有価証券報告書-第40期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/29 15:00
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(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用環境は底堅く、景気は緩やかな回復基調で推移してきたものの、消費税増税前の駆け込み需要の反動減の影響、中国景気の後退に伴う輸出の低迷やインバウンド消費の減少等により、マイナス成長となりました。
また、世界経済は、米中の貿易摩擦解消へ向けた第1段階の合意や英国のEUからの離脱が合意されるなど、回復への期待感があったものの、昨年末に発生した新型コロナウイルスの感染拡大により、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響が懸念され、景気の先行きは依然として不透明な状況が続きました。
このような環境のもと、当社グループは、2019年5月14日付「中期経営計画2019(Fly for the bright future)の実施について」を公表し、引き続き「経営体制の強化」「新成長ドライバーの確立」に取り組んでまいりました。特に新たな収益事業の早期立ち上げを目指し、会社の柱となるライフサイクルの長い事業として、ナノマテリアルの研究開発・製造及び販売を行う「ナノマテリアル事業」を開始しております。ナノマテリアル事業については、有償でのサンプル出荷や引合いは引き続き増加しました。量産用の販売には至らなかったものの、顧客での評価や検証プロセスは進展しました。断熱材事業については、国内は継続的に認知度が高まってきており新規顧客は引き続き増加しているものの、工事案件の受注の時期ずれ等により、前年同期の売上を下回りました。連結子会社・阿爾賽(蘇州)無機材料有限公司においては、積極的な設備投資による生産能力・製品品質向上への取り組み等により受注が引き続き堅調に推移し、前年同期の売上を上回り、断熱材事業の売上高が前年同期比5.1%の増加という結果となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は、2,751百万円(前年同期比11.5%減)となりました。利益面は、営業利益55百万円(前年同期は営業損失62百万円)、経常利益48百万円(前年同期は経常損失50百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失13百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失506百万円)となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。
なお、第1四半期連結会計期間より、ナノマテリアル事業を開始しており、当該事業の経営成績は「その他事業」セグメントに含めております。
アーカイブ事業
当事業は、重要な情報を長期に亘って保存及び利用するための長期保存用光ドライブと長期保存用光ディスクの販売を行う「アーカイブ」と、産業用及びAV機器用光ドライブの開発・製造・販売を行う「ストレージソリューション」が含まれます。
アーカイブは、企業活動によって得られた過去の蓄積データの長期保存と、保管コスト削減を目的とした需要に対し、長期保存用光ドライブ及び長期保存用光ディスクを起点としたソリューション提案を行い、放送局等を中心としたプロフェッショナルディスクの販売が増加しました。また、カメラ人気の高まりを背景とした、写真プリント店の端末向け保存用光ドライブ及び光ディスクの受注が増加しました。
ストレージソリューションは、産業機器用光ドライブ搭載率の低下スピードは速まる徴候が見られ、国内及び北米需要が減少し、前年同期の売上を下回りました。
以上により、アーカイブ事業の売上高は1,109百万円(前年同期比16.6%減)となりました。
断熱材事業
当事業は、連結子会社・阿爾賽(蘇州)無機材料有限公司において、電子部品用副資材、耐火材料及び関連製品の開発・製造・販売を行っております。また、当社でも同社製品を中心とした輸入販売を行っております。
国内では、新規顧客は引き続き増加しているものの、工事案件の受注の時期ずれ等により、前年同期の売上を下回りました。
阿爾賽(蘇州)無機材料有限公司は、主力製品や工業炉等の受注が引き続き堅調に推移し、前年同期の売上を上回りました。
以上により、断熱材事業の売上高は1,559百万円(前年同期比5.1%増)となりました。
インダストリアルソリューション事業
当事業は、オーディオ・ビデオ機器やコンピュータ周辺機器等の規準及び調整用テストディスク等の開発・製造・販売を行う「テストメディア」と、各種ディスクの特性テスト受託等を行う「テスティング」が含まれます。
テストメディアは、主要顧客であるカーオーディオ・カーナビ等の車載機器メーカー向けの販売が、テストメディア使用量の減少等により、計画を大幅に下回りました。また、AV機器市場及びPC市場においても、光ディスク以外の媒体への移行が引き続き進んでいることから、需要は減少しました。
テスティングは、光ディスクの市場縮小により受託件数は減少しました。
以上により、インダストリアルソリューション事業の売上高は78百万円(前年同期比40.1%減)となりました。
その他事業
当事業は、ナノマテリアルの研究開発・製造及び販売を行う「ナノマテリアル事業」と、中国市場でカップ式飲料の販売を行う「カップ式自動販売機のオペレーション事業」が含まれます。
ナノマテリアル事業は、粉末状の炭素繊維を製品化しております。有償でのサンプル出荷や引き合いは引き続き増加しました。量産用の販売には至らなかったものの、顧客での評価や検証プロセスは進展しました。
以上により、その他事業の売上高は4百万円(前年同期比1,180.8%増)となりました。
当連結会計年度末における財政状態については、以下のとおりであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、前連結会計年度末に比べて4.3%増加し、2,917百万円となりました。これは、主として新株予約権の行使による株式の発行による預金の増加等によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、前連結会計年度末に比べて51.4%減少し、495百万円となりました。これは、主として事業用資産の売却による、土地及び、建物及び構築物の減少等によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末に比べて53.8%減少し、649百万円となりました。これは、主として借入金を期限前弁済したことによる短期借入金の減少等によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末に比べて28.9%減少し、144百万円となりました。これは、主として長期借入金の減少等によるものであります。
(純 資 産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べて18.5%増加し、2,619百万円となりました。これは、主として新株予約権の行使による株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加等によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは182百万円(前連結会計年度は△105百万円)となりました。これは、主として売上債権の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは422百万円(前連結会計年度は△228百万円)となりました。これは、主として事業用資産である有形固定資産の売却による収入によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは△181百万円(前連結会計年度は311百万円)となりました。これは、主として借入金を期限前弁済したことによる短期借入金の純減及び新株予約権の行使による株式の発行による収入によるものであります。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は1,514百万円(前連結会計年度は1,079百万円)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
アーカイブ事業
断熱材事業1,823,926122.6
インダストリアルソリューション事業24,56467.8
その他事業
合計1,848,491121.3

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
アーカイブ事業1,022,77872.928,45924.6
断熱材事業1,164,39769.221,4065.1
インダストリアルソリューション事業79,76262.31,2992,054.3
その他事業4,0861,280.8
合計2,271,02467.251,1669.6

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
アーカイブ事業1,109,81383.4
断熱材事業1,559,258105.1
インダストリアルソリューション事業78,52559.9
その他事業4,0861,280.8
合計2,751,68488.5

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
TEAC AMERICA, INC.447,80314.4389,10014.1

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産・負債及び連結会計年度の収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについて、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因に基づき判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社グループの重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
その他、固定資産の減損処理についても会計基準に従って見積りを行っておりますが、経済状況に大きな変化が生じた場合には、財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高2,751百万円(前年同期比11.5%減)、利益面は、営業利益55百万円(前年同期は営業損失62百万円)、経常利益48百万円(前年同期は経常損失50百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失13百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失506百万円)となりました。
当社グループは、「中期経営計画2019(Fly for the bright future)」を策定し、本計画に基づき、「経営体制の強化」「新成長ドライバーの確立」を図りました。
その結果、特に新たな収益事業の早期立ち上げを目指し、会社の柱となるライフサイクルの長い事業として、ナノマテリアルの研究開発・製造及び販売を行う「ナノマテリアル事業」を開始しております。ナノマテリアル事業については、量産用の販売には至らなかったものの、引合いは引き続き増加しました。断熱材事業については、国内は継続的に認知度が高まってきており新規顧客は引き続き増加しているものの、工事案件の受注の時期ずれ等により、前年同期の売上を下回りました。連結子会社・阿爾賽(蘇州)無機材料有限公司においては、積極的な設備投資による生産能力・製品品質向上への取り組み等により受注が引き続き堅調に推移し、前年同期の売上を上回り、断熱材事業の売上高が前年同期比5.1%増加しました。アーカイブ事業及びインダストリアルソリューション事業は、効率的な事業運営に努めましたが低調に推移しました。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、以下のようなものがあります。
アーカイブ事業は、重要情報デジタル化の動き、産業機器及びAV機器の需要に大きく影響を受けるため、需要が減少した場合は、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスの影響による企業活動の停滞が続き、世界経済に大きな悪影響を及ぼす場合は、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
断熱材事業は、産業炉業界の設備投資需要に大きく影響を受けるため、景気動向により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、中国経済の成長鈍化が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
インダストリアルソリューション事業は、AV機器やコンピュータ周辺機器の規準及び調整用テストメディアの開発・製造・販売を行っており、主要な取引先はAV機器やコンピュータ周辺機器等の情報家電メーカーであるため、これらの情報家電業界の動向により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
情報家電業界は、世界的なデジタル放送化の動きに合わせた地上デジタル放送対応の薄型テレビ市場が拡大を続け、先進国を中心にBDの主要な媒体になりつつあります。とりわけ光ディスク関連市場においては、中期的には需要が急激に縮小することはないと考えていますが、長期的には光ディスクに替わる半導体メディア等や音楽または映像のネット配信の市場が拡大した場合、または、BDの普及が進まず、情報家電メーカー各社の生産動向が大きな影響を受けた場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
当社グループは、財務基盤の強化については、収益力及び資産効率の向上によることを基本としております。当連結会計年度の運転資金及び設備投資資金等につきましては、内部資金及び銀行等からの借入による間接金融並びに新株予約権の発行による直接金融の手段により調達しております。
資金の流動性については、事業規模に応じた現金及び現金同等物の適正額を維持することとしており、当社においては、資金の流動性の確保を目的として、主要取引銀行とコミットメントライン契約等を締結しております。
当社のキャッシュ・フロー関連指標は、次のとおりとなっております。
2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期
自己資本比率71.070.558.057.876.5
時価ベースの自己資本比率32.435.742.353.452.5
キャッシュ・フロー対有利子
負債比率
204.8△929.52,050.4△950.1211.9
インタレスト・カバレッジ・
レシオ
30.0△6.85.4△13.346.3

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレストカバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
当連結会計年度におけるセグメントごとの、当社グループが置かれている市場環境及び売上高等の変動要因に対する具体的な説明については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりとなります。
この結果を受け、当社グループは、この状況から早期に脱するために、直近の経済状況及び事業環境の変化に対応するべく「中期経営計画2019(Fly for the bright future)」をローリングし、「中期経営計画2020(Fly for the bright future)」として以下の施策を実施することにより、会社の利益確保及び経営基盤の安定化に資する取り組みを邁進していく所存であります。
ナノマテリアル事業
ナノマテリアルの研究開発・製造及び販売を行います。アプリケーション(応用製品)や標準品の拡充、受託業務の拡張、サンプル品の採用から量産化への展開も行い、早期の収益拡大を目指します。
断熱材事業
「材料メーカー」から「高付加価値商品・サービスを提供する総合断熱材企業」へ転換を図ります。
① 断熱材の販売は、高級高温耐火材料の付加価値製品に重点をおき、断熱材だけでなく、築炉・工業炉の拡販に取り組み、また鉄鋼メーカーの定期修理工事・材料の受注拡大を目指します。
② 中国子会社(阿爾賽(蘇州)無機材料有限公司)で、研究開発・設備投資を行い、生産能力・製品品質の向上を目指し、また新製品の棚板・窯道具の更なる拡販を行います。
③ 海外での調達先の開拓に取り組み、材料の受注拡大を目指します。
アーカイブ事業
運営の効率化やリソースの再配置を行い、利益の最大化を図ります。
インダストリアルソリューション事業
市場規模に対応した効率的な事業運営を進め、利益最大化に注力します。
その他事業(新規事業)
ナノマテリアルから派生する事業及び新たな事業領域での研究開発を推進します。
財政状態の状況に関しましては、たな卸資産の削減、固定資産の効率化及び営業債権の早期回収が各セグメントに共通する課題であると認識しており、資産効率の改善に向け、注力してまいります。
また、当社は、2017年3月期から2020年3月期までの個別業績において、4期連続の営業損失を計上しております。
これにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しており、「2 事業等のリスク」において、重要事象等が存在する旨及びその内容を記載しております。
しかしながら、2020年3月期の当社グループの連結キャッシュ・フロー計算書における営業活動によるキャッシュ・フローはプラスであり、当面の十分な自己資金も確保しております。
また、当該重要事象等を改善するための対応策として、2020年5月14日付で公表しました「中期経営計画2020(Fly for the bright future)の実施について」を策定し、これを実行することにより、継続企業の前提に関する重要事象等を解消できるものと考えております。