有価証券報告書-第78期(2023/09/01-2024/08/31)

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2024/11/25 9:36
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142項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概況は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、円安による物価の高騰や金利・賃金の上昇等がありながらも、史上最高値を更新する株価に見られるように「失われた30年」からの脱却を背景に様々な指標が30数年ぶりに更新されております。長年続いた日本のデフレ経済が終焉し、インフレ社会が現実となり、時代の転換期を迎えております。
当アパレル・ファッション業界におきましては、お客様の外出機会の増加やインバウンド需要の拡大により緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、気候変動、コロナ後のリベンジ消費の反動や急激な物価上昇等による消費マインドの低迷が懸念され、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経営環境の中、当社グループは「ものを創り 人を創り お客様と共に心豊かな毎日を創る」という不変のミッションのもと、人々のライフスタイルや価値観が様変わりする中で、いつの時代でも どのような環境下でも、お客様の不満や問題を解決し 求められるものを提供し 最初に想起される真のブランド「シン・ブランド創り」を目指しております。
これらを背景に始動した中期ビジョン「Yamato 2026」では10年後を視野に、既顧客の活性化を前提としながらも、次の世代の潜在顧客獲得に より比重を置いた戦略を実践してまいります。そして、10年後のあるべき姿として、次の世代のお客様が当社のブランドを認知認識し、私たち創り手の意図を理解し、詳細な特徴を語り他者へ共有できる、更にはお客様同士も共鳴できる状態。お客様も社員も誇れる真のブランドになっている姿を目指してまいります。
基幹事業である「クロコダイル」は、「“大人のTPO”をスマートに演出するブランド」をコンセプトに、改めて原点である顧客起点に立ち返り、既顧客の満足度向上と活性化に繋がる商品の強みや付加価値を戦略的に構築してまいります。
潜在顧客の獲得に向けましては、クロコダイルグループにおける先進的な役割を担う2つの「ストラテジックライン」に注力してまいります。デザイン性トレンド性を最も重視したラインである「クロコダイル コード」は、2024年春夏から商品構成を拡充し、アパレルに加え、足元も含めたスタイル/コーディネート提案を強化しております。もう一方の「スウィッチモーション クロコダイル」は、先進的なスポーツ業界が取り組んでいる工夫や進化といった要素を取り入れ、「もの創り」を最も重視したラインとなり、引き続き戦略的に提供価値の構築を目指してまいります。
更に商品、店舗、コミュニケーション等すべてにおいて一貫性を保ち提供することで、お客様のブランドに対する認知認識を深め顧客を獲得し、事業の持続的な成長を目指してまいります。
「創造的な移動を続ける都市生活者のための機能服」をコンセプトに、オンラインショップをベースに展開する「CITERA(シテラ)」は、常に快適で洗練された時代に響くスタイルを創り出し、ブランドの顔となる商品開発等に引き続き注力することで更なる売上拡大を目指してまいります。また、米国発アウトドアファッションブランド「Penfield(ペンフィールド)」と、ハワイ発カジュアルサーフブランド「Lightning Bolt(ライトニングボルト)」は、ブランド認知度と価値向上に注力し、ライセンス事業の更なる拡大を目指してまいります。
一方、当社グループの物流業務を請け負う子会社ヤマト ファッションサービス株式会社は、自動ソーター及び自動製封函機に加え、新たにカメラ認証システムを導入し業務の自動化や省人化を推進することで、在庫管理や入出荷業務の精度向上に努めるとともに物流費や光熱費の高騰にも対応し、更なる生産性向上を図ってまいります。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(ア)財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、109億8千1百万円となり、前連結会計年度末と比べ4億6千6百万円増加いたしました。現金及び預金と有価証券を合わせた手元流動性資金は72億1千7百万円から2億3千7百万円増加し、74億5千5百万円となりました。
当連結会計年度末における固定資産は、130億2千5百万円となり、前連結会計年度末と比べ10億6千4百万円増加いたしました。主な要因は、投資有価証券が8億1千3百万円、建物及び構築物が1億9千3百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は240億7百万円となり、前連結会計年度末と比べ15億3千万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は53億6千8百万円となり、前連結会計年度末と比べ10億9百万円増加いたしました。主な要因は、電子記録債務が7億8千6百万円、1年内返済予定の長期借入金が7千2百万円増加し、支払手形及び買掛金が1億4百万円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末における固定負債は12億9千万円となり、前連結会計年度末と比べ2千8百万円減少いたしました。主な要因は、繰延税金負債が1億8千万円増加し、長期借入金が2億2千万円減少したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は66億5千8百万円となり、前連結会計年度末と比べ9億8千1百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は173億4千8百万円となり、前連結会計年度末と比べ5億4千9百万円増加いたしました。主な要因は、その他有価証券評価差額金が5億5千万円増加したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は72.3%(前連結会計年度末は74.7%)となりました。
(イ)経営成績
当連結会計年度における経営成績は、売上高が211億3千9百万円(前年同期比1.6%増)となりました。利益面では、売上総利益率は56.7%(前年同期比0.7ポイント減)となり、販売費及び一般管理費は117億3千1百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益は2億6千2百万円(前年同期比13.2%減)、経常利益は3億8千5百万円(前年同期比34.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3億5千2百万円(前年同期比37.4%減)となりました。
セグメントごとの売上高では、繊維製品製造販売業208億6千4百万円(前年同期比1.7%増)、不動産賃貸事業2億7千5百万円(前年同期比4.7%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により10億3千7百万円増加し、投資活動により6千2百万円減少し、財務活動により5億3千4百万円減少したことにより、前連結会計年度末と比べ4億3千7百万円増加し、当連結会計年度末には74億5千5百万円となりました。
なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は10億3千7百万円(前年同期は得られた資金4億7千3百万円)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益3億9千9百万円、棚卸資産の増加2億1千3百万円、仕入債務の増加6億8千1百万円、その他負債の増加8千9百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は6千2百万円(前年同期は使用した資金1億7千4百万円)となりました。主な要因は、有価証券の売却及び償還による収入2億円、有形固定資産の取得による支出1億5千6百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入1億6千2百万円、投資有価証券の取得による支出2億1千9百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は5億3千4百万円(前年同期は得られた資金1億1千1百万円)となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出1億4千7百万円、配当金の支払額3億6千9百万円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度は当社グループ内での生産は行っておりませんので、記載を省略しております。
(2)仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(アイテム別)
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
繊維製品製造販売業カットソーニット2,672,48398.9
布帛シャツ1,599,684110.0
横編セーター1,055,818100.9
アウター2,472,736104.5
ボトム1,058,798109.3
小物・その他450,927111.0
9,310,450104.1
不動産賃貸事業--
合計9,310,450104.1

(顧客別)
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
繊維製品製造販売業メンズ4,951,489101.3
レディス4,355,951107.5
その他3,00874.4
9,310,450104.1
不動産賃貸事業--
合計9,310,450104.1

(注)金額は、仕入価格によっております。
(3)受注実績
受注生産を行っていないため、記載を省略しております。
(4)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
①セグメント販売実績
(アイテム別)
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
繊維製品製造販売業カットソーニット6,260,729100.0
布帛シャツ3,715,649105.0
横編セーター2,327,99199.3
アウター5,294,56999.5
ボトム2,244,954107.6
小物・その他1,020,813105.9
20,864,708101.7
不動産賃貸事業275,20895.3
合計21,139,916101.6

(顧客別)
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
繊維製品製造販売業メンズ10,826,24999.9
レディス9,920,342104.1
その他118,11682.0
20,864,708101.7
不動産賃貸事業275,20895.3
合計21,139,916101.6

②ブランド別販売実績
区分金額(千円)構成比(%)前年同期比(%)
クロコダイル19,254,20591.1101.5
その他1,885,7118.9103.0
合計21,139,916100.0101.6

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成は、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りは過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる方法により行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果と異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 (ア)財政状態」をご参照ください。
③当連結会計年度の経営成績の分析
(ア)売上高
当連結会計年度における売上高は、211億3千9百万円(前年同期比1.6%増)となりました。
基幹事業である「クロコダイル」グループにつきましても前年同期比2%の増収となり、既存店も全社ベースで前年同期比2%増となりました。
今期、上期は全般順調に推移いたしました。下期は前年のコロナ禍からの反動による市況の好転を想定し、積極的な仕入計画にて臨みました。しかしながら、下期初月である3月で厳しい寒の戻りに直面し、春物におけるプロパー販売が低迷。シーズン前半に崩れた在庫バランスが尾を引き、その結果シーズン後半である8月の主力商材(カットソー)の品揃えが欠落することとなり、下期の既存店売上は前年同期比1%減と僅かながら減少いたしました。なお、通期における客数については前年同期比100%となり、客単価については前年同期比102%となっております。
Eコマースは、前年同期比14%増となり、予見されたように伸長率は少しなだらかになりつつありますが、引き続き順調に成長しております。中でも重要な位置づけであるクロコダイルアプリはその利用者が順調に拡大し、総会員数は約96万人に到達。100万人の大台も見えてきており、今後も更なる売上の伸長を図るとともに、利益重視の運営を行ってまいります。
(イ)売上総利益率、販売費及び一般管理費、営業損益
当連結会計年度における売上総利益率は、56.7%(前年同期比0.7ポイント減)となりました。
下期初月である3月で厳しい寒の戻りに直面し、春物におけるプロパー販売が低迷したことで、それ以降に在庫消化を優先したため粗利率が低下する結果となりましたが、円安や原材料価格の高騰が続く中でも、生産地の東南アジアシフトや付加価値の高い商品開発とスタイル提案を推し進めることにより適切な価格転嫁と上代設定の見直しを実現し、原価率は改善されております。
販売費及び一般管理費は、117億3千1百万円(前年同期比0.7%増)となりました。
当社が目指す「シン・ブランド創り」を実践するべく、あるべき店舗の姿へ向けた新什器の開発や、40年ぶりとなったTVCM、直営店の出店等、積極的な投資を継続的に行ってまいりました。また、当社の東京本社ビルの資産価値向上を目的とした補修工事も費用計上しておりますが、販売費及び一般管理費の総額は計画内に収まっております。
この結果、当連結会計年度における営業利益は、2億6千2百万円(前年同期比13.2%減)となりました。
(ウ)税金等調整前当期純損益
当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、3億9千9百万円(前年同期比29.8%減)となりました。
(エ)親会社株主に帰属する当期純損益
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、3億5千2百万円(前年同期比37.4%減)となりました。
④当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2020年8月期2021年8月期2022年8月期2023年8月期2024年8月期
自己資本比率(%)75.575.974.874.772.3
時価ベースの自己資本比率(%)35.031.926.025.828.7
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)-0.80.72.10.7
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)-158.6220.267.0129.5

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(注5)2020年8月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
⑤経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑥資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金及び設備投資資金は、主として営業活動によるキャッシュ・フローである自己資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入を実施することを基本方針としております。
この方針に従い、当連結会計年度における運転資金及び設備投資資金については、自己資金により充当しました。
今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金の他、店舗の出店及び改修などの設備投資資金等であります。これらの資金についても、基本方針に基づき、主に自己資金により充当する予定でありますが、必要に応じて金融機関からの借入を実施する等、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要な資金を調達してまいります。
⑦経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主資本の効率的運用及び収益性の追求の観点から、ROE(自己資本当期純利益率)を重要な経営指標ととらえ、その向上を目指して経営に取り組んでおります。
当連結会計年度におけるROEは、2.1%と前年同期比1.3ポイント減少しました。