円(前期比111.3%増)と前期を大幅に上回りました。新規営業活動については、金融機関や当社顧問である東京大学の教授経由の紹介等を通じて、各産業の大手企業へのアプローチを増加させております。
売上原価については、顧客から収益を獲得するプロジェクトに従事する人員の人件費が売上原価の大部分を占めており、プロジェクトの増加により507,028千円(同111.0%増)と売上高と同様に前期を大幅に上回りました。その結果、売上総利益についても同様の傾向で推移しており、582,395千円(同111.6%増)と増加しました。
販売費及び一般管理費について、人材関連費用に関して人材採用を積極的に実施したことにより給料手当は86,214千円増加いたしましたが、一方でリファラル採用を積極的に推進したことにより採用費は18,850千円減少いたしました。またソリューション開発をさらに推進したため研究開発費が44,779千円増加したことを主要因として、販売費及び一般管理費は543,459千円(前期比52.2%増)となりました。その結果、営業利益は38,935千円(前事業年度は81,973千円の営業損失)となりました。
営業外損益については、主なものとして第三者割当増資に伴う株式交付費を10,497千円計上しております。その結果、経常利益は27,825千円(前事業年度は81,945千円の経常損失)となりました。
特別損益は計上しておらず、これらの結果、当期純利益は27,719千円(前事業年度は当期純損失86,428千円)となり、創業以来初の黒字となりました。
なお当社は、AIソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
第3期事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の主な資金需要は、労務費(製造活動に関与するものに係る人件費)及び人件費(労務費以外の人件費)といった人材に関するもの及び経費等の販売費及び一般管理費等となっております。これらについては、現時点では自己資金で賄っており、基本的には今後も自己資金または営業活動によるキャッシュ・フローを充当する方針であります。なお、今後事業拡大に向けて急激な資金需要が生じる場合に備え、一部の金融機関と当座貸越の契約をしております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、共同研究開発や初期導入フェーズにおける課題特定や全社戦略策定の支援、PoCの実施、AIアルゴリズムの構築及びシステム実装等の準委任型の役務提供を通じたフロー型(非継続)の収益と、AIソリューション導入後のフェーズにおける運用保守料やサービス利用料、ライセンス利用料、コンソーシアム会費等のストック型(継続)の収益を得ております。そのため、売上高、営業利益及び売上高営業利益率といった基礎的な指標に加えて、幅広い産業への事業展開や売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、AIソリューション別の収益構成や継続顧客による売上比率を重要な指標としております。また、産業共通課題に取り組むという当社のアプローチは、各産業のSDGs課題とも密接に関連するため、SDGsテーマ別の売上構成についても重視をしております。
当社の特徴的な比率である継続顧客からの売上比率については、当社の戦略を表すように前事業年度と比較して16ポイント上昇し73%となりました。また、SDGsテーマ別の売上構成について、内訳の比率は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりでありますが、全体としてその比率は82%となっており今後も当該比率の維持及び上昇を図ってまいります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。