訂正有価証券報告書-第198期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2016/11/04 14:06
【資料】
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【項目】
143項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は,わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。連結財務諸表の作成にあたり,連結貸借対照表上の資産,負債の計上額,及び連結損益計算書上の収益,費用の計上額に影響を与える判断,見積りを行なう必要があります。当社グループの重要な会計方針のうち,判断,見積りを行なう割合が高いものは,貸倒引当金,受注工事損失引当金などの各引当金の計上,退職給付債務の算定,繰延税金資産の回収可能性の判断などがあります。これらの判断,見積りについては合理的な方法により算定していますが,見積り特有の不確実性が存在するため,将来において認識される業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。これらのうち,重要なものについては,「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載しています。
(2)経営成績の分析
①概要
当社グループの当連結会計年度の売上高は,前連結会計年度比11.6%増の1兆4,558億円となりました。損益面については,営業利益が632億円,経常利益が565億円,当期純利益が90億円となりました。
②売上高
売上高は,前連結会計年度と比べて1,518億円増加し,1兆4,558億円となりました。
運搬機械が減収となったものの,ガスプロセス,民間向け航空エンジン,ボイラ,車両過給機,F-LNG・海洋構造物,橋梁が増収となったため,全体として増収となりました。なお,海外売上高は,前連結会計年度比22.5%増の7,580億円,連結売上高に対する占有率は52%(前連結会計年度は47%)となりました。
③営業損益
営業損益は,前連結会計年度と比べて99億円改善し,632億円の利益となりました。
F-LNG・海洋構造物の採算悪化やトルコのイズミット湾横断橋の事故の影響があったものの,為替円安の影響や「資源・エネルギー・環境」セグメントにおける増収による増益効果等により,全体として増益となりました。
④営業外損益及び経常損益
営業外損益は,前連結会計年度の36百万円の損失(純額)から,67億円の損失(純額)となりました。これは主として,持分法による投資損益が,前連結会計年度の53億円の利益から,17億円の損失となったことによるものです。
この結果,経常損益は前連結会計年度と比べて32億円改善し,565億円の利益となりました。
⑤特別損益
特別損益は,前連結会計年度の72億円の利益(純額)から,292億円の損失(純額)となりました。これは,前連結会計年度において,IHIメタルテック㈱の圧延機を主体とする事業を三菱日立製鉄機械㈱に承継させる吸収分割を行なったことによる移転利益75億円を計上していたこと,及び当連結会計年度において,ブラジルのEASについて,ブラジルの経済混乱等により財政状態が悪化したため同社に関わる関係会社事業損失290億円を計上したことによるものです。
⑥当期純損益
上述の要因を反映して,当期純損益は前連結会計年度の331億円の利益に対し,240億円悪化して90億円の利益となりました。これにより,1株当たり当期純利益の金額は,前連結会計年度の22円51銭に対し,5円88銭となりました。
(3)当連結会計年度末の財政状態の分析
資産及び負債,純資産の状況
当連結会計年度末における総資産は1兆6,908億円となり,前連結会計年度末と比較して1,945億円増加しました。主な増加項目は,受取手形及び売掛金で432億円,現金及び預金で313億円,流動資産その他で275億円,仕掛品で271億円です。
負債は1兆3,312億円となり,前連結会計年度末と比較して1,974億円増加しました。主な増加項目は,退職給付に係る負債で280億円,長期借入金で271億円,前受金で219億円,関係会社損失引当金で208億円,1年内償還予定分も含めた社債で200億円です。
純資産は3,595億円となり,前連結会計年度末と比較して29億円減少しました。これには,当期純利益90億円,剰余金の配当による減少138億円,退職給付会計基準等の変更に伴う利益剰余金の減少146億円が含まれています。
以上の結果,1株当たり純資産額は,前連結会計年度末と比較して35銭増加して,224円03銭となり,自己資本比率は,前連結会計年度末の23.1%から20.5%となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金・設備資金については,借入金や社債,コマーシャル・ペーパー及び自己資金により充当しています。当連結会計年度末の有利子負債残高はリース債務を含めて4,106億円であり,前連結会計年度末と比較して528億円増加しています。これは主に事業活動による運転資金の増加及び投資資金の一部を外部借入や社債発行等で調達したことによるものです。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は925億円であり,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段とあわせて,十分な流動性を確保しています。
(5)経営者の問題認識と今後の方針
当社グループは,平成24年11月に「グループ経営方針2010」の結果と反省,当時の当社グループを取り巻く経営環境を踏まえ,社会が抱える様々な課題を積極的に解決することによる「成長」をテーマに掲げ,平成25年度を初年度とする3か年の中期経営計画である「グループ経営方針2013」を策定しました。
同方針の策定にあたって,私たちを取り巻く社会は「スマートな社会インフラ」「新たな高度情報化」「複雑化する世界経済」という3つの大きな潮流(メガトレンド)の中にあると認識しました。これらのメガトレンドに対応するために,「既存事業間及び既存事業と周辺事業を『つなぐ』」「製品・サービスとICTを『つなぐ』」「グローバルな規模でお客さまやパートナーとIHIグループを『つなぐ』」の3つの「つなぐ」取り組みを強化していくこととし,平成25年4月に「ソリューション統括本部」「高度情報マネジメント統括本部」「グローバルビジネス統括本部」の3つの統括本部を新設するとともに,お客さまの課題解決のため,市場特性に応じて当社グループが取り扱う事業を,「資源・エネルギー・環境」「社会基盤・海洋」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」の4事業領域に括りなおしました。当社グループを取り巻く環境は変化し続けているものの,メガトレンドに変わりはないと認識しており,3つの統括本部と4事業領域との連携を進め,お客さまの価値を創造し,当社グループの成長を実現してまいります。
また,新事業領域として,社会的な課題となっている「ライフサイエンス・食料・水」分野などから,将来の事業の創出に取り組んでいます。
なお,同方針では,具体的な数値目標として,為替レート1米ドル=80円の前提で,平成27年度での連結売上高1兆4,000億円,連結営業利益700億円,投下資本利益率(ROIC)6.5%,D/Eレシオ(安定性指標)1.2倍以下及び投資総額3か年合計4,000億円の達成を掲げています。
当社グループは,「グループ経営方針2013」のもと,成長を実現するための取り組みを展開しておりますが,一方で当連結会計年度には,大型投資や受注に関する事業リスクが顕在化しているため,同方針を実行するうえで,リスクマネジメントの強化が経営上の重要な課題と認識しております。事業のグローバル化が進むなかで,ブラジルをはじめとした各国の経済・社会情勢の変化に従来以上の注意を払うとともに,当連結会計年度に発生した愛知工場の生産混乱やトルコにおける橋梁建設工事事故の速やかな収束に注力して,損失の最小化を図ってまいります。また,再発防止策を水平展開することにより大型プロジェクトの管理体制のさらなる高度化を実現し,当社グループの成長のための強固な基盤を構築してまいります。
当社グループは,今後とも企業価値を向上させ,世界をリードする企業グループへと躍進することを目指していく所存です。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。