有価証券報告書-第122期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)経営の基本方針
長期的な視点に立った会社経営を基本に、経営の効率化と収益力の向上によって、企業価値をより高めていくことを目標としており、その実現を通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指している。
(2)経営環境及び対処すべき課題
① 経営環境
当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりである。
② 対処すべき課題
ア 当社及び当社社員に対する労働安全衛生法違反による略式命令について
当社が代表者を務める共同企業体で施工中の「中央新幹線第四南巨摩トンネル新設(東工区)ほか」において、2024年10月4日に発生した労働災害に関し、当社社員が所轄の労働基準監督署に事実と異なる説明を行っていたことについて、当社及び当社社員2名が、2026年3月24日付で鰍沢簡易裁判所から、労働安全衛生法違反により、それぞれ罰金20万円の略式命令を受けた。
本事案により、株主をはじめ関係者に多大な迷惑と心配をかけたことについて、深くお詫びするものである。
当社としては、今回の事案の発生を極めて重大かつ深刻なものと受け止め、労働基準監督署の調査に全面的に協力してきた。また、事案の発覚後、直ちに全社員向けに注意喚起を行うなど、再発防止に向けた取組みを講じている。
当社グループでは、引き続き、社員への法令遵守に関する指導の徹底を図っていく。
イ 地政学的情勢の不安定化による影響及び対応について
当社グループの主要事業である建設事業においては、地政学的情勢、とりわけ中東情勢の不安定化が、建設資材価格の上昇や調達環境の変化といった供給面や世界経済の不透明感の高まりを背景とした設備投資の抑制等による建設需要の減退等の需要面において、事業環境に影響を及ぼすリスクが高まっている。
当社グループは、これらのリスクへの対応策として、地政学的情勢や市場動向を適時的確に把握するとともに、早期購買や将来予測を含めた正確な原価管理の徹底、複数のサプライヤーとの関係構築や代替資材の探索に加え、顧客との契約に基づく適切な価格転嫁に関する協議及び社内外の関係者とのリスクコミュニケーションの強化等を通じて、リスクの分散や影響の最小化に取り組んでいく。
また、その他の事業においても、それぞれの事業特性に応じたリスクの抽出と適切な対応により、当社グループの業績への影響を極力回避するよう努めていく。
ウ 大林グループ中期経営計画2022及びその追補に基づく具体的な取組事例
当社グループは、2022年3月に公表した中期経営計画2022及び2024年5月に公表したその追補に基づき、「建設事業の基盤の強化と深化」、「技術とビジネスのイノベーション」及び「持続的成長のための事業ポートフォリオの拡充」の3つの基本戦略を実行し、「事業基盤の強化と変革の実践」に取り組んでいる。
これら3つの基本戦略について、当社グループにおける具体的な取組事例は次に記載のとおりである。
中期経営計画2022の基本戦略

事業基盤の強化と変革の実践

人材確保と育成、サプライチェーンの維持・強化・拡大
近年、国内の建設業では、就業者の高齢化や若年入職者の減少等を背景に、技能労働者不足の問題に直面している。当社では、協力会社の皆様と共に持続的に発展し続ける強固なサプライチェーンの構築を目指し、以下の取組みを行っている。
※ 当社事業への寄与・協力や協力会社の相互研鑽と交流を目的とし、全国約1,200社が加盟する協力会社団体(1906年発足)
革新的な建設生産システムの構築 -ロボティクスコンストラクションの取組み-
国内の建設業においては、技能労働者の不足が進行する中、作業の安全確保や生産性の維持・向上が重要な経営課題となっている。
当社は、サプライチェーンの維持・強化・拡大に加え、デジタル技術とロボティクス技術等のイノベーションによる革新的な建設生産システム「ロボティクスコンストラクション」の構築に取り組んでいる。ロボティクスコンストラクションは「作業の機械化」、「機械操作の省人化」及び「建設プロセスのデジタル化」という3つの要素が融合して実現される。
当社グループは、ロボティクスコンストラクションを通じて建設プロセスの変革を推進し、生産性の向上を図ることで、担い手不足をはじめとする社会課題の解決に取り組むとともに、安全で働きがいのあるウェルビーイングな職場環境を実現し、「地球・社会・人」と当社グループのサステナビリティを同時に追求する。
※1 現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送し、力触覚を再現する技術
※2 「危険作業を未然に防止するクレーン」の実現を目指し、操縦時の安全支援機能、遠隔・自動運転機能及び施工計画・運転シミュレーション機能等を、デジタルツイン技術を活用して統合的に管理制御するシステム
※3 当社とトヨタ自動車㈱未来創生センターが共同開発している、現場作業員の疲労負担軽減や生産性向上、リスク把握を目的とした、3DCGを用いた作業シミュレーション技術(GEN-VIR®はトヨタ自動車㈱の登録商標)
国内建設を中核とし、グローバルに多様な事業を展開するポートフォリオ -米国の建設会社「GCON社」のM&A-
当社グループは、中期経営計画2022において、持続的成長の方向を「国内建設事業を中核とし、それ以外の事業が国内建設と同等以上の業績を創出する」と定め、そのためのグループ事業体制の将来的な構築を目指している。
海外建設事業では、北米、東南アジア、オセアニアなどにおいて、各国・地域に根差したグループ会社を中心に建築・土木事業を展開している。半世紀以上にわたり各国で培ってきた事業基盤を活用し、国内外のグループ各社が技術・人材等の強みを相互に活用することで、グローバル市場における新たな収益機会の獲得に取り組んでいる。
北米においては、主にM&Aを活用して事業領域の拡大を図るビジネスモデルを採用している。これまで当社主導で進めてきたM&Aは、北米事業の全体最適を踏まえつつ、現地に所在するグループ会社が自社の成長戦略に基づいて主体的に取り組む段階へと移行している。
その一例として、当社は、2025年12月、米国で建設事業を行うグループ会社であるウェブコー社を通じて、米国の建設会社「GCON, LLC」及びそのグループ会社2社(以下、3社を総称して「GCON社」という。)の全株式を取得し、同社を連結子会社とした。
米国では、AIの普及による需要拡大を背景に、データセンターや半導体製造施設といった高度な環境管理が要求される施設に係る建設市場が急速に拡大するとともに、今後も成長が見込まれており、特にアリゾナ州をはじめとする南西部地域では旺盛な投資が行われている。
GCON社は、同州をはじめとする米国10州において、半導体製造施設の改修工事や、コロケーター向けデータセンター(※)の建設等の事業を展開しており、同分野において豊富な施工実績と実務経験を有する設備工事の専門人材を多数擁している。
カリフォルニア州において住宅、病院及び教育施設等の豊富な施工実績を有するウェブコー社が、GCON社のM&Aを通じて、高度な環境管理の仕組みを備えた重要施設に係る建設分野への本格参入とアリゾナ州等への事業拡大を図る。これにより当社グループの北米事業における成長戦略実現を目指していく。
※ 複数のユーザーがスペースを共有し、サーバーやネットワーク機器等を設置するデータセンター
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)経営の基本方針
長期的な視点に立った会社経営を基本に、経営の効率化と収益力の向上によって、企業価値をより高めていくことを目標としており、その実現を通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指している。
(2)経営環境及び対処すべき課題
① 経営環境
当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりである。
② 対処すべき課題
ア 当社及び当社社員に対する労働安全衛生法違反による略式命令について
当社が代表者を務める共同企業体で施工中の「中央新幹線第四南巨摩トンネル新設(東工区)ほか」において、2024年10月4日に発生した労働災害に関し、当社社員が所轄の労働基準監督署に事実と異なる説明を行っていたことについて、当社及び当社社員2名が、2026年3月24日付で鰍沢簡易裁判所から、労働安全衛生法違反により、それぞれ罰金20万円の略式命令を受けた。
本事案により、株主をはじめ関係者に多大な迷惑と心配をかけたことについて、深くお詫びするものである。
当社としては、今回の事案の発生を極めて重大かつ深刻なものと受け止め、労働基準監督署の調査に全面的に協力してきた。また、事案の発覚後、直ちに全社員向けに注意喚起を行うなど、再発防止に向けた取組みを講じている。
当社グループでは、引き続き、社員への法令遵守に関する指導の徹底を図っていく。
イ 地政学的情勢の不安定化による影響及び対応について
当社グループの主要事業である建設事業においては、地政学的情勢、とりわけ中東情勢の不安定化が、建設資材価格の上昇や調達環境の変化といった供給面や世界経済の不透明感の高まりを背景とした設備投資の抑制等による建設需要の減退等の需要面において、事業環境に影響を及ぼすリスクが高まっている。
当社グループは、これらのリスクへの対応策として、地政学的情勢や市場動向を適時的確に把握するとともに、早期購買や将来予測を含めた正確な原価管理の徹底、複数のサプライヤーとの関係構築や代替資材の探索に加え、顧客との契約に基づく適切な価格転嫁に関する協議及び社内外の関係者とのリスクコミュニケーションの強化等を通じて、リスクの分散や影響の最小化に取り組んでいく。
また、その他の事業においても、それぞれの事業特性に応じたリスクの抽出と適切な対応により、当社グループの業績への影響を極力回避するよう努めていく。
ウ 大林グループ中期経営計画2022及びその追補に基づく具体的な取組事例
当社グループは、2022年3月に公表した中期経営計画2022及び2024年5月に公表したその追補に基づき、「建設事業の基盤の強化と深化」、「技術とビジネスのイノベーション」及び「持続的成長のための事業ポートフォリオの拡充」の3つの基本戦略を実行し、「事業基盤の強化と変革の実践」に取り組んでいる。
これら3つの基本戦略について、当社グループにおける具体的な取組事例は次に記載のとおりである。
中期経営計画2022の基本戦略

事業基盤の強化と変革の実践

| 基本戦略①建設事業の基盤の強化と深化 |
人材確保と育成、サプライチェーンの維持・強化・拡大
近年、国内の建設業では、就業者の高齢化や若年入職者の減少等を背景に、技能労働者不足の問題に直面している。当社では、協力会社の皆様と共に持続的に発展し続ける強固なサプライチェーンの構築を目指し、以下の取組みを行っている。
| 建設現場における就労環境の改善 | ||
| ・熱中症対策として、施工済みのダクトを活用した仮設空調システム「建設現場"涼人®"プロジェクト」による本設の空調稼働前の屋内作業環境の改善や、酷暑期間における涼しい時間帯への作業集中を目的とした建設現場における作業コアタイム変更の取組みを開始 ・作業員休憩所の環境改善の施策として、男女別専用シャワー室の設置等を含む休憩所の標準仕様のレベルアップや、発注者・当社社員・技能労働者が集う交流スペースの設置推進 | ||
| 技能労働者の採用支援・育成、技能伝承の促進 | ||
| ・大林組林友会(※)と共同し、高校生や専門学校生を対象とした現場見学会等のほか、鉄筋・型枠の組立てや左 官等の様々な工種の作業を体験できる「けんせつ職業体験フェスタ」を開催 ・2014年に大林組林友会教育訓練校を開校し、とび・鉄筋・型枠の3コースで当社及び調達先の社員による指導を通じて施工や安全管理、CAD・BIMなどの知識・技能の習得を促進 ・若年技能労働者が目指すべき理想的な職長である認定基幹職長(2025年度までの累計認定者数5,157人)や、認定優良クレーンオペレーター(同340人)に対し、手当を支給 | ||
| 適正な労務費確保と支払条件の見直し | ||
| ・国の方針に沿った適正な契約金額設定及び法定福利費を含む賃金支払を取引先へ要請 ・2026年4月以降の新規契約で、全協力会社への支払方法を現金払に統一 | ||
発注者・当社社員・技能労働者の交流の場となる作業員休憩所 | けんせつ職業体験フェスタでの塗装体験 | 大林組林友会教育訓練校での仮設足場組立訓練 |
※ 当社事業への寄与・協力や協力会社の相互研鑽と交流を目的とし、全国約1,200社が加盟する協力会社団体(1906年発足)
| 基本戦略②技術とビジネスのイノベーション |
革新的な建設生産システムの構築 -ロボティクスコンストラクションの取組み-
国内の建設業においては、技能労働者の不足が進行する中、作業の安全確保や生産性の維持・向上が重要な経営課題となっている。
当社は、サプライチェーンの維持・強化・拡大に加え、デジタル技術とロボティクス技術等のイノベーションによる革新的な建設生産システム「ロボティクスコンストラクション」の構築に取り組んでいる。ロボティクスコンストラクションは「作業の機械化」、「機械操作の省人化」及び「建設プロセスのデジタル化」という3つの要素が融合して実現される。
当社グループは、ロボティクスコンストラクションを通じて建設プロセスの変革を推進し、生産性の向上を図ることで、担い手不足をはじめとする社会課題の解決に取り組むとともに、安全で働きがいのあるウェルビーイングな職場環境を実現し、「地球・社会・人」と当社グループのサステナビリティを同時に追求する。
| 作業の機械化 | |
| 建設現場において、これまで人が行ってきた危険作業や単純作業、苦渋作業を機械に置き換える。人は高度な技術を必要とする作業や、より創造性の高い業務に専念することにより、安全性と生産性の向上に加え、働きがいのある職場づくりを実現し、建設業の新たな魅力を創出する。 | リアルハプティクス®(※1)を応用し、切羽直下での火薬装填作業を無人化 |
| 機械操作の省人化(遠隔、自動・自律化) | |
| クレーンや重機を含む機械の遠隔操作と自動・自律化による無人化を実現し、省人化やコスト削減を図るとともに、重機災害の低減や働く人のウェルビーイングを実現する。 さらに、熟練オペレーターの操作をデータ化し、操縦支援や作業の自動・自律化に活用することで、技能の伝承と多様な人材の参画を促進する。 | ORCISM®(※2)によるデジタルツインを活用したクレーンの遠隔・自動運転 |
| 建設プロセスのデジタル化 | |
| 建設現場の人・物・作業の情報をデータ化し、現実の建設現場とそれを再現したデジタル空間を構築する。設計から施工計画、施工管理、完成後の維持管理を含めて一気通貫で活用し、施工の安全や品質、生産性の管理まで多岐にわたる業務を効率化する。 | GEN-VIR®(※3)を用いたシミュレーションによるリスクの見える化 |
※1 現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送し、力触覚を再現する技術
※2 「危険作業を未然に防止するクレーン」の実現を目指し、操縦時の安全支援機能、遠隔・自動運転機能及び施工計画・運転シミュレーション機能等を、デジタルツイン技術を活用して統合的に管理制御するシステム
※3 当社とトヨタ自動車㈱未来創生センターが共同開発している、現場作業員の疲労負担軽減や生産性向上、リスク把握を目的とした、3DCGを用いた作業シミュレーション技術(GEN-VIR®はトヨタ自動車㈱の登録商標)
| 基本戦略③持続的成長のための事業ポートフォリオの拡充 |
国内建設を中核とし、グローバルに多様な事業を展開するポートフォリオ -米国の建設会社「GCON社」のM&A-
当社グループは、中期経営計画2022において、持続的成長の方向を「国内建設事業を中核とし、それ以外の事業が国内建設と同等以上の業績を創出する」と定め、そのためのグループ事業体制の将来的な構築を目指している。
海外建設事業では、北米、東南アジア、オセアニアなどにおいて、各国・地域に根差したグループ会社を中心に建築・土木事業を展開している。半世紀以上にわたり各国で培ってきた事業基盤を活用し、国内外のグループ各社が技術・人材等の強みを相互に活用することで、グローバル市場における新たな収益機会の獲得に取り組んでいる。
北米においては、主にM&Aを活用して事業領域の拡大を図るビジネスモデルを採用している。これまで当社主導で進めてきたM&Aは、北米事業の全体最適を踏まえつつ、現地に所在するグループ会社が自社の成長戦略に基づいて主体的に取り組む段階へと移行している。
その一例として、当社は、2025年12月、米国で建設事業を行うグループ会社であるウェブコー社を通じて、米国の建設会社「GCON, LLC」及びそのグループ会社2社(以下、3社を総称して「GCON社」という。)の全株式を取得し、同社を連結子会社とした。
米国では、AIの普及による需要拡大を背景に、データセンターや半導体製造施設といった高度な環境管理が要求される施設に係る建設市場が急速に拡大するとともに、今後も成長が見込まれており、特にアリゾナ州をはじめとする南西部地域では旺盛な投資が行われている。
GCON社は、同州をはじめとする米国10州において、半導体製造施設の改修工事や、コロケーター向けデータセンター(※)の建設等の事業を展開しており、同分野において豊富な施工実績と実務経験を有する設備工事の専門人材を多数擁している。
カリフォルニア州において住宅、病院及び教育施設等の豊富な施工実績を有するウェブコー社が、GCON社のM&Aを通じて、高度な環境管理の仕組みを備えた重要施設に係る建設分野への本格参入とアリゾナ州等への事業拡大を図る。これにより当社グループの北米事業における成長戦略実現を目指していく。
GCON社がアリゾナ州で施工するデータセンター | ![]() |
※ 複数のユーザーがスペースを共有し、サーバーやネットワーク機器等を設置するデータセンター
発注者・当社社員・技能労働者の
けんせつ職業体験フェスタでの
大林組林友会教育訓練校での
リアルハプティクス®(※1)を応用し、切羽直下での火薬装填作業を無人化
ORCISM®(※2)によるデジタルツインを
GEN-VIR®(※3)を用いたシミュレーション
GCON社がアリゾナ州で施工するデータセンター