有価証券報告書-第95期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/22 10:44
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174項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)が判断したものです。
当社グループは、『“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す』という経営理念のもと、ありたい姿である「笑顔をつくる会社」の実現に向け、提供価値である「安心と愉しさ」を進化させていきます。そして、SUBARUを自動車事業と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドへ持続的に成長させるとともに、すべてのステークホルダーの皆様に事業活動へ共感いただくことを通じてSUBARUグループの持続的な成長と愉しく持続可能な社会の実現を目指しています。
(1) ありたい姿、提供価値、経営理念
<ありたい姿>笑顔をつくる会社
<提供価値>安心と愉しさ
<経営理念>“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す
(2) 新経営体制における方針およびSUBARU 2025方針
当社グループは、2023年の新経営体制への移行に伴い公表した「新経営体制における方針(以下、「新体制の方針」といいます。)」のもと、「モノづくり」と「価値づくり」で世界最先端を目指した取り組みを進めております。また、近年の自動車産業を取り巻く非連続かつ従来以上にスピード感のある変化に対して、「柔軟性と拡張性」を軸に、よりタイムリーな対応の強化を図ってまいりました。2025年11月に公表した「SUBARU 2025方針」では、「新体制の方針」のもと、足元の事業環境の変化も踏まえ、取り組みの進捗や深化を整理するとともに今後の方向性を示しています。
(3) 対処すべき課題
(「存在感と魅力ある企業」へ)
当社グループは「安心と愉しさ」という提供価値を軸に、技術やサービスを愚直に、そして誠実に、磨き続けてきました。お客様の人生に寄り添う存在でありたいという思いは、SUBARUのクルマは単なる移動手段という概念を超えたお客様の体験や思い出に繋がり、「I like SUBARU」ではなく「I love SUBARU」と言っていただけるまでに至っています。米国においては、クルマづくりに込めた「安心と愉しさ」が、“LOVE”や“TRUST”という深い感情や関係へと発展し、その想いを社会へ広げていくために、お客様と販売店が一体となって地域の社会課題を解決する「Love Promise」という活動に結びついています。
「世の中をより良くしよう」という真摯な取り組みから示唆されることは、当社グループの使命が、SUBARUは単に商品を製造・販売するだけにとどまらず、お客様やリテーラーと共に「思いやり」のある社会の実現にもっと向き合うことにあるという点です。今、社会全体が不安定な状況にあるなか、企業ができることは限られているかもしれません。しかし、米国で「社会に影響力のある企業」として評価されている以上、当社グループは存在感を一層高め、ヒトや地域や社会にとってなくてはならない企業を目指していきたいと考えています。
(「新体制の方針」の真の狙い)
高い理想を実現していくためには競争力の強化が不可欠です。また、先行きが不透明な中、変化に柔軟に対応するため、従来の開発や生産の考えを革新する必要がありました。
「新体制の方針」のもと、BEV※1という未知の領域に挑むことでこそ、モノづくり革新を進め、競争力を高められる、と考えたからであり、これが新体制方針の真の狙いとなります。
この2年間、社内ではプロセス改革と社員の意識改革に取り組み、商品開発や生産面での柔軟性を徹底的に追求してきました。市場では予想以上に急激な変化が生じていますが、今後起き得るあらゆる変化に対しても柔軟に対応できる手応えを得ています。
※1:Battery Electric Vehicle(電気自動車)
①「モノづくり革新」における「柔軟性」の徹底的な追求
(開発の徹底的な効率化)
柔軟性のポイントは開発の徹底的な効率化にあります。そして、その最大の鍵は、当社グループがこの2年間BEV開発の場を通じて進めてきた制御統合ECU※2の拡張です。
制御統合ECUは、「内製AIを搭載した次世代アイサイト」と「AWD制御含めた車両運動制御」を連携・連動し、統合運動制御を行う、安心と愉しさの基盤でもあります。制御統合ECUを中心としたE/Eアーキテクチャ※3をICE※4搭載車と共通化することで開発効率を大幅に高めていきます。また、BEVおよび既存のICE車の車体プラットフォームは、組み合わせによる拡張性を念頭に入れて開発を進めてきました。複数のプラットフォームの組み合わせにより、セグメントをまたぐ商品ラインアップの拡充が実現できる見通しです。次世代パワーソースについては、BEVに加え、電動化を前提とした最適な新エンジンの開発にも取り組んでいます。
技術革新と開発の効率化をセットで進めてきたことが開発面でのモノづくり革新となります。

※2:「次世代アイサイト」と「AWD」の制御機能を統合したECU(Electronic Control Unit)
※3:車両の電気・電子構成のこと。ECUなどをハーネスで接続したシステム設計構造を指す。
※4:Internal Combustion Engine(内燃機関)
(変革を支える人と組織)
BEV開発では、大部屋方式によるアジャイル開発を採用し、状況に柔軟に対応しながら、最短手番を追求するプロセスに挑戦しました。そこで培ったスピードや柔軟な発想、挑戦する勇気をICE車の開発でも繰り返しながら業界トップレベルの革新手番の実現に取り組んでいます。
この革新を本物にするためには、自ら考えて動く「現場の力」が不可欠です。そのため、一人ひとりの意識改革にも徹底的に取り組んできました。その結果、「まずやってみる」「途中で修正する」「失敗を恐れず、何度でも挑戦する」、こうした姿勢が現場に定着しつつあります。
多様化するお客様にお応えしていくためには、自らが変わり続けなければなりません。制約となる既存ルールや慣習を壊し、どんな状況でも現場が自ら考え、行動する、全員のポテンシャルを100%引き出す組織・体制の構築を図っていきます。

(超効率生産の実現)
当社グループはこれまで、高い稼働率により、効率的な生産を実現してきました。そこにBEVという新しい要素が加わり、強みとする混流生産やブリッジ生産が崩れかねない課題に対し生産のエンジニアも大部屋開発に加わることで、設計面および生産技術面において、さらなる進化を図っています。
BEVとICE車は混流生産とし、ブリッジ生産では、日米にまたがる拠点、およびラインごとの連携をより一層強化し、グローバル視点での需要変動に柔軟に対応するとともに、設備や人財の稼働率最大化を目指します。また、物流改革を進め、日米をまたぐサプライチェーンにおいても柔軟性の実現にチャレンジしていきます。
変化の激しい事業環境の中で、コスト競争力の強化に加え、革新的なフィジカルAIの実装も視野に入れながら、超効率生産を実現します。

(商品ラインアップの大幅拡充)
様々な挑戦の積み重ねにより培った力を全社の隅々まで浸透させ、BEVやHEV※5、ICE車を問わず、変化の激しい市場環境に柔軟かつ迅速に応えられるよう、モノづくり革新に向けた取り組みを進めております。そして、これらをさらに加速させることで、次世代技術を核とし、これまで以上に多様な市場や、お客様ニーズに応えられる商品ラインアップの大幅な拡充を図りたいと考えています。
※5:Hybrid Electric Vehicle(ハイブリッド自動車)

②「価値づくり」推進
SUBARUのお客様は保有期間が長く、1台のクルマが、次のオーナーへ引き継がれて複数の人生を共にすることも増えています。また、SUBARUと販売店とお客様は、長く強い繋がりを持っています。サービスや販売店の満足度に加え、「Love Promise」の活動を通じて培われた繋がりなど、他社にはない強みとなっています。
当社グループは、ご購入後も長期にわたり、お客様「一人ひとりに最良の安心と愉しさ」を提供し続けていきたいと思っています。
(「安心と愉しさ」の進化)
これらの価値を実現する技術基盤が、コネクティッドプラットフォームおよび E/E アーキテクチャです。コネクティッドによりお客様との接点を拡張し、データ活用の高度化を通じて、クルマの状態やお客様の声・体験にさらに寄り添うことができます。
また、その技術とサービス網の連携により、購入後のOTA※6によるソフトウェアアップデートに加え、販売店でのハードウェアアップデートなどを通じて、体験価値の拡張を進めています。
このように、減価ゼロの発想に基づく技術とサービスが一体となった機能拡張を進めることで、SUBARUならではの価値を提供し続けていきます。

なお、当社はこれまでも、次世代アイサイトや統合制御ECUの開発において、AMDやonsemiと半導体領域の協業を進めており、2026年3月にはInfineon Technologiesとの間の取り組みとして、次世代SUBARU車向けの制御統合ECUに搭載するマイクロコントローラユニットの設計に関する協業を発表しました。
社内外の知見を適切に組み合わせながら技術開発を進めることで、技術進化のスピードと質の両立を図り、価値提供の高度化につなげています。
※6:Over-The-Air。通信を通じて車両に搭載されたソフトウェアを遠隔で更新する仕組み
③ブランドを際立てる
市場の先行きは依然として不透明な状況にありますが、BEVやICE車に関わらずSUBARUを選び続けていただけるよう、ブランドを際立てて、SUBARUの存在感をより一層高めていく必要があります。
当社グループが目指すのはプレミアムブランドではなく、お客様の人生に寄り添うブランドです。お客様の人生において共感いただいているSUBARUのイメージを際立たせていくのが当社グループのブランド戦略です。
SUBARUが共感を得ている2つの象徴的なシーンであるPerformanceとAdventureは、相反する概念と捉えられる場合もあります。Performance志向のお客様は技術に強い関心を寄せ、理解を深められている方が多く、Adventure志向のお客様は自然や家族との時間を大切にされる方が多く見られます。一見すると交わりにくいこの2つの世界が、SUBARUのファンが集う場では、互いに敬意を持って共存しています。
この背景には、当社グループが誠実に、愚直に、本質を追求し続けてきた「安心と愉しさ」という不変の提供価値があります。この「安心と愉しさ」を突き詰め、その両端にあるPerformanceシーンとAdventureシーンを際立たせることで、SUBARUをより引き上げていく、これが当社グループの目指す「ブランドを際立てる」という考え方です。
さらに、これらの世界観をアクセサリーやグッズ、モータースポーツやイベントなど、さまざまなお客様やコミュニティとのタッチポイントにおいても統一的に展開することで、収益の柱として育てていくことも狙いの一つとしています。

④経営基盤の強靭化
現在、厳しい事業環境の中にありますが、その困難を乗り越えるためチーム一丸となって取り組んでいます。
まず、米国関税措置の影響を打ち返すべく、2,000億円規模のコスト低減に向けた「原価維新20-30」プロジェクトを始動しました。設計段階からお取引先様と協働し、モノづくり革新の成果を最大限に活かすことで、従来の枠を超えた異次元のコスト改革に挑戦していきます。
あわせて、収益基盤の拡大にも取り組んでいきます。お客様の多様なニーズに応える商品ラインアップの大幅拡充により、2030年代前半には、世界で120万台の販売規模を実現していきます。さらに、ブランド戦略や減価ゼロの取り組みを通じて、バリューチェーン全体での収益拡大にも挑戦していきます。
こうした取り組みによって、引き続き、業界高位の利益率を実現してまいります。

(これからの成長を支える投資)
中長期的には、BEVが主軸になっていくという考えは不変です。一方、足元でHEV需要の高まりや内燃機関(ICE)の再評価が進んでいる状況を踏まえ、本格的なBEV量産投資のタイミングを遅らせることが適当と判断し、従前の「電動化投資1.5兆円」の内容を精査・見直しました。
具体的には、「多様なニーズに応える商品ラインナップ拡充」のため、HEVを含む次世代ICE車の研究開発を追加強化するとともに、BEVに関する研究開発は従来どおり継続します。研究開発全体としては増加する見通しですが、「モノづくり革新」を目指す中で培った技術や知見を活かし、開発の効率化を進めることで、投資負担の大幅な増加を抑制します。
設備投資については、混流生産による柔軟かつ効率的な生産体制を追求しつつ、タイミングを見極めながら生産能力増強や規模拡大を検討します。
これにより、投資総額は基本的に従前水準を維持しつつ、用途の最適化を図り、今後の成長につなげていきます。

なお、2026年5月15日に開催した決算説明会にて、自社で開発するBEVの導入を当初想定時期よりも延期し、自社開発BEVの量産開発のリソースをICE系商品へ再配分することを発表いたしました。成長投資の「総額1.2兆円」は不変とするものの、投資領域を柔軟に組み換え、実行していく計画としております。詳細は当社ホームページに掲載しております「2026年3月期決算 アナリスト向け説明会資料」をご覧ください。(https://www.subaru.co.jp/ir/library/results.html)

事業環境は依然として不透明な状況が続いており、足元ではサイバーセキュリティ対策やサプライチェーンのレジリエンス強化など、企業価値の維持に関わるリスクの対応の重要性がより一層高まっています。
当社グループは、これらを含むリスクマネジメントを着実に推進し、リスクに強い体質の構築を通じて企業価値の向上に取り組んでいます。
あわせて、これらの取り組みを支えるガバナンス体制についても、監督機能の実効性と経営の迅速性を両立する枠組みのあり方について検討を重ねました。その結果、当社は、自動車業界を取り巻く不透明かつ目まぐるしく変わる事業環境においても持続的な成長を果たすため、「SUBARU 2025方針」を確実に推し進めるべく、執行部門への権限委譲による意思決定の迅速化を図るとともに、取締役会における審議のさらなる充実および監督機能のより一層の強化を通じて、中長期的な企業価値を向上させることを目的に、監査等委員会設置会社へ移行することといたしました。
コーポレートガバナンスに関する詳細は「第4 提出会社の状況 4.コーポレートガバナンスの状況等」をご参照ください。
<脱炭素社会に向けた取り組み>当社は脱炭素社会に貢献するため、商品(スコープ3)および工場・オフィスなど(スコープ1、2)に関する長期目標(長期ビジョン)の達成時期を2050年とし、それを補完する中期目標(マイルストーン)を非連続かつ急速に変化する事業環境に応じて随時見直しています。
商品(スコープ3)に関しては、HEV需要の高まりや内燃機関(ICE)の再評価など、事業環境の変化を踏まえ、BEV販売比率50%の達成時期が2030年以降になると考えています。カーボンニュートラル実現に向けた中長期的な取り組みとして、将来的にBEV事業が主軸となることを見据え、BEVに対する研究開発には引き続き取り組むとともに、「多様なニーズに応える商品ラインナップ拡充」の観点から、HEVを含む次世代内燃機関の研究開発も追加強化していきます。
気候変動への対応に関する詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
<人財資本経営>当社グループは「モノづくり」「価値づくり」で世界最先端を目指しています。そして、この実現を担い持続的に企業競争力を高める原動力は、人財であると位置づけています。事業環境が急速に変化するなか、柔軟かつ迅速な対応を可能とする「真の競争力をもった人・組織」を人・組織のありたい姿として定め、その実現に向けた人的資本経営に取り組んでいます。
人的資本経営に関する詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」および「第4 提出会社の状況 5 従業員の状況等 (1)人材戦略に関する基本方針等」をご参照ください。
現在、社内においては、AI等の先端技術を活用した業務プロセスの変革や生産性向上に向けた取り組み、自発的に仲間を巻き込んだ新たな挑戦などに踏み出す職場が増加傾向にあります。これまで進めてきた制度整備・人財育成・組織風土改革といった各種取り組みが、一定の成果を上げつつあるものと認識しており、今後もこの流れを加速させるべく、能力開発や組織風土醸成に向けた取り組みを一層進化させていきます。
一方で、不透明な事業環境のもと、企業が持続的に成長していくためには、従業員一人ひとりが多様な発想により変化を模索し、挑戦を継続していくことが不可欠だと考えていますが、その認識は個人や組織によって差があり、全社的な変革を進めていくうえでの課題であると捉えています。こうした課題の解消に向け、点在して生まれる自発的な変化の兆しを、より大きな全社変革のうねりへとつなげていくため、「つながりの強化」に注力しています。経営戦略と自業務を結び付け、個人間のつながりを基盤として組織間の連携を深め、小さなチャレンジを生み出し、仲間とともに育てていく。そのような「つながる」状態を全社に浸透させていきます。2024年から2025年にかけては、全社のリーダー層約4,000人を対象に、「組織の壁を越え、組織の力を強化する」手法を学ぶ大規模研修を新たに開始し、組織間の協業を促進しました。加えて、2026年度からは、全社で生まれる挑戦に向けた取り組みや活動を可視化し支援する仕組みとして「SUBARU Movement Index」の導入を予定するなど、全社変革に向けた取り組みを引き続き推進していきます。
<資本コストや株価を意識した経営>当社は持続的な成長に向けて「資本コストや株価を意識した経営の実現」が不可欠であると考えています。直近の資本コスト(WACC ※CAPMベース)は国内金利の上昇傾向を背景に7%半ば程度で推移しました。その一方、米国における追加関税の影響に加え、環境規制クレジットに関する損失を含む環境規制関連費用およびBEV関連費用の計上などにより、2026年3月期のROEは3.3%にとどまりました。当社を取り巻く事業環境は大きく変化する状況にありますが、2030年を見据えた長期的目標として掲げる“業界高位の収益力”と“ROE10%以上”を引き続き目指してまいります。事業環境変化へ柔軟に対応しつつ、「SUBARU 2025方針」の着実な実行を通じて、これらの目標の達成を図っていきます。
従前より掲げる1.5兆円の成長投資は、事業環境変化を見極め、その投資内容の柔軟な見直しを実施しています。加えて、将来成長に向けた投資計画、足元の財務状況および株価水準等を総合的に勘案し、資本効率の向上に一層取り組むことが重要と判断し、2026年5月15日に1,500億円を上限とする自社株式取得を発表しました。当社の資本政策である「財務健全性と財務安定性の実現」「成長投資」「株主還元」のバランスをとった資本配分を通じ、持続的な成長を図っていきます。
また、2027年3月期の連結業績予想に基づく当社のPERについては、足元で約14倍とプライム市場平均PERに対し低位にとどまる状況にありますが、引き続き、当社の目指す姿・戦略・強みなどについての情報発信、対話機会を拡充し、ステークホルダーの理解・共感につなげていくことで当社への期待値向上へつなげていきます。

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