有価証券報告書

【提出】
2019/06/27 14:05
【資料】
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【項目】
98項目

対処すべき課題

以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1) 経営方針
当社グループは、パワー、インダストリー&社会基盤、航空・防衛・宇宙等、社会を支える様々な分野で、卓越した技術力に裏付けされた信頼できる製品・サービスの提供を通して、人々が安全で豊かな生活を営める社会の進歩に貢献することを経営の基本方針としている。
この基本方針に基づき、経営の基盤となる技術力・ものづくり力の向上、伸長事業への設備投資や研究開発、人材等の経営資源の集中、急速に進展するグローバル化への対応等の施策を実施し、事業体質の一層の強化に努めている。
(2) 経営戦略等
当社グループは、事業成長と財務健全性のバランスを取った経営により、長期安定的に企業価値を向上させることを目指している。当連結会計年度を初年度としてスタートした中期経営計画「2018事業計画」では、「グローバル水準の持続性と成長力を有する企業体格の実現」、「事業構造改革の定着」、「長期ビジョンに基づく成長戦略の推進」の基本方針に基づき、各種施策を強力に推進している。
(3) 対処すべき課題
中期経営計画「2018事業計画」の2年目においては、TOP*1という経営指標を目指し、市場環境の変化に対応しつつ成長分野へ積極的に資金を配分して事業成長を追求するとともに、生産性の向上、サービス事業の拡大等で事業利益を底上げして財務健全性を確保する経営を推進していく。
*1 Triple One Proportion(売上収益:総資産:時価総額=1:1:1の状態をあるべき姿と考えるもの)
ア. 成長戦略の推進
成長戦略を進めていくに当たっては、社会的共通価値であるESG*2やグローバル指標であるSDGs*3を念頭に、短期・中長期両方の視点での事業拡大を図っていく。
短期的には、新興国を中心に需要が堅調に推移している中量産品事業や、サービス・メンテナンス事業を確実に伸ばしていく。また、地球温暖化係数の極めて低い家庭用エアコン、水素焚きガスタービン、EV*4向け電動コンプレッサなどの製品を通じて、環境負荷の低減、低炭素化、電動化といった領域で更なる事業展開を進めていく。さらに、防衛・宇宙などの先端分野で培った技術を他の製品事業分野にも取り入れ、安心・安全の確保に資するトータル・ソリューションの提供などにも経営資源を投入する。
中長期的には、「MHI FUTURE STREAM」(中長期的な視点で既存事業の転換や新規事業の創出に取り組む活動)を通じて、新たな事業機会の創出や、エネルギー・環境事業の構造転換に引き続き取り組んでいく。新たな事業分野の例としては、洋上風力発電など再生エネルギーの拡大と再生エネルギーの変動を補うための調整電源及び蓄エネルギーシステムが挙げられる。また、二酸化炭素の有効活用/固定化のためのバイオマス利用、二酸化炭素回収貯留(CCS*5)などの分野がある。これらについて社外の知見を有効に取り入れて事業機会を創出していくため、当社の技術や設備等を活用できる社外ベンチャーとの共創の場を設けていく予定である。
*2 Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)
*3 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)
*4 Electric Vehicles(電気自動車)
*5 Carbon dioxide Capture and Storage
イ. グローバル・グループ経営体制の整備
当社グループは、卓越した多様な技術をコアとする事業群で構成される企業グループとしての強みを更に生かすために、グローバル・グループ経営体制の整備を目指していく。社会のニーズに応えながら、様々なライフサイクルにある事業の間でリソースを効果的に循環させ、安定性と成長性を両立できるよう、グループ本社のポートフォリオマネジメントを強化し、人材・資金・技術といったリソースを、グローバル展開や成長領域に戦略的に配分・投入していく。また、経営に柔軟性とスピード感を持たせるため、権限移譲等により個々の事業部門の自律性を高めつつも、グループ全体として調和の取れた成長も追求していく。さらに、意思決定の迅速化、経営への参加意識の向上を目指して、シンプルでフラットな経営体制への移行を図るとともに、経営人材の多様化なども推進していく。これにより、グローバル化が進む当社グループの活動領域において様々な価値観やバックグラウンドを有する人材の能力を最大限活かすとともに、異なった意見を持つ多様な人材が、既存の枠を越えて活発に交流することを通じて、新たな変革を生み出す企業風土の形成に努めていく。
ウ. 三菱日立パワーシステムズ株式会社の構造転換
一層の事業規模拡大や事業基盤強化のための施策として、三菱日立パワーシステムズ株式会社では、CO2削減に貢献する最新機種の更なる発電効率の向上で製品競争力の強化を図るとともに、脱炭素社会を見据えた100%専焼水素ガスタービンや自動運転等の新技術開発も進め、中長期的に堅調に推移する見通しのガスタービン市場で、優位性を高めていく。石炭火力発電市場については、環境負荷低減等のニーズを踏まえ、IoT技術や遠隔監視を活用して発電設備の運転を最適化するデジタルソリューションサービス(MHPS-TOMONI®)により、クリーンで経済効率性の高い発電を可能にするサービス事業を強化する。さらに、電力需要者等との連携を深化させて設備全体の経済性向上を図るエネルギーマネジメントシステム(ENERGY CLOUD®)の展開も進める。また、将来におけるエネルギー関連事業の構造転換を見据え、固定費削減や生産拠点の再編のほか、新たな人材教育プログラムの展開などに引き続き取り組んでいく。
エ. MRJ事業の推進
MRJの開発は最終の飛行試験段階に入っており、TC*6取得に引き続き全力を注いでいく。また、量産初号機のお客様への引渡しに向けたカスタマーサポート体制の構築に万全を期すとともに、当社グループ内で更なるシナジーを発揮できる最適な量産体制の構築や、北米市場へ投入する主力モデルの開発とサービス体制の充実に本格的に取り組んでいく。
*6 Type Certificate(型式証明)
当社グループは、以上の諸施策に加え、今後もコンプライアンスやCSRを経営の重要課題としつつ、より一層の企業価値向上を図るとともに社会の持続的発展に貢献していく。