有価証券報告書-第89期(2025/04/01-2026/03/31)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、米国の通商政策や中東情勢の緊迫化に伴う物価上昇の影響を一部受けたものの、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が継続するなか、個人消費は持ち直しの動きがみられ、設備投資もソフトウェア投資を中心に底堅さを保つなど、景気は緩やかな回復基調を辿った。
建設業界においては、住宅投資は弱含みながらも、緩やかな改善傾向となった。民間企業の建設投資は、米国の通商政策等により先行きの不透明感が意識されたものの、企業収益の改善を背景にしたDX・GX関連投資やサプライチェーン強靱化などの設備投資を中心に、引き続き高い水準を維持した。また、公共投資も関連予算の執行により堅調に推移し、総じて良好な受注環境が持続した。
このような経営環境のもと、当社グループは、2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」の2年目として、①建設事業の強化、②周辺事業の加速、③経営基盤の充実を基本方針に掲げ、グループ一丸となって持続的成長への挑戦を続けてきた。
この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a 財政状態
・資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ136億円(前期比2.9%)減少し、4,489億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ194億円(同5.5%)減少し、3,379億円となった。工事債権の回収が進んだことに加え、債権流動化等により受取手形・完成工事未収入金等が238億円減少している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ58億円(同5.6%)増加し、1,109億円となった。子会社における工場などの建設の進捗等により、建設仮勘定が54億円増加している。
・負債
負債は、前連結会計年度末に比べ196億円(同7.0%)減少し、2,610億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ216億円(同9.4%)減少し、2,077億円となった。支払手形・工事未払金等が239億円減少している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ20億円(同3.9%)増加し、533億円となった。社債85億円を計上している。
・純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ60億円(同3.3%)増加し、1,878億円となった。利益剰余金は、配当により90億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益200億円の計上等により105億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント向上し、41.8%となっている。
b 経営成績
・売上高(完成工事高)
売上高は、一部子会社において、手持ち工事の減少や前期の大型工事進捗の反動もあり、前連結会計年度に比べ108億円(2.2%)減少し、4,876億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
・売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益は、建築事業の売上総利益率(完成工事総利益率)の改善等により、前連結会計年度に比べ149億円(39.0%)増加し、532億円となった。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、社員の処遇改善に伴う人件費の増加や本社ビル拡張に伴う賃借料の増加等により、前連結会計年度に比べ21億円(8.9%)増加し、261億円となった。
・営業利益
営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ127億円(89.5%)増加し、270億円となった。
・営業外損益
営業外収益は、円安による外貨建て資産の換算差益の計上や受取利息及び受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ6億円増加し、20億円となった。
営業外費用は、有利子負債の期中平均残高の増加等に伴う支払利息の増加及び投資事業組合運用損の増加等により、前連結会計年度に比べ7億円増加し、21億円となった。
・経常利益
これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ126億円(87.7%)増加し、270億円となった。
・特別損益
特別利益は、投資有価証券売却益など42億円を計上した。
特別損失は、減損損失7億円や訴訟関連損失4億円など合計13億円を計上した。
・法人税等
法人税、住民税及び事業税97億円、評価性引当額の増加により法人税等調整額1億円を計上した。
・親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ107億円(114.5%)増加し、200億円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
a 土木事業
受注高は、前連結会計年度比1.4%増の1,125億円であった。
売上高は、同10.3%増の1,159億円、営業利益は、同12.8%減の60億円となった。
b 建築事業
受注高は、前連結会計年度比24.1%減の2,036億円であった。
売上高は、同3.8%減の2,571億円、営業利益は、同133億円増の141億円となった。
c 子会社
売上高は、前連結会計年度比7.0%減の1,263億円、営業利益は、同9.4%増の70億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、250億円のプラス(前連結会計年度は82億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、64億円のマイナス(前連結会計年度は119億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、52億円のマイナス(前連結会計年度は164億円のマイナス)となった。
為替換算等による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ145億円(29.0%)増加し、646億円となった。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき外貨建工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
b 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
c 完成工事高
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。
第88期
第89期
2 第88期及び第89期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
d 次期繰越工事高(2026年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
当社グループの売上高については、単体は前連結会計年度と同水準を維持したものの子会社群が減少したため前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回った。
利益については、売上高は減少したものの、建築事業における受注時粗利益の向上や不採算工事の影響減少等に伴う利益率の改善等により、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回る結果となった。
自己資本比率は、仕入債務の減少等により総資産が減少したことに加え、利益剰余金の増加等により自己資本が増加したため、41.8%と前連結会計年度と比べ2.5ポイント向上した。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度を上回ったため、10.9%と前連結会計年度と比べ5.7ポイント向上した。
受注高は、建築事業の民間分野が大幅に減少したこと等により前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回った。
b セグメントごとの経営成績の分析
・土木事業
受注高は、随意契約による大型工事の受注や設計変更の獲得等により、前連結会計年度比1.4%増の1,125億円となった。
売上高は、設計変更の獲得に伴う出来高の増加等により、同10.3%増の1,159億円となった。営業利益は、前連結会計年度における高採算工事の反動により、同12.8%減の60億円となった。
・建築事業
受注高は、施工体制を鑑みた計画的受注抑制や建設コストの上昇を起因とした工事発注時期の期ずれ等により、同24.1%減の2,036億円となった。
売上高は、前連結会計年度の大型工事進捗の反動及び当連結会計年度の受注高の減少等により、同3.8%減の2,571億円となった。営業利益は、コロナ禍において受注した不採算工事の影響が減少し、受注時採算の改善した工事が順調に進捗したこと等により、同133億円増の141億円となった。
・子会社
売上高は、ケーアンドイー株式会社における期首繰越工事高の減少や華熊営造股份有限公司における前連結会計年度の大型工事進捗の反動等により、同7.0%減の1,263億円となった。営業利益は、株式会社ガイアートにおいて利益率の改善が進んだこと等により、同9.4%増の70億円となった。
c 中期経営計画の達成状況
『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する達成状況は次のとおりである。
基本方針1:建設事業の強化
■国内土木事業
・インフラ大更新分野
高速道路の大規模リニューアルやトンネル・橋梁の補修工事を重点領域として取組みを進めている。BIM/CIMの活用を促進し、設計・施工の効率化を進めている。老朽化インフラの長寿命化ニーズを的確に捉え、安定的な受注を維持している。
・再生可能エネルギー分野
陸上風力発電においては、北陸エリアで1件のプロジェクトが進行しており、今後同エリアで新たな案件の着工も予定している。事業の拡大に合わせ、2026年度には「陸上風力エネルギー部」を新設し、事業の推進体制を強化していく。
水力発電では、施設の老朽化に伴う改修需要に対応するため、ダムや導水路トンネル、発電所などのリニューアル工事に取り組んでいる。
・防災・減災、国土強靱化分野
激甚化する自然災害に対して、ダムの再開発や無人化施工技術を用いた迅速な復旧・整備を行っている。AIによる自動施工やリモート技術を現場へ導入することで安全性と効率性を両立させ、強靱な国土づくりを支える施工実績を積み上げている。
・資源循環分野
2026年に「エコ・ファーストの約束」を更新し、サーキュラーエコノミーへの移行を加速。WWFジャパン等の外部機関とも連携し、環境負荷低減を経営の核に捉えている。
■国内建築事業
・環境配慮型建築分野
建築物の設計・施工・運用各段階での環境負荷を最小限に抑える提案を積極的に進めている。グリーン鋼材等の低炭素建材の使用、再生可能エネルギーの利用、廃棄物の削減、引渡後のエネルギー効率の向上等に取り組んでいる。
・各種プラント分野
生活基盤インフラである焼却場・火葬場等のプラントに加えて、輸出基準に適合した食肉処理施設の増設も予定している。これまで培った施工実績やノウハウを活かし社会インフラ整備に取り組んでいる。
・中大規模木造建築分野
当社の技術である「環境配慮型λ-WOODⅡ® 1.5時間・CLT 1~2時間耐火床」を採用した木造と鉄骨造のハイブリッド構造のオフィスビル「KiGi AKIHABARA」等をはじめ、中大規模木造建築は、市場から高い評価を得ており、受注を牽引する成長分野となっている。
・市街地再開発分野
都心及び地方都市において、再開発事業の施工や事業参画の実績を着実に積み上げている。これまでの知見を活かし、変化する都市ニーズを的確に捉え、取組みを進めている。
・データセンター分野
AI普及による成長が顕著な分野であることから継続した受注があり、施工を進めている。
■海外建設事業
・東南アジアにおけるインフラ整備分野
ジャカルタ下水道整備事業は、普及率向上を担う重要案件として工期の半分以上が経過した。激しい交通渋滞や地下埋設物といった厳しい制約下で、高度な推進技術を活かし進捗している。若手技術者も現場に加わり、施工ノウハウを次世代へ継承しながら地域の生活基盤向上に貢献している。
・ベトナムにおける商業施設分野
人口ボーナスと経済成長により購買意欲が旺盛なベトナムでは、ハノイ近郊の商業施設プロジェクトを推進中であり、2026年度中のオープンに向け施工を進めている。環境認証「LOTUS」等の取得も目指し、付加価値の高い建設に取り組んでいる。
・台湾における建築事業分野
設立50周年を迎えた華熊営造股份有限公司では、台北駅前の超高層ツインタワー等のランドマーク案件や高級住宅の施工を通じ、現地での強力なブランド力と信頼を背景に海外収益基盤を築いている。
基本方針2:周辺事業の加速
■不動産開発事業
・地域創生プロジェクト
福井県勝山市におけるかつやま恐竜の森(長尾山総合公園)再整備・管理運営事業(Park-PFI事業)は2025年4月よりホテル棟新築工事が着工した。2027年秋のホテル開業を目指して施工中である。
・飯田橋プロジェクト
下宮比町地区では、2027年度中の都市計画決定に向け、権利者から同意書を取得している。取得率は、行政機関の認可に必要とされる一般的な基準を満たしており、多くの権利者より賛同をいただいている。
・海外不動産ファンド投資
住友林業株式会社の100%子会社が運用する「米国不動産開発私募ファンド」※に参画している。Beach Park、14th street、Tuner Lake、River Districtの計4案件が進行し、建設の着実な進捗やリーシング(賃貸募集)の開始等、順調に推移している。成長性の高いサンベルトエリアを中心に、安定した収益基盤の構築と環境価値の提供を両立し、海外事業の持続的な成長を牽引している。
※有力都市圏で環境配慮型の賃貸集合住宅を開発・運用するESG配慮型商品
■再生可能エネルギー事業
・保有SEP船を活用した洋上風力発電事業
当社が共同保有している大型SEPの改造も進んでおり、2027年夏季には日本へ曳航予定である。国内の着床式洋上風力の建設工事参入を目指すとともに、次世代技術である浮体式洋上風力についても技術開発を進めている。
・小水力発電
2026年度中に第一弾の事業化を目指し、地元関係者の協力のもと、当社としては初となる小水力発電の検討を進めている。小水力発電は燃料調達が不要であり、長期間、安定的な運転が可能である。今後近接した複数の発電所を建設することで運営を効率化し、収益の拡大を図る。
・バイオマス発電
東京電力ホールディングス株式会社、株式会社神鋼環境ソリューション、東京パワーテクノロジー株式会社、当社の4社で飯舘バイオパートナーズ株式会社を設立している。2024年9月、同社が福島県相馬郡飯舘村に建設した飯舘みらい発電所(出力7.5MW)が営業運転を開始した。飯舘村等のバーク(樹皮)と間伐材を燃料とすることで福島復興につながる里山再生・林業振興も促進している。
■技術商品事業
・脱炭素バイオマス燃料の製造・販売事業
2023年より脱炭素バイオマス燃料「ブラックバークペレット(BBP)」の製造・販売事業に着手している。2025年2月には、BBP製造拠点となる「西条ペレット工場」が着工した。2026年6月から試運転を経て同年10月より製造、販売の開始を予定している。
・コッター式継手の販売事業
当社と株式会社ガイアートを含む4社で開発したコッター式継手は、2025年度までの累計26,000組を外販し、着実に実績を伸ばしている。さらに、品質管理アプリやプレキャスト壁高欄等の関連技術の外販にも、継続して取り組んでいる。
■新事業創出・その他事業
・再エネ電源供給&EMSパッケージ事業
再エネ電源の自社開発については継続的に取組みを進めている。なかでも、2026年度は、小売電気事業としてのライセンス取得と小規模であるが太陽光発電所の建設を進める。また、再エネ由来の電源供給とPPA・蓄電池等の活用による電力事業では、2025年2月に太陽光発電オンサイトPPA事業が稼働し、順調に電力販売事業を進めている。
・PPP/PFI事業
2025年度の実績については落札1件(狭山市ふれあい健康センター)、着工1件(新岡山給食センター)、供用開始1件(周南地区衛生施設組合新斎場)となった。今後は供用開始後も含めた事業全体の管理運営や資金調達も含めた代表企業としての取組み、当社だけでなくケーアンドイー株式会社や株式会社ガイアートを含めた熊谷組グループとしての取組みを強化する。
・道路トンネルMOM事業
現在、香港において4件の道路トンネルのMOM(Management,Operation and Maintenance)事業を行っており、今後さらに東南アジアにおけるインフラ維持管理業務の拡大を目指していく。
基本方針3:経営基盤の充実
■DX
・DX人財マネジメント
当社は、全社員のIT・DX知識向上とツール活用スキル向上を目的として2025年度からは「デジタルに関する最低限の知識を習得し、自らの業務においてデジタルサービスを活用できる人財」すなわちデジタル利活用人財の育成として、グループ会社を含む全役職員に、資格「ITパスポート」の取得を推奨している。教材等学習環境の整備にも注力し、2028年度の取得率目標を90%以上としている。また、DXサポーター人財の育成について、グループ会社を含めて推進している。サポーター人財を増やすことで、デジタル化の定着や業務改善支援を加速させていく。
・DX情報基盤の構築
当社グループは、中長期的な企業価値向上の根幹として、社内のあらゆる情報を統合・活用する戦略的インフラ「KDP(Kumagaigumi Digital Platform)」の構築を推進している。
建設業界の課題である熟練者の技術継承に対し、KDPは現場の暗黙知を、人事・安全・財務等の経営情報と融合させ、組織の形式知へと変換する。2025年度には新基幹システム「建設WAO」の導入を実施し、情報の自動収集と蓄積の仕組みが強固なものとなったことにより、データに基づく迅速な意思決定を可能にすべく取組みを進めている。
2026年度のKDPの計画は安全と人事の領域でAI活用の実効性を検証している。過去の事故要因分析による災害発生の未然防止や対話型AIを用いた適材適所の人財マッチングを通じ、現場の安全性向上と組織的な生産性向上を計画している。
d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益299億円の計上等により、250億円のプラス(前連結会計年度は82億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社である住友林業株式や政策保有株式の売却を進めた一方、設備投資や米国及びベトナムにおける不動産事業への投資等により、64億円のマイナス(前連結会計年度は119億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行等があった一方、配当金の支払いや自己株式の取得等により、52億円のマイナス(前連結会計年度は164億円のマイナス)となった。
為替換算等による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ145億円増加し、646億円となった。
b 資本の財源及び資金の流動性
・資本政策の基本方針
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は646億円保有しており、自己資本比率も41.8%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に大きな懸念はない。
短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は、自己資金、金融機関からの長期借入及び社債の発行を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は162.7%、固定長期適合率は46.0%と高い安全性を保っている。
・資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び従業員の処遇改善等により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている基本方針に基づき、周辺事業における確固たる収益源創出のための400億円規模の投資のほか、90億円規模の設備投資を計画している。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は497億円となっている。


・株主還元
2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」では、適正かつ安定的に利益還元していくことを基本方針とし、連結配当性向40%目途を財務目標に掲げている。また、事業環境の変化や各事業戦略・投資の進捗に応じて、自己株式の取得を含め機動的に追加還元を検討する方針である。

・資金調達
当社グループは、資金調達の手段として金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー及び社債の発行等を活用している。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は289億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高0円)である。
安定的な資金調達手段を確保しており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。
また、成長投資等の資金需要への対応にあたり、今後は財務規律を維持しつつ、資金調達手段の多様化を進めることなどにより調達コストの削減に努めていく。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、米国の通商政策や中東情勢の緊迫化に伴う物価上昇の影響を一部受けたものの、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が継続するなか、個人消費は持ち直しの動きがみられ、設備投資もソフトウェア投資を中心に底堅さを保つなど、景気は緩やかな回復基調を辿った。
建設業界においては、住宅投資は弱含みながらも、緩やかな改善傾向となった。民間企業の建設投資は、米国の通商政策等により先行きの不透明感が意識されたものの、企業収益の改善を背景にしたDX・GX関連投資やサプライチェーン強靱化などの設備投資を中心に、引き続き高い水準を維持した。また、公共投資も関連予算の執行により堅調に推移し、総じて良好な受注環境が持続した。
このような経営環境のもと、当社グループは、2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」の2年目として、①建設事業の強化、②周辺事業の加速、③経営基盤の充実を基本方針に掲げ、グループ一丸となって持続的成長への挑戦を続けてきた。
この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a 財政状態
・資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ136億円(前期比2.9%)減少し、4,489億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ194億円(同5.5%)減少し、3,379億円となった。工事債権の回収が進んだことに加え、債権流動化等により受取手形・完成工事未収入金等が238億円減少している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ58億円(同5.6%)増加し、1,109億円となった。子会社における工場などの建設の進捗等により、建設仮勘定が54億円増加している。
・負債
負債は、前連結会計年度末に比べ196億円(同7.0%)減少し、2,610億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ216億円(同9.4%)減少し、2,077億円となった。支払手形・工事未払金等が239億円減少している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ20億円(同3.9%)増加し、533億円となった。社債85億円を計上している。
・純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ60億円(同3.3%)増加し、1,878億円となった。利益剰余金は、配当により90億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益200億円の計上等により105億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント向上し、41.8%となっている。
b 経営成績
・売上高(完成工事高)
売上高は、一部子会社において、手持ち工事の減少や前期の大型工事進捗の反動もあり、前連結会計年度に比べ108億円(2.2%)減少し、4,876億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
・売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益は、建築事業の売上総利益率(完成工事総利益率)の改善等により、前連結会計年度に比べ149億円(39.0%)増加し、532億円となった。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、社員の処遇改善に伴う人件費の増加や本社ビル拡張に伴う賃借料の増加等により、前連結会計年度に比べ21億円(8.9%)増加し、261億円となった。
・営業利益
営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ127億円(89.5%)増加し、270億円となった。
・営業外損益
営業外収益は、円安による外貨建て資産の換算差益の計上や受取利息及び受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ6億円増加し、20億円となった。
営業外費用は、有利子負債の期中平均残高の増加等に伴う支払利息の増加及び投資事業組合運用損の増加等により、前連結会計年度に比べ7億円増加し、21億円となった。
・経常利益
これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ126億円(87.7%)増加し、270億円となった。
・特別損益
特別利益は、投資有価証券売却益など42億円を計上した。
特別損失は、減損損失7億円や訴訟関連損失4億円など合計13億円を計上した。
・法人税等
法人税、住民税及び事業税97億円、評価性引当額の増加により法人税等調整額1億円を計上した。
・親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ107億円(114.5%)増加し、200億円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
a 土木事業
受注高は、前連結会計年度比1.4%増の1,125億円であった。
売上高は、同10.3%増の1,159億円、営業利益は、同12.8%減の60億円となった。
b 建築事業
受注高は、前連結会計年度比24.1%減の2,036億円であった。
売上高は、同3.8%減の2,571億円、営業利益は、同133億円増の141億円となった。
c 子会社
売上高は、前連結会計年度比7.0%減の1,263億円、営業利益は、同9.4%増の70億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、250億円のプラス(前連結会計年度は82億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、64億円のマイナス(前連結会計年度は119億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、52億円のマイナス(前連結会計年度は164億円のマイナス)となった。
為替換算等による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ145億円(29.0%)増加し、646億円となった。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
| 期別 | 区分 | 前期繰越 工事高 (百万円) | 当期受注 工事高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期完成 工事高 (百万円) | 次期繰越 工事高 (百万円) |
| 第88期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 土木工事 | 201,270 | 110,971 | 312,242 | 105,107 | (207,134) 206,822 |
| 建築工事 | 381,142 | 268,392 | 649,535 | 267,186 | (382,349) 382,084 | |
| 計 | 582,413 | 379,364 | 961,778 | 372,294 | (589,484) 588,907 | |
| 第89期 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 土木工事 | 206,822 | 112,527 | 319,350 | 115,978 | (203,371) 203,538 |
| 建築工事 | 382,084 | 203,668 | 585,753 | 257,106 | (328,646) 328,778 | |
| 計 | 588,907 | 316,196 | 905,103 | 373,085 | (532,018) 532,317 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき外貨建工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
b 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
| 期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) |
| 第88期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 土木工事 | 28.7 | 71.3 | 100 |
| 建築工事 | 48.6 | 51.4 | 100 | |
| 第89期 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 土木工事 | 34.8 | 65.2 | 100 |
| 建築工事 | 48.6 | 51.4 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
c 完成工事高
| 期別 | 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 合計 (百万円) |
| 第88期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 土木工事 | 62,947 | 42,160 | 105,107 |
| 建築工事 | 30,725 | 236,460 | 267,186 | |
| 計 | 93,672 | 278,621 | 372,294 | |
| 第89期 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 土木工事 | 75,672 | 40,306 | 115,978 |
| 建築工事 | 34,542 | 222,564 | 257,106 | |
| 計 | 110,214 | 262,870 | 373,085 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。
第88期
| 農林水産省 | 信濃川左岸流域農業水利事業 1号幹線用水路1号トンネル建設工事 |
| 国土交通省 | 一般国道452号 芦別市 鏡トンネル工事 |
| 三井不動産株式会社 | (仮称)安城市大東町商業施設計画新築工事 |
| 西新宿五丁目中央南地区市街地再開発組合 | 西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業 施設建築物等新築工事 |
| アパホーム株式会社・アパマンション株式会社 | (仮称)アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉新築工事 |
第89期
| 旭化成株式会社 | 水ヶ崎発電所土木設備更新工事 |
| 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 | 九州新幹線(西九州)、17k5・44k2間線路諸設備他 |
| 三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 | (仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-4街区) |
| JX金属株式会社 | ひたちなか C2 棟建屋建設工事 |
| 茨木3ロジスティック特定目的会社 | GLP ALFALINK茨木3プロジェクト |
2 第88期及び第89期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
d 次期繰越工事高(2026年3月31日現在)
| 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 合計 (百万円) |
| 土木工事 | 81,211 | 122,327 | 203,538 |
| 建築工事 | 33,089 | 295,689 | 328,778 |
| 計 | 114,301 | 418,016 | 532,317 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。
| 東日本高速道路株式会社 | 東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事 |
| 中日本高速道路株式会社 | 東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事 |
| 東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社・第一生命保険株式会社 | (仮称)北仲通北地区B-1地区計画新築工事 |
| 三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 | (仮称)幕張新都心若葉住宅計画(B-6街区)新築工事 |
| 三井不動産レジデンシャル株式会社 | 柏の葉キャンパス149街区計画(A棟) |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
当社グループの売上高については、単体は前連結会計年度と同水準を維持したものの子会社群が減少したため前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回った。
利益については、売上高は減少したものの、建築事業における受注時粗利益の向上や不採算工事の影響減少等に伴う利益率の改善等により、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回る結果となった。
自己資本比率は、仕入債務の減少等により総資産が減少したことに加え、利益剰余金の増加等により自己資本が増加したため、41.8%と前連結会計年度と比べ2.5ポイント向上した。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度を上回ったため、10.9%と前連結会計年度と比べ5.7ポイント向上した。
受注高は、建築事業の民間分野が大幅に減少したこと等により前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回った。
b セグメントごとの経営成績の分析
・土木事業
受注高は、随意契約による大型工事の受注や設計変更の獲得等により、前連結会計年度比1.4%増の1,125億円となった。
売上高は、設計変更の獲得に伴う出来高の増加等により、同10.3%増の1,159億円となった。営業利益は、前連結会計年度における高採算工事の反動により、同12.8%減の60億円となった。
・建築事業
受注高は、施工体制を鑑みた計画的受注抑制や建設コストの上昇を起因とした工事発注時期の期ずれ等により、同24.1%減の2,036億円となった。
売上高は、前連結会計年度の大型工事進捗の反動及び当連結会計年度の受注高の減少等により、同3.8%減の2,571億円となった。営業利益は、コロナ禍において受注した不採算工事の影響が減少し、受注時採算の改善した工事が順調に進捗したこと等により、同133億円増の141億円となった。
・子会社
売上高は、ケーアンドイー株式会社における期首繰越工事高の減少や華熊営造股份有限公司における前連結会計年度の大型工事進捗の反動等により、同7.0%減の1,263億円となった。営業利益は、株式会社ガイアートにおいて利益率の改善が進んだこと等により、同9.4%増の70億円となった。
c 中期経営計画の達成状況
『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する達成状況は次のとおりである。
| 指標 | 2026年度(計画値) | 2025年度(実績値) | 差異 |
| 連結売上高 (百万円) | 500,000 | 487,698 | △12,301 |
| 連結経常利益 (百万円) | 30,000 | 27,049 | △2,950 |
| ROE (%) | 10.0 | 10.9 | 0.9 |
| 自己資本比率 (%) | 45.0 | 41.8 | △3.2 |
| 配当性向 (%) | 40.0 | 40.2 | 0.2 |
基本方針1:建設事業の強化
■国内土木事業
・インフラ大更新分野
高速道路の大規模リニューアルやトンネル・橋梁の補修工事を重点領域として取組みを進めている。BIM/CIMの活用を促進し、設計・施工の効率化を進めている。老朽化インフラの長寿命化ニーズを的確に捉え、安定的な受注を維持している。
・再生可能エネルギー分野
陸上風力発電においては、北陸エリアで1件のプロジェクトが進行しており、今後同エリアで新たな案件の着工も予定している。事業の拡大に合わせ、2026年度には「陸上風力エネルギー部」を新設し、事業の推進体制を強化していく。
水力発電では、施設の老朽化に伴う改修需要に対応するため、ダムや導水路トンネル、発電所などのリニューアル工事に取り組んでいる。
・防災・減災、国土強靱化分野
激甚化する自然災害に対して、ダムの再開発や無人化施工技術を用いた迅速な復旧・整備を行っている。AIによる自動施工やリモート技術を現場へ導入することで安全性と効率性を両立させ、強靱な国土づくりを支える施工実績を積み上げている。
・資源循環分野
2026年に「エコ・ファーストの約束」を更新し、サーキュラーエコノミーへの移行を加速。WWFジャパン等の外部機関とも連携し、環境負荷低減を経営の核に捉えている。
■国内建築事業
・環境配慮型建築分野
建築物の設計・施工・運用各段階での環境負荷を最小限に抑える提案を積極的に進めている。グリーン鋼材等の低炭素建材の使用、再生可能エネルギーの利用、廃棄物の削減、引渡後のエネルギー効率の向上等に取り組んでいる。
・各種プラント分野
生活基盤インフラである焼却場・火葬場等のプラントに加えて、輸出基準に適合した食肉処理施設の増設も予定している。これまで培った施工実績やノウハウを活かし社会インフラ整備に取り組んでいる。
・中大規模木造建築分野
当社の技術である「環境配慮型λ-WOODⅡ® 1.5時間・CLT 1~2時間耐火床」を採用した木造と鉄骨造のハイブリッド構造のオフィスビル「KiGi AKIHABARA」等をはじめ、中大規模木造建築は、市場から高い評価を得ており、受注を牽引する成長分野となっている。
・市街地再開発分野
都心及び地方都市において、再開発事業の施工や事業参画の実績を着実に積み上げている。これまでの知見を活かし、変化する都市ニーズを的確に捉え、取組みを進めている。
・データセンター分野
AI普及による成長が顕著な分野であることから継続した受注があり、施工を進めている。
■海外建設事業
・東南アジアにおけるインフラ整備分野
ジャカルタ下水道整備事業は、普及率向上を担う重要案件として工期の半分以上が経過した。激しい交通渋滞や地下埋設物といった厳しい制約下で、高度な推進技術を活かし進捗している。若手技術者も現場に加わり、施工ノウハウを次世代へ継承しながら地域の生活基盤向上に貢献している。
・ベトナムにおける商業施設分野
人口ボーナスと経済成長により購買意欲が旺盛なベトナムでは、ハノイ近郊の商業施設プロジェクトを推進中であり、2026年度中のオープンに向け施工を進めている。環境認証「LOTUS」等の取得も目指し、付加価値の高い建設に取り組んでいる。
・台湾における建築事業分野
設立50周年を迎えた華熊営造股份有限公司では、台北駅前の超高層ツインタワー等のランドマーク案件や高級住宅の施工を通じ、現地での強力なブランド力と信頼を背景に海外収益基盤を築いている。
基本方針2:周辺事業の加速
■不動産開発事業
・地域創生プロジェクト
福井県勝山市におけるかつやま恐竜の森(長尾山総合公園)再整備・管理運営事業(Park-PFI事業)は2025年4月よりホテル棟新築工事が着工した。2027年秋のホテル開業を目指して施工中である。
・飯田橋プロジェクト
下宮比町地区では、2027年度中の都市計画決定に向け、権利者から同意書を取得している。取得率は、行政機関の認可に必要とされる一般的な基準を満たしており、多くの権利者より賛同をいただいている。
・海外不動産ファンド投資
住友林業株式会社の100%子会社が運用する「米国不動産開発私募ファンド」※に参画している。Beach Park、14th street、Tuner Lake、River Districtの計4案件が進行し、建設の着実な進捗やリーシング(賃貸募集)の開始等、順調に推移している。成長性の高いサンベルトエリアを中心に、安定した収益基盤の構築と環境価値の提供を両立し、海外事業の持続的な成長を牽引している。
※有力都市圏で環境配慮型の賃貸集合住宅を開発・運用するESG配慮型商品
■再生可能エネルギー事業
・保有SEP船を活用した洋上風力発電事業
当社が共同保有している大型SEPの改造も進んでおり、2027年夏季には日本へ曳航予定である。国内の着床式洋上風力の建設工事参入を目指すとともに、次世代技術である浮体式洋上風力についても技術開発を進めている。
・小水力発電
2026年度中に第一弾の事業化を目指し、地元関係者の協力のもと、当社としては初となる小水力発電の検討を進めている。小水力発電は燃料調達が不要であり、長期間、安定的な運転が可能である。今後近接した複数の発電所を建設することで運営を効率化し、収益の拡大を図る。
・バイオマス発電
東京電力ホールディングス株式会社、株式会社神鋼環境ソリューション、東京パワーテクノロジー株式会社、当社の4社で飯舘バイオパートナーズ株式会社を設立している。2024年9月、同社が福島県相馬郡飯舘村に建設した飯舘みらい発電所(出力7.5MW)が営業運転を開始した。飯舘村等のバーク(樹皮)と間伐材を燃料とすることで福島復興につながる里山再生・林業振興も促進している。
■技術商品事業
・脱炭素バイオマス燃料の製造・販売事業
2023年より脱炭素バイオマス燃料「ブラックバークペレット(BBP)」の製造・販売事業に着手している。2025年2月には、BBP製造拠点となる「西条ペレット工場」が着工した。2026年6月から試運転を経て同年10月より製造、販売の開始を予定している。
・コッター式継手の販売事業
当社と株式会社ガイアートを含む4社で開発したコッター式継手は、2025年度までの累計26,000組を外販し、着実に実績を伸ばしている。さらに、品質管理アプリやプレキャスト壁高欄等の関連技術の外販にも、継続して取り組んでいる。
■新事業創出・その他事業
・再エネ電源供給&EMSパッケージ事業
再エネ電源の自社開発については継続的に取組みを進めている。なかでも、2026年度は、小売電気事業としてのライセンス取得と小規模であるが太陽光発電所の建設を進める。また、再エネ由来の電源供給とPPA・蓄電池等の活用による電力事業では、2025年2月に太陽光発電オンサイトPPA事業が稼働し、順調に電力販売事業を進めている。
・PPP/PFI事業
2025年度の実績については落札1件(狭山市ふれあい健康センター)、着工1件(新岡山給食センター)、供用開始1件(周南地区衛生施設組合新斎場)となった。今後は供用開始後も含めた事業全体の管理運営や資金調達も含めた代表企業としての取組み、当社だけでなくケーアンドイー株式会社や株式会社ガイアートを含めた熊谷組グループとしての取組みを強化する。
・道路トンネルMOM事業
現在、香港において4件の道路トンネルのMOM(Management,Operation and Maintenance)事業を行っており、今後さらに東南アジアにおけるインフラ維持管理業務の拡大を目指していく。
基本方針3:経営基盤の充実
■DX
・DX人財マネジメント
当社は、全社員のIT・DX知識向上とツール活用スキル向上を目的として2025年度からは「デジタルに関する最低限の知識を習得し、自らの業務においてデジタルサービスを活用できる人財」すなわちデジタル利活用人財の育成として、グループ会社を含む全役職員に、資格「ITパスポート」の取得を推奨している。教材等学習環境の整備にも注力し、2028年度の取得率目標を90%以上としている。また、DXサポーター人財の育成について、グループ会社を含めて推進している。サポーター人財を増やすことで、デジタル化の定着や業務改善支援を加速させていく。
・DX情報基盤の構築
当社グループは、中長期的な企業価値向上の根幹として、社内のあらゆる情報を統合・活用する戦略的インフラ「KDP(Kumagaigumi Digital Platform)」の構築を推進している。
建設業界の課題である熟練者の技術継承に対し、KDPは現場の暗黙知を、人事・安全・財務等の経営情報と融合させ、組織の形式知へと変換する。2025年度には新基幹システム「建設WAO」の導入を実施し、情報の自動収集と蓄積の仕組みが強固なものとなったことにより、データに基づく迅速な意思決定を可能にすべく取組みを進めている。
2026年度のKDPの計画は安全と人事の領域でAI活用の実効性を検証している。過去の事故要因分析による災害発生の未然防止や対話型AIを用いた適材適所の人財マッチングを通じ、現場の安全性向上と組織的な生産性向上を計画している。
d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益299億円の計上等により、250億円のプラス(前連結会計年度は82億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社である住友林業株式や政策保有株式の売却を進めた一方、設備投資や米国及びベトナムにおける不動産事業への投資等により、64億円のマイナス(前連結会計年度は119億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行等があった一方、配当金の支払いや自己株式の取得等により、52億円のマイナス(前連結会計年度は164億円のマイナス)となった。
為替換算等による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ145億円増加し、646億円となった。
b 資本の財源及び資金の流動性
・資本政策の基本方針
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は646億円保有しており、自己資本比率も41.8%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に大きな懸念はない。
短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は、自己資金、金融機関からの長期借入及び社債の発行を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は162.7%、固定長期適合率は46.0%と高い安全性を保っている。
・資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び従業員の処遇改善等により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている基本方針に基づき、周辺事業における確固たる収益源創出のための400億円規模の投資のほか、90億円規模の設備投資を計画している。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は497億円となっている。


・株主還元
2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」では、適正かつ安定的に利益還元していくことを基本方針とし、連結配当性向40%目途を財務目標に掲げている。また、事業環境の変化や各事業戦略・投資の進捗に応じて、自己株式の取得を含め機動的に追加還元を検討する方針である。

・資金調達
当社グループは、資金調達の手段として金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー及び社債の発行等を活用している。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は289億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高0円)である。
安定的な資金調達手段を確保しており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。
また、成長投資等の資金需要への対応にあたり、今後は財務規律を維持しつつ、資金調達手段の多様化を進めることなどにより調達コストの削減に努めていく。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。