有価証券報告書-第179期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/29 15:12
【資料】
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【項目】
61項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社は2016年度に、2021年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「新キリン・グループ・ビジョン2021」(略称:新KV2021)と、ビジョン実現に向けた前半の3か年計画である「キリングループ2016年-2018年中期経営計画」(略称:2016年中計)を策定しました。
「新キリン・グループ・ビジョン2021」
酒類、飲料、医薬・バイオケミカルを中核とした事業を通して、グループの強みである技術力を活かし、社会課題の解決とお客様への価値提供を両立し、社会とともに持続的な成長を目指します※。
また、グローバル共通の価値観(“One Kirin”Values:「熱意と誠意」“Passion and Integrity”)に基づき、多様性を生かして事業・地域の垣根を越えて連携し、グローバル企業としての成長を目指します。
※ 社会課題への取り組みについては、酒類メーカーとしての責任であるアルコール関連問題の解決等に取り組むことを前提に、事業との関係が深い“健康”、“地域社会への貢献”、“環境”を、キリングループとして長期的に取り組むCSV重点課題として位置付けました。これら重点課題においてグループが目指す社会への貢献と取り組みの方針をグループCSVコミットメントとして定め、主要会社がそれぞれの事業において、社会的価値と経済的価値の創造を具現化していきます。
(2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
「キリングループ2016年-2018年中期経営計画」
2016年からの中期経営計画は、収益力の向上を最優先課題とし、優先度を明確にした投資による既存事業の競争力強化と低収益事業の収益構造の抜本的改革を実行します。
(基本方針)
構造改革による、キリングループの再生
(重点課題)
①ビール事業の収益基盤強化
②低収益事業の再生・再編
③医薬・バイオケミカル事業の飛躍的成長
(定量目標)
当期より、当社グループの連結財務諸表について、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)の任意適用を開始しました。当該移行に伴い、IFRSでの会計処理を鑑みて、2016年中計の定量目標における指標を“ROE”と“平準化EPS”に置換しております。
・ROE:15%以上
・平準化EPS※年平均成長率:6%以上
※平準化:その他の営業収益・費用等の非経常項目を除外し、より実質的な収益力を反映させるための調整
平準化EPS = 平準化当期利益 / 期中平均株式数
平準化当期利益 = 当期利益± 税金等調整後その他の営業収益・費用等
※参考:2018年キリングループ連結事業利益目標 1,960億円

(3)会社の対処すべき課題
2017年度は、キリンビバレッジ㈱の利益伸長等によりキリングループ全体の収益構造改革は一段と進みましたが、国内ビール類市場全体が縮小する中でキリンビール㈱のビール類販売数量が減少するなど、2016年中計の重点課題のうち“ビール事業の収益基盤強化”に課題が残りました。2016年中計の最終年度となる2018年度は、“構造改革によるキリングループの再生”の実現に向けて、キリンビール㈱の収益基盤強化を最優先課題として取り組み、成熟が進む国内酒類市場の活性化を図ります。さらに、ミャンマー・ブルワリー社を中心に東南アジア市場の成長を取り込み、医薬・バイオケミカル事業を一層成長させることで、2016年中計の確実な達成を目指します。
構造改革により創出したキャッシュは、あるべき資本構成を維持する前提のもと、将来に向けた成長投資に優先的に振り向けるとともに、配当を基本とした株主還元の充実も検討します。
さらに、新KV2021で掲げたグループビジョンに立脚し、確かな価値を実現する技術力と、多様なお客様を理解し提案するマーケティング力を活かし、酒類、飲料、医薬・バイオケミカルの各事業で、社会課題の解決とお客様への価値提供を両立し、社会とともに持続的な成長を目指します。社会課題については「グループCSVコミットメント」に基づき、CSV重点課題である“健康”、“地域社会への貢献”、“環境”の解決に一層高いレベルで取り組み、社会的価値と経済的価値を同時に創出します。特に“健康”については、将来の成長ドライバーとするべく酒類・飲料事業と医薬・バイオケミカル事業の協業をさらに深化させます。「プラズマ乳酸菌」の浸透に向けて、「iMUSE(イミューズ)」ブランドの販売を拡大しつつ新規の販路開拓や他企業とのパートナーシップ拡大を図ると同時に、食から医にわたる領域での新規事業機会を探索し具体的な事業化を促進します。
また、“ブランド”、“研究開発”、“製造・IT”、“人材”を持続的な成長を支える重要資本と考え、中長期的に投資します。人材戦略の最重要課題としてリーダーシップの開発に取り組み、イノベーション創出の推進力となる多様性に富んだ組織風土を醸成します。
<日本綜合飲料事業>キリンビール㈱では、一貫した戦略としてビールカテゴリーの魅力化に注力するとともに、再成長に向けて、投資するべきブランド・活動を絞り込んだ投資効率の高いマーケティング戦略を実行します。ビールカテゴリーでは、地域密着型営業を通じて「キリン一番搾り生ビール」のお客様接点を拡大し、ブランドを一層成長させます。4月の酒税法改正によるビールの定義の変更が追い風となるクラフトビールについて、日本産ホップの使用をはじめ特徴あるビールづくりを継続するほか、「Tap Marché(タップ・マルシェ)」を全国展開し市場の活性化を加速します。喫緊の課題である新ジャンルカテゴリーについては、お客様の共感を呼ぶブランドとして「キリン のどごし〈生〉」を強化し、お客様の期待に応える商品を提案します。市場が拡大するRTDカテゴリーでは、「キリン 氷結」を中心とした幅広い商品展開により、お客様の支持拡大を図ります。びんや樽詰容器のビール類等の価格改定やコスト削減による、収益構造の改革にも取り組みます。
メルシャン㈱では、果敢なチャレンジでさらにワインの魅力を伝達し、お客様のニーズに迅速に対応することで、ワイン市場の拡大を牽引します。カテゴリーごとに注力ブランドの選択と集中を進め、ワイン飲用層の裾野拡大を目指した提案や商品開発に取り組みます。「シャトー・メルシャン」はブランド強化を継続するとともに、長野県でのワイナリー新設等を通じてブドウ産地との連携をさらに深め、日本ワインの価値啓発を図ります。これら計画の実現のために必要な組織能力の強化や、ワイン事業の収益力強化も実行します。
キリンビバレッジ㈱では、収益構造改革のステージから成長による利益創出のステージへと踏み出し、一層強固なブランド体系の構築に取り組みます。紅茶、緑茶、コーヒーを中心としたブランド体系のもとで売上と利益の伸長を図ると同時に、成長機会の創造に挑戦します。また、持続可能な仕組みづくりに向けて、CSV視点からの取り組みの強化や、同業他社との協業を含めたあらゆるSCMコスト削減策の追求等により、事業基盤を強化します。
<海外綜合飲料事業>ライオン社酒類事業では、前年に再構築したブランドポートフォリオ戦略に基づいた活動を継続し、成長カテゴリーでのブランド強化を図ります。また、地域社会に根差したクラフトビールの展開も進めます。ライオン社飲料事業では、ブランド強化、販売網の再構築等により注力する乳飲料カテゴリーや成長するヨーグルトカテゴリーでの販売数量を伸ばすとともに、本社・工場部門の合理化推進によるコスト削減や、酪農家の経営支援を通じて安定的かつ持続的な原料調達を実現する活動に引き続き取り組みます。
ミャンマー・ブルワリー社では、ミャンマー市場で圧倒的首位の地位を維持するため、キリングループの知見を活かした効果的な市場リサーチ活動を実施し、市場やお客様への理解を深めていきます。競合環境や市場環境の変化を踏まえ、「ミャンマービール」を国民の誇りを喚起するブランドとして強化します。また、最新設備の導入により、環境負荷低減と生産能力増強を両立させる生産基盤強化を計画通りに完了させ、伸長していくビール需要の獲得を図ります。
<医薬・バイオケミカル事業>協和発酵キリン㈱の医薬事業では、「グローバル・スペシャリティファーマ」への飛躍を目指し、グローバル戦略品であるKRN23、KW-0761の欧米への上市準備を進め、製品発売後の価値最大化を目指します。新製品群を中心とした既存製品の市場浸透や、エリア別の顧客関係力強化、新たな開発パイプラインの充実も進めます。バイオケミカル事業では、将来の高収益事業創出に向けた新製品の開発や製造拠点の再編による、収益基盤の強化を図ります。さらに引き続き、独自素材の組み合わせにより新たな機能を持つ製品を開発し、健康を基軸とした価値を提供します。