有価証券報告書-第72期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/20 15:00
【資料】
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【項目】
156項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「優れた製品・サービスでお客さまの新たな価値を創造し、より豊かで持続可能な世界社会の発展に貢献すること。」を使命としております。そしてあらゆるものを情報化し、そのデータを利活用することで、「正確、省力、省資源、安心・安全、環境、感動」という価値を創出し、「お客さまに最も信頼され、お客さまと共に成長し、変わりゆく社会から必要とされ続ける会社になること。」をビジョンに掲げています。
(2)「自動認識ソリューション」で持続可能な社会の実現に貢献
当社グループの本業である「自動認識ソリューション」とは、多様な市場・業界において現場の人やモノに情報を付ける「タギング」でリアルタイムに情報を吸い上げ、必要とされる価値あるデータに転換してお客さまの基幹システムや社会の基盤に届けるビジネスです。これにより人やモノの動きが可視化されてトレース(追跡)可能な状態となり、個々の現場やサプライチェーンを最適化する打ち手が見えてきます。
さらに、サプライチェーン全体に対して、IDデータに加えて位置や温度といった状態データ(何が、どこで、どのような状態か)の取得・蓄積による見える化によって、社会の動きを最適化するお手伝いをし、持続可能な社会の実現に貢献する「Tagging for Sustainability」、そしてブランドステートメント「あらゆるものを情報化して、社会のうごきを最適化する。」の実現を目指します。
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(3)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社グループは、ビジョン実現のため、直近の事業内容、外部環境の変化ならびに当期の業績をふまえ、経営方針や成長戦略及び経営目標等を定めた3カ年の中期経営計画2021年度~2023年度(以下、本中計)を策定し、実行に移しております。
本中計は、現ビジネスモデル「DCS & Labeling」での取り組み成果の実現と、長期的には「Tagging for Sustainability」へとビジネスモデルを進化させるための投資期間と位置付けています。その達成に向け、本中計では、国・市場・業界それぞれのサプライチェーンにおいて、ビジネスを拡大していくための「①地域別・市場別成長戦略」、タギング技術を高度化して①を後押しする「②技術イノベーション」、そしてそれらを支える「③ESG経営の強化」の3つを柱に掲げて取り組みを推進しています。
①地域別・市場別成長戦略
人口動態や長引くコロナ禍に加え、サプライチェーンの混乱やインフレーション、さらには地政学リスクなどにより、社会や産業構造は大きく変わりつつあります。こうした変化は、当社グループにとってコスト上昇などネガティブな影響がある一方、DCS & Labelingによる省人化や省力化、見える化に対する需要増という好影響をもたらしています。地域や市場の実情に即し、これらお客さまのニーズを満たすべく取り組みを進めています。
海外事業では「持続的な収益成長に向けた経営基盤の確立」に取り組みます。海外では、これまで取り組んできた営業戦略が一定の成果を収めています。今後、この状態を維持して持続的、安定的に収益を伸ばすことが重要なことから、経営基盤の確立を進めます。具体的には、ポートフォリオの観点で各子会社の経営実態とめざすべき事業形態のギャップを検証し、経営資源を配分していきます。
日本事業では、「全員営業シフトでトップライン伸長・粗利改善」に取り組みます。日本ではバーコード以外にも、RFIDや位置測位、センシングなどの新たな技術を活用したソリューションの創出が進む一方で、これらは商談の高度化・長期化を招いています。これに対して、「売り方の改革」「キラーコンテンツの強化」「バリューチェーンの最適化」「コスト低減」の4つに取り組むことで、生産性を高めて一人当たりの売上高・営業利益を向上させます。
②技術イノベーション
「DCS & Labelingの底上げ」を起点に、下図縦軸方向の今の強みを磨いていく「タギングの高度化とデータプラットフォーム整備」に取り組みます。横軸は、サトーにとってのイノベーションとなりますが、ラベル以外の新たな媒体を開発していきます。そして右上の社会や業界のサプライチェーンの最適化に貢献するSaaS型ソリューション提供へと昇華させます。
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DCS & Labelingの底上げ:キラーコンテンツ創出や共通解化により、DCS & Labelingを確たるものとします。
タギングの高度化とデータプラットフォーム整備:私たちの最大の強みであるタギング技術の強化に向け、ラベル貼り付けの自動化などを進めます。さらにタギングデータの蓄積に向け、独自のデータプラットフォームの整備にも力を入れます。
媒体強化 (タギング、ロギング、センシング):差異化RFIDをはじめ、独自の媒体開発を強化し、多様な情報化を実現します。イノベーションラボを中心に、これらの開発を進めます。
そして最終的に、私たちならではの情報化、つまりデータを活かしたSaaS型ソリューションの提供を実現させます。上位のプラットフォーマーなどとの共創を念頭に、付加価値の高い独自ソリューションの開発などに取り組み、いわゆるデータエコシステム型社会を下支えする存在をめざします。
③ESG経営の強化
DCS & Labelingに磨きをかけ、さらにはTagging for Sustainabilityへとビジネスモデルを進化させることで社会と事業の持続可能性を追求する私たちにとって、「イノベーションを生み出す組織文化」の醸成が重要です。
社是「あくなき創造」の精神を受け継ぎ、果敢に挑戦する社員が主体的に活躍する会社をめざし、スローガン「Our Way to Our 100th」を掲げて企業風土の改革に着手しました。当社には、日常の職場で起こる「小さな変化、改善」を喜ぶ文化が根付いています。社員から経営トップへの会社を良くする提案の日報「三行提報」などがその好例ですが、2022年度は風土改革の新たな取り組みとして「上司宛て提報」を開始しました。直属の上司宛てにアイデアを提案し、実現可能なものをよりスピーディに実践することで、「自分たちの力で会社を変えられる」という実体験が可能となります。この積み重ねで、「小さな変化が当たり前に起こっていく」組織にしていきます。こうした文化を発展させ、多様なメンバーそれぞれの主体性・創造性・情熱を刺激してイノベーションを生み出す土壌づくりを進めます。
さらに東京証券取引所のプライム市場上場企業として、改訂コーポレート・ガバナンスコードへの対応などESG経営を強化し、ステークホルダーからの信頼をさらに高めていく所存です。
(4)目標とする経営指標及び具体的な取り組み
当社グループは経営指標として、営業利益及び売上高営業利益率を重視し、資本生産性の指標としての投下資本利益率(ROIC)を上げることで、企業価値の最大化を追求してまいります。
本中計では上述の各戦略を実行し、重要な経営指標として、連結売上高、海外売上高比率、営業利益、営業利益率、EBITDAマージン(※1)、投下資本利益率(ROIC)、1人当たり生産性(※2)の向上を目指してまいります。
(※1)EBITDAマージン =(営業利益+減価償却費+のれん償却費)÷ 売上高
(※2)1人当たり生産性 = 営業利益(除くのれん償却費・基幹システム減価償却費)÷ 実働人員数