有価証券報告書-第99期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 13:00
【資料】
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【項目】
132項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(百万円未満四捨五入)
売上高
(百万円)
セグメント利益
(百万円)
営業利益
又は営業損失
(百万円)
税引前利益
又は税引前損失
(百万円)
親会社の所有者に
帰属する当期利益又は当期損失
(百万円)
2021年3月期328,03713,32518,29716,34017,087
2020年3月期381,58417,575△40,298△41,419△61,879
増減△53,546△4,25058,59557,75978,966
増減率(%)△14.0△24.2---

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、厳しい状況が続いております。米国や中国をはじめとして、一部で経済活動に回復の兆しが見られたほか、ワクチン接種による新型コロナウイルス感染症の収束の期待も高まっておりますが、変異株の出現による感染再拡大など、予断を許さない状況が続いております。また、わが国経済においても、政府による景気刺激策により、一部の産業では輸出や生産が持ち直し、経済活動に動きが見られましたが、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境のもと、当社製品の主要な需要先である自動車市場は、世界経済が失速し、新型コロナウイルスの感染拡大によりお取引先様各社も工場の操業停止等の影響を受けたことにより、前連結会計年度に比べ需要が減少しました。また、建設機械市場も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、前連結会計年度に比べ需要が減少しました。
当社グループの売上高につきましては、3,280億円と前連結会計年度に比べ535億円の減収となりました。
損益につきましては、当連結会計年度において、免震・制振用オイルダンパーの製品保証引当金について取崩を行った影響等により、営業利益は182億97百万円(前連結会計年度営業損失402億98百万円)、税引前利益は163億40百万円(前連結会計年度税引前損失414億19百万円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、170億87百万円(前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期損失618億79百万円)となりました。
(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)
2019年3月期において、当社及び当社の子会社であるカヤバシステムマシナリー株式会社にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
当連結会計年度において、状況が進捗したことから免震・制振用オイルダンパーの製作費用、交換工事に要する費用、構造再計算費用、及び補償等の製品保証引当金について繰入及び取崩を行った影響額、並びに対応本部の人件費等の諸費用をその他の費用に計上しております。
なお、当連結会計年度においては、2021年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数(免震用オイルダンパー626本、制振用オイルダンパー1,715本の合計2,341本)、並びに台湾輸出品のうち交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数を製品保証引当金の対象としております。
本件に係る製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は、223億31百万円であります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
(a) AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業セグメント
当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。
ⅰ) 四輪車用油圧緩衝器
四輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は1,427億円と前連結会計年度に比べ14.6%の減収となりました。
ⅱ) 二輪車用油圧緩衝器
二輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は261億円と前連結会計年度に比べ7.6%の減収となりました。
ⅲ) 四輪車用油圧機器
パワーステアリング製品を主とする四輪車用油圧機器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は248億円と前連結会計年度に比べ22.8%の減収となりました。
ⅳ) その他製品
ATV(全地形対応車)用機器を中心とするその他製品の売上高は39億円と前連結会計年度に比べ16.7%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,975億円となり、営業利益は74億30百万円(営業利益率3.8%)となりました。
(b) HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業セグメント
当セグメントは、産業用油圧機器、その他製品から構成されております。
ⅰ) 産業用油圧機器
建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は1,040億円と前連結会計年度に比べ11.1%の減収となりました。
ⅱ) その他製品
鉄道用アクティブサスペンションシステム及び緩衝器を主とするその他製品の売上高は74億円と前連結会計年度に比べ11.2%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,113億円となり、営業利益は59億37百万円(営業利益率5.3%)となりました。
(c) システム製品
当セグメントは、舞台機構、艦艇機器、免制振装置等から構成されております。
システム製品は、売上高は60億円と前連結会計年度に比べ26.5%の減収となりましたが、当連結会計年度において、免震・制振用オイルダンパーの製品保証引当金について取崩を行った影響等により、営業利益は66億87百万円(営業利益率111.6%)となりました。
(d) 航空機器事業
当セグメントは、航空機器用離着陸装置、同操舵装置等から構成されております。
航空機器事業は、売上高は39億円と前連結会計年度に比べ29.6%の減収となり、営業損失は26億75百万円となりました。
(e) 特装車両事業及び電子機器等
当セグメントは、特装車両及び電子機器等から構成されております。
ⅰ) 特装車両
コンクリートミキサ車を主とする特装車両の売上高は83億円と前連結会計年度に比べ3.8%の減収となりました。
ⅱ) 電子機器等
電子機器等の売上高は11億円と前連結会計年度に比べ42.5%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は94億円となり、営業利益は9億16百万円(営業利益率9.8%)となりました。
(百万円未満四捨五入)
資産合計
(百万円)
負債合計
(百万円)
資本合計
(百万円)
親会社の所有者
に帰属する持分
(百万円)
親会社所有者
帰属持分比率
(%)
2021年3月期426,635309,910116,726110,68325.9
2020年3月期410,454330,63979,81574,09418.1
増減16,182△20,72936,91136,5897.8
増減率(%)3.9△6.346.249.4-

流動資産は、現金及び現金同等物が増加しました。また、非流動資産につきましては、その他の金融資産が増加しました。この結果、総資産は162億円増加し、4,266億円となりました。
負債につきましては、製品保証引当金が減少したことにより、負債総額は207億円減少し、3,099億円となりました。
資本は、当期利益に伴う利益剰余金の増加、為替影響によるその他の資本の構成要素の増加により、369億円増加して1,167億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、資本が増加したことから25.9%と前連結会計年度末に比べ7.8ポイント好転しました。
② キャッシュ・フローの状況
(百万円未満四捨五入)
営業活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)
投資活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)
財務活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)
現金及び現金同等物
期末残高
(百万円)
2021年3月期20,826△6,2811,14668,700
2020年3月期△4,999△21,50522,57650,423
増減25,82515,224△21,43118,277
増減率(%)-△70.8△94.936.2

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて145億円の資金流入、また財務活動によるキャッシュ・フローは11億円の資金流入となり、為替換算により26億円増加し、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比183億円増加し、687億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により当連結会計年度は208億円の資金流入となりました。これは主に税引前利益163億円、減価償却費及び償却費186億円、製品保証引当金の減少238億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度比70.8%減少の63億円となりました。これは主に有形固定資産の取得112億円等の資金流出、その他の金融資産の売却による収入45億円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、11億円となりました。主な流出は、長期借入金の返済による支出285億円、主な流入は、長期借入金による収入224億円、短期借入金の純増減額74億円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
前期比(%)
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業(百万円)193,916△15.0
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業(百万円)110,897△11.7
システム製品(百万円)6,725△10.7
航空機器事業(百万円)4,083△10.3
報告セグメント計(百万円)315,621△13.7
特装車両事業および電子機器等(百万円)9,407△10.8
合計(百万円)325,028△13.6

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(b) 受注実績
四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびパワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。舞台機構、艦艇機器、免制振装置等を主とするシステム製品、航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。
特装車両事業および電子機器等についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。 従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。
(c) 販売実績
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
前期比(%)
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業(百万円)197,453△14.9
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業(百万円)111,348△11.1
システム製品(百万円)5,990△26.5
航空機器事業(百万円)3,857△29.6
報告セグメント計(百万円)318,649△14.1
特装車両事業および電子機器等(百万円)9,389△10.9
合計(百万円)328,037△14.0

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものは、ありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、お取引先様各社も工場の操業停止等の影響を大きく受けたことにより、当社製品の主要な需要先である自動車市場、建設機械市場共に、前連結会計年度に比べ需要が大幅に減少しました。このため、売上高は四輪車用油圧緩衝器や建設機械用油圧機器を中心に数量減となり、前連結会計年度比14.0%減少の3,280億円、セグメント利益は前連結会計年度比24.2%減少の133億円に留まりました。一方で、免震・制振用オイルダンパーの適合化が進み、製品保証引当金の取崩しを行ったことにより、営業利益は183億円の黒字に転じることができました。新型コロナウイルス感染症はワクチン接種による収束の期待が高まっておりますが、変異株の出現による感染拡大が見られること、また、新たに世界的な半導体不足による経済活動への影響も出てきていることから、翌連結会計年度以降も不透明な状況が続くものと思われます。
当連結会計年度は、2018年度に公表しました免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為より、失った信頼を回復すべく、前連結会計年度に続きグループガバナンス強化を含めた各種再発防止策を進めると共に、不適合ダンパーの適合化に向けて全力を挙げて取り組んだ一年でした。なお、不適合ダンパーの適合化につきましては9割を超え、早期の完了を目指しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては金融機関からの長期借入を基本としております。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響による資金需要に備えるため、2020年6月19日付で、総額446億円のコミットメントライン型シンジケートローン契約の締結及び160億円の資金の借入を実行いたしました。なお、本契約および資金の借入に係る当連結会計年度末における借入残高はありません。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,603億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は687億円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。中期経営計画において、売上高3,780億円、セグメント利益250億円(セグメント利益率6.6%)、親会社所有者に帰属する持分比率34.0%を2022年度に達成することを目標としております。2020年度の経営成績は、それぞれ売上高3,280億円、セグメント利益133億円(セグメント利益率4.1%)、親会社所有者に帰属する持分比率25.9%となっており、更なる業績向上に向けた努力が必要ですが、引き続きコンプライアンス遵守とガバナンス強化を経営の根幹に据えながら、収益基盤の安定化(不採算事業・拠点・製品の撤退)と、当社を支える2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の成長戦略を確実に推進することで、2022年度の目標達成に向けてグループ会社総力を挙げて取り組んで参ります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
なお、2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の2020年度の目指す姿と基本戦略は、以下の通りです。
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業は、「既存事業とコア技術の深化によるコアサプライヤーとしての地位確立」を目指す姿とし、主要拠点集約及び再編による生産最適化・原価低減活動・市販事業の構造改革による「収益基盤の安定化」、コスト競争力をつけるための「革新的モノづくり」、独自技術の深化(EV化・ CASE・MaaSへの対応)による「高付加価値製品の創出」を基本戦略として取り組んでおります。
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、「お客様に信頼され世界で採用され続けるメーカー」を目指す姿とし、電子制御化・ロードセンシング(LS)化製品の開発と中・大型ポンプの開発による「自動化・複合化ニーズへの対応」、原低モデル投入による市場競争力の向上による「原価低減・現調化活動推進」を基本戦略として取り組んでおります。
この他、航空機器事業については、2018年度に判明いたしました防衛装備品の不適切事項からお客様からの信頼を取り戻すべく、コンプライアンス強化・安全第一・品質経営のもと、受注から納入までの一貫した仕組み作りを基本戦略として事業再生を図っております。
特装車両事業については、国内ではミキサトップメーカーとして高付加価値製品の市場投入と黒字体質の強化、海外では新たなビジネスプランの策定と実行による特装グローバル体制の確立を基本戦略として取り組んでおります。
システム製品については、免震・制振用オイルダンパーの適合化の早期完了と再発防止策の確実な実施により、第三者からも認められる体制の構築を進めております。