有価証券報告書-第124期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
(注)「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
① 経営成績の状況
売上高は、当社建築事業売上高の減少を主因に、前連結会計年度比5.2%減の1兆9,071億円(前連結会計年度は2兆107億円)となった。
利益については、当社建築事業の売上総利益の減少が影響し、営業利益は前連結会計年度比3.6%減の1,272億円(前連結会計年度は1,319億円)、経常利益は同4.7%減の1,397億円(同1,466億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同4.6%減の985億円(同1,032億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、豊富な繰越工事の施工が着実に進捗し、前連結会計年度比16.2%増の3,347億円(前連結会計年度は2,880億円)となった。
営業利益は、売上高増加に加えて、売上総利益率が向上したことから、前連結会計年度比73.6%増の298億円(前連結会計年度は171億円)となった。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、大型工事の施工量が少ない時期に当たることなどから、前連結会計年度比18.3%減の7,822億円(前連結会計年度は9,575億円)となった。
営業利益は、売上高減少を主因に、前連結会計年度比32.2%減の578億円(前連結会計年度は853億円)となった。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
大型物件を引き渡すなど不動産販売事業が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比22.1%増の725億円(前連結会計年度は594億円)、営業利益は同104.6%増の174億円(同85億円)となった。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高、営業利益ともに前連結会計年度と概ね同水準で推移し、売上高は前連結会計年度比3.8%減の3,780億円(前連結会計年度は3,931億円)、営業利益は同3.6%減の171億円(同177億円)となった。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
新型コロナウイルス感染症の影響による東南アジア地域の売上高及び営業利益の減少を、北米地域を中心に補い、売上高は前連結会計年度比4.3%増の4,891億円(前連結会計年度は4,690億円)、営業利益は同51.2%増の68億円(同45億円)となった。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比73億円減少し、2兆1,648億円(前連結会計年度末は2兆1,721億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の減少1,319億円があった一方で、現金預金の増加446億円、保有株式等の時価上昇による含み益の増加を主因とする投資有価証券の増加407億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加345億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比960億円減少し、1兆2,800億円(前連結会計年度末は1兆3,760億円)となった。これは、支払手形・工事未払金等の減少750億円、未成工事受入金の減少159億円及び有利子負債残高※の減少98億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、3,170億円(前連結会計年度末は3,268億円)となった。
純資産合計は、株主資本7,526億円、その他の包括利益累計額1,221億円、非支配株主持分99億円を合わせて、前連結会計年度末比887億円増加の8,848億円(前連結会計年度末は7,960億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比3.9ポイント好転し、40.4%(前連結会計年度末は36.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,530億円の収入超過(前連結会計年度は530億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,452億円に減価償却費190億円等の調整を加味した収入に加えて、売上債権の減少1,286億円の収入があった一方で、仕入債務の減少721億円、法人税等の支払額503億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加411億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、654億円の支出超過(前連結会計年度は1,018億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出463億円、貸付けによる支出354億円及び投資有価証券の取得による支出133億円があった一方で、貸付金の回収による収入260億円及び投資有価証券の売却等による収入103億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額256億円の支出及び自己株式の取得による支出100億円に加えて、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が71億円の支出超過となったこと等により、391億円の支出超過(前連結会計年度は108億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から453億円増加し、3,009億円(前連結会計年度末は2,556億円)となった。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
売上実績
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
[参考]提出会社単独の受注高及び売上高の状況
a 受注高、売上高及び繰越高
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
b 受注工事高
c 受注工事高の受注方法別比率
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
d 完成工事高
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
e 繰越工事高(2021年3月31日現在)
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2018年に「①次世代建設生産システムの構築、②社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供、③成長に向けたグループ経営基盤の確立」を基本方針とする「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」を策定し、短期的な経営課題に対応して安定的な利益を確保することを目指すとともに、中長期的な経営課題を見据えた施策や投資を積極的に推進した。その結果、3年連続で経営目標を達成し、将来の成長に向けた布石となる投資も着実に実行することができた。また、ESGに関する重点項目としていた環境・エネルギー課題への取組み、生産性向上と就労環境改善及びコンプライアンス・リスク管理体制の整備などについては、一定の成果を得ているが、今後も継続して取り組んでいく必要があると考えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」経営数値目標達成状況
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」投資計画達成状況
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、国内建設事業(土木事業・建築事業)においては、2020年4月下旬から5月6日までの期間、建設現場を一時閉鎖するなどの措置を講じたが、その後は感染症対策を徹底しつつ施工を継続している。開発事業等においては、販売事業、賃貸事業ともに大きな影響はなかった。国内関係会社は、運営するホテル等の稼働率低下が見られたが、建設系の関係会社への影響は限定的なものにとどまった。海外関係会社については、東南アジア地域における影響が大きく、公的規制に伴う工事中断や再開後の生産性低下、ホテル等運営施設の稼働率低下等が継続した。一方、北米や欧州における建設事業への影響は軽微であり、電子商取引の進展に伴い流通倉庫開発事業は堅調に推移した。
業績予想との比較では、感染症の業績への影響が全体として予想よりも軽微にとどまったことなどから、売上高は業績予想と同水準となり、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
財政状態については、資産合計は前連結会計年度末と概ね同水準となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が減少した一方で、計画に基づき積極的に推進している国内外の不動産開発投資に伴い開発事業資産(販売用不動産、開発事業支出金及び有形固定資産など)が増加した。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、一部の保有株式を売却したものの、時価上昇による含み益増加を主因に増加した。連結自己資本は前連結会計年度末から830億円増加の8,748億円となり、当面の目安としていた8,000億円台に到達した。連結有利子負債残高は前連結会計年度末残高を下回る3,170億円となり、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.36倍となった。総じて財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設需要や建設コストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度においては、建設コストは安定的に推移したと考えているが、建設需要に関しては、特に建築事業において、新型コロナウイルス感染症の影響による民間設備投資の減少傾向と先行きの不透明感から競争環境は厳しさを増している。
今後については、ワクチンの普及などにより新型コロナウイルス感染症が収束し、民間設備投資の持ち直しが進むことを期待しているが、感染症の影響が完全に払しょくされるまでには時間を要し、厳しい競争環境が継続する可能性がある。建設コストについても大型工事を中心に業界全体の施工量が増加し、資材・労務ともに需給がひっ迫する可能性があると考えている。
こうした状況の中、経営成績を維持向上させていくために、再生可能エネルギー市場や物流施設、データセンターを含むデジタル関連投資などの成長領域を見据えたR&Dや設計施工力、エンジニアリング力の一層の強化に取り組んでいる。また、中長期的な建設技能労働者の減少に備え、生産性向上と次世代の担い手確保に向けた施策を同時に推し進めるとともに、早期調達、集中調達、海外調達等の調達手法多様化を進めるなど、全体コストの上昇を抑制するための施策に取り組んでいる。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、道路工事やエネルギー関連工事を中心に、豊富な繰越工事の施工が着実に進捗し増収となった。営業利益の増益は、売上高の増加に加え、売上総利益率が前連結会計年度における14.0%から15.5%に改善したことが要因である。
土木における建設需要は、激甚化する自然災害やインフラ老朽化に対する国土強靭化に加えて、脱炭素化に向けた再生可能エネルギー市場の拡大により今後も堅調に推移すると考えている。成長領域である洋上・陸上風力発電施設やインフラ更新分野については、専門組織を設置するとともに、関係会社との協働体制の強化に取り組んでいる。また、脱炭素社会への移行に寄与するCO2吸収コンクリート(CO2-SUICOM)の社会実装・事業化に向けた取り組みを、グループ内だけでなく外部と連携しながら推進している。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
当連結会計年度は、大型案件の施工量が一時的に減少する時期に当たり、売上高は減収となった。新型コロナウイルス感染症拡大や緊急事態宣言の影響により、一部の工事の受注時期及び着工時期が遅れたことも要因の一つと考えている。2022年3月期の売上高は、大型工事の施工が本格化するため、9,000億円台への回復を見込んでいる。
営業利益は売上高減少を主因に減益となった。売上総利益率については、前連結会計年度における13.2%を下回ったものの、12.7%と高い水準を維持したと考えている。一方、新型コロナウイルス感染症の影響による民間設備投資の減少傾向と先行きの不透明感から競争環境は厳しさを増しており、建築工事の受注時採算は前連結会計年度と比較して低下している。2022年3月期の売上総利益率は、こうした状況に加えて、竣工を迎える大型工事が少ないことを踏まえ、10%台を予想している。
当連結会計年度の建築工事受注高における設計施工比率が70%を超えるなど、近年、プロジェクトの早期段階から建設会社のノウハウが必要とされる傾向が続いている。多様化する顧客ニーズを的確に捉える提案力の強化とともに、建物の企画・設計から施工、竣工後の維持管理・運営までの全てのフェーズにおける情報をデジタル化し、仮想空間上にリアルタイムに再現するBIMを活用した「デジタルツイン」をグループ全体で推進し、設計施工案件への対応力強化と利益率向上を図っている。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度は、大型物件の引渡しに加え、販売中であったマンションの引渡しや保有するオフィスビルの持分の一部を売却するなど、不動産販売事業が好調に推移したことから、売上高、営業利益が前連結会計年度と比較し増加した。賃貸事業についても、オフィスの中長期契約がベースとなっていることから、新型コロナウイルス感染症による大きな影響はなく、業績は堅調であった。
2022年3月期は、売却予定案件が少ないため減収減益を見込んでいるが、投資計画に基づき推進中である大型開発プロジェクトの稼働開始や売却予定案件の増加により、2023年3月期以降の回復を見込んでいる。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、ホテルやゴルフ場などの運営施設の稼働率が低下し、建物管理物件の営繕工事が減少するなどの影響があったものの、総じて堅調であった建設系関係会社が補い、当連結会計年度の国内関係会社全体の売上高、営業利益は、前連結会計年度と概ね同水準となった。今後、ゴルフ場の稼働率は回復基調となる見通しであるものの、ホテルの稼働率低下は長期化すると予想している。建物管理業については、当連結会計年度後半から回復傾向となっており、建物の設計・施工段階から管理・運用段階へのデータ連携やICTの高度活用に注力し、業容拡大を目指している。
なお、2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」を適用することに伴い、一部の関係会社における建設資機材等の販売のうち、代理人取引に該当するものについては、手数料部分のみを売上高として認識することとなり、国内関係会社の売上高を減少させる要因となる。ただし、当該取引においてはグループ内取引が過半を占めるため、連結業績への大きな影響はないと考えている。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
海外関係会社においては、地域ごとに新型コロナウイルス感染症の影響が異なり、北米地域や欧州地域の建設事業への影響は限定的である一方、東南アジア地域については、複数の国において公的規制に伴う工事中断や再開後の生産性低下等の影響があった。また、開発事業等に関しても、欧米の流通倉庫開発事業は電子商取引の進展などにより市場活性化の動きが見られ、堅調に推移したものの、東南アジア地域においてはホテル等運営施設の稼働率低下の影響が長期化した。海外関係会社全体としては、東南アジア地域の減少を、北米地域を中心とした他の地域が補い、感染症の影響を受けながらも、前連結会計年度を上回る売上高及び営業利益を確保した。東南アジア地域においては、感染症の収束に伴い、2022年3月期の後半から段階的な業績改善が進み、2024年3月期頃までには感染症拡大前の業績水準に回復すると見込んでいる。
海外の不動産開発事業は、地域ごとの特性を踏まえた事業を展開している。北米地域では、流通倉庫開発事業を中心に、投資、売却、再投資のサイクルを拡大成長させるとともに、賃貸集合住宅開発事業を育成するなど収益源の多様化を図っている。東南アジア地域においては、感染症の影響を見極めつつ、既存のプロジェクトへの投資を継続することに加え、ベトナムやシンガポールなどで新規投資機会を探り、安定収益を生む優良賃貸案件の創出と収益力回復・向上を目指している。欧州地域では、流通倉庫、学生寮、賃貸住宅、PFIなどバランスの取れた資産ポートフォリオを意識した投資を進めている。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に創出した営業キャッシュ・フローを主な原資として、投資計画に基づく国内外の不動産開発投資を積極的に実施した。また、株主還元に関しては、配当に加え、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため自己株式取得(100億円)を実施した。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ453億円増加し3,009億円となった。当連結会計年度は堅調な業績に加え、完成工事未収入金など売上債権の回収が進んだこともあり、営業キャッシュ・フローの収入が、不動産開発投資及び株主還元の実施、有利子負債の返済などによる支出を上回り現金及び現金同等物の残高が増加した。工事施工中の一時的な立替資金が発生する可能性があるなど、今後の建設事業の資金需要の予測は難しいが、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回っており、懸念はないと考えている。また、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」(2021年5月14日公表)において計画している国内外の不動産開発投資やR&D・デジタル投資、M&A等の戦略的投資など総額8,000億円の投資の原資として、今後も国内建設事業を中心に営業キャッシュ・フローの確保に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却や中長期的な政策保有株式の縮減を進める方針である。株主還元については、連結自己資本が8,000億円台に到達したこと、中期経営計画において今後の利益伸長を見通していることを踏まえ、配当性向の目安を30%に改めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針とする。
有利子負債については、増加する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えた財務健全性を維持するため、今後も増加抑制を基調とするが、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率向上のため有利子負債の活用を柔軟に判断していく方針である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
(注)「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
① 経営成績の状況
売上高は、当社建築事業売上高の減少を主因に、前連結会計年度比5.2%減の1兆9,071億円(前連結会計年度は2兆107億円)となった。
利益については、当社建築事業の売上総利益の減少が影響し、営業利益は前連結会計年度比3.6%減の1,272億円(前連結会計年度は1,319億円)、経常利益は同4.7%減の1,397億円(同1,466億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同4.6%減の985億円(同1,032億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、豊富な繰越工事の施工が着実に進捗し、前連結会計年度比16.2%増の3,347億円(前連結会計年度は2,880億円)となった。
営業利益は、売上高増加に加えて、売上総利益率が向上したことから、前連結会計年度比73.6%増の298億円(前連結会計年度は171億円)となった。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、大型工事の施工量が少ない時期に当たることなどから、前連結会計年度比18.3%減の7,822億円(前連結会計年度は9,575億円)となった。
営業利益は、売上高減少を主因に、前連結会計年度比32.2%減の578億円(前連結会計年度は853億円)となった。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
大型物件を引き渡すなど不動産販売事業が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比22.1%増の725億円(前連結会計年度は594億円)、営業利益は同104.6%増の174億円(同85億円)となった。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高、営業利益ともに前連結会計年度と概ね同水準で推移し、売上高は前連結会計年度比3.8%減の3,780億円(前連結会計年度は3,931億円)、営業利益は同3.6%減の171億円(同177億円)となった。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
新型コロナウイルス感染症の影響による東南アジア地域の売上高及び営業利益の減少を、北米地域を中心に補い、売上高は前連結会計年度比4.3%増の4,891億円(前連結会計年度は4,690億円)、営業利益は同51.2%増の68億円(同45億円)となった。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比73億円減少し、2兆1,648億円(前連結会計年度末は2兆1,721億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の減少1,319億円があった一方で、現金預金の増加446億円、保有株式等の時価上昇による含み益の増加を主因とする投資有価証券の増加407億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加345億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比960億円減少し、1兆2,800億円(前連結会計年度末は1兆3,760億円)となった。これは、支払手形・工事未払金等の減少750億円、未成工事受入金の減少159億円及び有利子負債残高※の減少98億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、3,170億円(前連結会計年度末は3,268億円)となった。
純資産合計は、株主資本7,526億円、その他の包括利益累計額1,221億円、非支配株主持分99億円を合わせて、前連結会計年度末比887億円増加の8,848億円(前連結会計年度末は7,960億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比3.9ポイント好転し、40.4%(前連結会計年度末は36.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,530億円の収入超過(前連結会計年度は530億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,452億円に減価償却費190億円等の調整を加味した収入に加えて、売上債権の減少1,286億円の収入があった一方で、仕入債務の減少721億円、法人税等の支払額503億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加411億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、654億円の支出超過(前連結会計年度は1,018億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出463億円、貸付けによる支出354億円及び投資有価証券の取得による支出133億円があった一方で、貸付金の回収による収入260億円及び投資有価証券の売却等による収入103億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額256億円の支出及び自己株式の取得による支出100億円に加えて、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が71億円の支出超過となったこと等により、391億円の支出超過(前連結会計年度は108億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から453億円増加し、3,009億円(前連結会計年度末は2,556億円)となった。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
売上実績
| セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 増減(△)率 (%) | |||||||
| 土木事業 | (百万円) | 288,098 | ( | 14.3 | %) | 334,791 | ( | 17.5 | %) | 16.2 |
| 建築事業 | (百万円) | 955,279 | ( | 47.5 | %) | 781,326 | ( | 41.0 | %) | △18.2 |
| 開発事業等 | (百万円) | 55,713 | ( | 2.8 | %) | 68,888 | ( | 3.6 | %) | 23.6 |
| 国内関係会社 | (百万円) | 243,206 | ( | 12.1 | %) | 233,945 | ( | 12.3 | %) | △3.8 |
| 海外関係会社 | (百万円) | 468,453 | ( | 23.3 | %) | 488,224 | ( | 25.6 | %) | 4.2 |
| 合計 | (百万円) | 2,010,751 | ( | 100 | %) | 1,907,176 | ( | 100 | %) | △5.2 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
[参考]提出会社単独の受注高及び売上高の状況
a 受注高、売上高及び繰越高
| 期別 | 種類別 | 期首繰越高 (百万円) | 当期受注高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期売上高 (百万円) | 期末繰越高 (百万円) | ||
| 前事業 年度 | 建 設 事 業 | 建築工事 | 1,334,803 | 794,967 | 2,129,770 | 957,556 | 1,172,213 | |
| 自 2 0 1 9 年 4 月 1 日 | 至 2 0 2 0 年 3 月 31 日 | 土木工事 | 527,593 | 327,620 | 855,214 | 288,098 | 567,115 | |
| 計 | 1,862,397 | 1,122,587 | 2,984,984 | 1,245,655 | 1,739,329 | |||
| 開発事業等 | 54,071 | 59,477 | 113,548 | 59,401 | 54,147 | |||
| 合計 | 1,916,468 | 1,182,065 | 3,098,533 | 1,305,057 | 1,793,476 | |||
| 当事業 年度 | 建 設 事 業 | 建築工事 | 1,172,213 | 867,291 | 2,039,504 | 782,253 | 1,257,250 | |
| 自 2 0 2 0 年 4 月 1 日 | 至 2 0 2 1 年 3 月 31 日 | 土木工事 | 567,115 | 338,088 | 905,204 | 334,791 | 570,412 | |
| 計 | 1,739,329 | 1,205,379 | 2,944,709 | 1,117,045 | 1,827,663 | |||
| 開発事業等 | 54,147 | 59,820 | 113,967 | 72,516 | 41,451 | |||
| 合計 | 1,793,476 | 1,265,200 | 3,058,676 | 1,189,562 | 1,869,114 | |||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
b 受注工事高
| 期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
| 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
| 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 建築工事 | 50,623 | 744,343 | - | 794,967 |
| 土木工事 | 162,122 | 165,517 | △18 | 327,620 | |
| 計 | 212,745 | 909,860 | △18 | 1,122,587 | |
| 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 建築工事 | 37,986 | 829,305 | - | 867,291 |
| 土木工事 | 159,892 | 177,868 | 327 | 338,088 | |
| 計 | 197,878 | 1,007,173 | 327 | 1,205,379 | |
c 受注工事高の受注方法別比率
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
| 期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) | |||
| 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 建築工事 | 49.1 | 50.9 | 100 | |||
| 土木工事 | 23.6 | 76.4 | 100 | ||||
| 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 建築工事 | 41.2 | 58.8 | 100 | |||
| 土木工事 | 35.3 | 64.7 | 100 | ||||
(注) 百分比は請負金額比である。
d 完成工事高
| 期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
| 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
| 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 建築工事 | 68,265 | 889,291 | - | 957,556 |
| 土木工事 | 148,458 | 138,816 | 824 | 288,098 | |
| 計 | 216,723 | 1,028,107 | 824 | 1,245,655 | |
| 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 建築工事 | 62,459 | 719,793 | - | 782,253 |
| 土木工事 | 162,763 | 171,254 | 773 | 334,791 | |
| 計 | 225,222 | 891,048 | 773 | 1,117,045 | |
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
| 発注者 | 工事名称 |
| ○ 三井物産㈱、三井不動産㈱ | Otemachi One |
| ○ ㈱アルベログランデ | 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー |
| ○ 三井不動産レジデンシャル㈱、丸紅㈱ | ザ・タワー横浜北仲新築工事 |
| ○ 東日本高速道路㈱ | 東京外環自動車道 市川中工事 |
| ○ ㈱KADOKAWA、 (公財)角川文化振興財団 | ところざわサクラタウン新築工事 |
| ○ (独)水資源機構 | 小石原川ダム本体建設工事 |
| ○ リゾートトラスト㈱ | 横浜ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート/ ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜 新築工事 |
| ○ 東京建物㈱、㈱サンケイビル | Hareza Tower |
e 繰越工事高(2021年3月31日現在)
| 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
| 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (百万円) | (百万円) | |
| 建築工事 | 64,372 | 1,192,878 | - | 1,257,250 |
| 土木工事 | 332,074 | 235,911 | 2,427 | 570,412 |
| 計 | 396,446 | 1,428,790 | 2,427 | 1,827,663 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
| 発注者 | 工事名称 |
| ○ 森ビル㈱ | 虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業に伴う 施設建築物新築建築工事 |
| ○ 中外製薬㈱ | 中外ライフサイエンスパーク横浜建設工事 |
| ○ 渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合 | 渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業に伴う建設工事 |
| ○ 東日本高速道路㈱ | 東京外かく環状道路本線トンネル(南行)東名北工事 |
| ○ 勝どき東地区市街地再開発組合 | 勝どき東地区第一種市街地再開発事業施設建築物 A1地区新築工事 |
| ○ 東北電力㈱ | 女川原子力発電所防潮堤かさ上げ工事 |
| ○ 東日本高速道路㈱ | 横浜環状南線 公田笠間トンネル工事 |
| ○ 大宮駅東口大門町2丁目中地区市街地 再開発組合 | 大宮駅東口大門町2丁目中地区第一種市街地再開発事業 施設建築物等新築工事 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2018年に「①次世代建設生産システムの構築、②社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供、③成長に向けたグループ経営基盤の確立」を基本方針とする「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」を策定し、短期的な経営課題に対応して安定的な利益を確保することを目指すとともに、中長期的な経営課題を見据えた施策や投資を積極的に推進した。その結果、3年連続で経営目標を達成し、将来の成長に向けた布石となる投資も着実に実行することができた。また、ESGに関する重点項目としていた環境・エネルギー課題への取組み、生産性向上と就労環境改善及びコンプライアンス・リスク管理体制の整備などについては、一定の成果を得ているが、今後も継続して取り組んでいく必要があると考えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」経営数値目標達成状況
| 主要項目 | 目 標 | 実績 | ||
| 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | ||
| 親会社株主に帰属する 当期純利益 | 800億円以上 | 1,098億円 | 1,032億円 | 985億円 |
| ROE | 10%以上 | 15.5% | 13.4% | 11.8% |
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」投資計画達成状況
| 計画 | 実績 | |
| 国内開発事業 (売却による回収) | 1,600億円 (600億円) | 2,000億円 (600億円) |
| 海外開発事業 (売却による回収) | 2,400億円 (1,150億円) | 2,000億円 (1,000億円) |
| R&D投資 | 500億円 | 490億円 |
| 競争力強化・持続的成長投資 | 500億円 | 690億円 |
| 投資総額 (ネット投資額) | 5,000億円 (3,250億円) | 5,180億円 (3,580億円) |
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、国内建設事業(土木事業・建築事業)においては、2020年4月下旬から5月6日までの期間、建設現場を一時閉鎖するなどの措置を講じたが、その後は感染症対策を徹底しつつ施工を継続している。開発事業等においては、販売事業、賃貸事業ともに大きな影響はなかった。国内関係会社は、運営するホテル等の稼働率低下が見られたが、建設系の関係会社への影響は限定的なものにとどまった。海外関係会社については、東南アジア地域における影響が大きく、公的規制に伴う工事中断や再開後の生産性低下、ホテル等運営施設の稼働率低下等が継続した。一方、北米や欧州における建設事業への影響は軽微であり、電子商取引の進展に伴い流通倉庫開発事業は堅調に推移した。
業績予想との比較では、感染症の業績への影響が全体として予想よりも軽微にとどまったことなどから、売上高は業績予想と同水準となり、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | |
| 連結業績予想(A) 2020年11月10日公表 | 1,910,000 | 115,000 | 123,000 | 80,000 |
| 経営成績 (B) | 1,907,176 | 127,298 | 139,729 | 98,522 |
| 増減額(B-A) | △2,823 | 12,298 | 16,729 | 18,522 |
| 増減率(%) | △0.1% | 10.7% | 13.6% | 23.2% |
財政状態については、資産合計は前連結会計年度末と概ね同水準となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が減少した一方で、計画に基づき積極的に推進している国内外の不動産開発投資に伴い開発事業資産(販売用不動産、開発事業支出金及び有形固定資産など)が増加した。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、一部の保有株式を売却したものの、時価上昇による含み益増加を主因に増加した。連結自己資本は前連結会計年度末から830億円増加の8,748億円となり、当面の目安としていた8,000億円台に到達した。連結有利子負債残高は前連結会計年度末残高を下回る3,170億円となり、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.36倍となった。総じて財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設需要や建設コストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度においては、建設コストは安定的に推移したと考えているが、建設需要に関しては、特に建築事業において、新型コロナウイルス感染症の影響による民間設備投資の減少傾向と先行きの不透明感から競争環境は厳しさを増している。
今後については、ワクチンの普及などにより新型コロナウイルス感染症が収束し、民間設備投資の持ち直しが進むことを期待しているが、感染症の影響が完全に払しょくされるまでには時間を要し、厳しい競争環境が継続する可能性がある。建設コストについても大型工事を中心に業界全体の施工量が増加し、資材・労務ともに需給がひっ迫する可能性があると考えている。
こうした状況の中、経営成績を維持向上させていくために、再生可能エネルギー市場や物流施設、データセンターを含むデジタル関連投資などの成長領域を見据えたR&Dや設計施工力、エンジニアリング力の一層の強化に取り組んでいる。また、中長期的な建設技能労働者の減少に備え、生産性向上と次世代の担い手確保に向けた施策を同時に推し進めるとともに、早期調達、集中調達、海外調達等の調達手法多様化を進めるなど、全体コストの上昇を抑制するための施策に取り組んでいる。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、道路工事やエネルギー関連工事を中心に、豊富な繰越工事の施工が着実に進捗し増収となった。営業利益の増益は、売上高の増加に加え、売上総利益率が前連結会計年度における14.0%から15.5%に改善したことが要因である。
土木における建設需要は、激甚化する自然災害やインフラ老朽化に対する国土強靭化に加えて、脱炭素化に向けた再生可能エネルギー市場の拡大により今後も堅調に推移すると考えている。成長領域である洋上・陸上風力発電施設やインフラ更新分野については、専門組織を設置するとともに、関係会社との協働体制の強化に取り組んでいる。また、脱炭素社会への移行に寄与するCO2吸収コンクリート(CO2-SUICOM)の社会実装・事業化に向けた取り組みを、グループ内だけでなく外部と連携しながら推進している。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
当連結会計年度は、大型案件の施工量が一時的に減少する時期に当たり、売上高は減収となった。新型コロナウイルス感染症拡大や緊急事態宣言の影響により、一部の工事の受注時期及び着工時期が遅れたことも要因の一つと考えている。2022年3月期の売上高は、大型工事の施工が本格化するため、9,000億円台への回復を見込んでいる。
営業利益は売上高減少を主因に減益となった。売上総利益率については、前連結会計年度における13.2%を下回ったものの、12.7%と高い水準を維持したと考えている。一方、新型コロナウイルス感染症の影響による民間設備投資の減少傾向と先行きの不透明感から競争環境は厳しさを増しており、建築工事の受注時採算は前連結会計年度と比較して低下している。2022年3月期の売上総利益率は、こうした状況に加えて、竣工を迎える大型工事が少ないことを踏まえ、10%台を予想している。
当連結会計年度の建築工事受注高における設計施工比率が70%を超えるなど、近年、プロジェクトの早期段階から建設会社のノウハウが必要とされる傾向が続いている。多様化する顧客ニーズを的確に捉える提案力の強化とともに、建物の企画・設計から施工、竣工後の維持管理・運営までの全てのフェーズにおける情報をデジタル化し、仮想空間上にリアルタイムに再現するBIMを活用した「デジタルツイン」をグループ全体で推進し、設計施工案件への対応力強化と利益率向上を図っている。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度は、大型物件の引渡しに加え、販売中であったマンションの引渡しや保有するオフィスビルの持分の一部を売却するなど、不動産販売事業が好調に推移したことから、売上高、営業利益が前連結会計年度と比較し増加した。賃貸事業についても、オフィスの中長期契約がベースとなっていることから、新型コロナウイルス感染症による大きな影響はなく、業績は堅調であった。
2022年3月期は、売却予定案件が少ないため減収減益を見込んでいるが、投資計画に基づき推進中である大型開発プロジェクトの稼働開始や売却予定案件の増加により、2023年3月期以降の回復を見込んでいる。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、ホテルやゴルフ場などの運営施設の稼働率が低下し、建物管理物件の営繕工事が減少するなどの影響があったものの、総じて堅調であった建設系関係会社が補い、当連結会計年度の国内関係会社全体の売上高、営業利益は、前連結会計年度と概ね同水準となった。今後、ゴルフ場の稼働率は回復基調となる見通しであるものの、ホテルの稼働率低下は長期化すると予想している。建物管理業については、当連結会計年度後半から回復傾向となっており、建物の設計・施工段階から管理・運用段階へのデータ連携やICTの高度活用に注力し、業容拡大を目指している。
なお、2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」を適用することに伴い、一部の関係会社における建設資機材等の販売のうち、代理人取引に該当するものについては、手数料部分のみを売上高として認識することとなり、国内関係会社の売上高を減少させる要因となる。ただし、当該取引においてはグループ内取引が過半を占めるため、連結業績への大きな影響はないと考えている。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
海外関係会社においては、地域ごとに新型コロナウイルス感染症の影響が異なり、北米地域や欧州地域の建設事業への影響は限定的である一方、東南アジア地域については、複数の国において公的規制に伴う工事中断や再開後の生産性低下等の影響があった。また、開発事業等に関しても、欧米の流通倉庫開発事業は電子商取引の進展などにより市場活性化の動きが見られ、堅調に推移したものの、東南アジア地域においてはホテル等運営施設の稼働率低下の影響が長期化した。海外関係会社全体としては、東南アジア地域の減少を、北米地域を中心とした他の地域が補い、感染症の影響を受けながらも、前連結会計年度を上回る売上高及び営業利益を確保した。東南アジア地域においては、感染症の収束に伴い、2022年3月期の後半から段階的な業績改善が進み、2024年3月期頃までには感染症拡大前の業績水準に回復すると見込んでいる。
海外の不動産開発事業は、地域ごとの特性を踏まえた事業を展開している。北米地域では、流通倉庫開発事業を中心に、投資、売却、再投資のサイクルを拡大成長させるとともに、賃貸集合住宅開発事業を育成するなど収益源の多様化を図っている。東南アジア地域においては、感染症の影響を見極めつつ、既存のプロジェクトへの投資を継続することに加え、ベトナムやシンガポールなどで新規投資機会を探り、安定収益を生む優良賃貸案件の創出と収益力回復・向上を目指している。欧州地域では、流通倉庫、学生寮、賃貸住宅、PFIなどバランスの取れた資産ポートフォリオを意識した投資を進めている。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に創出した営業キャッシュ・フローを主な原資として、投資計画に基づく国内外の不動産開発投資を積極的に実施した。また、株主還元に関しては、配当に加え、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため自己株式取得(100億円)を実施した。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ453億円増加し3,009億円となった。当連結会計年度は堅調な業績に加え、完成工事未収入金など売上債権の回収が進んだこともあり、営業キャッシュ・フローの収入が、不動産開発投資及び株主還元の実施、有利子負債の返済などによる支出を上回り現金及び現金同等物の残高が増加した。工事施工中の一時的な立替資金が発生する可能性があるなど、今後の建設事業の資金需要の予測は難しいが、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回っており、懸念はないと考えている。また、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」(2021年5月14日公表)において計画している国内外の不動産開発投資やR&D・デジタル投資、M&A等の戦略的投資など総額8,000億円の投資の原資として、今後も国内建設事業を中心に営業キャッシュ・フローの確保に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却や中長期的な政策保有株式の縮減を進める方針である。株主還元については、連結自己資本が8,000億円台に到達したこと、中期経営計画において今後の利益伸長を見通していることを踏まえ、配当性向の目安を30%に改めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針とする。
有利子負債については、増加する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えた財務健全性を維持するため、今後も増加抑制を基調とするが、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率向上のため有利子負債の活用を柔軟に判断していく方針である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。