有価証券報告書-第16期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/09 10:39
【資料】
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【項目】
56項目

対処すべき課題

当社グループは、その「企業理念」において、「公共性及び信頼性の確保、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築並びに創造的かつ魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献」するとの方針を掲げています。
当社グループの運営する現物市場の売買代金及びデリバティブ市場の取引高は、グローバルな経済環境や市況の動向によって大きく影響を受ける傾向があるため、「市場の持続的な発展」を実現するには、国内外の市場利用者から支持される質の高いサービスの提供に努めることに加え、短期的に外部環境が悪化した場合でも安定的な市場運営を可能とするだけの十分な財務基盤を確保するために、相対的に高い成長性が見込まれる事業分野への積極的な投資を通じて、ビジネスポートフォリオの充実を図っていく必要があります。
そこで、当社グループでは、「第二次中期経営計画(2016年度-2018年度)」において、「統合の成功を基礎に市場の持続的な発展に向けた投資を強化」するとの基本方針を定め、事業部門間の連携・相互補完により市場基盤やサービスの質的向上などの取組みを強化しつつ、新たなビジネスへの積極的な進出を図ることを通じて、「現物市場ビジネス」、「デリバティブ市場ビジネス」及び「周辺ビジネス」のバランスがとれたビジネスポートフォリオを有する姿の実現を中長期的に目指してまいります。
また、当社グループは、財務の安全性と株主還元のバランスをとりつつ、積極的な成長投資に伴う収益・利益の拡大及び安定性向上を図ることを資本政策の基本方針としております。当社グループは、こうした方針のもと、市況により大きく変動する当社ROE*について、資本効率を意識した経営を行うことにより、市況変動にかかわらず資本コストを上回る10%を中長期的に実現することを目指してまいります。
* 2008年度-2012年度(統合前の合算値)の平均ROEは5%程度、2013年度-2015年度(第一次中期経営計画期間)の平均ROEは16%程度

第二次中期経営計画の概要
第二次中期経営計画(2016年度-2018年度)の2年目にあたる2017年度を迎えるにあたり、各重点的な取組みにおける施策の進捗状況や高速取引への適切な対応などの新たな課題等を踏まえ、2017年3月31日付で第二次中期経営計画をアップデートいたしました。当社グループは、今回アップデートした第二次中期経営計画に沿って、次の課題に取り組んでまいります。
① 投資者の多様な投資ニーズの充足と中長期的な資産形成の活性化
我が国における中長期的な資産形成を活性化していく観点から、個人投資家の金融リテラシーの向上と機関投資家の資産運用の高度化・多様化の必要性が高まっています。また、当社グループの運営する市場における円滑・公正な価格形成の維持・発展を図るうえでは、多様な投資判断を行う投資家の参加を促していくことが重要です。
そこで、当社グループでは、多様なチャネルを活用し、若年層・投資未経験層に対する情報提供・啓発活動の更なる強化を図るほか、投資家の多様なニーズに合致した投資商品の上場、海外取引所とのコネクティビティ・サービスの拡充による市場への新たな投資家の誘致、新指数の開発による日本株の新たな投資魅力の提示などに取り組みます。
さらに、デリバティブ市場については、新たな商品の導入に加えて、国内の機関投資家によるデリバティブ取引の活用促進に取り組みます。また、総合取引所化の可能性についても継続的に検討してまいります。
② 上場会社の価値向上の支援
コーポレート・ガバナンスに関する報告書や決算短信等の英文開示の促進をはじめ、上場会社の財務情報・非財務情報を投資家が入手しやすい環境の整備などを通じて、両者の円滑な対話を促進し、コーポレート・ガバナンスの実効性の更なる向上を図ります。また、成長分野へのリスクマネーの円滑な供給を通じて、我が国経済の持続的な成長に貢献する観点から、地方未上場企業に対する上場支援によるIPOの裾野の拡大を図るほか、市場コンセプトの明確化に向けた取組みを進めてまいります。
③ 市場基盤の強化
清算・決済サービスにおけるリスク管理の高度化や利便性の向上を図るとともに、決済リスク削減に向けた株式決済期間の短縮や国債決済期間の短縮に向けて取組みを進めてまいります。また、広域災害に備えた市場運営体制の強化に向けた取組みを進めるほか、サイバーセキュリティの強化・拡充を行います。
さらに、市場運営に係るリスク管理体制の充実を図るとともに、高速取引に対する新ルールの導入を踏まえた円滑な移行や、現行の現物売買システムの更なる機能強化に向けた取組みを進めてまいります。
また、日本取引所自主規制法人の売買審査業務におけるAI(人工知能)の本格的な活用に向けた取組みを進めてまいります。
④ 取引所ビジネスの拡大
中長期的なビジネスポートフォリオの多様化を進める観点から、OTCデリバティブ分野における清算対象分野の拡大をはじめとして新たなビジネス領域への進出に向けた取組みを進めてまいります。
また、国際金融規制改革の進展や新しい金融・IT技術(フィンテック)の発展により、当社グループのビジネス環境が大きく変化する可能性を見据え、取引所ビジネスに関する新技術の研究・開発を進めるほか、創造的な組織風土の醸成や海外ビジネス基盤の強化、国内外の規制動向等に関する調査研究機能の強化や意見発信を進めてまいります。