有価証券報告書-第55期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/27 14:22
【資料】
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【項目】
82項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度における我が国経済は、輸出の減少や原料価格上昇による製造業の低迷がありながらも、堅調な非製造業に支えられて緩やかな景気回復が持続しました。また、世界経済は米中貿易摩擦や英国のEU離脱によって先行きの不透明な状況にあり、米国においては雇用・個人消費は底堅さを維持しているものの、不確実性の高まりを受けて顧客の投資が一部抑制されました。
このような状況の下で当社グループは、戦略的成長分野である航空機や自動車分野で要求される高い品質と安定した供給に対応するために、第一化成を中心に人員及び組織の増強を進めるとともに生産・品質管理体制整備に努め、2019年9月には自動車部品の国際的な品質マネジメントシステム認証であるIATF16949を取得、更に環境マネジメントシステム認証であるISO14001も2020年1月に取得いたしました。製品開発の分野では、人と地球に優しい製品の開発に取り組み、10月には米国農務省(USDA)のバイオプリファードプログラムの認定を受けた商品「Ultraleather Volar Bio」を発売することができました。マーケティング分野では、ウルトラファブリックスが4月にハンブルグ航空機内装ショーへの出展、5月にはロンドンデザインウィークに合わせてショールームでセミナーを開催、7月にはファッションと持続可能性に関する様々な課題に取り組むヘルシンキファッションウィークに出展するなど、当社製品のブランド戦略に沿った積極的なマーケティングを行いました。
以上の取り組みにより販売拡大に努めたものの、主要な顧客である自動車メーカーの内装デザイン変更に伴う自動車用製品の販売の落ち込みが大きく、短期的にはその売上減を他の販売市場で補うには至らず、更にRV用やボート用製品販売の落ち込みが売上減を拡大させることになりました。家具用製品の販売は他市場での販売落ち込みの一部をカバーし、堅調に成長を続けてまいりましたが、下半期に入り家具用を含む多くの販売市場で販売が落ち込んだ結果売上収益は前期比マイナスとなりました。また販売の落ち込みにより工場稼働率が低下し、品質関連費用の計上と合わせて原価率の悪化を招くことになりました。
この結果、売上収益は114億39百万円(前期比3.9%減)、営業利益は9億33百万円(同20.1%減)、税引前当期利益は4億94百万円(同26.5%減)、当期利益は3億65百万円(同3.0%減)となりました。
用途別の売上収益の概況は、次のとおりであります。
家具用
家具用売上は通気性に優れたBrisa®シリーズの堅調な販売や積極的なサンプル提供を通じたマーケティング活動などにより全体として市場を上回って推移しました。また、ここ数年取り組んできた建築プロジェクト向けの営業体制強化により、商社などを経由しないプロジェクト向け直接販売が伸びたことも、家具用全体の売上を下支えしました。
この結果、家具用の売上収益は34億86百万円(同3.4%増)となりました。
自動車用
世界の自動車販売台数の落ち込みとそれに伴うOEMメーカーのコスト削減、ギアシフトのデザイン変更による当社製品の使用数量減などを背景に前連結会計年度に対して減収となりました。一方シート用製品の販売事業は順調で、OEMメーカーとの良好な関係の構築も寄与し、自動車用売上全体の半分を占めるまで拡大しています。
この結果、自動車用の売上収益は32億96百万円(同8.1%減)となりました。
航空機用
前連結会計年度に過去最高を記録したビジネスジェット用の売上は、世界経済の減速と売上に大きく寄与していたプログラムの終了により悪化しました。民間航空機用の売上は新規のプログラム向け製品出荷が始まり前連結会計年度の3倍の数量になりましたが、ビジネスジェット用の売上減を補うには至らず航空機用全体では前連結会計年度に対して減収となりました。民間航空機用シート製品を中心に、航空機用は成長機会が大きく、引き続き戦略上重要な市場と考えております。
この結果、航空機用の売上収益は10億62百万円(同1.9%減)となりました。
その他
その他用途のうち医療用やトラック用製品の売上は堅調に推移したものの、RV用とボート用では中国製品への追加関税や消費者の人気が小型車種へシフトしたことなどを背景に、当社製品への需要が大幅に減少しました。
この結果、その他の売上収益は35億96百万円(同6.8%減)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ2億65百万円増加し、280億17百万円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ2億12百万円増加し、179億65百万円となりました。
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末に比べ53百万円増加し、100億52百万円となりました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2億円増加し、14億48百万円となりました。これは主に税引前当期利益の計上4億94百万円の計上、短期借入金の増加による収入13億5百万円があったことに対し、長期借入金の返済により16億95百万円、棚卸資産の増加により2億65百万円、有形固定資産の取得により2億30百万円等の支出があったことによるものであります。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は12億15百万円(同10.1%増)となりました。
これは主に税引前当期利益4億94百万円、減価償却費及び償却費13億68百万円及び金融費用4億65百万円を計上したことに対し、棚卸資産の増加2億65百万円、利息の支払額4億47百万円及び法人所得税の支払額2億25百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は3億6百万円(同81.4%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は7億7百万円(前年同期は1億19百万円の収入)となりました。これは主に短期借入金の増加13億5百万円があったものの、長期借入金の返済16億95百万円及び配当金の支払いがあったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループはポリウレタンレザーの専門メーカーであり、当該事業以外の異なる事業を営んでおりません。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
用途別の名称当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
前年同期比(%)
ポリウレタンレザー(百万円)6,75895.0

(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。
用途別の名称受注高前年同期比(%)受注残高前年同期比(%)
ポリウレタンレザー(百万円)11,20892.51,43785.2

(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
用途別の名称当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
前年同期比(%)
ポリウレタンレザー(百万円)11,43996.1

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、当社グループの経営陣は連結決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。これらの見積り及び判断・評価は、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因等に基づき行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるためにこれらと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは単一事業のため、経営成績数値は上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の業績は以下の要因により実現いたしました。
売上収益
米中貿易摩擦やブレグジット等、マクロ経済環境における不透明要因の影響により、前期対比で減収となりました。
・世界の自動車販売台数の落ち込みや既存用途での需要減で自動車用は低迷(ただしシート用途に限っては拡大)
・米中貿易摩擦や用途対象製品の伸び悩みから、RV・トラック等大型車用は低迷
・世界経済の減速とプログラムの終了の影響によりビジネスジェット用は低迷
・家具用は市場を上回る伸びを示すも、下期に失速
・一部製品の値上げ効果もあり販売単価は堅調に推移
営業利益及び税引前当期利益
販売の落ち込みや品質問題があったものの、新株予約権の行使条件変更と行使期間到来による費用減少で、前期比で若干の減益となりました。
・需要減に伴う工場稼働率の低下や要求品質・規格の厳格化により製造原価が上昇
・製販体制の強化による人件費および品質関連費用が増加
・株式報酬費用の大幅な減少
当期利益
・連結納税制度適用により法人税額が減少
③ 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2億65百万円増加し、280億17百万円となりました。これは主に、棚卸資産の増加及びIFRS第16号「リース」(2016年1月公表、以下「IFRS第16号」という。)を適用したことに伴い、使用権資産が増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ2億12百万円増加し、179億65百万円となりました。これは主に、借入金の返済による有利子負債の減少があったものの、IFRS第16号を適用したことに伴いリース負債が増加したことによるものです。
資本につきましては、前連結会計年度末に比べ53百万円増加し、100億52百万円となりました。これは主に配当金の支払いによる減少があったものの、当期利益による増加があったことによるものです。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動における収益力の向上に加え、運転資金の効率化等により多様化する顧客ニーズに対応した設備投資を行うためのキャッシュ・フローの獲得を進めております。
当社グループは設備投資に必要な資金については自己資金の利用とともに、必要に応じて銀行借入金により調達しております。
資金の流動性については、当連結会計年度に保有している14億48百万円の現金及び現金同等物に加え、金融機関との間に当座貸越契約を結んでいるため、資金需要にタイムリーに対応ができる状況を維持しております。
⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
当社グループは2019年8月に公表した中期経営計画における2019年目標を売上収益119億50百万円、営業利益12億円、当期利益4億円、EBITDA27億20百万円としておりました。
これに対し2019年の通期業績は売上収益114億39百万円、営業利益9億33百万円、当期利益は3億65百万円、EBITDA21億35百万円となり、目標を下回りました。主な要因は② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容に記載のとおりです。
2020年、2021年は引き続き中期経営計画の目標達成に向けて①地域・市場・用途の分散を通じた事業拡大により安定成長を実現、②サステナビリティ(持続可能性)の重視、③グループ会社間の業務オペレーションの統合推進と、品質・サービスの向上と効率的な業務運営の実現を進めてまいります。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における際に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(のれんの償却)
日本基準ではのれんを一定期間にわたり償却しますが、IFRSではのれんの償却は行われず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が442百万円減少しております。