有価証券報告書-第87期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/25 16:22
【資料】
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【項目】
132項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)企業理念
企業理念
1.私たちは常に先進の技術創造に努め、お客様に喜ばれる高品質で個性のある商品を提供します。
2.私たちは常に人、社会、環境の調和を目指し、豊かな社会づくりに貢献します。
3.私たちは常に未来を見つめ国際的な視野に立ち、進取の気性に富んだ活力ある企業を目指します。

当社は、上記に掲げる企業理念に基づき、「存在感と魅力ある企業」を目指し、「お客さま第一」を基軸に、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
また、当社は、2017年4月1日をもちまして、社名を株式会社SUBARUに変更いたしました。社名とブランド名の統一を実施することにより、現在、中期経営ビジョン「際立とう2020」で取り組んでいる「SUBARUブランドを磨く」ことをさらに加速させ、SUBARUを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして成長させてまいります。
(2)中期経営ビジョン
当社グループは、中期経営ビジョン「際立とう2020」におきまして、2020年のありたい姿を「大きくはないが強い特徴を持ち質の高い企業」と定め、“お客様の信頼№1”という評価をいただくことができるような高いブランド力と業界高位の利益率を実現することを目指しております。そして、その実現のため、個性的なSUBARUならではの特徴を活かし、付加価値経営のさらなる推進を目指す「SUBARUブランドを磨く」、経営環境変化への耐性を高め持続的な成長を確実なものとする「強い事業構造を創る」という2つの活動に集中した取り組みを進めております。
(3)対処すべき課題
当事業年度におきまして、国土交通省平成29年9月29日付文書「日産自動車の完成検査の不正事案を受けた確認の実施について」に基づいて社内調査を行った結果、当社群馬製作所において完成検査員の資格を有していない者が完成検査を行っているなどの不適切な運用が判明したため、外部専門家(長島・大野・常松法律事務所)に対して不適切な完成検査の過去からの運用状況などに係る調査を依頼し、再発防止策とあわせ、同年12月19日に国土交通省に報告の上、調査報告書を公表しました。さらに、再発防止策の進捗状況を2018年4月27日に国土交通省に報告いたしました。
また、当該調査の過程において、完成検査工程に属する燃料消費率(燃費)の抜き取り検査を実施するに際し、その測定値の一部を変更した可能性があることが確認されたため、技術的な知識・経験が豊富な者を中心とした社内調査チームが、外部専門家(長島・大野・常松法律事務所)の補助を受けて調査の客観性を確保した上で、事実関係の調査を実施しました。その結果、燃費・排出ガスの抜き取り検査に際して測定値を書き換えるという不正行為が明らかとなったため、再発防止策とあわせ、2018年4月27日に国土交通省に報告の上、調査報告書を公表しました。
さらに、この燃費・排出ガスの抜き取り検査に関し、その後の国土交通省の立入検査を契機とした社内調査において、運転が測定モードに合わせられず失敗するというトレースエラー、および測定室内の湿度が試験条件として規定された範囲の外であったという湿度エラーが生じていたにもかかわらず、それぞれ有効な測定として処理したという二つの不適切な測定手続が、過去に行われていたことが新たに判明いたしました。そのため、2018年6月5日時点で当社が把握することができた内容を国土交通省に報告の上、この二つの問題のみならず完成検査業務全体のプロセスについて、社外専門家による徹底した再調査に着手しました。なお、この二つの問題および他に完成検査に係る不適切事案がないかどうかについて、同日、国土交通省より、事実関係の調査を行い報告すること等の指示を受けております。
当社としては、これらの事案について真摯に反省し、判明した事実を隠すことなく詳細に公表するとともに、すべての業務においてコンプライアンスを重視する意識を醸成し、自らの企業体質を根幹から変革していくことが必要であると強く認識しています。経営トップが先頭に立ち、全ての役員および従業員が一丸となり、これらの再発防止策を徹底的に遂行し、失われた信頼を回復してまいる所存です。
(真の実力の向上)
当社はここ数年、様々な要因が重なり合い、順調に成長を遂げてまいりました。しかし一方で、企業としての真の実力が伴っていなかったことを痛感し、いま一度根本に立ち返り、実力を高めることが必要だと認識しております。
① 基本的な仕事の進め方・組織風土の改革
完成検査に係る不適切事項などから、技術偏重の風土を背景とした業務の公益性・重要性に対する自覚の乏しさや規範意識の欠如を改めて認識いたしました。また、教育・社内ルール・コミニュケーション・システムなど、適切に業務を進める上での基盤が脆弱であることも再認識いたしました。
今回確認された事案に対する再発防止策を徹底的に遂行し、同時に認識した本質的な課題に取り組むべく、「正しい会社推進部」および「コンプライアンス室」を設置いたしました。質の高い企業を目指す取り組みを抜本的に強め、不退転の決意で推し進めたいと考えております。そして、二度と今回のようなことを起こさない、真に「正しい会社」に生まれ変わっていく決意でございます。
② 品質への取り組み
生産・販売台数が急拡大するなかで、エアバッグ関連をはじめとする商品品質に関する問題が継続して発生しております。当社に対するお客様の信頼の根幹は品質にあり、品質を全社的な取り組みの最上位に位置付けて、CQO(最高品質責任者)を中心に抜本的な改善に取り組んでまいります。また、対策部品のスムーズな供給や販売特約店での作業効率向上などを行い、お客様対応品質についても同様に向上に取り組んでまいります。
株主、お客様をはじめとする当社を取り巻くステークホルダーの皆様に、多大なご心配、ご迷惑をおかけしたことを心より反省し、課題に真摯に向き合い、真の実力の向上に努めてまいります。
(ブランド価値の向上)
自動車事業・航空宇宙事業ともに、事業規模が大きくはない当社としては、お客様に認めていただける付加価値の創出が重要であり、SUBARUらしい商品を拡充し、ブランド価値を高め続けるべく、以下に取り組んでまいります。
① お客様からの「信頼・共感」を高め、「お客様の笑顔」をつくる企業活動
② 「安心と愉しさ」を核としたSUBARUらしい商品・サービスの拡充
・多人数乗り新SUV「ASCENT(アセント)」の北米市場への投入/グローバル基幹車種「フォレスター」の全面改良と全世界への投入
・テレマティクス※技術などを活用したコネクトサービスの拡充
※: 自動車などの移動体に通信システムを搭載して利用することで様々な情報・サービスを提供することをいいます。
③ 「人の命」と「地球環境」を守る新たな安全・環境技術の開発
・安全技術の持続的な進化と発展による、業界トップクラスの安全性能の提供の継続
・2018年の米国市場へのプラグインハイブリッド車を皮切りに、電動車の市場への投入
また、これらの活動を加速するために組織や人材のレベルアップは不可欠であり、強化・育成に取り組んでまいります。さらに他社との協業をこれまで以上に拡大・深化させていく所存でございます。
なお、次期の中期経営ビジョンを今夏に発表する予定としております。