訂正有価証券報告書-第17期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/08/13 10:56
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(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
JFEグループは、企業理念である「常に世界最高の技術をもって社会に貢献する」ことを通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。
当期のわが国経済は、全体的には輸出や設備投資の増加に支えられ緩やかに回復しましたが、足元では生産等一部に弱さが見られます。海外経済は、米国を中心として総じて緩やかな回復基調となりましたが、保護主義的な政策による世界的な貿易摩擦の激化や、中国をはじめとする新興国経済の下振れリスク、英国のEU離脱問題の動向等により、先行きの不透明感は強まっております。
このような状況のもと、JFEグループでは、第6次中期経営計画の主要施策である最先端技術による成長戦略の推進や、国内における収益基盤整備と製造実力の強化、海外事業の推進と収益拡大および持続的な成長を支える企業体質の強化等を着実に進めた結果、当連結会計年度のグループ業績は、事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに、前連結会計年度に比べ増益となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績は、以下のとおりです。
鉄鋼事業は、高炉の操業トラブルや自然災害等の影響により、当連結会計年度の連結粗鋼生産量は2,788万トンと前連結会計年度に比べ減少しました。売上収益については、販売数量は減少したものの、鋼材価格の改善もあり、2兆8,306億円と前連結会計年度に比べ増収となりました。損益については、鋼材価格の改善や継続的な収益改善に取り組んだものの、操業トラブル等の影響や金属等の副原料価格、資材費、物流費等の上昇によるコストの大幅な増加により、セグメント利益は1,613億円となり、前連結会計年度に比べ減益となりました。
エンジニアリング事業は、国内外の環境・エネルギーおよびインフラ構築プロジェクトを対象に積極的な受注活動を展開し、また、受注済プロジェクトの円滑な遂行に努めた結果、売上収益は過去最高の4,858億円となり、前連結会計年度に比べ大幅な増収となりました。セグメント利益は201億円となり、前連結会計年度に比べ増益となりました。
商社事業は、粗鋼生産量減少の影響はあったものの、自動車分野や首都圏再開発等の堅調な需要の着実な捕捉、および国内外における販売単価の上昇等により、売上収益は1兆1,258億円と前連結会計年度に比べ増収となりました。損益については、売上収益の増加に加え、米国を中心とした海外グループ会社の収益拡大等により、セグメント利益は357億円となり、前連結会計年度に比べ増益となりました。
なお、持分法適用会社のジャパン マリンユナイテッド㈱において、前連結会計年度は大幅な損失を計上しておりましたが、当連結会計年度は損益が改善しております。
以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当連結会計年度における連結での売上収益は3兆8,736億円、事業利益は2,320億円となり、前連結会計年度に比べ増収・増益となりました。また、減損損失の計上もあり、税引前利益は2,093億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,635億円となりました。
(注)前連結会計年度(第16期)の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが2,682億円の収入であったのに対し、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産、無形資産及び投資不動産の取得による支出を中心として3,133億円の支出であったことから、これらを合計したフリー・キャッシュ・フローは451億円の支出となりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の借入を中心として518億円の収入となりました。
この結果、当連結会計年度末の有利子負債残高は前連結会計年度末に比べ1,326億円増加し、1兆5,238億円となり、現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ71億円増加し、822億円となりました。
(注)有利子負債は、社債、借入金及びリース債務であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループにおける生産実績については鉄鋼事業の粗鋼生産量を、また受注実績についてはエンジニアリング事業の受注実績・受注残高を記載しております。
鉄鋼事業は、特定顧客からの受注については反復循環的に生産しているため、受注実績の記載を省略しております。エンジニアリング事業は、請負工事を中心としているため、生産実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。商社事業は、受注生産形態をとらない製品が多いため、生産実績・受注実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりであります。
セグメントの名称粗鋼生産量(千トン)前期比(%)
鉄鋼事業
(うちJFEスチール㈱)
27,881
(26,312)
△7.2
(△7.6)

b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、以下のとおりであります。
セグメントの名称受注実績(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
エンジニアリング事業482,819△1.2614,553△8.7

c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、以下のとおりであります。
セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)
鉄鋼事業2,830,6493.5
エンジニアリング事業485,81521.0
商社事業1,125,86112.7
4,442,326
調整額△568,663
合計3,873,6626.8

(注) 1 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
2 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
d.その他
原材料価格および販売価格の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」および「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しているため省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。
重要な会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」、重要な見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績の分析
セグメント別の当連結会計年度の経営成績は以下のとおりです。
鉄鋼事業においては、売上収益は2兆8,306億円となり、前連結会計年度に比べ949億円(3.5%)の増収となりました。セグメント利益は1,613億円となり、前連結会計年度に比べ259億円(13.8%)の減益となりました。これは、鋼材価格の改善や継続的な収益改善に取り組んだものの、操業トラブル等の影響や金属等の副原料価格、資材費、物流費等の上昇によりコストが大幅に増加したことによるものであります。
エンジニアリング事業においては、売上収益は4,858億円となり、前連結会計年度に比べ843億円(21.0%)の増収となりました。セグメント利益は201億円となり、前連結会計年度に比べ14億円(7.3%)の増益となりました。これは、国内外の環境・エネルギーおよびインフラ構築プロジェクトを対象に積極的な受注活動を展開するとともに、受注済プロジェクトの円滑な遂行に努めた結果によるものであります。
商社事業においては、売上収益は1兆1,258億円となり、前連結会計年度に比べ1,265億円(12.7%)の増収となりました。セグメント利益は357億円となり、前連結会計年度に比べ6億円(1.6%)の増益となりました。これは、売上収益の増加に加え、米国を中心とした海外グループ会社の収益が拡大したこと等によるものであります。
以上より、グループ全体の売上収益は3兆8,736億円となり、前連結会計年度に比べ2,464億円(6.8%)の増収となりました。また、事業利益は2,320億円となり、前連結会計年度に比べ137億円(6.3%)の増益となりました。税引前利益は2,093億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,635億円となり前連結会計年度に比べそれぞれ565億円(36.9%)、659億円(67.5%)の増益となりました。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入、製造費用、受注建設工事の 費用支払および販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、鉄鋼事業における製造基盤整備を目的とした設備投資です。
運転資金は、主に金融機関からの借入などにより調達しております。投資資金は、自己資金を基本としておりますが、自己資金を上回る資金需要については、金融機関からの長期借入金などで調達します。
当社グループでは、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定することにより、十分な流動性を確保しております。
c.目標とする指標の達成状況
JFEグループは、第6次中期経営計画(2018~2020年度)の主要施策である最先端技術による成長戦略の推進や、国内における収益基盤整備と製造実力の強化、海外事業の推進と収益拡大および持続的な成長を支える企業体質の強化等に着実に取り組んでおります。
■第6次中期経営計画
目標(3ヵ年平均)実績(2018年度)
当社連結事業利益2,900億円/年2,320億円
親会社の所有者に帰属する
当期利益
2,000億円/年1,635億円
Debt/EBITDA
倍率
3倍程度3.6倍
事業会社
連結
セグメント利益
鉄鋼事業2,200億円/年1,613億円
エンジニアリング事業300億円/年201億円
商社事業350億円/年357億円

(注)IFRSの適用に伴い、中期経営計画の財務・収益指標とその数値の読み替えを実施しております。
目標実績(2018年度)
株主還元方針(配当性向)30%程度33.5%

なお、当連結会計年度の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(3) 並行開示情報
連結財務諸表規則(第7章および第8章を除く)(以下、日本基準)により作成した要約連結財務諸表および要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、以下のとおりであります。
なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
① 要約連結貸借対照表(日本基準)
(単位:百万円)
前連結会計年度
(2018年3月31日)
当連結会計年度
(2019年3月31日)
資産の部
流動資産1,928,1192,041,911
固定資産
有形固定資産1,702,2481,782,338
無形固定資産83,72492,040
投資その他の資産726,818732,345
固定資産合計2,512,7912,606,724
資産合計4,440,9104,648,635
負債の部
流動負債1,190,2861,221,849
固定負債1,240,7121,347,671
負債合計2,430,9992,569,520
純資産の部
株主資本1,826,5081,933,327
その他の包括利益累計額123,06579,377
非支配株主持分60,33766,409
純資産合計2,009,9112,079,114
負債純資産合計4,440,9104,648,635


② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)
要約連結損益計算書
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
売上高3,678,6123,961,762
売上原価3,096,0193,413,826
売上総利益582,592547,935
販売費及び一般管理費335,923356,708
営業利益246,669191,226
営業外収益32,30376,662
営業外費用62,63346,712
経常利益216,339221,176
特別利益29,388-
特別損失32,34611,249
税金等調整前当期純利益213,381209,927
法人税等合計63,39339,322
当期純利益149,987170,604
非支配株主に帰属する当期純利益5,3496,386
親会社株主に帰属する当期純利益144,638164,218

要約包括利益計算書
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当期純利益149,987170,604
その他の包括利益合計△385△439
包括利益149,602126,637
(内訳)
親会社株主に係る包括利益143,379120,895
非支配株主に係る包括利益6,2225,742

③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)
(単位:百万円)
株主資本その他の
包括利益累計額
非支配株主持分純資産合計
当期首残高1,741,505124,33055,9721,921,809
会計方針の変更に
よる累積的影響額
3,347--3,347
会計方針の変更を
反映した当期首残高
1,744,853124,33055,9721,925,157
当期変動額81,655△1,2654,36484,754
当期末残高1,826,508123,06560,3372,009,911

当連結会計年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
(単位:百万円)
株主資本その他の
包括利益累計額
非支配株主持分純資産合計
当期首残高1,826,508123,06560,3372,009,911
当期変動額106,818△43,6876,07269,202
当期末残高1,933,32779,37766,4092,079,114


④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
営業活動によるキャッシュ・フロー298,811235,747
投資活動によるキャッシュ・フロー△194,835△284,580
財務活動によるキャッシュ・フロー△90,99856,984
現金及び現金同等物に係る換算差額△7,059△414
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)5,9177,737
現金及び現金同等物の期首残高69,38375,225
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△751,765
現金及び現金同等物の期末残高75,22584,728

⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)
a.連結の範囲に関する事項
連結子会社の異動は、増加11社、減少11社であります。
b.持分法の適用に関する事項
持分法適用関連会社の異動は、増加7社、減少4社であります。
c.会計方針に関する事項
(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更)
(有形固定資産の減価償却方法の変更)
従来、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却の方法については、主として定率法によっておりましたが、当連結会計年度より主として定額法によっております。
鉄鋼事業を取り巻く経営環境は、国内においては、ここ数年は東京オリンピック・パラリンピック関連等の需要が見込まれますが、将来的には少子高齢化に伴う内需減少等により、鋼材需要の大幅な増加は見込めない状況であり、また、全世界的にも中国を中心とした鉄鋼過剰生産が継続しており、大変厳しい状況が続いております。
こうした厳しい事業環境を踏まえ、当社グループの鉄鋼事業の主力生産拠点であるJFEスチール㈱の国内製鉄所においては、粗鋼生産量の引き上げではなく、老朽更新を中心とした設備投資により製造基盤の更なる強化を行い、現状の生産能力を最大限活用して、安定した生産量の確保およびコスト削減を推進してきました。
具体的には、前連結会計年度までに、コークス炉の更新等、中長期的な競争力に大きな影響を与える製鉄所の上工程を中心とした設備更新を進め、製鉄所の安定操業に概ね目途が立ちました。
今後も製造基盤整備を継続的に実施して、更なるコスト削減と安定供給体制を実現するとともに高級鋼へのプロダクトミックスシフトを推進し、競争力の強化を図ってまいります。
これらの施策により、今後設備は安定的に稼働することが見込まれることから、費用の配分方法として定率法より定額法の方がより適切であると判断いたしました。
この結果、当連結会計年度の営業利益は26,102百万円、経常利益および税金等調整前当期純利益はそれぞれ27,399百万円増加しております。
当連結会計年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
a.連結の範囲に関する事項
連結子会社の異動は、増加6社、減少8社であります。
b.持分法の適用に関する事項
持分法適用関連会社の異動は、増加6社、減少4社であります。
c.会計方針に関する事項
(会計方針の変更)
(「税効果会計に係る会計基準」の一部改正等の適用)
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用し、子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いを変更しております。当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については、遡及適用後の連結財務諸表となっております。
この結果、遡及適用を行う前と比べて、前連結会計年度における連結貸借対照表は、固定負債が3,347百万円減少しております。
また、前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、利益剰余金の前期首残高は3,347百万円増加しております。
この変更による前連結会計年度の税金等調整前当期純利益への影響はありません。
(4) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
前連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 41.初度適用」に記載のとおりであります。
当連結会計年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
(退職給付に係る費用)
日本基準では、退職給付費用として、退職給付債務に割引率を乗じて利息費用を、年金資産に期待運用収益率を乗じて期待運用収益をそれぞれ認識しておりましたが、IFRSでは退職給付債務と年金資産の純額に割引率を乗じた利息純額を認識しております。この結果、IFRSでは日本基準に比べて売上原価ならびに販売費及び一般管理費が1,687百万円増加しております。