有価証券報告書-第202期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/26 11:23
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127項目

対処すべき課題

今後の国内経済の状況は、政府主導の経済政策を背景に緩やかな景気回復が続くものと予想されますが、さらなる円安の進行による輸入品や原材料価格の高騰、海外では中東・欧州での地政学リスクや新興国経済が減速するなど懸念要因が数多くあり、不透明な状況で推移するものと思われます。
平成24年からスタートいたしました前中期経営計画 “CG 12-14”では、基本方針に「構造改革から成長戦略へのシフトチェンジ」を掲げ、成長事業の創出と育成に重点をおいた取り組みを推進してまいりました。最終年度3年目の状況は、繊維事業を中心とした海外事業の取り組みが進み事業規模を拡大することができたものの、当社事業の主力である国内市場の需給状況の回復が進まなかったこと、また為替動向が円高基調から円安方向に急激に振れたことから、原材料や製品の輸入価格上昇への対応が追い付かなかったことなどが主要因となり、数値目標を達成することができませんでした。
繊維事業では、原糸販売分野は、前期より国内工場生産の価値を前面に打ち出した「敷島糸工房®」ブランドを立ち上げ、顧客には富山工場をラボ機能として活用頂くことでストーリー性のある糸の共同開発を進めるとともに、健康志向の高まりを受けて天然繊維へのニーズが増えるなか、無農薬栽培による「オーガニックコットン」綿糸を増産、顧客ニーズに応じた新たな特化型綿糸を打ち出すなど販売拡大に取り組みました。テキスタイル分野は、クールビズに対応した差別化生地「アゼック®」や抗菌・消臭など機能加工品の販売拡大に加えて、新たにユニフォーム向けに開発した、夜間作業などの安全性を確保する高視認性素材「新染組®」、レディースシャツ用途ではストレッチ性の高い織物「フィットフィット」、透け防止素材「ノースルー」、トリコット調織物「オリコット」などのラインアップを強化し新たな顧客獲得に努めました。また新しい消臭加工技術として、30~40歳代のミドル男性の不快な臭いに効果のある「スーパーアニエールM」を株式会社マンダムと共同開発し、2016年春物から肌着や枕カバーなどの分野で商品化を進めます。製品分野は、中国の生産コスト上昇と為替の影響を受け苦戦する状況下、ベトナムでの協力工場の整備が進み生産対応が可能となってまいりました。また海外事業は、Made in Japanの評価が高い中東市場では、従来からの民族衣装生地に消臭などの機能を加えた機能加工品や周辺商品への提案を進めたことにより販売が拡大、またタイ国においては子会社による繊維商社の買収などを進めた結果、事業が拡大いたしました。しかしながら、インドネシアの海外生産子会社ではルピア安の影響を受けて現地需要家の購買力が低下、また中国事業では人件費が上昇するなど事業環境が悪化する状況にあり、現地ニーズに応じた商品開発や当社独自の機能素材を中心にした市場開拓に注力するとともに、海外生産基盤の再構築を急ぎ進めております。
産業材事業では、ドライヤーカンバス事業・フィルタークロス事業ともに、国内市場の縮小が進む状況にある中、トップメーカーのシェア維持とコスト削減の徹底により収益の確保に努めました。一方ドライヤーカンバスの海外市場では、東南アジアなどを中心に需要の拡大を見込んでおり、中国の現地子会社を基点とした市場獲得の取り組みを行いました。成長事業として位置づけております複合材料(FRP)事業は、期待している航空機部材の受託が遅れておりますが、今後の市場拡大に向けて、製造設備の拡充や品質保証体制の構築が進み、新たに航空機関連の加工事業が立ち上がるなど進展がありました。もう一つの成長事業であります化成品事業は、食品分野でパートナー会社との提携強化が奏功し事業が拡大、また新アイテムの開発や新たな業務の受託が進むなど成果がありました。
不動産・サービス事業は安定的な収益を見込む分野であり、不動産賃貸、物流、リネンサプライ、ゴルフ場事業等、それぞれの事業分野において、収益基盤の維持・拡充を進めました。
このような事業環境の下、当社グループにおきましては、本年4月から新たな中期経営計画 “CG NEXT 15-17”をスタートさせ、当社グループのこれからの持続的な成長に向けて、新たな取り組みに挑戦してまいります。
新中期経営計画の策定にあたっては、あらためてグループ経営理念を定義するとともに、2020年を目標とする長期経営ビジョンの検討を行い、明示することにいたしました。
[経営理念]
「シキボウグループのものづくり技術・ものづくり文化で新たな価値を創造し、健康で安心・安全・快適な暮らしと環境にやさしい社会の実現に貢献する」
[長期経営ビジョン]
<我々が目指すありたい姿>繊維、産業材、不動産・サービスのそれぞれの事業領域で「豊かなライフスタイルの実現」、「産業の発展を支える」存在感のある企業集団を目指す。
<2020年目標>売上高:600億円 営業利益:50億円
<全体イメージ>
新中核事業:「化成品」「複合材料」を発展的拡大。
事業領域拡大:既存事業の中から新たな事業領域を創出し育成を図る。
①繊維機能加工から衛生・メディカル関連分野、健康分野。
②水処理部材やフィルターから環境分野、など。
既存事業:「繊維」「産業資材」「不動産サービス」事業の選択と集中による経営効率の向上。
“CG NEXT 15-17”は、当社グループの持続的成長に向けた、長期ビジョンの第2ステージに位置づけます。
“CG NEXT 15-17”の基本方針には、「『稼ぐ力』『ものづくり力』『事業環境対応力』を高めて成長を実現する」を掲げます。①シキボウ独自の差別化戦略の遂行による“稼ぐ力”の構築、②生産基盤である現場力の強化による“ものづくり力”の向上、③“環境変化への対応力”を強め、事業改革に素早く取り組むことで、業績と企業価値の向上を目指してまいります。
“CG NEXT 15-17”の基本戦略は次の4項目となります。
①新中核事業の発展的拡大
②海外オペレーションの拡張と販売の伸長
③基盤事業の選択と集中による収益向上・業容の拡大
④グループ経営力の総合力強化
①新中核事業の発展的拡大
成長戦略の最重点事業として、機能材料事業の化成品と複合材料を前中期経営計画の「創出」段階から「発展拡大」段階へステップアップし、中核事業化に向けた取り組みを加速します。
化成品事業の食品分野ではパートナー会社との協業をさらに発展させ、新しい商品開発を進めるとともに、化学品分野では海外の需要拡大に応じた事業活動に注力し業容拡大を図ります。複合材料事業は、航空材用途の炭素繊維複合材料(CFRP)では、日本の航空機産業が飛躍期を迎える状況にある中、サプライチェーンの一翼を担う企業となるべく、品質保証体制の一層の充実、一貫生産体制の構築に取り組むことで顧客企業との揺るぎの無い信頼関係を築きます。またガラス繊維複合材料(GFRP)は、電気絶縁・水処理用途の販売拡大に加えて、軽量、防錆、耐薬品などの特性を活かした用途開発を加速し、新しい市場の創出に努めることで事業の拡大を図ってまいります。
②海外オペレーションの拡張と販売の伸長
シキボウの「ものづくり力」と海外の低コスト生産を強みにした生産基盤の増強を図り、東南アジアを中心にした海外オペレーションの拡張をめざします。既存のタイ・インドネシア・中国の生産子会社に加えて、新たに現地提携先との共同展開で生産基盤を構築し、市場が求めるジャパンクオリティーや当社独自の機能・素材による製品づくりを進め販売を伸長いたします。
③基盤事業の選択と集中による収益向上・業容の拡大
基盤事業は得意とする事業領域に経営資源の集中を行い、経営効率の向上に努めることで確固たる収益基盤の構築を図ります。まずは、経営環境の悪化により繊維事業の中の赤字事業の黒字化を全速力で進め事業構造改革を早期に完了させます。
また繊維、産業材、不動産・サービスのそれぞれの事業で、他社には真似のできない独自の商品・技術・サービスを創出し差別化による事業戦略を進めます。自社工場を持つメーカーの強みを活かした活動、顧客ニーズにお応えする取り組みを強化することで、特定市場においては無くてはならない存在として信頼の獲得に努めます。さらに業容拡大に向けては、当社の有する加工技術や素材の中からニッチでも独自の力を発揮できる分野を探索し中長期の視点で事業を育成してまいります。
④グループ経営の総合力強化
基本方針に掲げます「成長の実現」に向けてグループ経営基盤の強化を図ります。グループ会社との交流と連携を深め、経営資源であります「人」「物」「金」のより効率的な活用を図ることで、経営の総合力を高めてまいります。
「人材」では、成長戦略を遂行するチャレンジ精神を持った人材育成のため、早期選抜により海外事業等の経験を通して、将来を担う経営リーダー、グローバル人材の強化に努めます。
「財務」では、有利子負債の圧縮を図り、財務体質を強化いたします。
「組織・制度」では、会社法・コーポレートガバナンスコードへ適切に対応することにより、経営の健全性や透明性をより一層を高め、CSR活動や環境活動報告の充実を図ってまいります。
以上のとおり、新中期経営計画“CG NEXT 15-17”の遂行により、最終年度(平成29年度)の業績目標は、連結売上高520億円、営業利益38億円、経常利益32億円、当期純利益18億円を計画しております。