有価証券報告書-第84期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 13:08
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1) 重要な会計方針および見積り
当企業集団の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、期末日の資産・負債の計上および会計期間の収益・費用の適正な計上を行うため、見積りや仮定を行う必要があります。連結財務諸表に影響を与え、より重要な経営判断や見積りを必要とする会計方針は以下のとおりであります。
① 貸倒引当金
当企業集団は売掛債権等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権および破産更生債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。相手先の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合、追加の引当金を計上する可能性があります。
② 固定資産の減損
当企業集団は、市場価格、営業活動から生ずる損益等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。
将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。
③ 投資有価証券
当企業集団は、時価のある有価証券と時価のない有価証券を所有しております。
時価のある有価証券は、決算日の市場価格等に基づき時価評価を行い、税効果調整後の評価差額を純資産の部のその他有価証券評価差額金に計上しております。
また、期末における時価等が取得原価に比べ50%以上下落した場合には原則減損処理を行い、30%~50%未満下落した場合には、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行うこととしております。一方、時価のない有価証券は、実質価額が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、回復可能性等を考慮して減損処理を行うこととしております。
なお、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在の帳簿価額に反映されていない損失が生じ、減損処理を行う可能性があります。
④ 繰延税金資産
当企業集団は、財務諸表と税務上の資産または負債の額に相違が発生する場合、将来減算一時差異に係る税効果について、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産のうち、実現が不確実であると考えられる金額に対し評価性引当額を計上して繰延税金資産を減額しております。繰延税金資産の実現の可能性により、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 退職給付に係る資産および負債
当企業集団は、年金数理計算に基づいて退職給付に係る資産および負債ならびに退職給付費用を計上しております。年金数理計算は割引率、年金資産の長期期待運用収益率、昇給率、退職率等の前提条件に基づいて行われており、これらの前提条件の変更は連結財務諸表に影響を与えます。割引率の低下や年金資産運用における期待運用収益と実際運用収益の差異は、翌期以降の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の世界経済は、ユーロ圏における景気の持直しや中国経済の安定的な成長に加え、米国では景気回復基調が続くなど、総じて緩やかな回復傾向を維持しました。また、日本経済は、政府による経済政策を背景に円安が進み、輸出環境が改善する中で、企業業績の回復が見られ、雇用・所得環境の改善や個人消費の増加につながるなど、景気回復の動きが広がりました。
当企業集団が取り扱っている製品の主な需要先でありますエレクトロニクス業界におきましては、パソコンの販売不振が続きましたが、スマートフォンやタブレット端末の需要は引き続き拡大したことから、総じて堅調に推移しました。
このような情勢の下、当企業集団は、2020年のありたい姿を実現させるため、「高付加価値製品による感動(満足できる性能、コスト、品質)を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す。」という経営ビジョンを掲げ、当連結会計年度を初年度とする3カ年の中期計画「tok中期計画2015」を始動させました。本中期計画は、「各地域ユーザーに対する密着戦略」、「事業ポートフォリオの変革」および「グローバル人材の開発」を全社戦略に据え、過去最高益の更新を目指すとともに、持続的成長の基礎となる事業基盤の強化を図るものであります。
この一環として、前年度に設立した韓国の新会社では、販売・開発活動を開始するとともに、先端材料の安定的な量産に向けて生産体制を整備してまいりました。また、主要製品の収支改善を進めたほか、高付加価値製品の拡販や最先端微細加工技術の開発にも注力し、着実な成果をあげてまいりました。さらに、「再生可能エネルギー分野」や「オプトエレクトロニクス分野」等、広範な分野において、新たな事業の柱となる製品の開発に取り組むとともに、グローバルに活躍できる人材の創出・育成を行う新たな教育プログラムを導入いたしました。
加えて、当社の国内営業所を本社に集約するなど、経営の合理化に努めたほか、国内外の各拠点における強固な情報管理体制の構築や危機管理体制の強化を着実に進め、経営リスクの低減等を図り、経営全般にわたる諸施策を講じてまいりました。
この結果、当連結会計年度の当社企業集団の売上高は、752億69百万円(前年度比3.2%増)となりました。利益面におきましては、営業利益は100億25百万円(同27.3%増)、経常利益は122億69百万円(同42.4%増)、当期純利益は過去最高益である75億49百万円(同38.7%増)となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当企業集団の経営成績に重要な影響を与える可能性のある要因として、当連結会計年度末現在において以下のとおりと認識しております。
当企業集団が事業展開する業界は、素材価格の高騰や販売価格の低下の動きが見られるほか、技術革新が速く製品ライフサイクルが短くなり、一方で研究開発用機器は高額化してきております。また、当企業集団においては海外事業の進展に伴い、為替相場の変動による影響や各国における各種法令の重大な改変または遵守できなかった場合等、海外での事業活動を取り巻く様々なリスクが顕在化するという事態も懸念されます。加えて、当企業集団が提供している多数の製品をユーザーが使用する過程において、欠陥により不具合が生じた場合、原則として生産物責任賠償保険での対応を行いますが、負担金額すべてを保険金でカバーできず、経営成績に重要な影響を与える可能性もあります。
(4) 戦略的状況と見通し
当企業集団は、前掲の経営ビジョンを具現化するため、「既存事業領域の深耕・拡大を図るとともに、新規事業領域の早期立上げを目指すこと」を中長期的な経営目標としております。
この目標の実現に向けて、3カ年の中期計画「tok中期計画2015」の諸施策を着実に実行してまいります。
① 各地域ユーザーに対する密着戦略
世界の各地域ユーザーに密着し、ユーザーの将来戦略を熟慮した上、ユーザーが満足できる製品、サービスの一層の向上に努めてまいります。
② 事業ポートフォリオの変革
新規事業創出の早期実現に向けた施策実行のほか、製品の性能、品質およびサービスの差別化を図り、高付加価値製品比率を改善することにより、事業ポートフォリオを変革してまいります。
③ グローバル人材の開発
グローバル化、多様化する外部環境の要求に応えるため、有能な人材を創出、育成するためのプログラムを実行してまいります。
(5) 資本の財源および資金の流動性についての分析
① 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、1,558億59百万円で、前連結会計年度末に比べ101億94百万円増加いたしました。
流動資産は36億11百万円減少し832億47百万円となりました。これは受取手形及び売掛金が3億35百万円、繰延税金資産が1億37百万円増加したものの、現金及び預金が36億99百万円、未収法人税等の減少等により流動資産のその他が3億99百万円減少したことが主な要因であります。
固定資産は138億5百万円増加し726億11百万円となりました。これは繰延税金資産が11億99百万円減少したものの、TOK尖端材料株式会社における生産設備建設等により有形固定資産が135億19百万円増加し、無形固定資産が3億11百万円、退職給付に係る資産が8億96百万円、株式の時価上昇等により投資有価証券が3億92百万円増加したことが主な要因であります。
当連結会計年度末の負債合計は、158億96百万円で、前連結会計年度末に比べ19億29百万円減少いたしました。これは未払法人税等が3億37百万円、賞与引当金が1億1百万円、固定負債の繰延税金負債が3億34百万円増加したものの、前受金が6億52百万円、流動負債の繰延税金負債が1億64百万円、支払手形及び買掛金が1億48百万円、固定負債の退職給付引当金が15億99百万円減少したことが主な要因であります。
当連結会計年度末の純資産合計は、1,399億62百万円で、前連結会計年度末に比べ121億24百万円増加いたしました。これは配当金の支払21億60百万円があったものの、当期純利益75億49百万円の確保や、為替換算調整勘定が41億4百万円、退職給付に係る調整累計額が13億80百万円、その他有価証券評価差額金が2億88百万円増加したことが主な要因であります。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は87.5%となりました。
② キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加やたな卸資産の減少等がありましたものの、法人税等の支払いや貸倒引当金の減少、前受金の減少等により、前連結会計年度に比べ5億56百万円減少の118億81百万円の資金収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入や投資有価証券の売却による収入がありましたものの、TOK尖端材料株式会社における設備投資等により、前連結会計年度に比べ144億16百万円増加の144億91百万円の資金投下となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の売却による収入がありましたものの、配当金の支払等により、前連結会計年度に比べ10億85百万円増加の24億71百万円の資金支出となりました。
これらの活動の結果、現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末の431億81百万円から40億23百万円減少し391億57百万円となりました。
当企業集団の運転資金および設備投資資金は、内部資金を使用しておりますが、平成27年3月期に必要な運転資金および設備投資資金については、主として内部資金で賄う予定であります。
(6) 経営者の問題意識と今後の方針について
当企業集団は、「技術のたゆまざる研鑽」、「製品の高度化」、「社会への貢献」、「自由闊達」の4つの経営理念の下、「高付加価値製品による感動(満足できる性能、コスト、品質)を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す。」という経営ビジョンを掲げ、全社をあげて持続的な企業価値の拡大を実現し、社会の進歩発展に貢献していく所存であります。