有価証券報告書-第98期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(百万円未満四捨五入)
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦の長期化に伴い中国の経済成長が鈍化したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的な景気の失速となりました。また、わが国経済においては、相次ぐ自然災害、消費税増税などの影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大も伴い、先行きの不透明感が増した状況となっております。
このような環境のもと、当社製品の主要な需要先である自動車市場は、世界経済が失速したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大によりお取引先様各社も工場の操業停止等の影響を受けた関係で、前連結会計年度に比べ需要が減少しました。また、建設機械市場も、中国の経済成長鈍化の影響を受け、前連結会計年度に比べ需要が減少しました。
当社グループの売上高につきましては、3,816億円と前連結会計年度に比べ306億円の減収となりました。
損益につきましては、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用の計上等により、営業損失は402億98百万円(前連結会計年度営業損失284億96百万円)、税引前損失は414億19百万円(前連結会計年度税引前損失295億10百万円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期損失は、直近の業績動向を踏まえ、回収可能性について検討し、繰延税金資産を一部取り崩した影響により、618億79百万円(前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期損失247億57百万円)となりました。
(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)
前連結会計年度(2019年3月期)において、当社及び当社の子会社であるカヤバシステムマシナリー株式会社にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
当連結会計年度末において、状況が進捗したことから免震・制振用オイルダンパーの製作費用、交換工事に要する費用、構造再計算費用、及び補償等の製品保証引当金について繰入及び取崩を行った影響額、並びに対応本部の人件費等の諸費用をその他の費用に計上しております。
なお、当連結会計年度においては、2020年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数(免震用オイルダンパー4,038本、制振用オイルダンパー2,852本の合計6,890本)、並びに台湾輸出品のうち交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数を製品保証引当金の対象としております。
本件に係る製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は、457億99百万円であります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
(a) AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業セグメント
当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。
ⅰ) 四輪車用油圧緩衝器
四輪車用油圧緩衝器は、消費税増税に伴う国内市場の冷え込みに加え、海外の市況悪化、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は1,671億円と前連結会計年度に比べ1.5%の減収となりました。
ⅱ) 二輪車用油圧緩衝器
二輪車用油圧緩衝器は、主要な市場であるインドの市況悪化の影響で、売上高は282億円と前連結会計年度に比べ2.8%の減収となりました。
ⅲ) 四輪車用油圧機器
パワーステアリング製品を主とする四輪車用油圧機器は、電動パワーステアリングやCVT(無段変速機)用ベーンポンプの販売減少により、売上高は321億円と前連結会計年度に比べ23.8%の減収となりました。
ⅳ) その他製品
ATV(全地形対応車)用機器を中心とするその他製品の売上高は47億円となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は2,321億円となりました。営業損失は、減損損失の計上により95億48百万円となりました。
(b) HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業セグメント
当セグメントは、産業用油圧機器、その他製品から構成されております。
ⅰ) 産業用油圧機器
建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、中国経済の成長鈍化による需要減少に加え、北米の市況悪化、相次ぐ自然災害や新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は1,170億円と前連結会計年度に比べ11.5%の減収となりました。
ⅱ) その他製品
鉄道用アクティブサスペンションシステム及び緩衝器を主とするその他製品の売上高は83億円と前連結会計年度に比べ0.3%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,253億円となり、営業利益は51億5百万円(営業利益率4.1%)となりました。
(c) システム製品
当セグメントは、舞台機構、艦艇機器、免制振装置等から構成されております。
システム製品は、売上高は81億円と前連結会計年度に比べ4.5%の減収となり、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用の計上等により、営業損失は339億85百万円となりました。
(d) 航空機器事業
当セグメントは、航空機器用離着陸装置、同操舵装置等から構成されております。
航空機器事業は、売上高は55億円と前連結会計年度に比べ2.6%の減収となり、営業損失は28億23百万円となりました。
(e) 特装車両事業及び電子機器等
当セグメントは、特装車両及び電子機器等から構成されております。
ⅰ) 特装車両
コンクリートミキサ車を主とする特装車両の売上高は86億円と前連結会計年度に比べ5.7%の減収となりました。
ⅱ) 電子機器等
電子機器等の売上高は19億円と前連結会計年度に比べ22.9%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は105億円となり、営業利益は9億45百万円(営業利益率9.0%)となりました。
(百万円未満四捨五入)
流動資産は、現金及び現金同等物、棚卸資産、営業債権及びその他の債権等が減少しました。また、非流動資産につきましては、その他の金融資産、繰延税金資産が減少しました。この結果、総資産は306億円減少し、4,105億円となりました。
負債につきましては、借入金及び製品保証引当金が増加しました。負債総額は452億円増加し、3,306億円となりました。
資本は、当期損失に伴う利益剰余金の減少、為替影響によるその他の資本の構成要素の減少により、758億円減少して798億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、資本が減少したことから18.1%と前連結会計年度末に比べ15.8ポイント悪化しました。
② キャッシュ・フローの状況
(百万円未満四捨五入)
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて265億円の資金流出、また財務活動によるキャッシュ・フローは226億円の資金流入となり、為替換算により17億円減少し、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比57億円減少し、504億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により当連結会計年度は50億円の資金流出となりました。これは主に税引前損失414億円、営業債務及びその他の債務の減少141億円、製品保証引当金の増加105億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度比57.9%増加の215億円となりました。これは主に有形固定資産の取得207億円等の資金流出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、226億円となりました。主な流出は、長期借入金の返済による支出130億円、主な流入は、長期借入金による収入292億円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(b) 受注実績
四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびパワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。舞台機構、艦艇機器、免制振装置等を主とするシステム製品、航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。
特装車両事業および電子機器等についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。 従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。
(c) 販売実績
当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものは、ありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高が建設機械向け製品や四輪車用油圧緩衝器を中心とした数量減により前連結会計年度比7.4%減少の3,816億円、セグメント利益は176億円を計上しました。一方、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用等を計上したことから、営業損失は403億円となりました。新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞から世界規模での生産停止となり、下期後半において、当社の主要事業であるAC事業、HC事業ともに販売が急減し、業績が大幅に悪化しました。新型コロナウイルスの感染拡大が、未だ収束の兆しが見えないことから、AC事業を中心に翌連結会計年度以降も業績への影響が続くものと思われます。
当連結会計年度は、前連結会計年度に公表しました免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為や、防衛省に対する不適切な工数計上による過大請求行為により失った信頼を回復すべく、グループガバナンス強化を含めた各種再発防止策に、全力を挙げて取り組んだ一年でした。なお、不適合ダンパーの適合化に関しては、順次交換等の作業を進めており、2021年3月末の完了を目指しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては金融機関からの長期借入を基本としております。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響による資金需要に備えるため、2020年6月19日付で、総額446億円のコミットメントライン型シンジケートローン契約の締結及び160億円の資金の借入を実行いたしました。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,546億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は504億円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。2017年度期首に策定した中期経営計画において、売上高3,980億円・セグメント利益率6.5%・ROE10.0%を2019年度に達成することを目標としております。2019年度の各経営指標はそれぞれ売上高3,816億円・セグメント利益率4.6%となりましたが、ROEは免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用の計上等により、当期損失のため△55.4%となっております。2020年度は、新たに2020中期経営計画がスタートし、引き続き規範意識とコンプライアンス遵守を経営の根幹に据えながら、高収益体質への変革を目指す3年間となります。収益性・持続性のあるビジネスの追及や、誇りと働き甲斐を持てる職場作り、社会からの期待に向き合い応えていく姿勢を企業活動の基本とし、これまでのものの考え方、仕事の仕方を改めてまいります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
なお、各セグメントの課題・リスクに対して、以下のような対応をしております。
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業においては、事業の運営体制の強化として、サスペンション事業部・ステアリング事業部・モーターサイクル事業部の3事業部制による引き合い受注管理の強化、新規立ち上げ機種の原価売価管理を実施しております。又、CVT(無段変速機)用ポンプの継続的な受注確保のための原価低減活動、中国地場メーカー参入に向けた販路開拓、欧州拠点やモーターサイクル拠点の生産体制の再編による利益拡大等にも取り組んでおります。
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業においては、量に頼らない収益基盤の確立、新製品開発とリンクした工法開発と体制整備、市場変動に左右されない生産体制の構築、農業機械の販売強化や新製品の市場投入による売上高確保、国内・海外の全拠点の黒字定着化等の活動を進めております。
航空機器事業については、2018年度に判明いたしました防衛装備品の不適切な工数計上による請求問題の再発防止に向けた活動を進めるとともに、お客様からの信頼回復と採算性向上により、事業再生に取り組んでおります。
特装車両事業については、公共事業や都市開発など国内需要の確実な取り込みにより売上高とシェアを確保するとともに、新たな海外進出に向けた市場調査、採算性評価及び仕様確認等を進めております。
③ 継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク (2) 継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、当社が全ての該当金融機関と締結しているシンジケートローン契約(当連結会計年度末残高26,434百万円)に付された財務制限条項に抵触しております。
よって、当社は当該状況を解消すべく各金融機関と協議を行い、財務制限条項への抵触に関して、期限の利益喪失請求を行わないことに同意を得ております。
以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(百万円未満四捨五入)
売上高 (百万円) | セグメント利益 (百万円) | 営業損失 (百万円) | 税引前損失 (百万円) | 親会社の所有者に 帰属する当期損失 (百万円) | |
2020年3月期 | 381,584 | 17,575 | △40,298 | △41,419 | △61,879 |
2019年3月期 | 412,214 | 22,010 | △28,496 | △29,510 | △24,757 |
増減 | △30,630 | △4,435 | △11,802 | △11,909 | △37,123 |
増減率(%) | △7.4 | △20.2 | - | - | - |
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦の長期化に伴い中国の経済成長が鈍化したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的な景気の失速となりました。また、わが国経済においては、相次ぐ自然災害、消費税増税などの影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大も伴い、先行きの不透明感が増した状況となっております。
このような環境のもと、当社製品の主要な需要先である自動車市場は、世界経済が失速したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大によりお取引先様各社も工場の操業停止等の影響を受けた関係で、前連結会計年度に比べ需要が減少しました。また、建設機械市場も、中国の経済成長鈍化の影響を受け、前連結会計年度に比べ需要が減少しました。
当社グループの売上高につきましては、3,816億円と前連結会計年度に比べ306億円の減収となりました。
損益につきましては、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用の計上等により、営業損失は402億98百万円(前連結会計年度営業損失284億96百万円)、税引前損失は414億19百万円(前連結会計年度税引前損失295億10百万円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期損失は、直近の業績動向を踏まえ、回収可能性について検討し、繰延税金資産を一部取り崩した影響により、618億79百万円(前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期損失247億57百万円)となりました。
(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)
前連結会計年度(2019年3月期)において、当社及び当社の子会社であるカヤバシステムマシナリー株式会社にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
当連結会計年度末において、状況が進捗したことから免震・制振用オイルダンパーの製作費用、交換工事に要する費用、構造再計算費用、及び補償等の製品保証引当金について繰入及び取崩を行った影響額、並びに対応本部の人件費等の諸費用をその他の費用に計上しております。
なお、当連結会計年度においては、2020年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数(免震用オイルダンパー4,038本、制振用オイルダンパー2,852本の合計6,890本)、並びに台湾輸出品のうち交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数を製品保証引当金の対象としております。
本件に係る製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は、457億99百万円であります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
(a) AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業セグメント
当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。
ⅰ) 四輪車用油圧緩衝器
四輪車用油圧緩衝器は、消費税増税に伴う国内市場の冷え込みに加え、海外の市況悪化、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は1,671億円と前連結会計年度に比べ1.5%の減収となりました。
ⅱ) 二輪車用油圧緩衝器
二輪車用油圧緩衝器は、主要な市場であるインドの市況悪化の影響で、売上高は282億円と前連結会計年度に比べ2.8%の減収となりました。
ⅲ) 四輪車用油圧機器
パワーステアリング製品を主とする四輪車用油圧機器は、電動パワーステアリングやCVT(無段変速機)用ベーンポンプの販売減少により、売上高は321億円と前連結会計年度に比べ23.8%の減収となりました。
ⅳ) その他製品
ATV(全地形対応車)用機器を中心とするその他製品の売上高は47億円となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は2,321億円となりました。営業損失は、減損損失の計上により95億48百万円となりました。
(b) HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業セグメント
当セグメントは、産業用油圧機器、その他製品から構成されております。
ⅰ) 産業用油圧機器
建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、中国経済の成長鈍化による需要減少に加え、北米の市況悪化、相次ぐ自然災害や新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞の影響により、売上高は1,170億円と前連結会計年度に比べ11.5%の減収となりました。
ⅱ) その他製品
鉄道用アクティブサスペンションシステム及び緩衝器を主とするその他製品の売上高は83億円と前連結会計年度に比べ0.3%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,253億円となり、営業利益は51億5百万円(営業利益率4.1%)となりました。
(c) システム製品
当セグメントは、舞台機構、艦艇機器、免制振装置等から構成されております。
システム製品は、売上高は81億円と前連結会計年度に比べ4.5%の減収となり、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用の計上等により、営業損失は339億85百万円となりました。
(d) 航空機器事業
当セグメントは、航空機器用離着陸装置、同操舵装置等から構成されております。
航空機器事業は、売上高は55億円と前連結会計年度に比べ2.6%の減収となり、営業損失は28億23百万円となりました。
(e) 特装車両事業及び電子機器等
当セグメントは、特装車両及び電子機器等から構成されております。
ⅰ) 特装車両
コンクリートミキサ車を主とする特装車両の売上高は86億円と前連結会計年度に比べ5.7%の減収となりました。
ⅱ) 電子機器等
電子機器等の売上高は19億円と前連結会計年度に比べ22.9%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は105億円となり、営業利益は9億45百万円(営業利益率9.0%)となりました。
(百万円未満四捨五入)
資産合計 (百万円) | 負債合計 (百万円) | 資本合計 (百万円) | 親会社の所有者 に帰属する持分 (百万円) | 親会社所有者 帰属持分比率 (%) | |
2020年3月期 | 410,454 | 330,639 | 79,815 | 74,094 | 18.1 |
2019年3月期 | 441,074 | 285,430 | 155,643 | 149,338 | 33.9 |
増減 | △30,620 | 45,209 | △75,829 | △75,244 | △15.8 |
増減率(%) | △6.9 | 15.8 | △48.7 | △50.4 | - |
流動資産は、現金及び現金同等物、棚卸資産、営業債権及びその他の債権等が減少しました。また、非流動資産につきましては、その他の金融資産、繰延税金資産が減少しました。この結果、総資産は306億円減少し、4,105億円となりました。
負債につきましては、借入金及び製品保証引当金が増加しました。負債総額は452億円増加し、3,306億円となりました。
資本は、当期損失に伴う利益剰余金の減少、為替影響によるその他の資本の構成要素の減少により、758億円減少して798億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、資本が減少したことから18.1%と前連結会計年度末に比べ15.8ポイント悪化しました。
② キャッシュ・フローの状況
(百万円未満四捨五入)
営業活動による キャッシュ・フロー (百万円) | 投資活動による キャッシュ・フロー (百万円) | 財務活動による キャッシュ・フロー (百万円) | 現金及び現金同等物 期末残高 (百万円) | |
2020年3月期 | △4,999 | △21,505 | 22,576 | 50,423 |
2019年3月期 | 17,047 | △13,616 | 10,418 | 56,092 |
増減 | △22,046 | △7,889 | 12,159 | △5,669 |
増減率(%) | - | 57.9 | 116.7 | △10.1 |
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて265億円の資金流出、また財務活動によるキャッシュ・フローは226億円の資金流入となり、為替換算により17億円減少し、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比57億円減少し、504億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により当連結会計年度は50億円の資金流出となりました。これは主に税引前損失414億円、営業債務及びその他の債務の減少141億円、製品保証引当金の増加105億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度比57.9%増加の215億円となりました。これは主に有形固定資産の取得207億円等の資金流出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、226億円となりました。主な流出は、長期借入金の返済による支出130億円、主な流入は、長期借入金による収入292億円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前期比(%) |
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業(百万円) | 228,161 | △8.2 |
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業(百万円) | 125,594 | △12.5 |
システム製品(百万円) | 7,529 | △14.6 |
航空機器事業(百万円) | 4,553 | △29.9 |
報告セグメント計(百万円) | 365,838 | △10.2 |
特装車両事業および電子機器等(百万円) | 10,543 | △4.5 |
合計(百万円) | 376,380 | △10.1 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(b) 受注実績
四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびパワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。舞台機構、艦艇機器、免制振装置等を主とするシステム製品、航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。
特装車両事業および電子機器等についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。 従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。
(c) 販売実績
当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前期比(%) |
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業(百万円) | 232,101 | △5.6 |
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業(百万円) | 125,321 | △10.9 |
システム製品(百万円) | 8,148 | △4.5 |
航空機器事業(百万円) | 5,481 | △2.6 |
報告セグメント計(百万円) | 371,050 | △7.4 |
特装車両事業および電子機器等(百万円) | 10,534 | △9.4 |
合計(百万円) | 381,584 | △7.4 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものは、ありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高が建設機械向け製品や四輪車用油圧緩衝器を中心とした数量減により前連結会計年度比7.4%減少の3,816億円、セグメント利益は176億円を計上しました。一方、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用等を計上したことから、営業損失は403億円となりました。新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞から世界規模での生産停止となり、下期後半において、当社の主要事業であるAC事業、HC事業ともに販売が急減し、業績が大幅に悪化しました。新型コロナウイルスの感染拡大が、未だ収束の兆しが見えないことから、AC事業を中心に翌連結会計年度以降も業績への影響が続くものと思われます。
当連結会計年度は、前連結会計年度に公表しました免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為や、防衛省に対する不適切な工数計上による過大請求行為により失った信頼を回復すべく、グループガバナンス強化を含めた各種再発防止策に、全力を挙げて取り組んだ一年でした。なお、不適合ダンパーの適合化に関しては、順次交換等の作業を進めており、2021年3月末の完了を目指しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては金融機関からの長期借入を基本としております。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響による資金需要に備えるため、2020年6月19日付で、総額446億円のコミットメントライン型シンジケートローン契約の締結及び160億円の資金の借入を実行いたしました。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,546億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は504億円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。2017年度期首に策定した中期経営計画において、売上高3,980億円・セグメント利益率6.5%・ROE10.0%を2019年度に達成することを目標としております。2019年度の各経営指標はそれぞれ売上高3,816億円・セグメント利益率4.6%となりましたが、ROEは免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に伴う費用の計上等により、当期損失のため△55.4%となっております。2020年度は、新たに2020中期経営計画がスタートし、引き続き規範意識とコンプライアンス遵守を経営の根幹に据えながら、高収益体質への変革を目指す3年間となります。収益性・持続性のあるビジネスの追及や、誇りと働き甲斐を持てる職場作り、社会からの期待に向き合い応えていく姿勢を企業活動の基本とし、これまでのものの考え方、仕事の仕方を改めてまいります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
なお、各セグメントの課題・リスクに対して、以下のような対応をしております。
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業においては、事業の運営体制の強化として、サスペンション事業部・ステアリング事業部・モーターサイクル事業部の3事業部制による引き合い受注管理の強化、新規立ち上げ機種の原価売価管理を実施しております。又、CVT(無段変速機)用ポンプの継続的な受注確保のための原価低減活動、中国地場メーカー参入に向けた販路開拓、欧州拠点やモーターサイクル拠点の生産体制の再編による利益拡大等にも取り組んでおります。
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業においては、量に頼らない収益基盤の確立、新製品開発とリンクした工法開発と体制整備、市場変動に左右されない生産体制の構築、農業機械の販売強化や新製品の市場投入による売上高確保、国内・海外の全拠点の黒字定着化等の活動を進めております。
航空機器事業については、2018年度に判明いたしました防衛装備品の不適切な工数計上による請求問題の再発防止に向けた活動を進めるとともに、お客様からの信頼回復と採算性向上により、事業再生に取り組んでおります。
特装車両事業については、公共事業や都市開発など国内需要の確実な取り込みにより売上高とシェアを確保するとともに、新たな海外進出に向けた市場調査、採算性評価及び仕様確認等を進めております。
③ 継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク (2) 継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、当社が全ての該当金融機関と締結しているシンジケートローン契約(当連結会計年度末残高26,434百万円)に付された財務制限条項に抵触しております。
よって、当社は当該状況を解消すべく各金融機関と協議を行い、財務制限条項への抵触に関して、期限の利益喪失請求を行わないことに同意を得ております。
以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。