有価証券届出書(新規公開時)

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2021/11/19 15:00
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135項目
(1) 経営成績等の状況
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
第6期事業年度(自 2020年7月1日 至 2021年6月30日)
当事業年度のわが国経済は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響により、社会・経済活動が制限されるなど、先行きが不透明な状況が継続しております。
そのような状況の中、当社は、当事業年度において不眠症治療用アプリの探索的試験を予定どおり終了し、検証的試験を開始しました。また、不眠症治療用アプリ、乳がん患者向けの運動療法アプリ、ACPを支援するアプリに続く次のパイプライン獲得に向けて、国立大学法人東海国立大学機構、国立研究開発法人国立がん研究センターなど、複数の学術研究機関と共同開発契約を締結しました。国立大学法人東北大学並びに日本腎臓リハビリテーション学会とは、慢性腎臓病患者向けの治療用アプリの共同開発を開始しております。
2020年12月に、グレーゾーン解消制度によって経済産業大臣並びに厚生労働大臣により「医療品や医療機器等の臨床試験で求められる原資料とCRF(*1)の照合をブロックチェーン技術により代替することはGCP省令(*2)の定めに違反しない」という回答を得たブロックチェーン技術を実装した臨床試験システムについては、日本ケミファ株式会社と臨床試験の効率化に向けて具体的検討を開始するとともに、国立大学法人東京医科歯科大学との効率向上の実証研究がAMEDの「研究開発推進ネットワーク事業」に採択されております。
*1 CRF:症例報告書(Case Report Form)
*2 GCP省令:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(Good Clinical Practice)
なお、現時点において、新型コロナウィルス感染症による当社業績への影響は軽微であります。
これらの結果、当事業年度における業績は、事業収益115,489千円、営業損失333,421千円、経常損失271,080千円、当期純損失277,554千円となりました。
当事業年度における報告セグメント別の実績は、以下のとおりです。
(DTxプロダクト事業)
当セグメントは、治療用アプリ開発で構成されております。治療用アプリ開発では、不眠症治療用アプリの探索的試験を予定通りに終了し、検証的試験を開始しております。また、乳がん患者向けの運動療法アプリ、ACPを支援するアプリの臨床試験の準備を進めるとともに、複数の医療機関と共同研究契約を締結し、次のパイプラインの獲得を計画しております。医療機器承認を取得し、販売段階にあるプロダクトはまだありません。
この結果、本報告セグメントの当事業年度の事業収益はなく(前事業年度もなし)、セグメント損失は160,130千円(前事業年度は56,258千円のセグメント損失)となりました。
(DTxプラットフォーム事業)
当セグメントは、汎用臨床試験システム及び機械学習自動分析システムの提供、並びにこれらシステムを活用したDTx開発の支援で構成されております。汎用臨床試験システムは、ブロックチェーン機能の実装など、まだ開発項目も多く、収益への貢献は限定的になっております。機械学習自動分析システムは、継続利用企業の増加に加え、使用事例の蓄積が新規取引先の獲得につながったことで、収益が大きく向上しました。DTx開発支援は、当事業年度内に顧客向けのシステムのセットアップが完了し収益が計上されました。
この結果、本報告セグメントの当事業年度の事業収益は115,489千円(前事業年度は34,888千円)、セグメント利益は8,848千円(前事業年度は3,227千円のセグメント利益)となりました。
(資産)
当事業年度における流動資産合計は、1,674,847千円となり、前事業年度に比べ1,296,321千円増加いたしました。これは主に第三者割当増資等により、現金及び預金が1,260,509千円、主に治験費用の前払により、前払費用が19,246千円それぞれ増加したことによるものであります。
当事業年度末における固定資産合計は、2千円となり、前事業年度に比べ3,036千円減少いたしました。これは主に1年以内に回収予定となる投資その他の資産のその他を流動資産のその他に振替えた結果、その他が3,036千円減少したことによるものであります。
(負債)
当事業年度における流動負債合計は、96,309千円となり、前事業年度末に比べ73,599千円増加いたしました。これは主に事業規模の拡大により、未払金が68,053千円増加し、1年以内に期限が到来する見込みの資産除去債務を固定負債から流動負債へ振替えた結果、資産除去債務が3,650千円増加したことによるものであります。
当事業年度における固定負債合計は、890千円となり、前事業年度末に比べ2,759千円減少しました。これは主に上記の資産除去債務を振替えた一方で、未収還付法人税等の増加により、繰延税金負債が890千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度の純資産合計は、1,577,650千円となり、前事業年度末に比べ1,222,445千円増加いたしました。その増減内訳は、資本金の減少311,740千円、資本剰余金の増加1,354,285千円、利益剰余金の増加179,900千円によるものであります。これは、第三者割当増資による新株式発行により、資本金及び資本剰余金それぞれが750,000千円増加した一方で、2021年6月の欠損填補等を目的とした減資により、資本金が1,061,740千円減少し、資本剰余金が604,285千円、利益剰余金が457,454千円それぞれ増加しており、また、当期純損失277,554千円を計上したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は94.2%(前事業年度末は93.1%)となりました。
第7期第1四半期累計期間(自 2021年7月1日 至 2021年9月30日)
当第1四半期累計期間のわが国経済は、新型コロナウィルス感染症の影響により断続的に緊急事態宣言が発出されるなど、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
そのような状況の中、当社は、当第1四半期累計期間において不眠症治療用アプリの検証的試験を予定通り進めております。
また、不眠症治療用アプリ以外のパイプラインについては、アドバンス・ケア・プランニングを支援するアプリのPoC取得に向けた探索的試験を開始いたしました。乳がん患者向けの運動療法アプリに関しては検証的試験の、慢性腎臓病患者向けの腎臓リハビリアプリに関してはPoC取得に向けた探索的試験の準備をそれぞれ行っております。
さらに、新たなシーズ探索のために、国立大学法人浜松医科大学と共同研究契約を締結いたしました。
なお、現時点において、新型コロナウィルス感染症による当社業績への影響は軽微であります。
これらの結果、当第1四半期累計期間における業績は、事業収益30,838千円、営業損失128,024千円、経常損失128,996千円、四半期純損失129,828千円となりました。
当第1四半期累計期間における報告セグメント別の実績は、以下のとおりです。
(DTxプロダクト事業)
当セグメントは、治療用アプリ開発で構成されております。治療用アプリ開発では、不眠症治療用アプリの検証的試験を順調に進めております。また、アドバンス・ケア・プランニングを支援するアプリのPoC取得に向けた探索的試験を開始するとともに、乳がん患者向けの運動療法アプリ、慢性腎臓病患者向けの腎臓リハビリアプリそれぞれに関して臨床試験の準備を行っております。また複数の医療機関と共同研究を行い、次のパイプラインの獲得を目指しております。医療機器承認を取得し、販売段階にあるプロダクトはまだございません。
この結果、本報告セグメントの当第1四半期累計期間の事業収益はなく、セグメント損失は76,784千円となりました。
(DTxプラットフォーム事業)
当セグメントは、汎用臨床試験システム及び機械学習自動分析システムの提供、並びにこれらシステムを活用したDTx開発の支援で構成されております。汎用臨床試験システムの提供に関しては、ブロックチェーン機能の実装など、まだ開発項目も多く、収益への貢献は限定的になっております。機械学習自動分析システムの提供に関しては、継続利用企業の増加によって収益が安定するとともに、関連する業務委託の追加によって契約金額が増加した案件もあり、収益が大きく向上しました。DTx開発の支援に関する活動は、前期からの継続利用に支えられ、収益は安定的に推移しております。
この結果、本報告セグメントの当第1四半期累計期間の事業収益は30,838千円、セグメント利益は13,979千円となりました。
(資産)
当第1四半期会計期間末における流動資産合計は、1,501,232千円となり、前事業年度末に比べ173,615千円減少いたしました。これは主に売掛金及び契約資産が8,170千円増加した一方、事業拡大により、現金及び預金が175,853千円、主に治験の前払分について治験が進捗したことで、前払費用が4,579千円それぞれ減少したことによるものであります。
当第1四半期会計期間末における固定資産合計は、7,139千円となり、前事業年度末に比べ7,136千円増加いたしました。これは主に投資その他の資産のその他が7,136千円増加したことによるものであります。
(負債)
当第1四半期会計期間末の流動負債合計は、59,659千円となり、前事業年度末に比べ36,649千円減少いたしました。これは主に前事業年度末と比べ、治験関係の請求減少等により、未払金が36,009千円減少し、また、契約負債(前事業年度末は前受収益)の収益化が進んだことにより、契約負債(前事業年度末は前受収益)が3,080千円それぞれ減少したことによるものであります。
当第1四半期会計期間末の固定負債合計は、890千円となり、前事業年度と変わりはありません。
(純資産)
当第1四半期会計期間末の純資産合計は1,447,822千円となり、前事業年度末に比べ129,828千円減少いたしました。これは、四半期純損失の計上に伴う利益剰余金の減少129,828千円によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
第6期事業年度(自 2020年7月1日 至 2021年6月30日)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、株式の発行による収入1,500,000千円及び税引前当期純損失275,713千円により、前事業年度末に比べて1,260,509千円増加し、1,626,645千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は235,088千円(前事業年度は88,988千円の支出)となりました。これは主に、資金の減少要因として、税引前当期純損失275,713千円(前事業年度は96,632千円)、前払費用の増加19,246千円(前事業年度は前払費用の増加3,856千円)があった一方で、資金の増加要因として未払金の増加67,707千円(前事業年度は未払金の減少額3,112千円)、助成金の受取60,542千円(前事業年度は77,443千円の受取)及び減損損失4,633千円(前事業年度は7,817千円)等があったことによるものであります。
当社は、治療用アプリの研究開発費の発生が先行するベンチャー企業であるため、税引前当期純損失から生じる営業キャッシュ・フローがマイナスとなる状況が継続しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は4,401千円(前事業年度は5,831千円の支出)となりました。これは資金の減少要因として、有形固定資産の取得による支出4,401千円(前事業年度は4,199千円の支出)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は1,500,000千円(前事業年度は実績なし)となりました。これは資金の増加要因として、株式の発行による収入1,500,000千円(前事業年度は実績なし)によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社は受注生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b 受注実績
当社は受注生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
c 販売実績
第6期事業年度及び第7期第1四半期累計期間における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称第6期事業年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
第7期第1四半期累計期間
(自 2021年7月1日
至 2021年9月30日)
販売高(千円)前年同期比(%)
DTxプロダクト事業
DTxプラットフォーム事業115,489231.030,838
合計115,489231.030,838

(注) 最近2事業年度及び第7期第1四半期累計期間の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第5期事業年度
(自 2019年7月1日
至 2020年6月30日)
第6期事業年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
第7期第1四半期累計期間
(自 2021年7月1日
至 2021年9月30日)
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
科研製薬株式会社31,07126.91,6415.3
株式会社スズケン20,25017.511,91038.6
ブリストル・マイヤーズスクイプ株式会社4,9004.25,00016.2
住友商事株式会社3,20010.4
日本ケミファ株式会社14,00012.13,0009.7
公益財団法人がん研究会5,00014.36,0005.21,5004.9
第一三共株式会社5,00014.3
全国健康保険協会福岡支部3,94411.33,2482.81,6955.5
ヤンセンファーマ株式会社3,75010.78,7507.6
国立研究開発法人がん研究センター3,67310.56810.6

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針および見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。その作成において、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を及ぼす見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において、過去の実績や判断時点で入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、会計上の見積において、新型コロナウィルス感染症の感染拡大による影響が、当社の業績に与える影響は軽微であると判断し、見積りを行っております。
(固定資産の減損)
当社は、固定資産の減損について、事業用資産においては管理会計上の区分を基準に、本社等に関しては共用資産としてグルーピングし、減損の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があった場合、将来キャッシュ・フローを見積り、減損の要否を判定しております。判定の結果、減損が必要と判断された資産については、帳簿価格を回収可能価格まで減損処理をしております。
② 経営成績等に関する分析
第6期事業年度(自 2020年7月1日 至 2021年6月30日)
(事業収益)
当事業年度の事業収益は、115,489千円(前事業年度34,888千円)となりました。前事業年度からの増加の主な要因は、機械学習自動分析システムにおいて、継続利用企業の増加に加え、使用事例の蓄積が新規取引先の獲得につながったことで、収益が大きく向上しました。また、DTx開発支援において、主に当事業年度内に顧客向けのシステムのセットアップが完了し収益が計上されたこと等によるものです。
(事業費用、営業損失)
当事業年度の事業原価については9,761千円(前事業年度1,550千円)となりました。前事業年度からの増加の主な要因は、事業収益の増加に伴い、機械学習自動分析システム及びDTx開発支援における事業原価が増加したこと等によるものです。当事業年度の研究開発費は249,137千円(前事業年度86,368千円)となりました。前事業年度から増加の主な要因は、主に治験費用の増加等によるものです。当事業年度の販売費および一般管理費は、190,012千円(前事業年度107,698千円)となりました。前事業年度からの増加の主な要因は、事業規模の拡大による人件費、採用教育費及び支払報酬料の増加等によるものです。その結果、営業損失は333,421千円(前事業年度160,728千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当事業年度の営業外収入は、62,351千円(前事業年度71,913千円)となりました。主な要因は、助成金による収入60,542千円等によるものです。また、当事業年度の営業外費用は10千円(前事業年度はなし)となりました。その結果、経常損失は271,080千円(前事業年度88,815千円)となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、当期純損失)
当事業年度の特別利益はなく(前事業年度もなし)、特別損失は4,633千円(前事業年度は7,817千円)となりました。これは、固定資産の減損損失4,633千円によるものになります。当事業年度における法人税合計は1,840千円(前事業年度は290千円)となりました。これは法人税950千円及び法人税等調整額890千円によるものです。その結果、当期純損失は、277,554千円(前事業年度は96,922千円)となりました。
第7期第1四半期累計期間(自 2021年7月1日 至 2021年9月30日)
(事業収益)
当第1四半期累計期間の事業収益は、機械学習自動分析システムの提供に関して、継続利用企業の増加によって収益が安定するとともに、関連する業務委託の追加によって契約金額が増加した案件もあり、30,838千円となりました。
(事業費用、営業損失)
当第1四半期累計期間の事業費用は、事業収益の発生に伴い事業原価が3,345千円計上され、主に治療用アプリの研究開発において臨床試験にかかる外部委託費の計上により、研究開発費が87,005千円計上されたこと等により、当第1四半期累計期間の営業損失は128,024千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当第1四半期累計期間の営業外収益は、資産除去債務戻入益750千円の計上等により、1,038千円となりました。また営業外費用は、上場関連費用2,000千円の計上等により、2,010千円となりました。その結果、当第1四半期累計期間の経常損失は、128,996千円となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、当期純損失)
当第1四半期累計期間の特別利益はなく、特別損失は、固定資産減損損失等の計上により、594千円となりました。法人税合計は法人税の計上により、237千円となりました。その結果、四半期純損失は129,828千円となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因に関しては、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
④ 資本の財源及び資金の流動性について
当社の最重要課題は不眠症治療用アプリの販売を確実に実現させることです。また、新たなパイプラインとして「乳がん患者向け運動療法アプリ」「ACPアプリ」「慢性腎臓病患者向け運動療法アプリ」の開発に取り組むと同時に、汎用臨床試験システム、機械学習自動分析システムの開発も継続して行なっていきます。ベンチャー企業である当社は、不眠症治療用アプリの販売が開始されるまでは赤字が継続する見込みであるため、上記の治療用アプリや各種システムに関する研究開発資金については外部調達が不可欠であります。研究開発での必要資金に関しては、手許資金と株式上場によって調達を予定している資金によって確保する予定です。加えて将来的には不眠症治療用アプリの販売利益の再投資も行うことで、企業価値の最大化を目指してまいります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。