有価証券報告書-第140期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/26 16:18
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65項目

対処すべき課題

(1) 私たちの目指すもの
味の素グループは、地球的な視野にたち、“食”と“健康”、そして、明日のよりよい生活に貢献し、先端バイオ・ファイン技術が先導する、確かなグローバル・スペシャリティ食品企業グループを目指します。
(2) 「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」に向けて
① ASV(Ajinomoto Group Shared Value)の進化による持続的成長
味の素グループは、うま味を通じて粗食をおいしくし、国民の栄養を改善するという創業の志を受け継ぎ、創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組みにより成長してきました。この取り組みをASV(Ajinomoto Group Shared Value)と称し、これからも事業を通じて「21世紀の人類社会の課題」である「地球持続性」、「食資源」、「健康な生活」に積極的に貢献することで、ASV進化による持続的な成長を目指します。

② 現状の課題 -グローバル食品企業トップ10クラス入りのために-
現在の味の素グループは、グローバル食品企業トップ10クラスの企業と比較すると、財務指標、すなわち、事業の規模、利益を創出する効率性に課題があります。また、「環境」、「社会」、「ガバナンス」(いわゆるE・S・G)に関する基本方針や非財務目標をより明確にすべきであると考えています。これらに対し、我々の強みである独自のコア技術、すなわち、アミノ酸を起点とした独自の先端バイオ・ファイン技術や「おいしさ」を解析し自在に設計する「おいしさ設計技術」と徹底した現地・顧客適合で具体的な解決に取り組み、2020年のグローバル食品企業トップ10クラス入りを実現する所存です。
(3)目標とする経営指標およびその進捗
2017-2019(for 2020)中期経営計画において、味の素グループが創造する経済価値、社会価値を財務目標、非財務目標として設定。また統合目標としてコーポレートブランド価値を指標化し、味の素グループが目指すところを明確にした経営を行っていきます。
財務・非財務目標とその2017年度進捗状況は、次のとおりです。
財務・非財務目標を合わせた統合目標の推進により向上した価値をコーポレートブランド価値に集約させるため、2017年度にグループ共通の“味の素グループグローバルブランドロゴ”を導入し、その活用強化の取り組みを開始しました。
■味の素グループグローバルブランドロゴ

① 財務目標(経済価値)
2016年度
実績
2017年度
目標
2017年度
実績
2018年度
目標
2019年度
目標
事業利益968億円1,020億円973億円1,030億円1,240億円
事業利益率8.9%8.6%8.5%8.7%9.4%
ROE8.7%8.9%9.7%9.5%9.8%
ROA (注)17.4%7.4%7.0%7.2%8.8%
EPS成長率-7.2%15.1%3.0%年二桁成長
海外売上成長率(注)2-12%5%7%年二桁成長

(注)1.資産合計事業利益率
(注)2.コンシューマー食品が対象。現地通貨ベース
② 非財務目標(社会価値)
事業を通じた「地球持続性」、「食資源」、「健康な生活」への貢献を目指し、「環境」、「社会」、「ガバナンス」(E・S・G)の項目に沿って定量的な目標を定めています。
非財務目標の内容2015年度
実績
2016年度
実績
2017年度
実績
2020年度目標
※一部、2020年度以降の目標を掲げています。

うま味を通じてたんぱく質・野菜をおいしく摂取し、栄養バランスを改善します。味の素グループ製品による肉・野菜の摂取量(日本・Five Stars (注)3)肉:
660万トン
野菜:
380万トン
肉:
690万トン
野菜:
410万トン
肉:
720万トン
野菜:
440万トン
肉:
年860万トン:
19%(9.7kg/人/年)
〈対 2015年度+3%(+2.0kg)〉
野菜:
年550万トン:
8% (6.2kg/人/年)
〈対 2015年度+2%(+1.6kg)〉
共に食べる場を増加します。味の素グループ製品による共食の場への貢献回数(日本・Five Stars (注)3)55回58回60回70回/世帯/年
〈対 2015年度+20回〉
おいしくスマートな調理を実現します。味の素グループ製品を通じて創出される時間(日本)31
百万時間
35
百万時間
37
百万時間
38百万時間/年(6時間/世帯)
〈対 2015年度 +7百万時間〉
人々の快適な生活を実現します。アミノ酸製品(アミノサイエンス)を通じた快適な生活への貢献人数1,820
万人
1,870
万人
1,980
万人
2,200万人
〈対 2015年度 +400万人〉

温室効果ガスの削減:製品ライフサイクル全体でカーボンニュートラルにします。温室効果ガスの生産量比排出原単位33%減
(対2005年度)
33%減
(対2005年度)
35%減
(注)4
(対2005年度)
2020年度:5%削減
〈対2015年度〉
2030年度:50%削減
〈対2005年度〉
再生可能エネルギー比率18%20%22%
(注)4
2020年度:20%
2030年度:50%
脱フロン---2025年度:新規導入100%
2030年度:HFCs (注)5 保有量極少

非財務目標の内容2015年度
実績
2016年度
実績
2017年度
実績
2020年度目標
※一部、2020年度以降の目標を掲げています。
環境フードロスの削減:2050年までにライフサイクルでフードロスを半減します。原料受入からお客様納品までのフードロス削減--5%減
(注)4
2020年度:20%削減
〈対2016年度〉
2025年度:50%削減
〈対2016年度〉
食資源の確保と生態系・生物多様性を含む自然環境の保全:次世代のための食資源の確保と生態系・生物多様性を含む自然環境の保全に貢献し、持続可能な調達を実現します。持続可能な調達-パーム油・紙
9%
パーム油・紙
21%
(注)4
2020年度:パーム油・紙100%
2030年度:課題原料100%
低資源利用発酵技術・副生物活用・原料代替技術による天然原料使用量削減-80%80%超
(注)4
2025年度:100%導入
水資源の保全:持続的に水を利用し続けられる環境を創出します。工場の生産量比水使用量75%減
(対2005年度)
77%減
(対2005年度)
77%減
(注)4
(対2005年度)
2020年度:5%削減
〈対2015年度〉
2030年度:80%削減
〈対2005年度〉
廃棄物の3R (Reduce、Reuse、Recycle):廃棄物のゼロエミッション事業活動で排出される廃棄物削減・資源化率99.6%99.3%99.5%2020年度、2025年度:99%以上維持




従業員の働きがいを向上します。働きがいを実感している従業員の割合--79%80%

(注)3. タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ブラジル
(注)4. 2018年4月時点推定値
(注)5. Hydrofluorocarbon(代替フロン)
(4)会社の対処すべき課題および中長期的な会社の経営戦略
<2017-2019(for 2020)中期経営計画の推進>味の素グループは、2017-2019(for 2020)中期経営計画においても、「FIT&GROW with Specialty」を継承し、土台となる「経営基盤の強化」にも取り組み、「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」を目指します。その取り組みおよび進捗状況は次のとおりです。
① 更なる事業構造改革(FIT)
1)コモディティ事業からの抜本的な転換
・コモディティ製品の生産外部化による動物栄養事業のスペシャリティ化の加速
(進捗状況)中国の梅花生物科技集団と製造委託契約を締結。コモディティ製品の生産外部化とグループ内生産設備のスペシャリティ製品向け転換を進めます。
・加工用うま味調味料事業における当社製品原料向け供給の拡大と低資源利用発酵技術によるコスト削減
・甘味料事業のリテール・外食向け製品のスペシャリティ化の強化
2)事業横断でのサステナブルバリューチェーンの構築
・グループ会社を含む国内全体のバリューチェーン再編による事業構造強化(最新鋭工場への転換、他社との共同物流改革、事業横断での伸長チャネル向け提案力強化、共通のコーポレート機能の一体運営等)
(進捗状況)・当社事業所の一部、クノール食品㈱および味の素パッケージング㈱の生産体制の集約・再編を決定。新会社を2019年4月(予定)に発足、国内調味料・加工食品生産体制を強化します。
・カゴメ㈱、日清オイリオグループ㈱、日清フーズ㈱、ハウス食品グループ本社㈱の4社と2019年4月に物流事業を統合し、全国規模の物流会社を発足させる契約を締結しました。深刻化する食品物流の諸課題の解決に向けて、食品メーカー協働での取り組みを一層推進します。
・グローバルのバリューチェーン全体における資源利用の削減(ICT(情報通信技術)活用による発酵プロセス自動化・効率化、製品消費段階での環境負荷低減等)
② 成長ドライバーの展開(GROW)
1)食品の地域ポートフォリオ強化を通じた確かな成長
・日本食品:「おいしさ設計技術」の進化による主要ブランド製品の継続強化、「勝ち飯®」等の当社独自のサイエンスとデジタル・ICT活用による、お客様に提供するこころとからだの健康、共食の喜び、食文化価値の増大
(進捗状況)・冷たい牛乳と混ぜて作る夏場の朝食用の「クノール®カップスープ」<冷たい牛乳でつくる>シリーズにより、「クノール®カップスープ」の需要を拡大しました。
・国内コーヒー市場は、家庭内消費が縮小する一方、家庭外消費が拡大。家庭用インスタントコーヒーの売上減少に対応して、スティック製品と業務用製品の拡大に取り組みます。
・海外食品:ローカルトッププレイヤーとの連携など新地域展開の加速による地域ポートフォリオ強化、市場成長や為替変動に左右されにくい強固な事業基盤の確立。
(進捗状況)・「Five Stars」の調味料事業は成長したものの、タイの缶コーヒー「Birdy®」の競争激化が課題。品質・販売強化によるシェアNo.1維持に取り組みます。
・北米の冷凍食品事業はアジアンカテゴリーで売上を伸ばすものの、生産体制再構築に伴うコスト増加が課題。安定生産とコスト改善に取り組みます。
・フランスの冷凍食品会社ラベリ・テレトル・スージェレ社を買収。また、トルコのキュクレ食品社を100%子会社化し、他の現地子会社2社との統合を決定。これにより、地域ポートフォリオの拡大と欧州での食品事業の基盤整備を進めます。
2)新たな事業の柱の構築による事業ポートフォリオの拡張
・食品事業:中食・外食・加工食品向けに「おいしさ」実現のための提案を総合的に行う「おいしさソリューション事業」のグローバルな立ち上げ。フレーバーに関する素材や技術の強化と顧客起点に立ったグループ横断の営業体制の構築
(進捗状況)2018年4月1日付で加工食品メーカー向けの天然系調味料、酵素製剤等の業務用製品(素材)事業と、中食・外食業態向け製品事業を統合。また、味の素冷凍食品㈱、クノール食品㈱、味の素AGF㈱の日本食品に関わるR&D拠点の当社川崎事業所内への集約を決定。これらによる「おいしさ設計技術」の提供と味の素グループ一体型の顧客起点営業体制の強化を通じ、「おいしさソリューション事業」の拡大を図ります。
・アミノサイエンス事業:アミノ酸素材事業の川下事業化、先端バイオ医療周辺領域の成長加速等、スペシャリティ事業の拡大による強い事業構造への転換
(進捗状況)・先端医療周辺領域(オリゴ核酸、次世代抗体医薬品等)の開発製造受託事業拡大のため、㈱ジーンデザイン、味の素アルテア社の開発製造設備増強を決定しました。
・米国の医療食品会社キャンブルック・セラピューティクス社を買収し、米国のメディカルフード市場に参入しました。
・当社川崎事業所内にオープン&リンクイノベーション推進拠点である「クライアント・イノベーション・センター」の新設を決定。当社の技術を紹介し、ビジネスパートナーとの技術融合による新価値・新事業の共創を目指します。
③ 経営基盤の強化
・コーポレートガバナンス・コードに適合する基盤強化とイノベーションによる持続的成長
・グローバル戦略機能の強化とグループの事業全体をサポートするコーポレート機能の最適化
(進捗状況)2018年4月1日付でグローバルな企画・監督機能を担うグローバルコーポレート本部と、グループ企業も含めた事業の支援機能を担うコーポレートサービス本部を設置。グローバル戦略の一体化とグループ経営の効率化を更に進めます。
・分厚く多様な人財層の形成に向けた次世代グローバル人財の育成や女性マネージャーの登用
・多様な人財によるイノベーションの促進、従業員の心身の健康増進を目指した「働き方改革」の推進(グローバル基準の働き方を志向した時短、ICT活用による仕事の効率化、育児・介護へのサポート強化等)
(進捗状況)味の素㈱の「働き方改革」は、目標である年間平均労働時間1,800時間の2018年度での達成にめどが立ったため、更に効率化を進めるとともに国内グループ会社への横展開を図ります。
・ASVの実践を通じたグローバル33,000人の全従業員の「働きがい」向上による組織力の強化と業績向上
(進捗状況)味の素グループ全体を対象とした調査結果から、79%が「持続可能な働きがい」を感じており、グローバル食品企業の水準を達成しています。「ASV向上への意識」「リーダーシップ発揮」「顧客志向」が評価される一方で、課題としてはダイバーシティの拡大、キャリア開発の充実等があり、引き続き取り組みます。