有価証券報告書-第78期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/27 13:17
【資料】
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【項目】
115項目

対処すべき課題

当社は、追い求めていくべき不変の基本的価値観である「自然と健康を科学する」という経営理念と、社会から必要とされ存在し続ける目的である「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」という企業使命を基本的な理念と位置づけ、理念に基づく経営を実践すべく、諸施策に取り組んでおります。
(1)漢方医学の確立
当社は、国内のどの医療機関・診療科においても、患者様が必要に応じて漢方を取り入れた治療を受けられる医療現場を実現することが重要であると考えており、より多くの医師が漢方を治療に取り入れていただくようになるために、卒前・卒直後・卒後の一貫した漢方医学教育の充実・定着・発展への継続的な支援を強化してまいります。
具体的には、大学医学部・医科大学における医学生への漢方医学教育の支援、臨床研修指定病院における研修医への漢方勉強会での支援、医師への各種漢方セミナーやプロモーション活動を体系立てて継続実施してまいります。
(2)育薬の推進
当社は、国内外での医療用漢方製剤の基礎・臨床研究および米国における開発をより一層推進することを目的として、平成25年度に製品戦略本部を設立しました。これまでも行ってきた「育薬5処方を中心とした基礎・臨床的エビデンスの確立」に加え、「副作用発現頻度調査や相互作用といった安全性データの構築」「育薬5処方他の主要成分レベルでのADME(薬物動態)*の解明」の3つを柱とし、育薬処方をきっかけに使用が広がりつつある他処方の研究体制も整えました。
患者様が安心・安全に漢方製剤を服用し、治療効果を上げられるよう、今後も研究・開発・情報提供活動を充実させてまいります。
*ADME(薬物動態試験): 生体に薬物を投与した後に体内でどのような動態を示すかをみるための試験。ADMEとは、吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion)の略語。
(3)漢方の国際化
当社は、医療用漢方製剤の製造・販売を通じて培った技術・ノウハウと、日本国内の「育薬」研究による基礎・臨床の最新データを米国開発に連携させる体制を整え、「TU-100(大建中湯)」の米国における医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動しております。
現在、米国の医療機関で、POI(術後腸管麻痺)、IBS(過敏性腸症候群)、クローン病(炎症性腸疾患)を対象にPhase-Ⅱ段階の臨床治験を実施しております。
(4)生産能力の増強と品質管理体制の充実
当社は、生産能力の増強を目指し、「既設生産基礎能力の向上」「新生産技術の検討と導入」の2つを推進しております。また、品質管理体制の充実を目指し、「製造販売後安全管理基準と製造販売後品質保証基準の体制強化」「品質保証システムの確立」「新しい品質管理技術の導入」の3つを推進しております。
今後も「製造を科学する」という想いで、労働生産性の向上の実現に向けて取り組んでまいります。
(5)安全な生薬の安定確保
当社は、厳しい品質基準を満たす生薬を安定的に調達するため、「自社管理圃場の拡大」「安全な生薬の生産管理体制の確立」「生薬の加工・品質管理体制の強化および効率化」「原料生薬の価格の安定化」の4つを重点的に推し進めております。
また、野生生薬の栽培化を進め、野生品に頼らない調達の実現による安定化という課題にもチャレンジしてまいります。
(6)開かれた会社の創造
当社は、「社会や人々のお役に立てる企業」「人に優しい企業」という基本基調のもと、人の成長と組織力の向上を目指し、世界に手本のない漢方・生薬事業において、一人ひとりが考え行動し、自らが新しい道を開拓できる人財を養成します。さらに、生薬の栽培・加工等、漢方・生薬事業を通じて、障がい者や高齢者の雇用機会の拡大、日本や中国、ラオスにおける生薬栽培農家の雇用機会の創出を図り、当社グループ独自の人的ネットワークにおける多様性の確立を目指します。
また、当社は、各国生薬産地の自然環境を大切な「資本」と考えた経営を行い、持続的に生薬が調達できるための栽培研究や環境保全対策等、当社独自の環境資本政策を推し進めるとともに、生薬残さの再資源化等、大地を基点とした「循環の仕組み」づくりに、グループ全体で取り組んでまいります。