訂正有価証券報告書-第77期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(以下「当期」という。)における当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当期における国内外の経済情勢は、秋以降は米中貿易協議の進展から景気再加速への期待が一時高まりました。しかしながら、2月に入ると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な蔓延により生産・消費が一気に冷え込み、世界経済は一転して世界恐慌以来の景気後退に直面することとなりました。
株式市場は、米中貿易摩擦の激化などが世界経済に与える悪影響から日経平均株価は8月には20,110円まで下落したものの、米中貿易協議の進展を好感し、1月には24,115円の高値を付けました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による経済の急激な悪化や原油価格の急落により、日経平均株価は3月19日には16,358円まで下落しました。その後は、欧米の新型コロナウイルス感染者の増加がピークアウトの兆しを見せたことや、各国政府並びに中央銀行による前例のない規模の対策が打ち出されたこともあり、当期の日経平均株価は18,917円で終えました。
外国為替市場は、8月にかけて円高ドル安基調で推移し、8月に1ドル=105.08円を付けた後は株式市場の堅調を反映し、2月には1ドル=112.11円まで円安が進みました。しかし、新型コロナウイルス禍を受けて、3月には1ドル=102.01円まで円が対ドルで買われる場面があり、当期は1ドル=108.83円で終えました。
債券市場では、日本の10年国債は当期前半に利回りが△0.32%まで低下後、9月以降は上昇に転じました。1月以降、新型コロナウイルス感染症が世界的に広まると、日本国債は買われ、△0.225%まで利回りが低下しましたが、その後は他の投資資産同様に投げ売り商状となり、0.05%まで利回りが上昇し、△0.03%で当期を終えております。海外でも新型コロナウイルス感染症の拡大につれ、質への逃避と投資資金の流出が起こり、とりわけ新興国債券は大きく売られる傾向が見られました。
こうした環境の中、当社は、お客さまの多様なニーズにお応えするため、「特色ある旬の商品」の提供に努めました。また、株主資本の効率的運用の観点から、積極的な財務運営も行ってまいりました。しかしながら、株式市場における売買高が減少したことや投資信託の販売が低迷したことから受入手数料が減少するとともに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い新興国債券市場が混乱したことなどの影響を受けて自己保有債券に多額の損失が発生したことから、期末にかけて債券トレーディング収益が大幅に減少いたしました。これらの結果、当期の業績につきましては、営業収益37億54百万円(前期比57.9%)、純営業収益36億90百万円(同57.5%)、営業損失11億91百万円(前期は14億47百万円の利益)、経常損失7億46百万円(同16億85百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失5億60百万円(同16億80百万円の利益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ31億56百万円増加し、当期末には175億97百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、73億36百万円(前期は105億66百万円の獲得)となりました。これは主にトレーディング商品の減少により、79億25百万円が増加した一方で、税金等調整前当期純損失(減少)が8億16百万円となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、30億20百万円(前期は30億80百万円の使用)となりました。これは主に投資有価証券の取得(22億41百万円の使用)及び定期預金の預入(14億24百万円の使用)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、9億57百万円(前期は22億43百万円の使用)となりました。これは配当金の支払によるものであります。
③トレーディング業務の状況
トレーディング商品:連結会計年度末のトレーディング商品の残高は以下のとおりです。
商品有価証券等(売買目的有価証券)
デリバティブ取引の契約額等及び時価
市場リスクについては、取締役会が半期ごとにポジション・リスク限度額を各トレーディング部門に配分し、各トレーディング部門は、その範囲内で運用することとしております。リスク管理体制としては、各部門が、日々のポジション・リスク額・損益の状況をチェックのうえ、経営陣に報告しております。さらに、総合的な牽制機能として、リスク管理部が、適正な自己資本規制比率維持の観点から、全社的なリスクの状況を把握し、日々、全取締役、執行役員並びに監査役に報告するほか、毎月末の自己資本規制比率並びにその詳細を取締役会に報告しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当期末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当社グループは、創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルと健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針としております。この経営の基本方針のもと、当社グループを取り巻く競争環境はさらに厳しくなるという認識の下、オンライン証券会社や他の中堅証券会社との差別化を図るため、当社グループは、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルを堅持いたしました。また、内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としており、その顧客基盤や預り資産については、収益基盤の大きな柱として認識しております。この基本戦略のもと、当社グループは、全体的な預り資産の増加を図り、顧客基盤の拡大を目指してまいりました。さらに当社グループの収益の中心は、証券市場における仲介業者として得られる手数料収入等でありますが、これらは市場環境の変化の影響を大きく受けやすいものとなっております。当社グループは、自己資金を有効活用することで、市場環境に大きく影響を受けない安定した収益構造の多様化を図ってまいりました。しかしながら、当期における経営成績は、株式市場における売買高が減少したことや投資信託の販売が低迷したことから受入手数料が減少するとともに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い新興国債券市場が混乱したことなどの影響を受けて自己保有債券に多額の損失が発生したことから、期末にかけて債券トレーディング収益が大幅に減少いたしました。これらの結果、前期(2019年3月期)に比べ大幅な減収減益となり、損失を計上いたしました。それらの内訳及び要因は、以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響及び収束時期等につきましては、不確実な要素が多く、現時点において予想することは困難でありますが、今後の経済政策や新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の下振れなどの影響を受けるものと考えられ、当面はその動向を注視していく必要があり、そのため、金融商品取引業者の事業環境については引き続き厳しいものとなると考えております。
営業収益
当期の受入手数料収入につきましては、当期の株式市場においては、投資者の間で米中貿易摩擦の激化による世界経済への影響を見極めようとする姿勢が引き続き強まったことから、前半から中頃にかけては不透明感が強まりました。その後年明けにかけては、米中貿易協議の進展が好感されて市場は活気を取り戻したかのように見えましたが、その後は新型コロナウイルス感染症の蔓延による経済活動の停滞や原油価格の下落によって、手控え感が強まり、売買は低調に推移いたしました。あわせて、投資信託の顧客販売についても年間を通して低調な動きとなりました。その結果、当期の「受入手数料」は、14億1百万円(前期比74.5%、4億80百万円減少)となりました。その内訳は以下のようになっております。
「株券委託手数料」は、7億84百万円(同77.9%、2億22百万円減少)となり、「受益証券(上場投信)委託手数料等」を加えた「委託手数料」は、8億33百万円(同77.8%、2億38百万円減少)と低迷いたしました。
主にアンダーライティング(引受)業務に係る手数料収入で構成される「引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料」は、当社が参入したIPO件数が安定的であったことから、23百万円(同105.2%、1百万円増加)となりました。
投資信託受益証券の募集・売出しの取扱手数料などによって構成される「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」は、投資信託の販売低迷により、3億18百万円(同65.7%、1億66百万円減少)となりました。
主に投資信託の代行手数料からなる「その他の受入手数料」は、2億26百万円(同74.6%、77百万円減少)となりました。
当期のトレーディング損益につきましては、債券等トレーディング損益が大幅な減収となったことから、「トレーディング損益」は、7億80百万円の利益(同29.1%、18億99百万円減少)となりました。内訳は以下のようになっております。
「株券等トレーディング損益」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、保有していた投資信託に損失が発生したことなどから、2億73百万円の損失(前期は28百万円の利益)となりました。
「債券等トレーディング損益」は、他社では提供できない「多様な商品によるマーケット変化を捉えた機動的な運用提案」を行うことで、お客さまからの信頼を獲得するとともに、お客さまの投資パフォーマンスの向上を目指してまいりました。その結果、顧客向け債券販売は安定的であったものの、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い新興国債券市場が混乱したことなどの影響を受け、自己保有債券に多額の損失が発生したことから、11億24百万円の利益(前期比37.5%、18億75百万円減少)にとどまりました。
外貨建債券の為替ヘッジ目的で行っているデリバティブ取引を中心とした「その他トレーディング損益」は70百万円の損失(前期は3億47百万円の損失)となりました。
当期の金融収益につきましては、主にトレーディング商品として保有する債券等から得られる受取債券利子や収益分配金で構成されますが、債券等の保有高が減少したことから、当期の「金融収益」は15億54百万円(前期比93.1%、1億15百万円減少)となりました。
当期の「その他の営業収入」は、18百万円(同7.4%、2億34百万円減少)となりました。
以上の結果、当期の営業収益は、37億54百万円(同57.9%、27億31百万円減少)となりました。
純営業収益
当期の「金融費用」は支払利息や信用取引支払利息がわずかに減少したことにより、64百万円(前期比97.4%、1百万円減少)となりました。営業収益からこの金融費用を差し引いた当期の「純営業収益」は36億90百万円(同57.5%、27億29百万円減少)となりました。
営業損益
当期の「販売費・一般管理費」は、情報システムのリプレースにより不動産関係費が増加したものの、減価償却費や租税公課などが減少したことで、総額は僅かに減少し、48億82百万円(前期比98.2%、90百万円減少)となりました。
当期の純営業収益から販売費・一般管理費を控除した「営業損益」は、営業損失11億91百万円(前期は14億47百万円の利益)となりました。
経常損益
当期の「営業外損益」につきましては、投資有価証券の売却及び買付を行った結果、受取配当金が増加した一方で、有価証券利息はゼロとなり、「営業外収益」は4億57百万円(前期比117.4%、67百万円増加)となりました。一方、「営業外費用」は、あっせん和解金等合計で11百万円(同7.9%、1億39百万円減少)となりました。その結果、営業外損益は4億45百万円の利益(同186.9%、2億7百万円増加)となりました。
当期の営業損失に当該利益を加味した「経常損益」は、経常損失7億46百万円(前期は16億85百万円の利益)となりました。
税金等調整前当期純損益
当期の「特別利益」は、投資有価証券売却益等合計で4百万円(前期比0.4%、12億21百万円減少)を計上いたしました。一方、「特別損失」は、投資有価証券売却損等合計で74百万円(同12.2%、5億35百万円減少)を計上し、「特別損益」は、69百万円の損失(前期は6億15百万円の利益)となりました。
当期の経常損失に当該損失を加味した「税金等調整前当期純損益」は、税金等調整前当期純損失8億16百万円(前期は23億1百万円の利益)となりました。
親会社株主に帰属する当期純損益
当期の「法人税等合計」は、法人税等調整額が△2億89百万円となったことから、△2億56百万円(前期は6億3百万円)となりました。
この結果、当期の「親会社株主に帰属する当期純損益」は、親会社株主に帰属する当期純損失5億60百万円(前期は16億80百万円の利益)となりました。
(財政状態の分析)
当期末の財政状態は、前期末(2019年3月期)に比べ負債が増加した一方で、純資産が減少いたしました。これらの内訳及び要因は、以下のとおりであります。
資産
当期末における「流動資産」は、531億71百万円となり、前期末に比べ13億85百万円減少いたしました。トレーディング商品が、売却や時価の下落等によって79億25百万円減少(当期末192億33百万円)した一方で、現金・預金が43億53百万円増加(当期末187億94百万円)するとともに、顧客預り金の分別保管を主な目的とする預託金が25億55百万円増加(当期末116億95百万円)したことによるものであります。
当期末における「固定資産」は、152億99百万円となり、前期末に比べ19億58百万円増加いたしました。これは主に長期純投資のために保有する投資有価証券が17億59百万円増加(当期末120億20百万円)したことによるものであります。
この結果、当期末の「資産合計」は、684億71百万円となり、前期末に比べ5億72百万円増加いたしました。
負債
当期末における「流動負債」は、242億22百万円となり、前期末に比べ42億88百万円増加いたしました。これは主に顧客からの預り金を中心とした預り金が22億70百万円増加(当期末119億3百万円)するとともに、有価証券の買付代金の支払いが期跨ぎとなったことから、未払金が15億89百万円増加(当期末16億44百万円)したことによるものであります。
当期末における固定負債は、14億78百万円となり、前期末に比べ6億60百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が5億円減少(当期末10億円)したことによるものであります。
この結果、当期末の「負債合計」は、257億21百万円となり、前期末に比べ36億28百万円増加いたしました。
純資産
当期末における純資産合計は、427億49百万円となり、前期末に比べ30億55百万円減少いたしました。これは主にその他有価証券評価差額金が15億37百万円減少(当期末△12億32百万円)するとともに、利益剰余金が15億17百万円減少(当期末348億10百万円)したことによるものであります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループの財務戦略の基本的な考え方は、自己資本を充実させることにより強固な財務基盤を構築するとともに、自己資本を効率的に運用することによって収益性を高め、企業価値の向上を目指すものであります。
金融商品取引業者は、その業務の性格上、自己勘定に基づいて有価証券等の保有や売買取引を行う場合があります。それら保有有価証券の価格変動リスクなどの各種リスクを十分にカバーできる「固定化されていない自己資本の額」を維持し、財務の健全性を表す「自己資本規制比率」を一定の水準以上に維持することが法令等により義務付けられております。当社は、「自己資本規制比率」を高水準に維持することを経営の基本方針といたしますが、上記のとおり、自己資本を効率的に活用して、収益性を高めるために一定のリスク(主に市場リスク)をとる必要もあると考えております。このため、これらリスク額及び自己資本規制比率につきましては、適切なリスク管理体制の下で監視しております。
当社は、財務体質や収益性を測る指標として「信用格付け」を取得しております。当社グループとして、近い将来に新株式や債券の発行による資金調達を行うことは想定しておりませんが、運転資金の安定的な調達を可能とするため、「信用格付け」の水準を安定的に維持することに努めることといたします。
(手許流動性)
当社は、半期ごとに実施する流動性コンティンジェンシープランの検証過程において、緊急事態発生時に、借入金等の返済やお客さまへの預り金の返還などを円滑に行うために当初必要と考えられる手許現預金の水準を決定しております。また、その後必要となる現金需要を賄うために、短期間で現金化が可能となる市場性のある有価証券の保有に努めております。
また、当社グループはお客さま向け販売や自己勘定での取引を目的として、外貨建て有価証券を取り扱っております。これら外貨建て有価証券取引の清算決済においては、期限までに当該外貨を遅滞なく支払う必要があります。しかしながら、外国為替市場の動向によっては決済のための外貨調達が困難になることも想定されます。このような外貨調達リスクを避けるため、市場の状況や取引高を勘案しながら、必要と思われる外貨の種別及び金額をその都度検証し、十分な金額を手許に維持するよう心がけております。
(成長分野への投資活動)
上記目的で必要とされる手許流動性の水準を超える現預金については成長分野や有望市場への投資活動に振り向けることが可能な資金と位置づけ、積極的に投資活動を行ってまいります。これによって、新たな収益源の開拓や収益性が向上し、企業価値向上につながると考えております。
(株主還元-利益配分に関する基本方針及び当期の配当)
当社は、株主価値向上の一環として、株主の皆さまに対し積極的な利益還元を図ることを経営の重要な政策のひとつとしており、配当につきましては、連結配当性向50%以上若しくは連結純資産配当率(DOE)2%以上の両基準で算出した数値のいずれか高い金額を基準とし、当社の自己資本の水準及び中長期的な業績動向並びに株価等を総合的に判断し決定する旨を基本方針としております。
当期の配当につきましては、上記の連結純資産配当率(DOE)を採用し、1株当たり30円の普通配当を支払うことを決定いたしました。なお、配当原資は利益剰余金であります。
(資金需要と資金調達)
当社グループの資金需要につきまして、営業活動に係る資金利用といたしましては、お客さま向け販売商品等のトレーディング商品の買付け、信用取引に係るお客さま向けの融資、証券取引サービスを提供するためのインフラ維持に係る費用、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金利用といたしましては、投資有価証券の買付け、お客さま向けサービスの向上と取引の安全性を確保するために必要なシステム投資、金融商品取引業者として法令遵守のために必要な制度整備やシステム投資などがあります。
一方、当社グループの運転資金につきましては、自己資金の利用又は借入による資金調達によって賄っております。自己勘定によるトレーディング商品や投資有価証券の買付けにつきましては、原則として自己資金を利用することとしております。借入による資金調達に関しましては、短期借入金及び長期借入金で調達しております。短期借入金といたしましては、銀行借入に加えて、コールマネーの調達も行っております。2020年3月31日現在、長期借入金の残高は10億円であります。また、当社は運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行を含む合計11行との間で、総額50億円のシンジケート方式によるコミットメントライン契約を締結しております。この契約に基づく当期末の借入実行残高は20億円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において、一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、有価証券の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の計上、減価償却資産の償却、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付等の会計処理については、会計関連諸法規をベースに、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる基準により見積り及び判断を行っております。会計処理については、真実性の原則は勿論のこと、特に健全性と継続性の原則に配慮しております。しかしながら、実際の結果は、見積り作成時点での不確実性があることから、これらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響及び収束時期等につきましては、不確実な要素が多く、現時点において予想することは困難でありますが、繰延税金資産の回収可能性の判断等の会計上の見積りにおいて、当連結会計年度末日以降連結財務諸表作成時までに入手可能であった3月以降の部店別の業績等の実績を考慮し、見積りを行っております。
当社の連結営業収益は、証券市場に係る受入手数料及びトレーディング損益を柱としており、その大半が株式市場及び債券市場を源泉としております。株式・債券市場の好・不調による業績への影響を緩和するため、収益源の多様化を通じて収益の安定性確保に努めておりますが、それでもなお、業績が証券市場の動向に左右され、大きく変動する可能性があります。また、国内外の金融商品市場の急激な変動により、当社が保有している金融商品の評価損益が多額になる可能性もあります。
一般的に、証券市場や外国為替市場は、内外の政治・経済情勢、金利、企業収益等、様々な要因を反映して変動します。したがって、当社グループの連結経営成績についても、証券市場に係るこれらの要因が多大な影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度(以下「当期」という。)における当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当期における国内外の経済情勢は、秋以降は米中貿易協議の進展から景気再加速への期待が一時高まりました。しかしながら、2月に入ると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な蔓延により生産・消費が一気に冷え込み、世界経済は一転して世界恐慌以来の景気後退に直面することとなりました。
株式市場は、米中貿易摩擦の激化などが世界経済に与える悪影響から日経平均株価は8月には20,110円まで下落したものの、米中貿易協議の進展を好感し、1月には24,115円の高値を付けました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による経済の急激な悪化や原油価格の急落により、日経平均株価は3月19日には16,358円まで下落しました。その後は、欧米の新型コロナウイルス感染者の増加がピークアウトの兆しを見せたことや、各国政府並びに中央銀行による前例のない規模の対策が打ち出されたこともあり、当期の日経平均株価は18,917円で終えました。
外国為替市場は、8月にかけて円高ドル安基調で推移し、8月に1ドル=105.08円を付けた後は株式市場の堅調を反映し、2月には1ドル=112.11円まで円安が進みました。しかし、新型コロナウイルス禍を受けて、3月には1ドル=102.01円まで円が対ドルで買われる場面があり、当期は1ドル=108.83円で終えました。
債券市場では、日本の10年国債は当期前半に利回りが△0.32%まで低下後、9月以降は上昇に転じました。1月以降、新型コロナウイルス感染症が世界的に広まると、日本国債は買われ、△0.225%まで利回りが低下しましたが、その後は他の投資資産同様に投げ売り商状となり、0.05%まで利回りが上昇し、△0.03%で当期を終えております。海外でも新型コロナウイルス感染症の拡大につれ、質への逃避と投資資金の流出が起こり、とりわけ新興国債券は大きく売られる傾向が見られました。
こうした環境の中、当社は、お客さまの多様なニーズにお応えするため、「特色ある旬の商品」の提供に努めました。また、株主資本の効率的運用の観点から、積極的な財務運営も行ってまいりました。しかしながら、株式市場における売買高が減少したことや投資信託の販売が低迷したことから受入手数料が減少するとともに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い新興国債券市場が混乱したことなどの影響を受けて自己保有債券に多額の損失が発生したことから、期末にかけて債券トレーディング収益が大幅に減少いたしました。これらの結果、当期の業績につきましては、営業収益37億54百万円(前期比57.9%)、純営業収益36億90百万円(同57.5%)、営業損失11億91百万円(前期は14億47百万円の利益)、経常損失7億46百万円(同16億85百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失5億60百万円(同16億80百万円の利益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ31億56百万円増加し、当期末には175億97百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、73億36百万円(前期は105億66百万円の獲得)となりました。これは主にトレーディング商品の減少により、79億25百万円が増加した一方で、税金等調整前当期純損失(減少)が8億16百万円となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、30億20百万円(前期は30億80百万円の使用)となりました。これは主に投資有価証券の取得(22億41百万円の使用)及び定期預金の預入(14億24百万円の使用)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、9億57百万円(前期は22億43百万円の使用)となりました。これは配当金の支払によるものであります。
③トレーディング業務の状況
トレーディング商品:連結会計年度末のトレーディング商品の残高は以下のとおりです。
商品有価証券等(売買目的有価証券)
種類 | 2019年3月31日現在 | 2020年3月31日現在 | ||
資産(百万円) | 負債(百万円) | 資産(百万円) | 負債(百万円) | |
株式・ワラント | 18 | - | 40 | - |
債券 | 26,356 | - | 18,639 | - |
CP及びCD | - | - | - | - |
受益証券等 | 784 | - | 551 | - |
その他 | - | - | - | - |
デリバティブ取引の契約額等及び時価
種類 | 2019年3月31日現在 | 2020年3月31日現在 | ||||||
契約額 (百万円) | 契約額の うち1年超 (百万円) | 時価 (百万円) | 評価損益 (百万円) | 契約額 (百万円) | 契約額の うち1年超 (百万円) | 時価 (百万円) | 評価損益 (百万円) | |
為替予約取引 | ||||||||
売建 | 7,437 | - | △3 | △3 | 6,223 | - | △4 | △4 |
買建 | 524 | - | △3 | △3 | 16 | - | 0 | 0 |
市場リスクについては、取締役会が半期ごとにポジション・リスク限度額を各トレーディング部門に配分し、各トレーディング部門は、その範囲内で運用することとしております。リスク管理体制としては、各部門が、日々のポジション・リスク額・損益の状況をチェックのうえ、経営陣に報告しております。さらに、総合的な牽制機能として、リスク管理部が、適正な自己資本規制比率維持の観点から、全社的なリスクの状況を把握し、日々、全取締役、執行役員並びに監査役に報告するほか、毎月末の自己資本規制比率並びにその詳細を取締役会に報告しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当期末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当社グループは、創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルと健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針としております。この経営の基本方針のもと、当社グループを取り巻く競争環境はさらに厳しくなるという認識の下、オンライン証券会社や他の中堅証券会社との差別化を図るため、当社グループは、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルを堅持いたしました。また、内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としており、その顧客基盤や預り資産については、収益基盤の大きな柱として認識しております。この基本戦略のもと、当社グループは、全体的な預り資産の増加を図り、顧客基盤の拡大を目指してまいりました。さらに当社グループの収益の中心は、証券市場における仲介業者として得られる手数料収入等でありますが、これらは市場環境の変化の影響を大きく受けやすいものとなっております。当社グループは、自己資金を有効活用することで、市場環境に大きく影響を受けない安定した収益構造の多様化を図ってまいりました。しかしながら、当期における経営成績は、株式市場における売買高が減少したことや投資信託の販売が低迷したことから受入手数料が減少するとともに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い新興国債券市場が混乱したことなどの影響を受けて自己保有債券に多額の損失が発生したことから、期末にかけて債券トレーディング収益が大幅に減少いたしました。これらの結果、前期(2019年3月期)に比べ大幅な減収減益となり、損失を計上いたしました。それらの内訳及び要因は、以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響及び収束時期等につきましては、不確実な要素が多く、現時点において予想することは困難でありますが、今後の経済政策や新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の下振れなどの影響を受けるものと考えられ、当面はその動向を注視していく必要があり、そのため、金融商品取引業者の事業環境については引き続き厳しいものとなると考えております。
営業収益
当期の受入手数料収入につきましては、当期の株式市場においては、投資者の間で米中貿易摩擦の激化による世界経済への影響を見極めようとする姿勢が引き続き強まったことから、前半から中頃にかけては不透明感が強まりました。その後年明けにかけては、米中貿易協議の進展が好感されて市場は活気を取り戻したかのように見えましたが、その後は新型コロナウイルス感染症の蔓延による経済活動の停滞や原油価格の下落によって、手控え感が強まり、売買は低調に推移いたしました。あわせて、投資信託の顧客販売についても年間を通して低調な動きとなりました。その結果、当期の「受入手数料」は、14億1百万円(前期比74.5%、4億80百万円減少)となりました。その内訳は以下のようになっております。
「株券委託手数料」は、7億84百万円(同77.9%、2億22百万円減少)となり、「受益証券(上場投信)委託手数料等」を加えた「委託手数料」は、8億33百万円(同77.8%、2億38百万円減少)と低迷いたしました。
主にアンダーライティング(引受)業務に係る手数料収入で構成される「引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料」は、当社が参入したIPO件数が安定的であったことから、23百万円(同105.2%、1百万円増加)となりました。
投資信託受益証券の募集・売出しの取扱手数料などによって構成される「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」は、投資信託の販売低迷により、3億18百万円(同65.7%、1億66百万円減少)となりました。
主に投資信託の代行手数料からなる「その他の受入手数料」は、2億26百万円(同74.6%、77百万円減少)となりました。
当期のトレーディング損益につきましては、債券等トレーディング損益が大幅な減収となったことから、「トレーディング損益」は、7億80百万円の利益(同29.1%、18億99百万円減少)となりました。内訳は以下のようになっております。
「株券等トレーディング損益」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、保有していた投資信託に損失が発生したことなどから、2億73百万円の損失(前期は28百万円の利益)となりました。
「債券等トレーディング損益」は、他社では提供できない「多様な商品によるマーケット変化を捉えた機動的な運用提案」を行うことで、お客さまからの信頼を獲得するとともに、お客さまの投資パフォーマンスの向上を目指してまいりました。その結果、顧客向け債券販売は安定的であったものの、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い新興国債券市場が混乱したことなどの影響を受け、自己保有債券に多額の損失が発生したことから、11億24百万円の利益(前期比37.5%、18億75百万円減少)にとどまりました。
外貨建債券の為替ヘッジ目的で行っているデリバティブ取引を中心とした「その他トレーディング損益」は70百万円の損失(前期は3億47百万円の損失)となりました。
当期の金融収益につきましては、主にトレーディング商品として保有する債券等から得られる受取債券利子や収益分配金で構成されますが、債券等の保有高が減少したことから、当期の「金融収益」は15億54百万円(前期比93.1%、1億15百万円減少)となりました。
当期の「その他の営業収入」は、18百万円(同7.4%、2億34百万円減少)となりました。
以上の結果、当期の営業収益は、37億54百万円(同57.9%、27億31百万円減少)となりました。
純営業収益
当期の「金融費用」は支払利息や信用取引支払利息がわずかに減少したことにより、64百万円(前期比97.4%、1百万円減少)となりました。営業収益からこの金融費用を差し引いた当期の「純営業収益」は36億90百万円(同57.5%、27億29百万円減少)となりました。
営業損益
当期の「販売費・一般管理費」は、情報システムのリプレースにより不動産関係費が増加したものの、減価償却費や租税公課などが減少したことで、総額は僅かに減少し、48億82百万円(前期比98.2%、90百万円減少)となりました。
当期の純営業収益から販売費・一般管理費を控除した「営業損益」は、営業損失11億91百万円(前期は14億47百万円の利益)となりました。
経常損益
当期の「営業外損益」につきましては、投資有価証券の売却及び買付を行った結果、受取配当金が増加した一方で、有価証券利息はゼロとなり、「営業外収益」は4億57百万円(前期比117.4%、67百万円増加)となりました。一方、「営業外費用」は、あっせん和解金等合計で11百万円(同7.9%、1億39百万円減少)となりました。その結果、営業外損益は4億45百万円の利益(同186.9%、2億7百万円増加)となりました。
当期の営業損失に当該利益を加味した「経常損益」は、経常損失7億46百万円(前期は16億85百万円の利益)となりました。
税金等調整前当期純損益
当期の「特別利益」は、投資有価証券売却益等合計で4百万円(前期比0.4%、12億21百万円減少)を計上いたしました。一方、「特別損失」は、投資有価証券売却損等合計で74百万円(同12.2%、5億35百万円減少)を計上し、「特別損益」は、69百万円の損失(前期は6億15百万円の利益)となりました。
当期の経常損失に当該損失を加味した「税金等調整前当期純損益」は、税金等調整前当期純損失8億16百万円(前期は23億1百万円の利益)となりました。
親会社株主に帰属する当期純損益
当期の「法人税等合計」は、法人税等調整額が△2億89百万円となったことから、△2億56百万円(前期は6億3百万円)となりました。
この結果、当期の「親会社株主に帰属する当期純損益」は、親会社株主に帰属する当期純損失5億60百万円(前期は16億80百万円の利益)となりました。
(財政状態の分析)
当期末の財政状態は、前期末(2019年3月期)に比べ負債が増加した一方で、純資産が減少いたしました。これらの内訳及び要因は、以下のとおりであります。
資産
当期末における「流動資産」は、531億71百万円となり、前期末に比べ13億85百万円減少いたしました。トレーディング商品が、売却や時価の下落等によって79億25百万円減少(当期末192億33百万円)した一方で、現金・預金が43億53百万円増加(当期末187億94百万円)するとともに、顧客預り金の分別保管を主な目的とする預託金が25億55百万円増加(当期末116億95百万円)したことによるものであります。
当期末における「固定資産」は、152億99百万円となり、前期末に比べ19億58百万円増加いたしました。これは主に長期純投資のために保有する投資有価証券が17億59百万円増加(当期末120億20百万円)したことによるものであります。
この結果、当期末の「資産合計」は、684億71百万円となり、前期末に比べ5億72百万円増加いたしました。
負債
当期末における「流動負債」は、242億22百万円となり、前期末に比べ42億88百万円増加いたしました。これは主に顧客からの預り金を中心とした預り金が22億70百万円増加(当期末119億3百万円)するとともに、有価証券の買付代金の支払いが期跨ぎとなったことから、未払金が15億89百万円増加(当期末16億44百万円)したことによるものであります。
当期末における固定負債は、14億78百万円となり、前期末に比べ6億60百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が5億円減少(当期末10億円)したことによるものであります。
この結果、当期末の「負債合計」は、257億21百万円となり、前期末に比べ36億28百万円増加いたしました。
純資産
当期末における純資産合計は、427億49百万円となり、前期末に比べ30億55百万円減少いたしました。これは主にその他有価証券評価差額金が15億37百万円減少(当期末△12億32百万円)するとともに、利益剰余金が15億17百万円減少(当期末348億10百万円)したことによるものであります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループの財務戦略の基本的な考え方は、自己資本を充実させることにより強固な財務基盤を構築するとともに、自己資本を効率的に運用することによって収益性を高め、企業価値の向上を目指すものであります。
金融商品取引業者は、その業務の性格上、自己勘定に基づいて有価証券等の保有や売買取引を行う場合があります。それら保有有価証券の価格変動リスクなどの各種リスクを十分にカバーできる「固定化されていない自己資本の額」を維持し、財務の健全性を表す「自己資本規制比率」を一定の水準以上に維持することが法令等により義務付けられております。当社は、「自己資本規制比率」を高水準に維持することを経営の基本方針といたしますが、上記のとおり、自己資本を効率的に活用して、収益性を高めるために一定のリスク(主に市場リスク)をとる必要もあると考えております。このため、これらリスク額及び自己資本規制比率につきましては、適切なリスク管理体制の下で監視しております。
当社は、財務体質や収益性を測る指標として「信用格付け」を取得しております。当社グループとして、近い将来に新株式や債券の発行による資金調達を行うことは想定しておりませんが、運転資金の安定的な調達を可能とするため、「信用格付け」の水準を安定的に維持することに努めることといたします。
(手許流動性)
当社は、半期ごとに実施する流動性コンティンジェンシープランの検証過程において、緊急事態発生時に、借入金等の返済やお客さまへの預り金の返還などを円滑に行うために当初必要と考えられる手許現預金の水準を決定しております。また、その後必要となる現金需要を賄うために、短期間で現金化が可能となる市場性のある有価証券の保有に努めております。
また、当社グループはお客さま向け販売や自己勘定での取引を目的として、外貨建て有価証券を取り扱っております。これら外貨建て有価証券取引の清算決済においては、期限までに当該外貨を遅滞なく支払う必要があります。しかしながら、外国為替市場の動向によっては決済のための外貨調達が困難になることも想定されます。このような外貨調達リスクを避けるため、市場の状況や取引高を勘案しながら、必要と思われる外貨の種別及び金額をその都度検証し、十分な金額を手許に維持するよう心がけております。
(成長分野への投資活動)
上記目的で必要とされる手許流動性の水準を超える現預金については成長分野や有望市場への投資活動に振り向けることが可能な資金と位置づけ、積極的に投資活動を行ってまいります。これによって、新たな収益源の開拓や収益性が向上し、企業価値向上につながると考えております。
(株主還元-利益配分に関する基本方針及び当期の配当)
当社は、株主価値向上の一環として、株主の皆さまに対し積極的な利益還元を図ることを経営の重要な政策のひとつとしており、配当につきましては、連結配当性向50%以上若しくは連結純資産配当率(DOE)2%以上の両基準で算出した数値のいずれか高い金額を基準とし、当社の自己資本の水準及び中長期的な業績動向並びに株価等を総合的に判断し決定する旨を基本方針としております。
当期の配当につきましては、上記の連結純資産配当率(DOE)を採用し、1株当たり30円の普通配当を支払うことを決定いたしました。なお、配当原資は利益剰余金であります。
(注)純資産配当率(DOE)= | 普通株式に係る1株当たり配当金(年間) | ×100(%) |
(期首1株当たり純資産+期末1株当たり純資産)÷2 |
(資金需要と資金調達)
当社グループの資金需要につきまして、営業活動に係る資金利用といたしましては、お客さま向け販売商品等のトレーディング商品の買付け、信用取引に係るお客さま向けの融資、証券取引サービスを提供するためのインフラ維持に係る費用、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金利用といたしましては、投資有価証券の買付け、お客さま向けサービスの向上と取引の安全性を確保するために必要なシステム投資、金融商品取引業者として法令遵守のために必要な制度整備やシステム投資などがあります。
一方、当社グループの運転資金につきましては、自己資金の利用又は借入による資金調達によって賄っております。自己勘定によるトレーディング商品や投資有価証券の買付けにつきましては、原則として自己資金を利用することとしております。借入による資金調達に関しましては、短期借入金及び長期借入金で調達しております。短期借入金といたしましては、銀行借入に加えて、コールマネーの調達も行っております。2020年3月31日現在、長期借入金の残高は10億円であります。また、当社は運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行を含む合計11行との間で、総額50億円のシンジケート方式によるコミットメントライン契約を締結しております。この契約に基づく当期末の借入実行残高は20億円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において、一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、有価証券の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の計上、減価償却資産の償却、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付等の会計処理については、会計関連諸法規をベースに、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる基準により見積り及び判断を行っております。会計処理については、真実性の原則は勿論のこと、特に健全性と継続性の原則に配慮しております。しかしながら、実際の結果は、見積り作成時点での不確実性があることから、これらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響及び収束時期等につきましては、不確実な要素が多く、現時点において予想することは困難でありますが、繰延税金資産の回収可能性の判断等の会計上の見積りにおいて、当連結会計年度末日以降連結財務諸表作成時までに入手可能であった3月以降の部店別の業績等の実績を考慮し、見積りを行っております。
当社の連結営業収益は、証券市場に係る受入手数料及びトレーディング損益を柱としており、その大半が株式市場及び債券市場を源泉としております。株式・債券市場の好・不調による業績への影響を緩和するため、収益源の多様化を通じて収益の安定性確保に努めておりますが、それでもなお、業績が証券市場の動向に左右され、大きく変動する可能性があります。また、国内外の金融商品市場の急激な変動により、当社が保有している金融商品の評価損益が多額になる可能性もあります。
一般的に、証券市場や外国為替市場は、内外の政治・経済情勢、金利、企業収益等、様々な要因を反映して変動します。したがって、当社グループの連結経営成績についても、証券市場に係るこれらの要因が多大な影響を及ぼす可能性があります。