有価証券報告書-第88期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/24 14:22
【資料】
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【項目】
177項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。
(1) 企業理念、経営理念
<企業理念>1.私たちは常に先進の技術創造に努め、お客様に喜ばれる高品質で個性のある商品を提供します。
2.私たちは常に人、社会、環境の調和を目指し、豊かな社会づくりに貢献します。
3.私たちは常に未来を見つめ国際的な視野に立ち、進取の気性に富んだ活力ある企業を目指します。
<経営理念>お客様第一を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す。
当社は、上記に掲げる企業理念並びに経営理念に基づき、SUBARUを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして持続的に成長させて、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
(2) 中期経営ビジョン
当社グループは、「安心と愉しさ」の提供を通じて、お客様から共感され、信頼していただける存在となることを目指して、新たな中期経営ビジョン「STEP」を策定し、2018年7月に公表いたしました。当社のありたい姿を「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」とし、その実現に向け、2025年ビジョンとして次の3項目を掲げました。
<2025年ビジョン>1.個性を磨き上げ、お客様にとってDifferentな存在になる
2.お客様一人一人が主役の、心に響く事業活動を展開する
3.多様化する社会ニーズに貢献し、企業としての社会的責任を果たす
「STEP」では、取り組みの最優先事項に「組織風土改革」を掲げ、品質改革をはじめとする「会社の質の向上」、“人の命を守る”ことにこだわり、2030年に死亡交通事故ゼロ※を目指す安心・安全への取り組みなどを通じた「強固なブランドの構築」、そして「集中戦略を軸とした持続的成長」の取り組みを進めてまいります。
※SUBARU乗車中の死亡事故及びSUBARUとの衝突による歩行者・自転車等の死亡事故をゼロ
(3) 対処すべき課題
① 完成検査に係る不適切事案への対応
当社は、2017年10月に判明した完成検査に係る不適切事案について、同年12月19日及び2018年4月27日の2回にわたって国土交通省に報告をいたしましたが、同年6月5日に国土交通省より、燃費・排出ガスの抜き取り検査及び他の完成検査に係る不適切事案について、徹底した調査及び再発防止策の策定を行うよう求められました。これを受け、当社は、客観的・中立的な立場から徹底した調査を行うため、弁護士などの社外専門家チームに調査を委託し、同年9月28日にその調査報告書を公表いたしました。この調査により、新たに完成検査に係る不適切行為が判明したため、同年10月11日にリコールを届出ました。さらに、同年10月の国土交通省による立入検査を契機とした社内調査において、一部の不適切行為が継続していたことが判明したため、同年11月8日にリコールを届出ました。
当社は、2017年末より、完成検査員への教育の再徹底、人員配置の見直し、直ちに実施可能な設備の改修、検査装置のソフト変更などの諸対策を進めてまいりましたが、以上の経緯に鑑み、経営・管理者層が、時間をかけて完成検査の現場に関与し、現場の完成検査員と話し合い、既に実施した様々な再発防止策の効果を検証するとともにコンプライアンスの徹底を図りました。その後、2018年10月26日に生産ラインを停止して再発防止策の効果の検証を行った結果、再発防止策が有効に機能し、完成検査工程の健全性が確保されているものと認め、同日をもって、判明した不適切行為が終息したことを確認いたしました。 なお、同年10月26日の翌稼働日以降現在まで、これまでの調査で判明した不適切行為と同様の行為は確認されておりません。
前記の一連の不適切事案に関する経緯から、当社は、同年11月14日に国土交通大臣よりあらためて再発防止策の見直し及び徹底などの勧告を受けました。また、同年12月19日には、不適切な抜き取り検査の一部が、重大な完成検査の一部未実施事案であることから、国土交通省より東京地方裁判所に対して、当社に道路運送車両法に基づく過料を適用するよう通知がなされました。その結果、当社は、2019年3月8日に東京地方裁判所から、過料8,340万円に処する旨の決定を受けました。
当社は、一連の不適切事案の結果、このような事態に至ったことを極めて厳粛に受け止めております。一連の不適切事案に対する再発防止の手を緩めることなく、より強固に推し進めるために、2018年12月1日付で品質保証本部に完成検査部を新設するなどの組織改正を行い、2019年1月1日付で製造部門担当役員を新たな体制といたしました。
また、当社では、真に「正しい会社」をつくる活動をより一層加速させ、組織風土改革を断行することによって、全てのステークホルダーの信頼を可及的速やかに回復していく決意をし、様々な再発防止策を実施してまいりましたが、これらは以下の4つに分類されます。
・コンプライアンス・品質保証に対する経営層の当事者意識強化と役割責任の明確化
・不適切作業の検出と防止のための施策
・不適切作業が発生した際に速やかに是正する態勢の構築
・速やかに実施し、今後も継続して運用していく施策
なお、当社では、上記の再発防止策をさらに65項目に細分化のうえ、これらを実施しており、提出日現在までに57項目の実施が完了しております。当社は、これからも全社一丸となって再発防止策を推進し、かつ常に改善を施して、より確かなものへとしてまいります。
② 中期経営ビジョン「STEP」の推進
自動車業界が大変革期にある中で、この大きな事業環境の変化を見極め、スピード感をもって対応していくことが必要であると認識しております。そのため、前記のとおり、当社は、「安心と愉しさ」の提供を通じて、お客様から共感され、信頼していただける存在となることを目指して、新たな中期経営ビジョン「STEP」を2018年7月に公表いたしました。この中で「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」を最重点テーマと捉え、活動しております。なお、中期経営ビジョン「STEP」の取り組みの全体像は、次のとおりです。
中期経営ビジョン「STEP」取り組み全体像(9Box+1)

・組織風土改革
SUBARUのDNAは守りつつ、時代や世の中の変化に対して敏感に、スピード感をもって、柔軟に対応できる会社を目指します。取り組みの迅速化を狙いトップ及び経営陣とのコミュニケーションの質・量をともに充実させるとともに、人材・組織の変革、事業活動全般におけるIT活用の推進などに取り組みます。
・品質改革
「お客様が安心して長く使い続けることができる品質」No.1を目指します。
商品企画から生産に至る品質に関わる全てのプロセスの見直し、IT活用など生産工場のレベルアップ、品質マネジメント体制の強化、お客様へのサービス基盤の整備などに取り組みます。また、これら「全品質」の向上のための投資枠として、1,500億円(5年間)を設定いたしました。さらに、2019年4月1日に「品質方針」を改定し、全従業員が共有する道標として、「品質最優先」を合言葉に具体的な行動を実践してまいります。
・SUBARUづくりの刷新
モノづくりにとどまらず、商品からサービス全般まで、SUBARUが提供するお客様価値の向上を「高品質」「高付加価値」「低コスト」で実現する新しい活動として、『新SUBARUづくり活動』をスタートしております。
以上の取り組みを通じ、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。