有価証券報告書-第67期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 14:09
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループの主要市場である米国におきましては、個人消費や企業の設備投資の増加、雇用・所得環境の改善を受けて景気は堅調に推移しておりましたが、政府機関の閉鎖や株価下落などにより成長ペースは一時的に減速いたしました。先行きにつきましては米中貿易戦争をはじめとする通商問題の動向、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め路線の転換など今後の政策に関する不確実性の高まりによるリスクに十分留意する必要があります。
欧州におきましては、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費が底堅く推移するものの、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の混迷や海外景気の減速と政治をめぐるリスクが重石となり、EU経済の先行きは不透明な状況が続いております。
わが国におきましては、個人消費の持ち直しに加え、雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調で推移しております。また、2020年7月に開催される東京オリンピックに向けて特需も期待できます。ただし、通商問題の動向及び影響、中国を始めとするアジア諸国の経済の先行き等、海外経済の動向と政策に関する不確実要素により景気下振れリスクは高まっており、消費や投資にも弱さがみられる恐れがあります。
このような状況下、当社グループは「2018年度 経営方針」に掲げた赤字脱却に向けた取組みとして、グループビジョンである“FUNAIは世界中から選ばれる製品を創る”の実現を目指し、基本戦略として①北米市場での「マーケット・シェアの拡大」、②日本市場での「FUNAIブランド浸透」、③「新規ビジネスの展開」に取り組みました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は69,958百万円(前連結会計年度末67,310百万円)となり、2,647百万円増加いたしました。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は13,335百万円(前連結会計年度末12,954百万円)となり、380百万円増加いたしました。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は28,121百万円(前連結会計年度末26,842百万円)となり、1,279百万円増加いたしました。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は1,114百万円(前連結会計年度末2,705百万円)となり、1,591百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は54,057百万円(前連結会計年度末50,717百万円)となり、3,340百万円増加いたしました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高105,549百万円(前期比18.9%減)、営業利益682百万円(前期は10,885百万円の営業損失)、経常利益1,392百万円(前期は11,909百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益2,613百万円(前期は24,709百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
所在地別セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(日本)
日本は、売上高36,624百万円(前期比1.2%増)、セグメント利益(営業利益)637百万円(前期は5,634百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(米州)
米州は、売上高68,083百万円(前期比26.8%減)、セグメント利益(営業利益)160百万円(前期は965百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(アジア)
アジアは、売上高819百万円(前期比4.0%減)、セグメント利益(営業利益)709百万円(前期は3,948百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(欧州)
欧州は、売上高22百万円(前期比82.5%減)、セグメント利益(営業利益)64百万円(前期は83百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、未払金の減少、定期預金の預入による支出及び有形固定資産の取得による支出等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上、売上債権の減少及び仕入債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,893百万円(9.4%)増加し、当連結会計年度末には33,544百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果獲得した資金は3,507百万円(前年同期は5,369百万円の使用)となりました。これは主に未払金の減少があったものの、税金等調整前当期純利益の計上、売上債権の減少及び仕入債務が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は775百万円であり、前連結会計年度に比べ1,398百万円(64.3%)減少となりました。これは主に定期預金の払戻による収入及び有形固定資産の売却による収入があったものの、定期預金の預入による支出及び有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は239百万円であり、前連結会計年度に比べ345百万円(59.0%)減少となりました。これは主にリース債務の返済による支出によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比(%)
日本(百万円)4,31964.2
米州(百万円)5,281286.4
アジア(百万円)63,21866.8
欧州(百万円)--
合計(百万円)72,82070.6

(注)1.金額は製造価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当社グループが販売している自己ブランド製品は需要予測による見込生産を行っております。従いまして、受注実績は記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比(%)
日本(百万円)36,624101.2
米州(百万円)68,08373.2
アジア(百万円)81996.0
欧州(百万円)2217.5
合計(百万円)105,54981.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、金額には消費税等は含まれておりません。
相手先前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額
(百万円)
割合(%)金額
(百万円)
割合(%)
WAL-MART STORES,INC.77,97959.953,60150.8
株式会社ヤマダ電機17,11513.216,28115.4

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されており、その作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値及び収益、費用の報告数値について影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は過去の実績や状況に応じた合理的な見積り、判断及び仮定により継続的に検証し意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は69,958百万円(前連結会計年度末67,310百万円)となり、2,647百万円増加いたしました。
現金及び預金の増加(32,390百万円から35,417百万円へ3,026百万円増)、原材料及び貯蔵品の増加(9,841百万円から11,059百万円へ1,217百万円増)、受取手形及び売掛金の減少(9,953百万円から7,724百万円へ2,229百万円減)が大きく、現金及び預金の増加の原因の主なものは、売上債権等を回収したことによるものであります。原材料及び貯蔵品の増加の原因の主なものは、液晶パネル等の原材料の仕入が増加したことによるものであります。また、受取手形及び売掛金の減少の原因の主なものは、売上の減少並びに売上債権を回収したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は13,335百万円(前連結会計年度末12,954百万円)となり、380百万円増加いたしました。
その原因の主なものは、繰延税金資産の増加(689百万円から1,201百万円へ511百万円増)によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は28,121百万円(前連結会計年度末26,842百万円)となり、1,279百万円増加いたしました。
支払手形及び買掛金の増加(11,808百万円から15,618百万円へ3,810百万円増)、未払金の減少(10,372百万円から8,287百万円へ2,084百万円減)が大きく、支払手形及び買掛金の増加の原因の主なものは、原材料等の仕入が増加したことによるものであります。また、未払金の減少の原因の主なものは、特許権使用料に係る未払金の減少によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は1,114百万円(前連結会計年度末2,705百万円)となり、1,591百万円減少いたしました。
役員退職慰労引当金の減少(1,025百万円から27百万円へ997百万円減)が大きく、その原因の主なものは、引当金を取崩したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は54,057百万円(前連結会計年度末50,717百万円)となり、3,340百万円増加いたしました。
その原因の主なものは、為替換算調整勘定の増加(△12,305百万円から△11,609百万円へ696百万円増)及び利益剰余金の増加(21,970百万円から24,583百万円へ2,613百万円増)によるものであります。
2)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は105,549百万円(前期比18.9%減)となりました。これは当社の主力販売市場である北米マーケットにおきまして、特に第1四半期では流通在庫調整局面が続き、大手量販店を中心に過剰在庫の販売が先行されたため当社の新規販売が伸び悩みました。また、既存事業の選択と集中に取り組んだ結果、売上は減少いたしました。しかしながら、新規取引開拓の実績として米国の大手量販店やカナダでは増収となっており、マーケット・シェアの拡大に向けて布石を打つことができました。また、国内市場では独占販売契約を締結している株式会社ヤマダ電機におきましては計画通りの販売実績となりました。
(営業利益)
利益面につきましては、ビジネスモデルや不採算製品の販売を見直したこと、液晶パネルなどの部材価格が下落していること、製造原価や販売費及び一般管理費の削減効果が一定規模出ていることなどから、前期と比較して利益は大幅に改善し、営業利益は682百万円(前期は10,885百万円の営業損失)を計上することになりました。
(経常利益)
前述の内容に加え、為替差益の計上や受取利息の増加などにより、経常利益は1,392百万円(前期は11,909百万円の経常損失)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は北米販社の合併などに伴う法人税等調整額(益)を計上したことなどにより、2,613百万円(前期は24,709百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社グループの資金需要は主に大きく分けて運転資金需要及び設備資金需要があります。
運転資金需要のうち主なものは製品の仕入、製造子会社では製品を製造するための材料仕入、製造費、共通するものとして販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備資金需要といたしましては、主に機械装置並びに工具、器具及び備品等の固定資産購入によるものであります。
財務政策
当社グループは現在、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金より充当し、不足が生じた場合は銀行からの借入金で調達を行っております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、本業における利益率を高めることが全てのステークホルダーの利益に合致するものと考え、売上高営業利益率を最も重要な指標として位置付けております。
前連結会計年度に持続的な成長に向けて収益構造改革を実現する「2018年度 経営方針(2018年4月~2021年3月)」を策定し、「マーケット・シェアの拡大」「FUNAIブランド浸透」「新規ビジネスの展開」の3つの基本戦略のもと、黒字化の実現に向けて取り組んでまいりました。その結果、初年度である当連結会計年度は、売上高105,549百万円、営業利益682百万円となり、黒字化の目標を達成し、順調な進捗となりました。経営方針2年目となる2020年3月期の計画は、売上高108,000百万円、営業利益400百万円とし、黒字体質をより強固なものとするため、基本戦略を更に推し進めるとともに、ビジネス戦略に掲げる「ポジショニング戦略」と「アライアンス戦略」に取り組み、事業ポートフォリオ再構築を積極的に展開することで、安定した収益基盤づくりに注力してまいります。
今後もこの経営成績目標の実現に向けて着実に取り組み、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
中期経営成績目標
2019年3月期
(計画)
2019年3月期
(実績)
2020年3月期
(計画)
2021年3月期
(計画)
売上高105,000百万円105,549百万円108,000百万円130,000百万円
営業利益
(売上高営業利益率)
400百万円
(0.4%)
682百万円
(0.6%)
400百万円
(0.4%)
1,100百万円
(0.8%)

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(日本)
前連結会計年度に引き続き、当連結会計年度におきましても2018年7月14日より株式会社ヤマダ電機にてハイエンド製品である有機ELテレビを含むFUNAIブランド新製品の市場投入を開始したことなどにより、販売は概ね計画通りに推移いたしました。この結果、売上高は36,624百万円(前期比1.2%増)となり、セグメント利益(営業利益)637百万円(前期は5,634百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(米州)
前連結会計年度から継続して北米マーケット全体が過剰在庫を抱えてスタートした当連結会計年度は、大手量販店が在庫処分を先行させた結果、当社の液晶テレビ新規販売は伸び悩みました。また、インターネット動画配信サービスの影響を受け、想定以上にDVD・BD関連製品の需要が落ち込んだことから減収となりました。この結果、売上高は68,083百万円(前期比26.8%減)となり、セグメント利益(営業利益)は160百万円(前期は965百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(アジア)
不採算製品の販売を見直し液晶テレビの販売を終息したこと、部品関連が増収したことなどから、売上高は819百万円(前期比4.0%減)となり、セグメント利益(営業利益)は709百万円(前期は3,948百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(欧州)
インクジェットプリンターのハードウェア販売を見直した影響で、同製品のインクカートリッジが減収となりました。この結果、売上高は22百万円(前期比82.5%減)、セグメント利益(営業利益)は64百万円(前期は83百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
(3)継続企業の前提に関する重要な事象を解消するための対応策
当社グループは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク (3)その他のリスク ⑥継続企業の前提に関する重要な事象について」に記載のとおり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
現状の当社グループの現金及び預金の残高にて、当面の間の運転資金が十分に賄える状況であることから、重要な資金繰りの懸念はありません。
また、当社グループは当連結会計年度を初年度とする中期経営方針を策定し、その基本方針に基づいて当連結会計年度におきましては営業キャッシュ・フローを3,507百万円計上したことに加えて、今後も以下の事業別方針に沿って対応策を段階的に実行していることから、当該事象の解消が実現できるものと考えております。
① ディスプレイ事業(薄型テレビ等)
・更なる新規量販店でのマーケット・シェア拡充と品質・コストなどトータルでの競争力強化
・北米クリスマス商戦への取り組み強化と内外サービス業務プロセス改善による返品・廃棄の削減
・日本市場では高度BS対応TV販売、メキシコ市場にてビジネスモデル再構築によるシェア回復
② デジタルメディア事業(DVD・BD関連機器)
・北米市場において他社が撤退したBDプレイヤーでニッチ戦略を展開しマーケット・シェア奪取
・日本市場におけるOEM先との連携強化とFUNAIブランド製品のラインナップ強化
③ プリンティングソリューション事業(プリンター関連機器)
・ネイルアートプリンターのOEM並びに自社ブランドの販売拡充による収益率の向上
・ラベルプリンターと大容量インクジェットプリンターの販売拡大
・マイクロフルイディクス(微量流体制御技術)を活かした派生製品の市場投入による売上拡大
④ 新規事業
・車載用バックライト(既存のエッジタイプと新規のダイレクトタイプ)の販路拡充
・歯科用CTに加えて医療、ヘルスケア関連モジュール製品の販売拡大と収益基盤確保
・EV事業を通じたアライアンス戦略強化と業務用ディスプレイに関する新製品の量産・販売開始