有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/12/28 15:00
【資料】
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【項目】
124項目
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
また、当社は訪問看護サービス事業の単一セグメントのため、セグメント情報は記載しておりません。
(1) 経営成績の状況
第8期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により緊急事態宣言が出される等、経済活動が抑制され、景気は厳しい状況となりました。世界経済につきましても、新型コロナウイルス感染症の影響により、先行きの不透明感が極めて強い状況となっております。
我が国の医療環境については、2020年4月の診療報酬改定において、より質の高い在宅医療・訪問看護の確保を実現するための改定が実施されました。利用者様のニーズにきめ細やかに対応し、医療機関や居宅介護支援事業所等の地域連携機関との連携を強め、適切な訪問看護を提供できる体制を強化すること、また、利用者様を安定的に支えるためのステーションの規模の大きさを確保することの重要性が高まっております。また、新型コロナウイルス感染症の発生以降も行政及び地域連携機関より、利用者様に対する支援継続のため、感染予防を徹底し、事業継続を行うことが求められております。
このような状況のもと、当社は収益性の向上、人材確保に注力するとともに第9期事業年度に開設予定である新規拠点の準備を進めてまいりました。収益性の向上については、ドミナント戦略による収益最大化を目指し、自社競合にならないための管理の仕組み、エリアマーケティングを導入致しました。人材確保については、人材紹介会社とのタイアップ企画等により人材紹介会社との連携を深め、要員計画に沿った人材獲得を進めました。
以上の結果、当事業年度の売上高は766,637千円(前期比109.6%)、営業利益は17,472千円(同90.3%)、経常利益は20,712千円(同99.9%)、当期純利益は27,537千円(同198.6%)となりました。
第9期第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)
当第3四半期累計期間におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大はワクチン接種が進みながらも緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置に伴う行動制限の影響により個人消費の戻りが限定的な水準にとどまるなど、本格的な回復には至りませんでした。
当社が属する医療業界における訪問看護マーケットは大きく落ち込むことはなく、比較的安定した推移を見せております。しかしながら、感染症拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、感染の動向が国内外経済及び訪問看護市場に与える影響を予測することが極めて困難な状況にあります。
このような状況のもと、当社は「もう一人のあたたかい家族として在宅生活の安心を届け地域社会へ貢献します」という企業理念のもと、利用者様に寄り添った訪問看護をより多くの方に享受いただけるよう、人材確保と出店に取り組んでおります。収益性の向上、人材確保に注力するとともに2021年3月に東京都小平市、8月に東京都練馬区並びに9月に東京都中野区に新規拠点を開設しました。
以上の結果、当第3四半期累計期間における売上高は810,547千円となりました。利益面では、事業所従業員の採用による、採用費負担や人件費負担の増加などの影響はありましたが、一方で月間訪問件数の増加により営業利益は85,859千円となりました。経常利益についてはテレワークの助成金、中山間地域へのサービス提供に係る補助金等の助成金収入を計上したこと等により90,607千円となり、四半期純利益は55,366千円となりました。
(2) 財政状態の状況
第8期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
当事業年度末における財政状態については次のとおりです。
① 資産
当事業年度末における資産合計は337,776千円となり、前事業年度末から20,964千円増加しました。これは主に、現金及び預金は35,212千円減少したものの、売上高増加に伴い売掛金が36,761千円、前払費用が7,349千円、未収入金が441千円、繰越欠損金に対する繰延税金資産の計上で投資その他の資産が11,433千円増加したことによるものです。
② 負債
当事業年度末における負債合計は229,194千円となり、前事業年度末から6,573千円減少しました。これは主に、人員数の増加により、未払費用12,543千円、未払金18,080千円、預り金2,130千円及び退職給付引当金が4,635千円等の増加がありましたが、借入金の返済が進み、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)が43,548千円減少したことによるものです。
③ 純資産
当事業年度末における純資産は108,582千円となり、前事業年度末から27,537千円増加しました。その要因は、当期純利益の計上により、利益剰余金が27,537千円増加したことによるものです。
第9期第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)
当第3四半期会計期間末における財政状態については次のとおりです。
① 資産
当第3四半期会計期間末における資産合計は398,688千円となり、前事業年度末から60,912千円増加しました。これは主に、前払いしていた人材紹介料に係る前払費用が4,354千円、給与年末調整還付金に係る未収入金が4,237千円、繰越欠損金に対する繰延税金資産の取崩しで投資その他の資産が4,474千円減少したものの、売上高増加に伴い売掛金が54,014千円、現金及び預金が19,555千円増加したことによるものです。
② 負債
当第3四半期会計期間末における負債合計は234,739千円となり、前事業年度末から5,545千円増加しました。これは主に、返済が進んだことにより長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)が30,012千円減少したこと、その他、賞与支給に伴い未払費用3,297千円、未払金14,406千円及び預り金6,019千円が減少したものの、繰越欠損金の解消に伴い、未払法人税等が26,916千円増加したこと、また、12月支給の賞与に対する引当金が25,725千円増加したことによるものです。
③ 純資産
当第3四半期会計期間末における純資産は163,949千円となり、前事業年度末から55,366千円増加しました。その要因は、当期純利益の計上により、利益剰余金が55,366千円増加したことによるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
第8期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は124,575千円となり、前事業年度末に比べて35,212千円減少致しました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、12,331千円の資金増加(前事業年度は21,027千円の資金増加)となりました。これは法人税等の支払額が2,779千円であった他、売上高増加に伴う売上債権の増加額が36,761千円となったものの、税引前当期純利益を20,116千円計上した他、従業員数増加に伴う退職給付引当金の増加額が4,635千円となったことによるものです。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、3,996千円の資金減少(前事業年度は1,581千円の資金減少)となりました。これは新拠点の事業所等に係る社用車の購入等による固定資産の取得による支出3,362千円、基幹システムに係る無形固定資産の取得による支出を300千円行ったこと等によるものです。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、43,548千円の資金減少(前事業年度は44,624千円の資金増加)となりました。これは長期借入金の返済による支出によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
該当事項はありません。
② 受注実績
該当事項はありません。
③ 販売の実績
当事業年度における販売実績は次のとおりです。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
訪問看護サービス事業766,637109.6
合計766,637109.6

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先第7期事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
第8期事業年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
第9期第3四半期累計期間
(自 2021年1月1日
至 2021年9月30日)
金額(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
東京都国民健康保険団体連合会298,03442.6367,45447.9421,55452.0
高知県国民健康保険団体連合会75,86710.884,98111.181,45210.0

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。なお、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「5.経理の状況 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
第8期事業年度及び第9期第3四半期累計期間の財政状態の分析については、「(2)財政状態の状況」に記載のとおりであります。
③ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
第8期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
(売上高)
当社は、医療機関や居宅介護支援事業所等の地域連携機関に積極的に働きかけを行い、新規利用者の獲得に注力してまいりました。その結果、当事業年度における売上高は766,637千円(前期比109.6%)となりました。また、第9期事業年度に開設予定である新規拠点の準備を進めてまいりました。収益性の向上については、ドミナント戦略による収益最大化を目指し、自社競合にならないための管理の仕組み、エリアマーケティングを導入致しました。人材確保については、人材紹介会社とのタイアップ企画等により人材紹介会社との連携を深め、要員計画に沿った人材獲得が進んでおります。
(売上原価、売上総利益)
売上高の増加に応じて、積極的に訪問看護師等の人材確保に注力してまいりました。
以上の結果、当事業年度における売上原価は474,321千円(前期比103.7%)となりました。主なものは、訪問看護サービス事業の人件費461,777千円(同103.9%)であり、売上原価率は61.8%となりました。この結果、売上総利益は292,315千円(同120.7%)、売上総利益率は38.1%となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当社の販売費及び一般管理費は、主に間接部門の人件費、採用関係費、地代家賃及びその他の経費で構成されております。事業拡大に応じて看護師等の採用を強化したため、採用関係費が増加しました。
以上の結果、当事業年度における営業利益は17,472千円(前期比90.3%)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
主な営業外収益として新型コロナウイルス感染症に係る助成金を含む助成金収入3,806千円が発生致しました。主な営業外費用としてITを推進するためのデジタル機器リース解約損944千円が発生いたしました。
以上の結果、当事業年度における経常利益は20,712千円(前期比99.9%)となりました。
(特別利益、特別損失及び当期純利益)
当事業年度の特別損失は596千円となりました。これはソフトウェアの減損損失511千円及び固定資産売却損85千円によるものです。また、法人税等合計に関しては7,421千円となりました。
以上の結果、当期純利益は27,537千円(前期比198.6%)となりました。
第9期第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)
(売上高)
2021年3月に東京都小平市へ新たに拠点を開設し、8月に東京都練馬区並びに9月に東京都中野区に新規拠点を開設しました。既存拠点においては積極的に地域へ働きかけを行い、新規利用者の獲得に注力してまいりました。その結果、当第3四半期累計期間における売上高は810,547千円となりました。
(売上原価、売上総利益)
売上高の増加に応じて、積極的に看護師等の人材確保に注力してまいりました。
以上の結果、当第3四半期累計期間における売上原価は492,654千円となりました。主なものは、訪問看護サービス事業の人件費479,744千円であり、売上原価率は60.8%となりました。この結果、売上総利益は317,893千円、売上総利益率は39.2%となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当社の販売費及び一般管理費は、主に間接部門の人件費、採用関係費、地代家賃及びその他の経費で構成されております。事業拡大に応じて看護師等の採用を強化したため、採用関係費が増加しました。
以上の結果、当第3四半期累計期間における営業利益は85,859千円となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
主な営業外収益として新型コロナウイルス感染症に係る助成金を含む助成金収入5,552千円が発生しました。主な営業外費用として借入金に係る支払利息946千円が発生しました。
以上の結果、当第3四半期累計期間における経常利益は90,607千円となりました。
(特別利益、特別損失及び当期純利益)
当第3四半期累計期間において、特別利益及び特別損失は発生しておりません。法人税等合計に関しては35,241千円となりました。
以上の結果、四半期純利益は55,366千円となりました。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社は重要なKPIを延べ訪問件数とし、経営陣のみならず役職者全員がこの指標を意識した事業所運営を行っております。訪問件数を増加させるために、当社は営業担当を置かず、看護師及びリハビリ職が医療の専門性を活かした地域連携活動を行うことにより、新規利用者の獲得を行う方針であります。また、訪問看護サービス事業は労働集約型事業であるため、当社がさらに成長していくためには、利用者数の増加は当然のことながら、その前提として看護師等訪問看護要員となる従業員を継続的に採用、育成し、事業所規模拡大及び拠点展開による事業所数拡大を継続していくことが必要です。
当事業年度における各指標の推移は以下のとおりです。
指標第7期事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
第8期事業年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
第9期第3四半期累計期間
(自 2021年1月1日
至 2021年9月30日)
延べ訪問件数(注1)88,926件95,634件100,603件
延べ介入利用者数(注2)11,616人11,828人12,078人
訪問看護要員数(期末または四半期末時点)92人118人146人

(注) 1.延べ訪問件数は、従業員1人当たり訪問件数の総和です。
2.延べ介入利用者数は、月間介入者数の総数です。「介入」とは、看護師等が訪問看護契約に基づき訪問することを言います。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
⑥ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、12,331千円の資金増加(前事業年度は21,027千円の資金増加)、投資活動によるキャッシュ・フローは、3,996千円の資金減少(前事業年度は1,581千円の資金減少)、財務活動によるキャッシュ・フローは、43,548千円の資金減少(前事業年度は44,624千円の資金増加)となり、その結果、当事業年度の現金及び現金同等物は、前年同期に比べ35,212千円減少し、124,575千円となりました。
上記の他、当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(3) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社における資金需要は、主として運転資金及び新規拠点開設時の設備投資資金です。これらの財源については、自己資金の効率的な運用に加え、金融機関からの資金調達を基本としております。なお、事業活動を円滑に実行できるよう適正な水準の資金の流動性の維持及び確保を最優先しております。