有価証券報告書-第112期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/27 14:46
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129項目

研究開発活動

当社グループの当連結会計年度における研究開発費は79億円であり,うち当社の研究開発費は77億円である。研究開発活動は当社の技術研究所等で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。
当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。
(1)防災・BCP関連
①耐震性・施工性に優れた吊り天井「SDクリップレス天井」
従来の吊り天井の構造形式を抜本的に見直し,優れた耐震性と施工性を備えた「SDクリップレス天井」を開発した。天井の耐震性を評価する目安となる天井面で1Gレベルの地震動に対して天井が破損しない事を確認・検証した。
②津波から人命を守る津波避難ビル「フレーム・シェルター」
南海トラフ巨大地震により,津波被害が予想される既存建物の津波避難ビル化を目的に,短工期・ローコストの耐津波改修工法「フレーム・シェルター」の設計手法を確立した。避難場所の確保が困難な既存施設の所有者に対して本工法を提案する。
③超高層集合住宅向け次世代構造「シミズ免制震複合システム」
超高層集合住宅の次世代構造として,建物に作用する地震力を低減する免震機能と建物の振動エネルギーを吸収する制震機能の双方を効果的に組み合わせた「シミズ免制震複合システム」を開発した。
④既存小規模施設向け液状化対策技術「グラベルサポート工法」
屋外受変電設備などの既存小規模施設向けの液状化対策工法「グラベルサポート工法」を開発した。施設・設備の基礎周辺地盤と基礎の簡易改良だけで済むため,対策コストは従来工法の1/5~1/10程度で,対策工事中も既存施設を継続使用できる。
⑤立体自動倉庫の荷崩れを防止する免・制震技術
地震時に立体自動倉庫の荷崩れを低減する免・制震装置を実用化した。新築倉庫向けにはローコスト免震装置を,既存施設向けには自動倉庫の稼働を止めることなく設置できる制振装置をそれぞれ開発した。地震後の顧客のサプライチェーンへの影響を最小限にとどめることができる。
⑥グローバル企業向け立地評価システム「シミズ海外ハザード評価システム」
アジア防災センターやアメリカ航空宇宙局(NASA)をはじめとする11の世界的な研究機関が公開している16種類のデータベースから必要なハザード情報を取得,グーグルアース上に表示する「シミズ海外ハザード評価システム」を開発した。世界中の任意の地点における立地評価を行うことができる。
(2)環境・エネルギー関連
①福島復興・浮体式ウィンドファーム実証研究事業
当社,丸紅㈱,東京大学,三菱商事㈱,三菱重工業㈱,ジャパン マリンユナイテッド㈱,三井造船㈱,新日鐵住金㈱,㈱日立製作所,古河電気工業㈱およびみずほ情報総研㈱からなる「福島洋上風力コンソーシアム」が2012年3月に経済産業省より受託した「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」に関し,2MWダウンウィンド型浮体式洋上風力発電設備1基,66kV浮体式洋上サブステーションおよび海底ケーブルの設置工事を完了し,実証海域である福島県沖約20㎞地点において運転を開始した。
②米国ニューメキシコ州における日米スマートグリッド実証事業
当社,㈱東芝,シャープ㈱,㈱明電舎,東京ガス㈱,三菱重工業㈱,富士電機㈱,古河電気工業㈱,古河電池㈱の9社は,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構から受託した「米国ニューメキシコ州における日米スマートグリッド実証事業」の一環であるアルバカーキ市における商業地域スマートグリッド実証プロジェクトにおいて,太陽光発電の出力変動を吸収し,非常時の自立運転を可能とする低炭素・高品質電力供給システムを有する高機能ビルの実証を行った。
③中部大学スマートグリッド実証(ステップ2)
中部大学と共同で大学施設群を対象にしたスマートグリッド実証(ステップ2)を実施した。実証対象エリアである生命健康科学部の2013年夏季実績として,電力使用量を19.0%,ピーク電力を21.4%削減する効果が得られた。
④日本初のゼロエネルギービル実現への取組み「森の中のオフィス」
山梨県北杜市八ヶ岳南麓に,日本初のゼロエネルギービル「森の中のオフィス」を設計施工した。地域特性・資源を活かした自然エネルギーの積極活用と最先端の創エネルギー環境技術を結集し,CO2排出ゼロを実現した。第23回地球環境大賞国土交通大臣賞を受賞。
⑤ヒートポンプ併設型VOC汚染地下水浄化システム
揚水浄化処理を行った揮発性有機化合物(VOC)汚染地下水の熱エネルギーを空調熱源に用いることで,省エネと汚染物質の除去効率の向上という2つの課題を同時に解決する「ヒートポンプ併設型VOC汚染地下水浄化システム」を開発した。
⑥高活性医薬品の封じ込め性能をリアルタイム評価
製薬設備の薬塵封じ込め性能をオンサイトでリアルタイムに検証できる薬塵飛散量測定システムを開発した。粒径が数μmの薬塵とそれ以外の塵埃を区別し,さらに飛散個数のカウントまでを可能とした。
⑦汚染土壌・地下水浄化工法「バイオバブルクリーン工法」
微細な酸素気泡を含有した栄養剤を地下水中に注入し,原位置で汚染物質を分解・浄化する,「バイオバブルクリーン工法」を北海道内の事業所跡地に初適用し,1年経過時の汚染物質濃度が環境基準値未満であることを確認した。
⑧泥水式シールド工事対応のヒ素汚染土壌浄化技術
首都圏での鉄道・道路整備事業で発生が懸念される,自然由来のヒ素汚染土壌を処理する技術を開発した。泥水式シールド工法において,シールド掘削泥水の地上処理施設に浄化設備を組み込み,汚染土壌の減容化,処理費用の削減を可能とした。
⑨ダンプトラック騒音の音源追跡型騒音低減システム
ダンプトラック通過時に,タイミング良く低音域騒音の逆位相音を発することで,不快な騒音を効果的に低減するシステムを開発した。人間の耳の機能をヒントにした音感センサにより,最大10dBの騒音低減効果が得られる。
⑩建設重機アイドリング監視システム
建設重機のアイドリング防止を目的に,オペレータの環境保全貢献度を見える化するシステムを開発し,所定の性能を確認した。東日本高速道路㈱発注の常磐自動車道山元工事(宮城県亘理郡山元町)で試験適用,所定の性能を確認した。
(3)復興支援関連
①除染作業合理化システム
除染前後の道路表面線量を計測しながら効率よく確実に作業できる「除染作業合理化システム」を古河機械金属㈱と共同で開発した。汚染状態や除染効果をリアルタイムに確認でき,除染効率の飛躍的な向上が期待できる。
②少水量・高効率の除染を実現「S-Jetモバイル」
超高圧水の噴射により,少水量で高効率な除染が可能となるシステム「S-Jetモバイル」を㈱スギノマシンとの共同で開発した。一般民家の土間や駐車場,歩道,小路などの狭隘な場所で行う除染で威力を発揮する。
③リンゴ酸で道路除染を効率化
リンゴ酸と界面活性剤を混合した溶液を道路表面に散布・回収することで,コンクリートで舗装された道路などの表面を脆弱化させて汚染物質の除去効率を高める化学的浄化法を開発,その有効性を確認した。
④体表面放射能汚染検査管理システム
作業員の放射能汚染検査において,個人ID認証に基づいて検査結果を自動記録する「体表面放射能汚染検査管理システム」を開発した。迅速かつ確実な検査体制が構築でき,作業員の放射能汚染に関する安全意識の向上が期待される。
⑤除染除去物入り土嚢袋を非接触で破袋する「ウォータージェット破袋システム」
中間貯蔵施設に搬入される除染除去物入りの大型土嚢袋を超高圧・微水量のウォータージェットにより非接触で効率よく破袋する「ウォータージェット破袋システム」を環テックス㈱,第一カッター興業㈱と共同で開発した。
⑥セシウム汚染土壌の分別システム「パワーグラインドスクリーン」
汚染土壌中に含まれる植物根等の有機物を機械的かつ高精度に分別できるシステム「パワーグラインドスクリーン」を環テックス㈱と共同で開発した。有機物の焼却処理と分別した土壌の洗浄処理により,50%超の減容化が可能になる。
⑦災害廃棄物を99%リサイクルする造粒再生砕石製造技術
災害廃棄物の中から不燃混合物や焼却主灰,残渣から造粒再生砕石を製造する技術を恵和興業㈱と共同で開発した。造粒再生砕石は,路盤材や地盤の嵩上げ用盛土材等として再利用される。
⑧3Dスキャナを用いて建設重機を遠隔操作「3D無人化施工支援システム」
中間貯蔵施設内や福島第一原子力発電所内で想定される無人化施工のコストダウンを目的に,3Dスキャナを用いた「3D無人化施工支援システム」を開発した。従来の無人化施工システムと同等以上の作業性能を維持しつつ,コストを25%程度削減できる。
(4)施工法関連
①タワークレーンの揚重作業効率を見える化「スマートクレーン」
ICTをフル活用した新型タワークレーン「スマートクレーン」をIHI運搬機械㈱,㈱エスシー・マシーナリと共同で開発した。映像情報や各種センサ情報を統合表示することで,揚重作業効率の見える化と工期短縮を図る。
②環境負荷の少ない解体工法「シミズ・クールカット」
環境負荷の少ない解体工法「シミズ・クールカット」を開発した。油圧ショベルのアーム先端で稼働するアタッチメントに,巨大なワイヤソーをはじめ,柱・梁の切断作業の効率化に必要な一切の機能を集約している。
③超高層ビルの解体・改修工事向けアスベスト除去工法「アストリサン」
鉄骨に固着しているアスベストを,簡単に除去できる工法「アストリサン」を開発した。専用ガンを用いて高圧で有機酸を吹き付け,ブロック状に切除するため,アスベストの飛散を防ぎつつ効率的に作業が可能となる。
④外壁タイルの剥離・剥落防止技術「ウェブフォーム工法」
外壁タイル貼りの剥離・剥落を防止する「ウェブフォーム工法」について,㈱大林組,菊水化学工業㈱,日本化成㈱と共同で建設技術審査証明を取得した。本工法によって,従来比5%程度のイニシャルコスト減が見込まれる。
⑤視覚・聴覚の同時訴求で歩行者に注意喚起「指向性音声案内安全看板」
工事現場の工事車輛出入口前を通行する歩行者への注意喚起を目的に,指向性スピーカーと安全看板を一体化した「指向性音声案内安全看板」をヤマハ㈱と共同で開発した。視覚・聴覚に同時訴求するサウンドサイネージにより,長期間にわたり高視認率を維持できる。
⑥超大断面道路ランプ部の構築工法「SR-JP工法」
超大断面道路トンネルの地中拡幅部を非開削構築する「SR-JP工法」の実用化に向け施工性を検証し,道路トンネルの外殻を小口径シールドの複合体「筒状覆工壁」で形成することにより従来よりも巨大な地下構造物の築造を可能にした。
⑦トンネル掘削振動の反射波を利用した探査システム「切羽前方探査システム」
掘削作業に伴う振動を利用し,掘り進む先の地山の状態を把握する「切羽前方探査システム」を開発した。山岳トンネル施工時に発生する掘削振動の特性から,掘削部前方の地山性状が変わる地点を予測することができる。
⑧土木構造物における鉄筋の組立精度確保システム「バーポジション・インジケーター」
3Dレーザープロジェクターを用いてコンクリート構造物の鉄筋組立位置を高精度に表示でき,鉄筋の組立精度を確実・容易に確保できるシステム「バーポジション・インジケーター」を大浦工測㈱と共同で開発した。
⑨高密度配筋部用の高性能細径バイブレータ
土木構造物の高密度配筋部に対するコンクリート充填用に,高性能細径バイブレータを開発した。振動部が業界最小口径の27mmで鉄筋間の間隔が狭い高密度配筋内にも容易に挿入が可能となった。
⑩新たな地盤沈下対策技術「A&S土性改善工法」
軟弱粘性土地盤の新たな地盤沈下対策工法として「A&S土性改善工法」を㈲アサヒテクノと共同で開発した。地下水の吸引・排出と盛土による載荷を組み合わせることで,沈下を促進させ短期間で土性改善が可能となる。
⑪杭自体が斜面崩壊を検知して警報発報「光る斜面崩壊検知センサ杭」
切土等の斜面に生じる変状をリアルタイムに検知し,回転灯で崩壊リスクを知らせる「光る斜面崩壊検知センサ杭」を㈱リプロ,㈱テスコムと共同で開発した。2度以上の傾斜を検知すると回転灯を点灯させる仕組み。