有価証券報告書-第36期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 11:11
【資料】
PDFをみる
【項目】
117項目

対処すべき課題

文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断、予測したものであります。
1 経営方針
当社グループは、「日本とアジアでの投資活動を通じて、経済の活性化、社会問題の解決、さらには日本とアジアの経済連携拡大に貢献し、すべてのステークホルダーから信頼される投資会社となる」ことを経営理念として掲げ、投資先企業や投資家からの多様なニーズに対応するとともに、全てのステークホルダーへの利益還元を果たして参ります。
2 目標とする経営指標
ファンドの管理報酬や再生可能エネルギー投資事業及び新規事業からの安定収益を拡大して、黒字を定着化させることを目指します。並行して、プライベートエクイティ事業の収益も拡大し、業績を伸長させ、累積損失の解消を目指します。
財務バランスについては、ファンドの設立によりプライベートエクイティ事業の投資資産の規模を拡大しつつ、ファンドへの当社の出資比率は引き下げることで、当社のプライベートエクイティ事業の資産残高を純資産の範囲に収めることを目指します。その結果、プライベートエクイティ事業と比較して流動性の高い、現預金や再生可能エネルギー投資事業及び新規事業の資産が借入金と対応することとなり、財務体質が改善されます。
3 経営環境と対処すべき課題
(1)目指す姿
①外部環境の認識
今日では、急速に少子高齢化が進み、日本をはじめとするアジア諸国において社会や経済のパラダイムが大きく変わる重要な局面を迎えています。
この問題を乗り越えるためには、イノベーションにより、新しい技術やサービス等の価値の創造や既存事業の再活性を行い、安心・安全で質と生産性の高い、持続的な成長を維持できる社会を構築する必要があります。また、日本においては、自らのイノベーションによる内生的な成長のみに依存せず、成長著しいアジアとの交流や連携を強化し、インバウンド需要等の外生的な成長を取り込むことも重要です。
私たちは、ここに当社の事業機会があると考えています。
②当社の目指す姿
私たちは、アジアと日本の経済発展に役立つべく設立後35年に亘り投資活動をして参りました。今後も、その長い経験と実績を活かし、日本とアジアの持続的成長に一層貢献して参りたいと役職員一同強い意欲で日々活動しております。日本の歴史ある投資会社であり、加えてアジアとの長い繋がりのある投資会社として、様々な分野でアジアとの繋がりを重視し投資活動を展開することで、日本とアジアの経済発展に貢献して参ります。
(2)各事業の方針
①プライベートエクイティ事業
引き続き当社の基幹事業と位置付け、少子高齢化などの社会問題に対応すべく、企業のイノベーションによる新たな価値の創造や既存事業の再活性をサポートして参ります。今後も、事業全体のアセット残高を積み増すことで事業規模を拡大します。同時に、当社自身の財務リスクは抑制し資産の健全性を維持するためアセット残高のうち当社の出資持分は圧縮します。この2つを同時に実現するために、積極的にファンドを組成して投資資金を調達して参ります。
現在はベンチャー投資が中心ですが、多様な投資機会を獲得するために、今後は「スモールキャップ企業」と呼ばれる株式上場済みで時価総額の小規模な企業へのグロース投資や、事業承継型バイアウトへと投資領域を拡大します。この領域の企業は、成長戦略の立案、海外進出支援、株主構成の是正など、投資家に対して資金以外の支援も期待しているケースが多くあります。これに対し、私たちは、ベンチャー投資やアジアでの投資を通じて培った事業支援の経験や実績が活用できると考えています。また、私たちのファンドの出資候補者には多様なニーズがあり、ミドルリスクミドルリターンの投資でまとまった資金を運用したいというニーズに応えるためにも、この領域への投資も行っていきます。
②再生可能エネルギー投資事業
環境問題への対策は、安心・安全な社会を維持するための普遍的で地球規模の課題です。私たちも、再生可能エネルギー投資事業を通じて、そのインフラ整備に貢献して参ります。その一つとして、当社は平成24年から、日本で固定価格買取制度が開始したことを契機にメガソーラープロジェクトへの投資に取り組みました。その後、急速に事業規模が拡大し、当社の第2の収益の柱へと成長しています。
この事業は、当初は、プロジェクトを長期保有し20年に亘り売電収入を源泉とした安定収益を獲得する目的で始めました。しかし、東京証券取引所にインフラREIT市場が新設されるなど外部環境が整ったため、現在では、プロジェクトの一部は売却して利益や資金を前倒しで獲得することと致しました。投資するプロジェクトのうち一部については、引き続き長期間保有することで安定的に売電収入を確保する方針です。他方、プロジェクトの一部については、他の収益の変動や、新規プロジェクトへの投資資金の需要を見定めながら必要に応じて売却をする方針です。プロジェクトを売却することは、当社の期間損益を安定させるとともに、売却で得た資金で新たなプロジェクトに投資を行いそれを再度売却する、というように資金を回転させることで、資金効率と収益性を高めることにつながります。
現在当社が投資しているメガソーラープロジェクトは、全て買取価格が32円/KWh以上の案件です。しかしながら、固定価格買取制度による太陽光発電の買取価格は低下傾向にあり、買取価格が32円/KWh以上のプロジェクトへの新規投資機会はいずれは無くなる見込みです。これに備えて、より低い買取価格でも採算が取れるよう、低コストでプロジェクトを開発する方法を研究しています。また、太陽光よりも買取価格の高い、他の再生可能エネルギープロジェクトへの投資も検討しています。風力とバイオマスについては、既に試験的な投資を実行済みです。
③新規事業
安定収益を更に拡大するため、第3の収益の柱となる新規投資事業を開拓します。投資利回りを追求するだけでなく当社の経営方針に沿った社会的な意義の高い分野で投資を行います。一例として、平成28年9月には複合型高齢者施設に投資をしました。高齢者施設への投資を通じて、高齢者の方々に向けて、より安心かつ安全で質の高い生活環境に不可欠なインフラを提供して参ります。
また、当社の周辺事業を行う企業に対しM&Aや出資等を行い、これらの企業の事業拡大を支援すると同時にその収益を獲得することも検討しています。現時点では複数の案を検討中の段階ですが、個別の事例を積み上げながら事業を立ち上げていきます。