有価証券報告書-第114期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 15:23
【資料】
PDFをみる
【項目】
127項目

研究開発活動

当社グループは、「Creating the next value -モノづくりで、まだない価値を。-」をブランドキャッチコピーとして、ステアリング、駆動系部品、ベアリング、工作機械・メカトロ商品を中心に、まだない価値をつくり続けるという想いを込めて、研究開発活動を推進しております。
研究開発面では、2011年に策定いたしましたJTEKT VISION 2015の実現に向けた研究開発活動に加え、その先を見据えた将来の商品に繋げる基盤要素研究に取り組んでおります。その内容は強い技術領域をさらに進化と融合させるもので、トライボロジー(潤滑、摩擦、摩耗等を対象とする科学技術)・材料技術、超精密加工技術、システム制御技術、要素・基盤技術などをベースにしております。「地球にやさしい、安全・安心・快適」な新商品をスピーディかつ確実に提供することを目的に、成長分野を視野に入れた積極的な研究開発に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は401億51百万円であり、各セグメントにおける研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
(1) 機械器具部品
① ステアリング部門
ステアリング商品では、社会ニーズ、顧客ニーズに今まで以上に応えた商品を提供するため、特に環境貢献を中心とした次世代商品の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
世界で初めて電動パワーステアリングを世に送り出して25周年という節目において、今や世の中の電動パワーステアリングの3台に1台は当社商品が採用されており、今後も引き続きトップシェアを維持していくために、大型車にも採用可能な高出力(従来比30%以上の高出力化)の電動パワーステアリングの開発に注力しております。2011年に欧州OEM向けに生産を開始したデュアルピニオンタイプ電動パワーステアリング(DP-EPS)のさらなる進化に取り組む一方で、アシスト用モータ動力をボールねじ機構を介して直接出力軸へ伝えるラックパラレルタイプ電動パワーステアリング(RP-EPS)を新たに市場投入すべく、事業部一丸で取り組んでおります。
② 駆動系部品部門
駆動系商品では、走行安定性・安全性向上へのニーズへの対応を図る一方で、低燃費貢献技術にも取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果としては、高性能新電磁クラッチを用いた第3世代電子制御AWD(全輪駆動)カップリングITCC(Intelligent Torque Controlled Coupling)が挙げられます。これは、当社の駆動事業を代表する商品で、AWDシステムにおいて最適なトルク配分を実現いたします。このITCCの低温環境下における流体の粘性低下により起こる性能変化を、電磁クラッチの表面形状などを改良することにより、引きずりトルクは50%低減、トルクの温度依存性は85%低減の改善に成功いたしました。この改善は、駆動力を伝えるドライブシャフト類の軽量化につながり、燃費向上に貢献しております。
③ ベアリング部門
ベアリング商品では、将来の成長分野を見据え、日々の研究開発により培った基盤技術をさらに進化・深化させ、お客様の期待を超える高付加価値商品の開発強化に取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
自動車用では、ピックアップトラック・大型SUVの高性能化・信頼性向上に貢献する、第3世代テーパーローラーハブユニットを開発し、量産を開始いたしました。当社独自の低トルク技術『LFT』を採用し、大幅なトルク低減を図るとともに、内輪と軸の一体化による高強度と軽量化の両立、シール設計の最適化による苛酷環境での信頼性向上を実現しております。
産業機器用では、今後の成長が見込まれる、液晶フィルム・医薬品・食品などの製造装置のニーズに対応し、水中や化学溶液中などの特殊環境における軸受の摩耗寿命と耐食性を大幅に向上させた、長寿命高耐食軸受 『コロガードプロベアリング』 を開発いたしました。
また、産業機械分野で使用される大型軸受の評価・解析を行うための大型軸受技術開発センターの稼動を開始しております。同センターでは現在、風力発電機の主軸用超大型軸受や鉄道車両用軸受を、実機に近い環境で評価可能な大型試験機を導入し、蓄積されたデータを開発期間の短縮、高付加価値商品の開発に活かす取り組みを加速させております。
(2) 工作機械
工作機械では、「お客様から信頼される真の総合生産システムサプライヤ」を目指し、工作機械製品の「領域を広げる開発」と「価値を高める開発」を進めております。機械のみならず、制御技術・搬送技術や加工技術などを包括し、お客様の生産全体にわたって技術提案をしております。
当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
① 研削加工システム
真に素性のよい機械を提供し、精度のばらつきがない安定した高精度加工が誰にでも簡単に実現できるように思いを込めて、熱変位低減と振動低減に取り組んだカムシャフト研削盤『GC20Mi』と高精度円筒研削盤『GL4P-100SⅢ』プレミアムを開発するとともに、CNC円筒研削盤を『GE4i』として20年ぶりに刷新いたしました。これらの機械には、世界トップクラスの演算処理能力をもつCNC制御装置『TOYOPUC@-GC70』を搭載しております。また、クーラント液に残るスラッジや砥粒によるワークのキズを防止するため、濾過後の液内の異物を5ppm(1ppm=1mg/L)まで削減した高清浄度クーラント装置、従来の3倍の寿命をもつ新しいCBN砥石『タフVi』など、当社グループの連携を密にして世界最高水準の研削技術を提供しております。
② 切削加工システム
切削機では、主力である横形マシニングセンタ『FH630SX-i』、自動車部品などの量産ライン向けの『i-TOP』、スカイビング工法により複合ギヤの加工を可能としたマシニングセンタ『e500GS』を開発いたしました。『e500GS』は、従来、ホブ盤やブローチ盤などの多くの専用機で構成されていた歯車加工ラインを汎用のマシニングセンタで置き替えることができます。これにより設備投資の大幅削減が可能になるとともに、多種ワークへの対応が可能となります。また、当社CNCの『MC70』において容易に加工プログラムが作成できます。さらに、お客様ワークに適したスカイビングカッターを設計製作して提供することにより、機械、プログラム及び加工にいたるまで総合的なサポートを実現しております。