有価証券報告書-第83期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、海外経済の減速の影響を受けつつも好調な企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調を持続していた。しかしながら、年明けから新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し始めた影響により個人消費が急激に落ち込み、売上の減少や生産活動の停滞から企業収益が一転して悪化するなど、景気は年度末にかけて混沌とした状況となった。
建設業界においては、住宅建設は弱い動きが続き、企業の建設投資も前年度の消費税増税前の駆け込み需要による反動減となったが、公共投資は底堅く推移し、豊富な手持工事を背景に工事出来高は増加基調が継続するなど、総じて事業環境は良好な状況にあった。
当社グループはこのような状況のもと、『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、さらなる成長に向けて挑戦してきた。
この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a 財政状態
・資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ211億円(6.0%)増加し、3,748億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ227億円(7.9%)増加し、3,106億円となった。売上高の増加に伴い受取手形・完成工事未収入金等が149億円、未収消費税の計上等により未収入金が141億円増加している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ15億円(2.4%)減少し、641億円となった。保有株式の時価下落等により投資有価証券が15億円減少している。
・負債
負債は、前連結会計年度末に比べ79億円(3.6%)増加し、2,268億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ104億円(5.5%)増加し、2,015億円となった。独占禁止法関連損失引当金及び偶発損失引当金が支払いに伴う取崩し等により減少した一方、預り消費税の増加等により預り金が100億円、支払手形・工事未払金等及び電子記録債務といった仕入債務が60億円増加している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ24億円(8.9%)減少し、252億円となった。長期借入金が16億円減少している。
・純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ131億円(9.7%)増加し、1,480億円となった。利益剰余金が、剰余金の配当により46億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益194億円の計上等により147億円増加している。
なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.4ポイント向上し、39.5%となった。
b 経営成績
・売上高(完成工事高)
売上高は、期首繰越工事高の増加等により、前連結会計年度に比べ470億円(12.1%)増加し、4,361億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
・売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益は、売上総利益率(完成工事総利益率)の低下により、前連結会計年度に比べ3千万円(0.1%)減少し、454億円となった。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、処遇見直しによる人件費の増加等により、前連結会計年度に比べ9億円(5.2%)増加し、200億円となった。
・営業利益
営業利益は、主に販売費及び一般管理費の増加により、前連結会計年度に比べ10億円(3.9%)減少し、254億円となった。
・営業外損益
営業外収益は、持分法による投資利益の増加等により、前連結会計年度に比べ7千万円増加し、7億円となった。
営業外費用は、シンジケートローン手数料の減少等により、前連結会計年度に比べ1億円減少し、4億円となった。
・経常利益
経常利益は、営業利益の減少により、前連結会計年度に比べ8億円(3.1%)減少し、257億円となった。
・特別損益
特別利益は、独占禁止法関連損失引当金戻入額13億円及び会員権売却益7億円など合計20億円を計上した。
特別損失は、2014年に当社の施工不良が判明した横浜市西区所在のマンションに関する追加費用として偶発損失引当金繰入額2億円、投資有価証券評価損1億円など合計7億円を計上した。
・法人税等
法人税、住民税及び事業税61億円、繰延税金資産の回収可能性の見直し等により法人税等調整額14億円を計上した。
・親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ61億円(46.1%)増加し、194億円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
a 土木事業
受注高は、前連結会計年度比40.7%減の923億円であった。
売上高は、同9.5%増の1,222億円、営業利益は、同11.6%減の76億円となった。
b 建築事業
受注高は、前連結会計年度比22.0%減の2,325億円であった。
売上高は、同17.7%増の2,299億円、営業利益は、同1.4%増の126億円となった。
c 子会社
売上高は、前連結会計年度比1.1%増の986億円、営業利益は、同3.3%減の51億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、3億円のプラス(前連結会計年度は123億円のマイナス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、22億円のマイナス(前連結会計年度は73億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、53億円のマイナス(前連結会計年度は61億円のマイナス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ72億円(8.8%)減少し、751億円となった。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
b 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
c 完成工事高
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。
第82期
第83期
2 第82期及び第83期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
d 次期繰越工事高(2020年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
当社グループの売上高については、一部の工事に資材納入の遅れや専門工事業者の配置難等の影響はあったものの、期首繰越工事高が増加しているなかで出来高が堅調に推移したことにより前連結会計年度の実績、計画値をともに上回った。当社においては、前事業年度は16期ぶりに売上高が3,000億円を上回ったが、当事業年度はさらに大きく上回る結果となった。
利益については、手持工事の採算性改善が期待したほど進まず、加えて工事原価が大きく悪化する工事が土木・建築ともに複数件発生したことにもあり、営業利益、経常利益ともに前連結会計年度実績、計画値を下回った。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、前連結会計年度に計上した株式会社ガイアートの課徴金納付命令に伴う引当のうち13億円の戻し入れがあったことから、前連結会計年度比で46%の大幅増となった。
親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げにより、自己資本比率は39.5%、ROEは13.7%となり、配当性向は1株当たり配当額が前連結会計年度から20円増配したことで28.8%となった。これによりROEは中期経営計画の指標の目標値を上回り、配当性向も前連結会計年度35.0%、当連結会計年度28.8%とほぼ計画値の水準を維持している。
受注は、前連結会計年度に大型案件を受注した反動減や目標案件の発注が翌期に繰り越されたこと等により土木・建築ともに前連結会計年度を下回る結果となった。
新型コロナウイルス感染症の影響について、当連結会計年度における金額的影響の算定は困難であるが、感染症拡大により追加設計変更交渉が進展せず工事価格を上積みできなかったなどの事象があったものの、当連結会計年度の業績への影響は限定的である。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「2 事業のリスク」に記載のとおりである。
b セグメントごとの経営成績の分析
・土木事業
受注高は、前連結会計年度に鉄道分野で大型工事を受注したことによる反動や発注が翌期に繰り越された案件があったことなどにより、前連結会計年度比40.7%減の923億円となった。
売上高は、期首繰越工事高が増加していたことにより同9.5%増の1,222億円となったが、営業利益は、低採算・不採算案件の発生による売上総利益率の低下に伴う売上総利益の減少、処遇改善等に伴う販売費及び一般管理費の増加により、同11.6%減の76億円となった。
・建築事業
受注高は、小売業のEコマース化により増大傾向にある倉庫・流通施設が受注高を牽引したものの、前連結会計年度における消費税増税前の駆け込み需要の反動により、前連結会計年度比22.0%減の2,325億円となった。
売上高は、期首繰越工事高が増加していたことにより同17.7%増の2,299億円となり、営業利益は、低採算・不採算案件の発生等により売上総利益率は低下したものの、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、同1.4%増の126億円となった。
・子会社
売上高は、株式会社ガイアートにおいて期首繰越工事高及び受注高の増加により売上高が増加し、全体として同1.1%増の986億円となり、営業利益は、売上総利益率の低下により、同3.3%減の51億円となった。
c 中期経営計画の達成・進捗状況
『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』で掲げた指標の計画値と実績値との比較及び経営戦略の進捗状況は次のとおりである。
(注) 連結営業利益の計画値は投資利益・受取配当金を含む。
戦略①:建設工事請負事業の維持拡大
豊富に積み上がった期首手持工事を順調に消化していったことから、連結売上高は計画値を達成することができた。一方、利益については、オリンピック関連需要の一巡等により受注環境・価格競争が徐々に厳しくなってきており、また、一部で資材の納入の遅れが工程を圧迫したケースもあり、期首の想定よりも利益の上積みが叶わず、計画値を達成することができなかった。建設工事請負事業の維持拡大の具体的取組みとして、土木事業ではCIM、IoT、無人化施工技術等のICTツールの活用が進み、トンネル、シールド、ダムの主要3工種では現場へAIを導入した。建築事業では需要拡大傾向である大型物流施設への営業展開や需要拡大傾向にある都心でのミッドサイズオフィスの実績づくり、ICT技術、施工BIMの活用による生産性向上に取り組んでいる。
戦略②:新たな事業の創出
再生可能エネルギー事業分野では、事業主体として太陽光発電事業を開始することができたほか、引き続き、住友林業株式会社との協業による木質バイオマス発電事業への参画について検討を進めている。都市再生・再開発事業分野について、本社ビルが立地する飯田橋駅東口地区では地域住民による勉強会・協議会が発足するなど再開発事業の機運が高まっており、行政サイドは再開発エリアの基盤整備ビジョン策定に向けて動きはじめていることから、当社も地権者としてまちづくりに積極的に関与し、事業参画に向けた取組みは順調に進捗している。また、いわき駅並木通り地区第一種市街地再開発事業の業務代行者としての事業参画が確定した。
戦略③:他社との戦略的連携
海外事業分野では、住友林業株式会社とシンガポールに合弁会社を設立し、インドネシアで高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業に着手した。また、連結子会社である台湾現地法人の華熊営造股份有限公司が子会社(華熊建設股份有限公司)を設立し、地元デベロッパーとの協働で不動産開発事業に乗り出すなど、アジア地域における不動産開発事業への参画の動きが加速している。
総じて中期経営計画2年目は、数値目標について連結営業利益は計画値を下回ったものの、収益源の多様化に向けた新事業創出の動きについては計画策定時の想定より遅れ気味ではあるが、着実に進捗している状況である。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益270億円を計上したものの、売上債権の増加及び法人税等の支払いなどにより、3億円のプラス(前連結会計年度は123億円のマイナス)に留まった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新等及び関係会社株式の取得等により、22億円のマイナス(前連結会計年度は73億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、53億円のマイナス(前連結会計年度は61億円のマイナス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ72億円(8.8%)減少し、751億円となった。
b 資本の財源及び資金の流動性
・資本政策の基本方針
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は751億円保有しており、自己資本比率も39.5%と一定水準を保っていることから、現状では新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しても財務健全性に懸念はない。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は154.1%、固定長期適合率は37.0%と高い安全性を保っている。
・資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。売上高の増加及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。
成長投資を目的とした資金需要は、『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』に掲げている国内/海外アライアンス事業、国内/海外不動産事業、再生可能エネルギー事業等に係る設備投資が中心である。持続的成長と企業価値向上を目指し今後も投資を加速していく方針である。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は122億円となっている。
・株主還元
株主還元政策については、安定配当の方針のもと、連結配当性向30%を目標値としている。
なお、自己株式の取得及び消却については住友林業株式会社と業務・資本提携契約を締結していることから慎重に検討する方針である。

・資金調達
当社グループは、金融機関からの借入を主な資金調達の手段としており、長期借入を中心に必要資金を調達している。なお、資金調達のより一層の安定化と金融費用の圧縮を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、当連結会計年度末の契約総額は70億円である。
また、運転資金の効率的な調達を行うため貸出コミットメント契約を締結しており、当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高0億円)である。
安定的な資金調達手段を確保できており、新型コロナウイルス感染症の影響を含めた突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、独占禁止法関連損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、工事進行基準による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに及ぼす重要な影響はないとしているが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、工事中断や資機材の納入遅れに伴う工程遅延や対策コストの増大などにより、工事進行基準による収益認識に影響を及ぼす可能性がある。
なお、当連結会計年度における工事進行基準による売上高は371,352百万円であり、連結財務諸表に与える影響は極めて大きい。そのため、当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により生じる影響を以下に記した。
工事収益総額に係る見積り
工事収益総額に係る見積りにあたっては、工事契約の追加設計変更について、いまだ契約を締結する前であっても契約締結に至る可能性が高いと判断される場合、当該未契約の金額を加算して工事収益総額を算出している。未契約の金額は、工事内容の施工指示が明記された着手指示書、変更指示書、特記仕様書、議事録等に基づき見積っている。そのため、例えば未契約の金額が過大に計上されていた場合、売上高が過大に計上される。
工事原価総額に係る見積り
工事原価総額の見積りにあたっては、工事契約内容の個別性が強いことから、全ての工事契約に適用可能な画一的な判断尺度を得られにくく、工事契約内容に関する専門的知識及び実務経験が必要となる。したがって工事原価総額の見積りは、工事契約の原価管理及び進捗管理に責任を有する者によって行われているが、その判断には不確実性が伴う。そのため、例えば工事原価総額が過小に計上されていた場合、売上高が過大に計上される。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、海外経済の減速の影響を受けつつも好調な企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調を持続していた。しかしながら、年明けから新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し始めた影響により個人消費が急激に落ち込み、売上の減少や生産活動の停滞から企業収益が一転して悪化するなど、景気は年度末にかけて混沌とした状況となった。
建設業界においては、住宅建設は弱い動きが続き、企業の建設投資も前年度の消費税増税前の駆け込み需要による反動減となったが、公共投資は底堅く推移し、豊富な手持工事を背景に工事出来高は増加基調が継続するなど、総じて事業環境は良好な状況にあった。
当社グループはこのような状況のもと、『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、さらなる成長に向けて挑戦してきた。
この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a 財政状態
・資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ211億円(6.0%)増加し、3,748億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ227億円(7.9%)増加し、3,106億円となった。売上高の増加に伴い受取手形・完成工事未収入金等が149億円、未収消費税の計上等により未収入金が141億円増加している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ15億円(2.4%)減少し、641億円となった。保有株式の時価下落等により投資有価証券が15億円減少している。
・負債
負債は、前連結会計年度末に比べ79億円(3.6%)増加し、2,268億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ104億円(5.5%)増加し、2,015億円となった。独占禁止法関連損失引当金及び偶発損失引当金が支払いに伴う取崩し等により減少した一方、預り消費税の増加等により預り金が100億円、支払手形・工事未払金等及び電子記録債務といった仕入債務が60億円増加している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ24億円(8.9%)減少し、252億円となった。長期借入金が16億円減少している。
・純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ131億円(9.7%)増加し、1,480億円となった。利益剰余金が、剰余金の配当により46億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益194億円の計上等により147億円増加している。
なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.4ポイント向上し、39.5%となった。
b 経営成績
・売上高(完成工事高)
売上高は、期首繰越工事高の増加等により、前連結会計年度に比べ470億円(12.1%)増加し、4,361億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
・売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益は、売上総利益率(完成工事総利益率)の低下により、前連結会計年度に比べ3千万円(0.1%)減少し、454億円となった。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、処遇見直しによる人件費の増加等により、前連結会計年度に比べ9億円(5.2%)増加し、200億円となった。
・営業利益
営業利益は、主に販売費及び一般管理費の増加により、前連結会計年度に比べ10億円(3.9%)減少し、254億円となった。
・営業外損益
営業外収益は、持分法による投資利益の増加等により、前連結会計年度に比べ7千万円増加し、7億円となった。
営業外費用は、シンジケートローン手数料の減少等により、前連結会計年度に比べ1億円減少し、4億円となった。
・経常利益
経常利益は、営業利益の減少により、前連結会計年度に比べ8億円(3.1%)減少し、257億円となった。
・特別損益
特別利益は、独占禁止法関連損失引当金戻入額13億円及び会員権売却益7億円など合計20億円を計上した。
特別損失は、2014年に当社の施工不良が判明した横浜市西区所在のマンションに関する追加費用として偶発損失引当金繰入額2億円、投資有価証券評価損1億円など合計7億円を計上した。
・法人税等
法人税、住民税及び事業税61億円、繰延税金資産の回収可能性の見直し等により法人税等調整額14億円を計上した。
・親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ61億円(46.1%)増加し、194億円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
a 土木事業
受注高は、前連結会計年度比40.7%減の923億円であった。
売上高は、同9.5%増の1,222億円、営業利益は、同11.6%減の76億円となった。
b 建築事業
受注高は、前連結会計年度比22.0%減の2,325億円であった。
売上高は、同17.7%増の2,299億円、営業利益は、同1.4%増の126億円となった。
c 子会社
売上高は、前連結会計年度比1.1%増の986億円、営業利益は、同3.3%減の51億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、3億円のプラス(前連結会計年度は123億円のマイナス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、22億円のマイナス(前連結会計年度は73億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、53億円のマイナス(前連結会計年度は61億円のマイナス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ72億円(8.8%)減少し、751億円となった。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
| 期別 | 区分 | 前期繰越 工事高 (百万円) | 当期受注 工事高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期完成 工事高 (百万円) | 次期繰越 工事高 (百万円) |
| 第82期 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 土木工事 | 174,257 | 155,751 | 330,009 | 111,657 | (218,351) 218,351 |
| 建築工事 | 249,211 | 298,255 | 547,467 | 195,432 | (352,034) 352,041 | |
| 計 | 423,469 | 454,007 | 877,476 | 307,090 | (570,385) 570,393 | |
| 第83期 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 218,351 | 92,371 | 310,723 | 122,236 | (188,487) 188,487 |
| 建築工事 | 352,041 | 232,587 | 584,629 | 229,988 | (354,640) 354,626 | |
| 計 | 570,393 | 324,959 | 895,353 | 352,224 | (543,128) 543,113 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
b 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
| 期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) |
| 第82期 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 土木工事 | 24.4 | 75.6 | 100 |
| 建築工事 | 19.0 | 81.0 | 100 | |
| 第83期 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 32.6 | 67.4 | 100 |
| 建築工事 | 23.7 | 76.3 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
c 完成工事高
| 期別 | 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 合計 (百万円) |
| 第82期 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 土木工事 | 62,520 | 49,137 | 111,657 |
| 建築工事 | 24,497 | 170,935 | 195,432 | |
| 計 | 87,017 | 220,073 | 307,090 | |
| 第83期 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 75,722 | 46,513 | 122,236 |
| 建築工事 | 25,015 | 204,973 | 229,988 | |
| 計 | 100,737 | 251,487 | 352,224 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。
第82期
| 東日本高速道路株式会社 | 東北中央自動車道 やまがたざおうトンネル工事 |
| 中日本高速道路株式会社 | 中部横断自動車道 高山工事 |
| RW久喜特定目的会社 | (仮称)レッドウッド久喜ディストリビューションセンター新築工事 |
| 三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 | (仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B7街区) |
| アイデン株式会社 | (仮称)サカエ理研工業株式会社 伊勢崎工場 新築工事 |
第83期
| 東日本高速道路株式会社 | 東京外かく環状道路 大泉ジャンクション立坑工事 |
| 国土交通省 | 阿蘇大橋地区斜面対策工事 |
| 豊洲6丁目4-1B開発特定目的会社 | (仮称)Dタワー豊洲新築工事 |
| 嘉新琉球COLLECTIVE株式会社 | (仮称)CHC那覇ホテル新築工事 |
| アパマンション株式会社 | (仮称)アパホテル&リゾート<御堂筋本町駅タワー>新築工事 |
2 第82期及び第83期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
d 次期繰越工事高(2020年3月31日現在)
| 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 合計 (百万円) |
| 土木工事 | 55,948 | 132,538 | 188,487 |
| 建築工事 | 44,268 | 310,357 | 354,626 |
| 計 | 100,217 | 442,896 | 543,113 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。
| 東日本高速道路株式会社 | 東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事 |
| 環境省 | 平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事 |
| 三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 | (仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-2街区) |
| 医療法人沖縄徳洲会 | 湘南鎌倉総合病院外傷・救命救急センター先端医療センター増築工事 |
| 独立行政法人国立病院機構仙台医療センター | 独立行政法人国立病院機構仙台医療センター建替等整備工事(建築) |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
当社グループの売上高については、一部の工事に資材納入の遅れや専門工事業者の配置難等の影響はあったものの、期首繰越工事高が増加しているなかで出来高が堅調に推移したことにより前連結会計年度の実績、計画値をともに上回った。当社においては、前事業年度は16期ぶりに売上高が3,000億円を上回ったが、当事業年度はさらに大きく上回る結果となった。
利益については、手持工事の採算性改善が期待したほど進まず、加えて工事原価が大きく悪化する工事が土木・建築ともに複数件発生したことにもあり、営業利益、経常利益ともに前連結会計年度実績、計画値を下回った。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、前連結会計年度に計上した株式会社ガイアートの課徴金納付命令に伴う引当のうち13億円の戻し入れがあったことから、前連結会計年度比で46%の大幅増となった。
親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げにより、自己資本比率は39.5%、ROEは13.7%となり、配当性向は1株当たり配当額が前連結会計年度から20円増配したことで28.8%となった。これによりROEは中期経営計画の指標の目標値を上回り、配当性向も前連結会計年度35.0%、当連結会計年度28.8%とほぼ計画値の水準を維持している。
受注は、前連結会計年度に大型案件を受注した反動減や目標案件の発注が翌期に繰り越されたこと等により土木・建築ともに前連結会計年度を下回る結果となった。
新型コロナウイルス感染症の影響について、当連結会計年度における金額的影響の算定は困難であるが、感染症拡大により追加設計変更交渉が進展せず工事価格を上積みできなかったなどの事象があったものの、当連結会計年度の業績への影響は限定的である。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「2 事業のリスク」に記載のとおりである。
b セグメントごとの経営成績の分析
・土木事業
受注高は、前連結会計年度に鉄道分野で大型工事を受注したことによる反動や発注が翌期に繰り越された案件があったことなどにより、前連結会計年度比40.7%減の923億円となった。
売上高は、期首繰越工事高が増加していたことにより同9.5%増の1,222億円となったが、営業利益は、低採算・不採算案件の発生による売上総利益率の低下に伴う売上総利益の減少、処遇改善等に伴う販売費及び一般管理費の増加により、同11.6%減の76億円となった。
・建築事業
受注高は、小売業のEコマース化により増大傾向にある倉庫・流通施設が受注高を牽引したものの、前連結会計年度における消費税増税前の駆け込み需要の反動により、前連結会計年度比22.0%減の2,325億円となった。
売上高は、期首繰越工事高が増加していたことにより同17.7%増の2,299億円となり、営業利益は、低採算・不採算案件の発生等により売上総利益率は低下したものの、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、同1.4%増の126億円となった。
・子会社
売上高は、株式会社ガイアートにおいて期首繰越工事高及び受注高の増加により売上高が増加し、全体として同1.1%増の986億円となり、営業利益は、売上総利益率の低下により、同3.3%減の51億円となった。
c 中期経営計画の達成・進捗状況
『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』で掲げた指標の計画値と実績値との比較及び経営戦略の進捗状況は次のとおりである。
| 指標 | 2019年度(計画値) | 2019年度(実績) | 差異 |
| 連結売上高 (百万円) | 420,000 | 436,151 | 16,151 |
| 連結営業利益 (百万円) | 26,000 | 25,440 | △559 |
| ROE (%) | 12.0 | 13.7 | 1.7 |
| 配当性向 (%) | 30.0 | 28.8 | △1.2 |
(注) 連結営業利益の計画値は投資利益・受取配当金を含む。
戦略①:建設工事請負事業の維持拡大
豊富に積み上がった期首手持工事を順調に消化していったことから、連結売上高は計画値を達成することができた。一方、利益については、オリンピック関連需要の一巡等により受注環境・価格競争が徐々に厳しくなってきており、また、一部で資材の納入の遅れが工程を圧迫したケースもあり、期首の想定よりも利益の上積みが叶わず、計画値を達成することができなかった。建設工事請負事業の維持拡大の具体的取組みとして、土木事業ではCIM、IoT、無人化施工技術等のICTツールの活用が進み、トンネル、シールド、ダムの主要3工種では現場へAIを導入した。建築事業では需要拡大傾向である大型物流施設への営業展開や需要拡大傾向にある都心でのミッドサイズオフィスの実績づくり、ICT技術、施工BIMの活用による生産性向上に取り組んでいる。
戦略②:新たな事業の創出
再生可能エネルギー事業分野では、事業主体として太陽光発電事業を開始することができたほか、引き続き、住友林業株式会社との協業による木質バイオマス発電事業への参画について検討を進めている。都市再生・再開発事業分野について、本社ビルが立地する飯田橋駅東口地区では地域住民による勉強会・協議会が発足するなど再開発事業の機運が高まっており、行政サイドは再開発エリアの基盤整備ビジョン策定に向けて動きはじめていることから、当社も地権者としてまちづくりに積極的に関与し、事業参画に向けた取組みは順調に進捗している。また、いわき駅並木通り地区第一種市街地再開発事業の業務代行者としての事業参画が確定した。
戦略③:他社との戦略的連携
海外事業分野では、住友林業株式会社とシンガポールに合弁会社を設立し、インドネシアで高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業に着手した。また、連結子会社である台湾現地法人の華熊営造股份有限公司が子会社(華熊建設股份有限公司)を設立し、地元デベロッパーとの協働で不動産開発事業に乗り出すなど、アジア地域における不動産開発事業への参画の動きが加速している。
総じて中期経営計画2年目は、数値目標について連結営業利益は計画値を下回ったものの、収益源の多様化に向けた新事業創出の動きについては計画策定時の想定より遅れ気味ではあるが、着実に進捗している状況である。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益270億円を計上したものの、売上債権の増加及び法人税等の支払いなどにより、3億円のプラス(前連結会計年度は123億円のマイナス)に留まった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新等及び関係会社株式の取得等により、22億円のマイナス(前連結会計年度は73億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、53億円のマイナス(前連結会計年度は61億円のマイナス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ72億円(8.8%)減少し、751億円となった。
b 資本の財源及び資金の流動性
・資本政策の基本方針
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は751億円保有しており、自己資本比率も39.5%と一定水準を保っていることから、現状では新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しても財務健全性に懸念はない。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は154.1%、固定長期適合率は37.0%と高い安全性を保っている。
・資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。売上高の増加及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。
成長投資を目的とした資金需要は、『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』に掲げている国内/海外アライアンス事業、国内/海外不動産事業、再生可能エネルギー事業等に係る設備投資が中心である。持続的成長と企業価値向上を目指し今後も投資を加速していく方針である。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は122億円となっている。
![]() | ![]() |
・株主還元
株主還元政策については、安定配当の方針のもと、連結配当性向30%を目標値としている。
なお、自己株式の取得及び消却については住友林業株式会社と業務・資本提携契約を締結していることから慎重に検討する方針である。

・資金調達
当社グループは、金融機関からの借入を主な資金調達の手段としており、長期借入を中心に必要資金を調達している。なお、資金調達のより一層の安定化と金融費用の圧縮を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、当連結会計年度末の契約総額は70億円である。
また、運転資金の効率的な調達を行うため貸出コミットメント契約を締結しており、当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高0億円)である。
安定的な資金調達手段を確保できており、新型コロナウイルス感染症の影響を含めた突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、独占禁止法関連損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、工事進行基準による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに及ぼす重要な影響はないとしているが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、工事中断や資機材の納入遅れに伴う工程遅延や対策コストの増大などにより、工事進行基準による収益認識に影響を及ぼす可能性がある。
なお、当連結会計年度における工事進行基準による売上高は371,352百万円であり、連結財務諸表に与える影響は極めて大きい。そのため、当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により生じる影響を以下に記した。
工事収益総額に係る見積り
工事収益総額に係る見積りにあたっては、工事契約の追加設計変更について、いまだ契約を締結する前であっても契約締結に至る可能性が高いと判断される場合、当該未契約の金額を加算して工事収益総額を算出している。未契約の金額は、工事内容の施工指示が明記された着手指示書、変更指示書、特記仕様書、議事録等に基づき見積っている。そのため、例えば未契約の金額が過大に計上されていた場合、売上高が過大に計上される。
工事原価総額に係る見積り
工事原価総額の見積りにあたっては、工事契約内容の個別性が強いことから、全ての工事契約に適用可能な画一的な判断尺度を得られにくく、工事契約内容に関する専門的知識及び実務経験が必要となる。したがって工事原価総額の見積りは、工事契約の原価管理及び進捗管理に責任を有する者によって行われているが、その判断には不確実性が伴う。そのため、例えば工事原価総額が過小に計上されていた場合、売上高が過大に計上される。

