有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/16 15:00
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146項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
第8期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(資産)
当事業年度末における流動資産は4,444,969千円となり、前事業年度末に比べ31,855千円増加いたしました。これは主として、保守サービス事業のメディコム保守に係る契約形態の変更に伴い前払費用が44,013千円減少、借入金を返済したことにより現金及び預金が16,741千円減少したものの、各種大型案件の期末検収に伴い売掛金105,110千円増加したことによります。固定資産は1,077,030千円となり、前事業年度に比べ30,066千円減少いたしました。これは主に、社員増加に伴う退職給付引当金の積み上げにより繰延税金資産が18,382千円増加したものの、のれんの償却による4,451千円の減少、ソフトウェアの償却等による11,654千円減少したことによります。
結果として、総資産は5,522,000千円となり、前事業年度末に比べ1,788千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は3,121,851千円となり、前事業年度末に比べ103,299千円増加いたしました。これは主として、借入金を返済したことにより短期借入金が400,000千円減少、保守サービス事業のメディコム保守に係る契約形態の変更に伴い前受金が50,907千円減少したものの、期末検収大型案件に係る仕入の増加により買掛金が371,788千円増加、決算賞与の計上により未払費用が191,131千円増加、社員増加に伴い賞与引当金が13,949千円増加したことによります。固定負債は1,409,796千円となり、前事業年度末に比べ20,498千円増加いたしました。これは主として、社員増加に伴い退職給付引当金が16,666千円増加したことによります。
結果として、負債合計は4,531,648千円となり、前事業年度末に比べ123,797千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は990,351千円となり、前事業年度末に比べ122,009千円減少いたしました。これは、当期純利益423,521千円を計上したものの、期中に取得した自己株式を消却したことによる資本剰余金235,162千円及び利益剰余金150,900千円の減少、剰余金の配当による利益剰余金159,467千円の減少等によります。
第9期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産は4,643,399千円となり、前事業年度末に比べ198,430千円増加いたしました。これは主として、オンライン資格確認案件受注に伴う必要機材の調達により現金及び預金が84,942千円、前事業年度末に発生した各種大型案件の代金回収により受取手形、売掛金及び契約資産が556,862千円減少したものの、オンライン資格確認案件受注に伴う必要機材の調達により棚卸資産が876,704千円増加したことによります。固定資産は1,067,366千円となり、前事業年度末に比べ9,664千円減少いたしました。これは主として、社内インフラのリース導入により有形固定資産が18,931千円増加したものの、償却進行により無形固定資産が21,444千円、保守サービス事業のメディコム保守に係る契約形態の変更に伴い投資その他の資産が7,151千円減少したことによります。
この結果、総資産は5,710,766千円となり、前事業年度末に比べ188,766千円増加いたしました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債は2,954,760千円となり、前事業年度末に比べ167,090千円減少いたしました。これは主として、大型保守案件に係る代金の前受けにより前受金が113,272千円増加したものの、買掛金が23,623千円、賞与引当金が162,133千円、決算賞与の支払いにより未払費用が181,330千円減少したことによります。固定負債は1,441,958千円となり、前事業年度末に比べ32,161千円増加いたしました。これは主として、社員増加に伴い退職給付引当金が18,089千円増加したことによります。
この結果、負債合計は4,396,719千円となり、前事業年度末に比べ134,928千円減少いたしました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は1,314,046千円となり、前事業年度末に比べ323,695千円増加いたしました。これは四半期純利益332,265千円及び剰余金の配当8,570千円によるものであります。
②経営成績の状況
第8期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、前事業年度に続き新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が強く表れました。2021年4月23日に第3回緊急事態宣言が発出され、措置を実施すべき区域は最大21都道府県にまで拡大し、感染者減少に伴い9月30日に終了しましたが、その後オミクロン株による感染者増加により、まん延防止等重点措置が適用され、対象地域は一時36都道府県に広がり、2022年3月21日に全面解除となりました。一方、10月には新しい資本主義の実現を掲げる岸田内閣が発足し、長期停滞する日本経済問題への取り組みが注目されております。また、2月にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始し、原油や食料の価格高騰が国民生活に及ぼす影響が懸念され、日本国内だけでなく世界経済の見通しは一気に不透明感を増しました。加えて、世界的な半導体不足、資源価格や物流コストの上昇等により、あらゆる産業が影響を受けております。
このような中、当社では前事業年度に続いてテレワーク、Web会議の活用、エンジニアが自宅から直接顧客先へ出動する等の業務体制、検温、消毒、マスク着用等の新型コロナウイルス感染防止対策を推進し、主要顧客である医療機関・福祉施設へのサービス品質を落とすことのないよう努めました。
また、ソリューション事業では、介護保険法改正による需要や新型コロナウイルス感染症拡大防止における医療・福祉サービス提供体制への補助金を活用したIT機器の導入案件が増加し、業績を伸長することができました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高13,886,281千円(前年同期比9.5%増)、営業利益605,681千円(同27.6%増)、経常利益612,539千円(同28.2%増)、当期純利益423,521千円(同78.7%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
なお、「セグメント利益」は、本源的な事業の業績を図るために、本社管理部門の販売費及び一般管理費配賦前の営業損益を示しており、各報告セグメントの全社への貢献を明確化した利益指標であります。
保守サービス事業
事業の主軸であるメディコム保守は、従来PHC株式会社製レセプトコンピュータ及び電子カルテを利用する顧客と当社が、ハード保守契約を締結し、サービス提供の対価として顧客から保守料を受領し、その中から部品管理料をPHC株式会社に支払うという契約形態でした。近年は、ハード保守契約を顧客とPHC株式会社間で締結し、当社は部品管理料を除いたハード保守料をPHC株式会社から受領する、システムサポート契約に順次契約形態を切り替えております(図1)。PHC株式会社は今後保守サービスを受けるにはシステムサポート契約の締結を必須としており、既存顧客はリプレースのタイミングで順次契約形態を変更しております。また、従来契約を締結せず、障害発生の都度対応していた顧客に対しても、今後は契約締結を促進するため、次年度以降も契約件数が増加する一方で、前年度と比較して減収となる傾向が続く見込みです。一方で、2021年4月1日よりPHCメディコム株式会社よりハード保守事業の譲渡を受けた中部エリア及び山口県において、サービスを開始し、対応顧客数が増加したことにより、当事業年度の保守サービス全体としては前事業年度と比較して売上が増加しております。浜松営業所、三重営業所及び山口営業所を新規開設し、間接費が増加したこと等で、セグメント利益が前年同期比で14.3%減となっておりますが、全国規模で体制が強化されたことにより、既存顧客からの保守対象エリア拡大の要請や、ソリューション事業にて設置、展開した機器の保守運用等、新規案件が今後更に増えていくことが期待されます。また、当事業年度は東京都、大阪府、宮城県に加えて、福岡県において医療機器修理業の許可を新たに取得し、対応可能拠点を拡大することにより医療機器修理案件も増加しております。
この結果、売上高4,358,834千円(同8.5%増)、セグメント利益568,242千円(同14.3%減)となりました。
(図1)
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ソリューション事業
当事業年度の各支店における営業活動では、世界的な半導体不足により機器の調達が困難となり案件を受託できないことがありました。一方、本社における活動では、LAN工事及び機器設置案件等を順調に受託できました。また、福祉営業においては、複数年にわたって中小企業の生産性向上の取り組みを支援する「中小企業生産性革命推進事業(ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金)」のうちのひとつであり、生産性の向上に役立つITツールの導入経費の一部を補助する「IT導入補助金2021」のIT導入支援事業者として、ITツールや介護保険制度の改正に伴い需要が増加したソフトウェアの導入支援を始め、補助金交付に係る各種申請等の手続きサポートに取り組みました。また、新型コロナウイルス感染症に関連する補助金を利用した機器の導入支援や厚生労働省が推進するオンライン資格確認導入のための準備作業も順調に受託し、大きく売上を伸ばしました。
この結果、売上高7,331,986千円(同12.0%増)、セグメント利益687,973千円(同43.4%増)となりました。
人材サービス事業
当事業年度中に発出された緊急事態宣言の影響を受け、第2四半期累計期間には首都圏において派遣先企業における業務量が低下し、それに伴い派遣時間が減少しましたが、解除後に徐々に回復傾向が見られました。また、既存派遣先からの増員要請により、当事業年度において派遣者は14名純増し、事業は順調に推移しました。
この結果、売上高2,195,459千円(同3.5%増)、セグメント利益361,757千円(同21.8%増)となりました。
第9期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
当第3四半期累計期間における国内経済は、新型コロナウイルス感染症第8波の拡大はあるものの、行動制限が課されることもなく、全国旅行支援の影響もあり、個人消費が増加傾向にありました。また、水際対策の緩和によりインバウンド需要も増加しております。一方、資源価格上昇や円安により物価上昇が続いております。また、世界的な物価上昇を背景に世界各国で金融引き締め政策が進められており、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。
そのような中、当社では、業績は概ね順調に推移しております。
当第3四半期累計期間の業績は、売上高10,721,499千円、営業利益513,329千円、経常利益520,150千円、四半期純利益332,265千円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
なお、「セグメント利益」は、本源的な事業の業績を図るために、本社管理部門の販売費及び一般管理費配賦前の営業損益を示しており、各報告セグメントの全社への貢献を明確化した利益指標であります。
保守サービス事業
事業の主軸であるメディコム保守は、既存顧客の機器リプレース時に契約形態を当社と顧客がメディコムハード保守契約を直接締結する方式から、顧客とベンダーがハード保守契約を締結し、ベンダーから当社が保守を受託するシステムサポート契約方式への切り替えが進んでいることから、売上実績は減少傾向にあります。一方でこの契約方式になることで、これまで未契約であった顧客との契約締結が促進されていることから、契約件数は増加傾向にあります。
また、前年度ソリューション事業において設置展開した機器の新規保守受託、既存顧客からの保守エリア拡大要請、新規顧客からの保守依頼等により、事業全体は順調に推移しております。
当第3四半期累計期間の業績は、売上高3,394,204千円、セグメント利益540,139千円となりました。
ソリューション事業
ソリューション事業では、インサイドセールスにより営業活動の強化を図り、新規案件の受託件数が増加傾向にあります。また、機器の販売及びキッティング作業案件が引き続き順調に受託できており、業績に大きく貢献しております。
加えて、2022年6月7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」により、保険医療機関・保険薬局においては、2023年4月からオンライン資格確認を導入することが原則として義務付けられ、顔認証付きカードリーダーの設置等体制整備が必要となり、当社にも多くの企業から設置作業の依頼が来ており、事業全体は順調に推移しております。
当第3四半期累計期間の業績は、売上高5,689,501千円、セグメント利益は471,130千円となりました。
人材サービス事業
派遣先における活動量は順調に増加傾向にあり、事業全体は順調に推移しております。
当第3四半期累計期間の業績は、売上高1,637,793千円、セグメント利益は275,474千円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
第8期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ、16,741千円減少し、920,993千円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、978,093千円の増加(前年同期は290,151千円の減少)となりました。これは主として、各種大型案件の期末検収に伴う売上債権の増加額106,215千円(前年同期は874,756千円の増加)等による支出があったものの、税引前当期純利益611,147千円(前年同期は416,299千円の増加)、期末検収大型案件に係る仕入債務の増加額371,788千円(前年同期は283,231千円の増加)等による収入があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、35,430千円の減少(前年同期は173,139千円の減少)となりました。これは、社内基幹ネットワーク機器の入れ替え等に伴う有形固定資産の取得による支出24,621千円(前年同期は48,115千円の支出)、勤怠管理システムの入れ替え等に伴う無形固定資産の取得による支出10,809千円(前年同期は80,332千円の支出)があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、959,404千円の減少(前年同期は227,515千円の増加)となりました。これは主として、短期借入金の返済による支出400,000千円(前年同期は短期借入れによる収入400,000千円)、自己株式の取得による支出386,063千円(前年同期は発生無し)、配当金の支払額159,467千円(前年同期は159,467千円の支払い)等があったことによります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
保守サービス事業(千円)4,358,834108.5
ソリューション事業(千円)7,331,986112.0
人材サービス事業(千円)2,195,459103.5
合計(千円)13,886,281109.5

(注)1.セグメント間の取引については発生しておりません。
2.最近2事業年度及び第9期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
当事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
第9期第3四半期累計期間
(自 2022年4月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
PHC株式会社1,526,91811.91,942,76714.01,528,86714.3
KDDI株式会社1,443,23511.31,454,86810.51,064,1829.9

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りや評価が含まれております。これらの見積りにつきましては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、不確実性を伴うため、実際の結果はこれらとは異なる場合があります。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等に関する分析
イ.経営成績
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
ロ.財政状態
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
ハ.キャッシュ・フローの状況
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金、設備資金等の所要資金につきましては、営業活動で得られた資金を財源としております。大規模なシステム・整備への投資に伴い資金の不足が見込まれる場合には金融機関からの借入による手当を想定しております。また、ソリューション事業の拡大に伴い、大型案件の商品調達に係る資金需要が見込まれますが、こちらについても金融機関からの借入により所要資金の確保を行ってまいります。
また、当社の現金及び現金同等物により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析について
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益を設定し、経営上の目標としております。
売上高は各事業、毎年順調に伸長しております。一方、セグメント利益については、保守サービス事業において2022年3月期は減少しております。これは、中部エリアにおける事業拡大のための支店、営業所の移転と新設に伴い、不動産賃借料等販売費及び一般管理費が増加したことによります。このように保守サービスは新たな体制整備に当たっては、一時的に販売費及び一般管理費が増加するという特徴があります。体制が整った2023年3月期は、利益が再び上昇しております。