有価証券報告書-第107期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 11:38
【資料】
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【項目】
146項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
② 生産、受注及び販売の状況
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により上半期に大きく減退し、その後、段階的な経済活動の再開や、政府の各種政策により持ち直しの動きが見られましたが、足元では再度感染者数が増加に転じるなど、予断を許さない状況が継続しております。
世界経済は、ワクチンの普及や経済対策などにより景気が回復基調の国が見られるものの、一方では大規模な感染拡大が再発している国があるなど、地域によって大きく差が見られる状況で、また広範囲且つ長期化をしている米中対立の影響などもあり、先行きは非常に不透明な状況が続いております。
このような経済環境の下、当社グループは積極的な販売活動を展開いたしましたが、全世界的な景気悪化の影響を受け、当期の売上高は190,673百万円と前期比14.3%の減少となりました。
損益面につきましては、経営全般にわたる業務の効率化・合理化施策を推進してまいりましたが、経常利益は前期比3,816百万円減少の4,749百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比5,187百万円減少の1,230百万円となりました。
(ガラス事業)
百万円売上高営業利益(損失)
当 期112,398△3,020
前 期144,23624
増減率△22.1%-

建築用ガラスにつきましては、国内建築需要の減少に加えて、不採算取引を見直したことによる影響、および米国建築用加工ガラス事業からの撤退により、売上高は前期を下回りました。
自動車用ガラスにつきましては、国内外共に新型コロナウイルス感染症の影響による上半期の大幅な販売減により、国内、海外共に売上高は前期を下回りました。
ガラス繊維につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による上半期の自動車分野の販売減が影響し、売上高は前期を下回りました。
以上、ガラス事業の売上高は112,398百万円(前期比22.1%減)となり、損益につきましては3,020百万円の営業損失(前期比3,044百万円の悪化)となりました。
(化成品事業)
百万円売上高営業利益
当 期78,2747,084
前 期78,2327,951
増減率0.1%△10.9%

化学品につきましては、主力のハイドロフルオロオレフィン製品が、次世代溶剤の販売は順調に推移したものの、断熱用発泡剤が新型コロナウイルス感染症の影響を受け、出荷量が減少したことから、売上高は前期を下回りました。
ファインケミカルにつきましては、医療関連製品の販売は世界的に不急の手術が先送り傾向にあることから低調に推移したものの、堅調な半導体需要により半導体用途の特殊ガス関連製品の出荷が増加し、農薬関連製品、リチウムイオン電池用電解液製品の販売も好調に推移したため、売上高は前期を上回りました。
肥料につきましては、一部製品の需要が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。
以上、化成品事業の売上高は78,274百万円(前期比0.1%増)となり、損益につきましては7,084百万円の営業利益(前期比867百万円の減少)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ、株価の上昇などで投資有価証券が8,283百万円増加する一方、有形固定資産が減価償却や減損処理、米国子会社での不採算設備の廃棄等により13,436百万円、繰延税金資産が3,665百万円、売上債権が3,463百万円それぞれ減少したことなどにより、11,520百万円減少し284,906百万円となりました。
負債はコマーシャル・ペーパーの償還などによりその他流動負債が11,819百万円、特別修繕引当金が3,249百万円、仕入債務が2,285百万円それぞれ減少したことなどにより、16,265百万円減少し115,822百万円となりました。
純資産は利益剰余金が1,212百万円、為替換算調整勘定が1,668百万円それぞれ減少する一方、株価の上昇によりその他有価証券評価差額金が6,358百万円増加したことなどにより、4,744百万円増加し169,083百万円となりました。また、自己資本比率は3.8%増加し58.1%となりました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ、1,072百万円増加し、26,081百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金収支は、税金等調整前当期純利益4,858百万円、減価償却費12,850百万円、減損損失の計上2,814百万円などにより、17,918百万円の収入(前期は17,226百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金収支は、有形固定資産の売却による収入3,154百万円の収入の一方で、有形固定資産の取得による支出7,479百万円などにより、3,737百万円の支出(前期は7,856百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金収支は、コマーシャル・ペーパーの償還による支出11,000百万円、配当の支払による支出3,035百万円などにより、13,121百万円の支出(前期は5,295百万円の支出)となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(イ)資本政策の基本的な方針について
当社は、中長期的な企業価値の向上を目指し、着実な構造改革により継続的な利益成長と株主還元を実現していくために中期計画を策定しておりますが、次期中期計画については、新型コロナウイルス感染症の影響やガラス事業における構造改革の進捗などの特殊要因の想定が困難な状況のため、2022~2024年を対象期間として策定することを予定しております。そのため次期(2022年3月期)につきましては中期計画の対象期間外となりますが、前期中期計画(2018~2020年)の基盤にあった利益の配分及び資本効率等を総合的に勘案した資本政策の基本的な方針を継続することとしております。その具体的内容は以下のとおりとなります。
(a)資本政策
企業価値の最大化を目的として、投資と資金調達の最適化を重視した資本構成を目標とする。
<基本方針>・調達 資金コストと継続性(リスク)のバランスを考慮し、適切な方法を組み合わせて、計画的に安定した調達を行う。
・運用(投資) 調達資金コストを上回る利益、投下資本以上のキャッシュ・フローを産みだす源泉に選別して資本を投入する。
・分配 産み出したキャッシュは、株主還元、投資、財務規律のバランスを考えた配分を基本にして適切な利益分配を行う。
(b)資本政策に関連する方針
(ⅰ)収益性・効率性について
指 標目 標
ROE(自己資本利益率)8%以上

資本効率性を意識し、資本コストを上回る収益性を達成すべくROE(自己資本利益率)を経営指標とし、その目標を8%以上といたしますが、前期中期計画(2018~2020年)においては、8%以上を達成するための通過点として、最終年度の目標利益から6%としておりました。
次期(2022年3月期)の業績見通しを鑑みますと、目標には未達の状況となりますが、利益の増大と資産圧縮による効率化により、継続して改善を進めて参ります。
(ⅱ)財務の健全性について
指 標目 標
自己資本比率現状維持

資金調達は、資本・負債コストを考え、現状の金融環境(低金利)を活用して計画的に実施し、有利子負債による調達については、借入や社債発行による複数の選択肢をバランスよく組み合わせて実施して参ります。
そのためには、中長期的に事業や金融環境の変動などのリスクに耐えうる健全な財務規律により信用力を確保し、格付けを維持していくことが必要と考え、上記目標としております。
(ⅲ)利益還元の充実について
指 標目 標
株主総還元性向30%以上
DOE(自己資本配当率)1.8%

利益配分にあたりましては、企業体質の強化をはかるため、研究開発や設備投資など将来の事業展開のための内部留保の充実を考慮しつつ、長期的視点に立って業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。
株主への利益還元については、前期中期計画(2018~2020年)では株主総還元性向30%以上の経営目標に加え、利益額の変動による影響を緩和し、より安定的な配当を実施すべく、DOE(自己資本配当率)を指標として設定し、その目標は最終年度の経営目標でありますROE6%をベースとして1.8%に設定しておりました。
次期(2022年3月期)については、前期中期計画(2018~2020年)の利益還元の目標を継続することとし、利益の還元に努めて参ります。
なお、上記利益還元の目標指標は、中期計画策定毎にROEなどの指標設定と併せて見直すことといたします。
また、自己株式の取得は資本政策の方針に基づき判断し、市場環境を踏まえ上記利益還元を補完すべく機動的に実施して参ります。
(ロ)資金調達
当社グループの資金調達は、(イ)(b)(ⅱ)の方針に基づき、自己資金のほか、金融機関からの借入等による間接調達、資本市場からの直接調達により行っております。
間接調達については、金融機関からの借入について相対での借入枠を十分確保しており、かつ10,000百万円を借入限度額とするコミットメントラインを設定し、長期・短期のバランスを考慮して安定的に調達しております。また、直接調達については、社債の発行等により調達しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は63,483百万円、現金及び現金同等物の残高は26,081百万円、よってネット有利子負債は37,402百万円となりました。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。