有価証券報告書-第102期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/20 15:50
【資料】
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【項目】
131項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中において将来について記載した事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断、予想したものであります。なお、文中に記載した金額は、四捨五入で表示しております。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成しておりますが、連結財務諸表の作成に当たっては見積りや仮定によることが必要となります。使用する見積りや仮定は、これまでの経験、業界標準、経済状況および現在入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点で最も合理的と考えられるものを継続的に採用しております。ただし、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があり、また、これらの見積りは異なった仮定の下では違う結果となることがあります。
なお、重要な会計方針のうち、見積りや仮定等により連結財務諸表に重要な影響を与えると考えている項目は、次のとおりであります。
① 退職給付会計
退職給付債務および年金資産は、年金数理計算に用いられる仮定に左右されます。仮定となる割引率、将来の給与水準、年金資産の長期期待運用収益率、退職率および死亡率については、現在の統計データ、年金資産に対する実際の長期収益率その他の要因に基づき設定しております。これらの仮定に基づく見積りと実績との差異は毎年償却を行っており、将来における営業費用等に影響を与えます。
② 繰延税金資産
繰延税金資産の回収可能性については、将来の課税所得を見積り、評価しております。また、実現可能性が高いと考えられる金額まで減額するために評価性引当額を計上しております。課税所得を見積る際の利益計画は、事業リスク等を十分に考慮し保守的に作成しておりますが、その見積り額が増減した場合は繰延税金資産が増減いたします。
③ のれんおよび販売権
のれんおよび販売権については、原則年1回、減損の判定を行っております。回収可能価額の見積りは、主に割引キャッシュ・フローを用いますが、将来キャッシュ・フロー、割引率等の多くの見積りや前提条件を使用しております。将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、回収可能価額が下落し、減損損失が発生する可能性があります。
(2) 経営成績の分析
① 売上高、売上原価および売上総利益
(売上原価には返品調整引当金繰入額および戻入額を含めております)
当連結会計年度の売上高は6,004億円であり、前連結会計年度より267億円、4.7%増加いたしました。成長ドライバーである抗がん剤「ハラヴェン」、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」、疼痛治療剤「リリカ」等が伸長し増収となりました。がん関連領域製品の売上高は、1,009億円(同0.5%増)となりました。また、てんかん領域製品の売上高は、AMPA受容体拮抗剤「ファイコンパ」も貢献し、244億円(同48.3%増)と大幅に伸長いたしました。DNAメチル化阻害剤「ダコジェン」の権利譲渡に伴う収入は、売上高に計上しております。
当連結会計年度の売上原価は1,882億円であり、前連結会計年度より141億円増加し、売上原価率では1.0ポイント上昇いたしました。その主な要因は、「アリセプト」および「パリエット/アシフェックス」の売上高減少に伴う製品構成の変化による影響であります。
その結果、当連結会計年度の売上総利益は4,122億円となり、前連結会計年度より126億円、3.2%増加いたしました。
② 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の研究開発費を除く販売費及び一般管理費は2,105億円であり、前連結会計年度より18億円、0.9%増加いたしました。その主な要因は、米国での新製品への積極的な投資によるものであります。当連結会計年度の研究開発費は1,305億円であり、前連結会計年度より102億円、8.4%増加いたしました。
③ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は711億円となり、前連結会計年度より6億円、0.9%増加いたしました。
④ 営業外損益および特別損益
当連結会計年度の営業外損益は62億円の費用(純額)であり、前連結会計年度より費用(純額)が13億円増加いたしました。その主な要因は、為替差損の増加であります。また、特別損益は67億円の損失(純額)(前連結会計年度は59億円の利益(純額))となりました。その主な要因は、グローバルでの構造改革に伴う特別損益の計上によるものであります。
⑤ 当期純利益
当連結会計年度の当期純利益は330億円であり、前連結会計年度より153億円、31.7%減少いたしました。その主な要因は、グローバルでの構造改革に伴う特別損益の計上および復興法人税の1年前倒し廃止に伴う税金費用の増加によるものであります。1株当たり当期純利益は115円56銭となり前連結会計年度より53円82銭減少いたしました。
⑥ 包括利益
当期純利益に少数株主損益およびその他の包括利益を加減した包括利益は、729億円であり、前連結会計年度より223億円、23.4%減少いたしました。その主な要因は、円安の影響を受けて為替換算調整勘定が大きく変動したことによるものであります。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「4[事業等のリスク]」に記載しております。
(4) 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針については、「3[対処すべき課題]」に記載しております。
(5) 翌連結会計年度の連結業績見通し
当社は翌連結会計年度第1四半期より、日本基準に替えて国際会計基準(IFRS)にて連結財務諸表を開示することとしております。このため、翌連結会計年度の連結業績見通しはIFRSに基づき作成しており、日本基準に基づく連結業績見通しは作成しておりません。なお、連結業績見通しの当連結会計年度からの増減率は、当連結会計年度の連結財務諸表(IFRS)の監査手続が終了していないため、参考値として表示しております。
① 売上収益
オンコロジー(がん)とニューロロジー(神経)の2領域のグローバルビジネスユニットと4リージョンのグローバル・ビジネス・マトリクス体制の導入により、新製品「ハラヴェン」、「ファイコンパ」、「ベルヴィーク」のさらなる伸長、加えてアジアを含む新興国市場において高成長を実現いたします。一方で日本における薬価改定、米国における「アシフェックス」の独占販売期間満了に伴う売上減少の影響などにより、連結売上収益は当連結会計年度から5.6%減の5,660億円を見込んでおります。
「ハラヴェン」は390億円(当連結会計年度比35.4%増)、「ファイコンパ」は95億円(同359.9%増)、「アリセプト」は755億円(同8.7%減)、米国で独占販売期間満了をむかえた「パリエット/アシフェックス」は530億円(同42.0%減)を見込んでおります。
② 利益
グローバル新製品「ハラヴェン」、「ファイコンパ」、「ベルヴィーク」および早期申請・上市をめざす「レンバチニブ(一般名)」の製品価値最大化に向けた投資、さらに将来の成長を担う有望な開発品への研究開発投資、新規進出国での事業基盤構築への投資を積極的に行ってまいります。これらの将来の成長への投資により、当連結会計年度に実施した構造改革による費用効率化を織り込んでいるものの、営業利益は当連結会計年度から20.2%減の530億円、当期利益は当連結会計年度比9.1%減の350億円となる見込みであります。
(6) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、9,455億円(前連結会計年度末より447億円減)となりました。現金及び預金と有価証券の合計は主に社債の償還により減少し、受取手形及び売掛金は米国における減少が影響しております。また、有形固定資産は美里工場の事業譲渡や資産効率化等により、繰延税金資産は将来減算一時差異の解消や税率変更等に伴い、それぞれ減少いたしました。
負債合計は、4,346億円(前連結会計年度末より814億円減)となりました。主な減少要因は、社債の償還および長期借入金の返済、退職給付に係る負債に関する会計基準の変更によるものであります。
純資産合計は、為替変動による海外子会社純資産の円換算額の増加等により5,109億円(前連結会計年度末より366億円増)となり、自己資本比率は53.6%(同6.2ポイント増)となりました。また、負債比率(Net DER)は、前連結会計年度末に比べ0.13ポイント改善し0.14倍となりました。
なお、当連結グループは全体での経営資源配分の最適化を考慮し、グループ全体での投資等の意思決定を行っているため、資産および負債等についてはセグメントに配分しておりません。
*負債比率(Net DER)の算式
(有利子負債(借入金+社債)-現預金-有価証券)÷自己資本
(7) 資金の流動性および資本の財源についての情報
① 資金の流動性
当連結会計年度の営業活動から得たキャッシュ・フローは、857億円(前連結会計年度より125億円増)となりました。税金等調整前当期純利益は582億円、減価償却費は391億円、法人税等の支払額は203億円であります。なお、前連結会計年度差の主な要因は、運転資本の減少および法人税等の支払額の減少によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、262億円の収入(前連結会計年度より44億円増)となりました。3カ月超預金の純減少額は249億円であります。なお、前連結会計年度差の主な要因は、事業譲渡による収入であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,148億円の支出(前連結会計年度より330億円増)となりました。長期借入金の返済による支出は200億円、社債の償還による支出は500億円、配当金の支払は428億円であります。
以上に現金及び現金同等物に係る換算差額の影響を加えた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,539億円(同115億円増)となりました。
[キャッシュ・インカム]
当社グループは、キャッシュ創出力を表す経営指標として、キャッシュ・インカムを使用しております。キャッシュ・インカムは、成長投資、株主還元、借入返済等に使用可能なキャッシュの総額であり、企業の成長性・戦略を検証する尺度と考えております。
当期純利益は330億円、有形・無形固定資産の減価償却費は391億円、のれん償却額は95億円、減損損失は21億円となりました。
その結果、当連結会計年度のキャッシュ・インカムは836億円(前連結会計年度比17.0%減)となり、1株当たりキャッシュ・インカムは293円5銭(前連結会計年度より60円42銭減)となりました。
当社グループでは、連結業績、純資産配当率(連結)およびキャッシュ・インカムを総合的に勘案し、株主の皆様への継続的・安定的な配当を実施していく方針であります。
*キャッシュ・インカムの算式
当期純損益+有形・無形固定資産減価償却費+インプロセス研究開発費+のれん償却額+減損損失(投資有価証券評価損含む)
*1株当たりキャッシュ・インカムの算式
キャッシュ・インカム÷期中平均株式数(自己株式控除後)
② 資本の財源
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、資産合計の16.3%を占める1,539億円であります。当社グループは、主に営業活動から得た資金を財源とし、設備投資および研究開発活動を行っております。
一方、短期借入金は62億円、社債は300億円、長期借入金(1年以内返済予定の長期借入金を含む)は2,112億円となりました。借入債務の通貨別の比率は83%が円建て、17%が米ドル建てとなっております。また、当連結会計年度末における社債および長期借入金の利率は1.46%~3.81%であります。
当連結会計年度末現在における自己資本比率は53.6%となりました。
当社グループの財務戦略は、高い信用格付けを維持するとともに、安定した財務の健全性および柔軟性を確保することを基本としております。
なお、当連結会計年度末における格付投資情報センターによる長期借入債務の格付けは、「AA-」であります。