有価証券報告書-第16期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/21 16:05
【資料】
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【項目】
131項目
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
JFEグループは、企業理念である「常に世界最高の技術をもって社会に貢献する」ことを通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。
当期のわが国経済は、輸出や企業収益が底堅く推移するとともに、設備投資の増加や経済対策に伴う公共投資の増加もあり、緩やかに回復しました。海外経済は、引き続き欧米における経済政策の不確実性や中国経済の下振れリスク、地政学リスクの高まり等により先行きに不透明感はあるものの、米国を中心として全体的に緩やかな回復基調となりました。
このような状況のもと、JFEグループでは、第5次中期経営計画の主要施策である製造基盤整備やコスト削減等の国内収益基盤の強化、技術優位性による新商品開発、多様な人材の確保・育成および中長期的な視点での海外事業拡大等を着実に進めた結果、当連結会計年度のグループ業績は、連結経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益ともに、前連結会計年度に比べ増益となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績は、以下のとおりです。
鉄鋼事業においては、当連結会計年度の連結粗鋼生産量は前連結会計年度並みの3,006万トンとなりました。売上高については、鋼材価格の改善に継続的に取り組んだ結果、連結売上高は2兆7,154億円と前連結会計年度に比べ増収となりました。損益については、平成28年秋以降の原料炭価格の高騰に加え、金属等の副原料価格、資材費、物流費等の上昇により、コストが大幅に増加したものの、鋼材価格の改善や継続的な収益改善に取り組んだ結果、当連結会計年度の連結経常利益は1,988億円となり、前連結会計年度に比べ大幅に増益となりました。
エンジニアリング事業においては、過年度受注プロジェクトの円滑な遂行に努めるとともに、一層の事業拡大を目指し、積極的な受注活動を展開いたしました。この結果、当連結会計年度の受注高は前連結会計年度を上回る高水準を達成しましたが、連結売上高は、受注案件の売上計上時期の変動により、3,913億円と前連結会計年度に比べ減収となりました。損益については、売上高の減少に加え、海外工事等において一過性の追加コストが発生したことにより、連結経常利益は193億円となり、前連結会計年度に比べ減益となりました。
商社事業においては、自動車分野や首都圏再開発等の鋼材需要の着実な捕捉による販売数量の増加、および国内外における鉄鋼製品の販売単価改善等により、連結売上高は1兆9,079億円と前連結会計年度に比べ増収となりました。損益については、売上高の増加に加え、国内外グループ会社の収益改善等により、当連結会計年度の連結経常利益は330億円となり、前連結会計年度に比べ増益となりました。
なお、持分法適用関連会社であるジャパン マリンユナイテッド㈱において、一部工事の進捗遅れおよび円高に伴う損失が計上されたことから、持分法投資損失318億円が発生しました。
以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当連結会計年度における連結売上高は3兆6,786億円、連結営業利益は2,466億円、連結経常利益は2,163億円となり、前連結会計年度に比べ大幅に増収・増益となりました。特別損益は、投資有価証券売却益を計上したものの、JFEスチール㈱知多製造所における固定資産の減損損失等により、29億円の損失となりました。連結での税金等調整前当期純利益は2,133億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,446億円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが2,988億円の収入であったのに対し、投資活動によるキャッシュ・フローは固定資産の取得による支出を中心として1,948億円の支出であったことから、これらを合計したフリー・キャッシュ・フローは1,039億円の収入となりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出を中心として909億円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末の借入金・社債等の残高は前連結会計年度末に比べ445億円減少し、1兆3,309億円となり、現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ59億円増加し、752億円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループにおける生産実績については鉄鋼事業の粗鋼生産量を、また受注実績についてはエンジニアリング事業の受注実績・受注残高を記載しております。
鉄鋼事業は、特定顧客からの受注については反復循環的に生産しているため、受注実績の記載を省略しております。エンジニアリング事業は、請負工事を中心としているため、生産実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。商社事業は、受注生産形態をとらない製品が多いため、生産実績・受注実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりであります。
セグメントの名称粗鋼生産量(千トン)前期比(%)
鉄鋼事業
(うちJFEスチール㈱)
30,060
(28,461)
△1.2
(+1.2)

b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、以下のとおりであります。
セグメントの名称受注実績(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
エンジニアリング事業495,561+16.7691,942+15.3

c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、以下のとおりであります。
セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)
鉄鋼事業2,715,474+15.6
エンジニアリング事業391,348△8.2
商社事業1,907,904+14.2
5,014,727
調整額△1,336,114-
合計3,678,612+11.2

(注)1 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
2 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
d.その他
原材料価格および販売価格の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」および「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しているため省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、一部の収益計上、各種引当金の計上、固定資産の減損に係る会計基準における回収可能価額の算定、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や当連結会計年度末での状況等に基づき、一定の合理的な方法により見積りを行っております。見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性がありますが、重大な影響はないものと考えております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績の分析
セグメント別の当連結会計年度の経営成績は以下のとおりです。
鉄鋼事業においては、売上高は2兆7,154億円となり、前連結会計年度に比べ3,663億円(15.6%)の増収となりました。経常利益は1,988億円となり、前連結会計年度に比べ1,583億円(390.5%)の増益となりました。これは、平成28年秋以降の原料炭価格の高騰に加え、金属等の副原料価格、資材費、物流費等の上昇により、コストが大幅に増加したものの、鋼材価格の改善や継続的な収益改善に取り組んだ結果によるものであります。
エンジニアリング事業においては、売上高は3,913億円となり、前連結会計年度に比べ348億円(8.2%)の減収となりました。経常利益は193億円となり、前連結会計年度に比べ73億円(27.2%)の減益となりました。これは、売上高の減少に加え、海外工事等において一過性の追加コストが発生したことによるものであります。
商社事業においては、売上高は1兆9,079億円となり、前連結会計年度に比べ2,369億円(14.2%)の増収となりました。経常利益は330億円となり、前連結会計年度に比べ112億円(51.5%)の増益となりました。これは、売上高の増加に加え、国内外グループ会社の収益改善等によるものであります。
以上より、グループ全体の売上高は3兆6,786億円となり、前連結会計年度に比べ3,697億円(11.2%)の増収となりました。また、営業利益は2,466億円、経常利益は2,163億円となり、前連結会計年度に比べそれぞれ1,499億円(155.0%)、1,316億円(155.3%)の増益となりました。
なお、営業外損益については、303億円の損失となり、前連結会計年度に比べ183億円の悪化となりました。これは、持分法による投資損益の悪化等によるものであります。
特別損益については、29億円の損失となり、前連結会計年度に比べ236億円の減益となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,446億円となり、前連結会計年度に比べ767億円の増益となりました。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローは2,988億円の収入となり、前連結会計年度に比べ1,134億円の増収となりました。これは、税金等調整前当期純利益の増加等によるものであります。また、投資活動によるキャッシュ・フローは1,948億円の支出となり、固定資産の取得による支出等の影響により前連結会計年度に比べ311億円支出が増加いたしました。これらを合計した当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは1,039億円の収入となり、前連結会計年度に比べ823億円の増収となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出を中心として909億円の支出となりました。
なお、当連結会計年度末の借入金・社債等の残高は、前連結会計年度末に比べ445億円減少し、1兆3,309億円となりました。
c.目標とする指標の達成状況
JFEグループは、第5次中期経営計画(平成27~29年度)において掲げた、国内収益基盤の強化等の主要施策を着実に実行して、競争力の向上を図ってまいりました。
■第5次中期経営計画(目標)
○鉄鋼事業
売上高経常利益率(ROS)・・・・・・・・・・・・・ 10%
○エンジニアリング事業
売上高・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5,000億円
経常利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300億円
○商社事業
経常利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300億円
○財務目標
自己資本利益率(ROE)・・・・・・・・・・・・・10%超
国際格付・・・・・・・・・A格相当(D/Eレシオ 50%程度)
鉄鋼事業におきましては、コークス炉設備改修等の国内製造基盤整備を図るとともに、自動車・薄板建材分野を中心に、北米やアセアン等への海外投資を行ってまいりました。しかしながら、一部分野の需要が低迷したことや設備トラブル等に伴う生産減等により、第5次中期経営計画の最終年度である当連結会計年度のROSは7.3%となり、ROS10%の目標は達成できませんでした。
エンジニアリング事業におきましては、電力創生および環境分野を中心とした事業拡大と海外事業の強化に取り組みましたが、受注案件の売上計上時期の変動により、当連結会計年度の連結売上高は3,913億円となり、目標の5,000億円を下回りました。また損益については、海外工事等における一過性の追加コストの発生等により、当連結会計年度の連結経常利益は193億円となり、連結経常利益300億円の目標は達成できませんでした。
一方、商社事業におきましては、国内の加工拠点や海外コイルセンター強化を通じて、サプライチェーン拡充による販売力の向上を図った結果、当連結会計年度の連結経常利益は330億円となり、目標の300億円を上回る結果となりました。
以上に加え、ジャパン マリンユナイテッド㈱において一過性の損失が計上され、持分法投資損失が発生したこと等により、当連結会計年度のグループ全体の当期純利益は1,446億円となりました。この結果、ROEは7.6%となり、10%の目標水準には到達できませんでした。
平成30年度から3年間の事業運営の方針となる第6次中期経営計画では、3年間で安定的な達成を目指す水準(期間平均)として連結経常利益2,800億円、親会社株主帰属当期純利益2,000億円の収益目標を掲げております。この達成に向けて、「最先端の技術力」、「先進IT」、「グループ連携」、「多様な人材力」を最大限活用し、第6次中期経営計画の各施策を着実に実行してまいります。