有価証券報告書-第135期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/26 11:06
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113項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、政府の経済・金融政策により穏やかな回復基調が続いたものの、不安定な海外情勢などの影響もあり不透明感がある中で推移した。
一方、地方の中小私鉄・バス業界においては、沿線人口の減少や少子高齢化による輸送需要の減退、労働力不足、更には老朽化施設の更新や安全対策費のコスト増が企業収益を圧迫するなど、依然厳しい経営環境が続いている。県内では、北陸新幹線開業から3年目を迎え、交流人口の推移や観光・ビジネスなど各業界の動向が注視された。
このような情勢のもと、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は経営基盤の強化を図るため、積極的な増収策を展開するとともに、利用しやすく魅力的な地域交通の整備・構築に取り組み、様々な施策を展開した。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益が12,200,014千円と前連結会計年度に比べ130,063千円(前年同期比1.0%増)の増収となった。また、損益については営業損益は83,035千円の営業利益(前年同期比67.2%増)、経常損益が5,555千円の経常利益(前年同期比84.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、395,414千円(前年同期比52.0%減)となった。
なお、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析」及び「第3 設備の状況」については消費税等抜きで記載している。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
また、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。
a. 運輸事業
鉄道事業では、宇奈月温泉駅のバリアフリー化と訪日外国人観光客に対応するためエレベーター及び多目的トイレを新設するとともに、月岡駅では駅舎の明粧化工事を実施し、南富山駅にはクレジットカード決済サービスを導入するなど、駅施設の利便性と快適性の向上に努めた。また、冬期間の営業増進を目的に「冬の立山線動画」を作成し、美しい雪景色の中を走る観光列車や沿線観光スポットの紹介映像をエージェントセールスに活用するとともに、動画配信サイトYouTubeで公開した。更に、沿線自治体や他社との様々な共同企画・イベント等と連携し、利用促進と地域の活性化に努めたほか、人気イベント「ちてつ電車フェスティバル」で新しい鉄道グッズを発売するなど、鉄道ファンのニーズを機敏に捉えた営業活動を展開した。一方、施設面においては、本線をはじめ各線にわたり軌道基盤等の整備を実施したほか、列車集中制御装置の更新や本線袖野踏切の1種化など、輸送安全対策の強化に努めた。
軌道事業では、新型低床車両T100形サントラムの4次車を導入し、低床車両の拡充を図るとともに、レトロ電車を活用したビール電車の運行や鱒鮨を食べ歩く「ぐるっとグルメぐりクーポン」など、各種企画商品の販売促進に努めたほか、夏休み、冬休み期間の平日に環状線を増発し、輸送繁忙期に応じた利用促進に取り組んだ。また、昨年10月と本年3月の休日の延3日間、大手モールにて歩行者と市内電車だけが通行できる「トランジットモール」の社会実験を富山市と共同で実施し、中心市街地の賑わい創出のみならず優れた都市交通機能として市内電車の役割と存在価値を大きくアピールした。施設面では、富山駅~県庁前電停間の軌道改良工事及び南富山電停改良工事を実施し、安全性と乗り心地の改良及びバリアフリー化に努めた。
乗合バス事業では、移転新築した富山県美術館への路線延伸や国際大付属高校線の経路変更など、沿線施設と利用者のニーズに即した運行経路の整備に努めるとともに、「ぶりかにバス」や「ぐるっとBUS」など観光路線を広くPRしながら営業増進に取り組んだ。また、車内に車椅子及びベビーカーの設置スペースとカラーLED式行先表示器を搭載した大型低床ノンステップバス新車3両を導入し、バリアフリー化の推進に努めた。都市間高速バスについては、昨年4月、仙台線を北陸鉄道㈱が運行していた金沢線と路線統合し、仙台・山形-富山・高岡・金沢線に、5月には東京線を加越能バス㈱が運行していた高岡・氷見線と統合し、東京-富山・高岡氷見線に改編し、運行の効率化とバス停留所新設による新規需要の開拓に取り組んだ。また、新潟線では繁忙期に計画的な増便運行を実施したほか、東京線では昨年末に30周年記念キャンペーンを展開し、更なる利用促進に向けたPR活動を行った。更に、増加する訪日外国人観光客に対応し、バス車内の音声ガイドやテレビ画面の文字表示に英語、中国語、韓国語を加えた4ヶ国語での案内放送を取り入れたほか、最新の安全装置を搭載した新車5両を導入し、安全性と快適性の向上に努めた。
貸切バス事業では、充実した車内装備の貸切バス新車大型2両、中型4両を導入し、旅客ニーズに応じた車両ラインナップの充実と輸送品質の向上に努めるとともに、日本バス協会が実施する「貸切バス事業者安全性評価認定制度」において最高ランクの認定を受けている高い安全水準をPRしながら受注の拡大に繋げたほか、昨年5月には天皇、皇后両陛下をお迎えした「全国植樹祭とやま2017」開催に伴う大型輸送を滞りなく完遂した。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は、7,672,526千円と前連結会計年度に比べ78,352千円(前年同期比1.0%増)の増収となった。

(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
項目単位当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
営業粁93.20.0
客車走行粁千粁4,9270.0
乗車人員千人5,9481.9
定期4,0712.2
定期外1,8771.4
旅客収入千円1,472,0750.4
定期646,9281.7
定期外825,102△0.5
手小荷物収入45△5.6
運輸雑収202,573△0.6
収入合計1,674,6480.3
乗車効率%11.062.0
1日平均収入千円4,5880.3
1日1粁平均収入49.220.3

(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)による。
(ロ)軌道事業
項目単位当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
営業粁7.60.0
客車走行粁千粁8410.4
乗車人員千人5,2433.4
定期2,7055.2
定期外2,5381.6
旅客収入千円666,1772.6
定期231,3455.7
定期外434,8311.1
運輸雑収81,185△13.7
収入合計747,3620.5
乗車効率%21.784.2
1日平均収入千円2,0470.5
1日1粁平均収入269.410.5

(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)による。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
項目単位当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
営業粁2,483.22.3
車両走行粁千粁10,030△1.6
乗車人員千人6,3123.9
定期2,6505.2
定期外3,6623.0
旅客収入千円2,141,5954.9
定期445,5226.5
定期外1,696,0724.5
運輸雑収350,571△5.1
収入合計2,492,1663.3
乗車効率%16.78△2.5
1日平均収入千円6,8273.3
走行1粁当り収入248.405.0

(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)による。
貸切自動車
項目単位当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
車両走行粁千粁1,3231.0
乗車人員千人23914.4
旅客収入千円549,3572.7
運送雑収87,8260.3
収入合計637,1832.4
1日平均収入1,7452.4
走行1粁当り収入481.561.3

(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
鉄道事業(千円)1,674,6480.3
軌道事業(千円)747,3620.5
自動車事業(千円)5,413,3501.2
調整額(千円)△162,835-
報告セグメント計(千円)7,672,5261.0

b. 不動産事業
不動産事業においては、積極的な営業展開をしたものの、分譲土地の販売が昨年より減少した結果、当連結会計年度の営業収益は、515,073千円と前連結会計年度に比べ27,916千円(前年同期比5.1%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
不動産分譲業(千円)15,327△61.2
不動産賃貸業(千円)499,746△0.7
報告セグメント計(千円)515,073△5.1

c. 建設事業
建設事業においては、公共工事の受注が増えたことにより当連結会計年度の営業収益は、1,257,020千円と前連結会計年度に比べ18,879千円(前年同期比1.5%増)の増収となった。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
建設業(千円)1,257,0201.5
報告セグメント計(千円)1,257,0201.5

d. 保険代理事業
保険代理事業においては、積極的な営業展開をしたものの、当連結会計年度の営業収益は、421,465千円と前連結会計年度に比べ6,296千円(前年同期比1.4%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
保険代理業(千円)421,465△1.4
報告セグメント計(千円)421,465△1.4

e. 航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、国際線の台湾便が好調に推移したものの、国内線の低迷が続いており、当連結会計年度の営業収益は、842,644千円と前連結会計年度に比べ6,271千円(前年同期比0.7%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
航空輸送事業代理業(千円)842,644△0.7
報告セグメント計(千円)842,644△0.7

f. ホテル業
ホテル業においては、インターネット予約の増加により観光客やビジネス客が増加し、稼働率が増加し、当連結会計年度の営業収益は、551,729千円と前連結会計年度に比べ24,821千円(前年同期比4.7%増)の増収となった。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
ホテル業(千円)551,7294.7
報告セグメント計(千円)551,7294.7

g. その他
その他においては、その他事業に含まれる旅行代理店業が好調に推移したものの、広告代理業では企業の広告費削減、その他事業に含まれる物品販売業の減少に歯止めがかからず、当連結会計年度の営業収益は、2,726,888千円と前連結会計年度に比べ40,158千円(前年同期比1.4%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前年同期比(%)
自動車整備業(千円)797,884△3.3
娯楽・スポーツ業(千円)441,7840.3
広告代理業(千円)759,026△5.8
その他事業(千円)728,1924.7
調整額(千円)--
その他計(千円)2,726,888△1.4

② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、投資活動によるキャッシュ・フローと
財務活動によるキャッシュ・フローが減少した一方で、営業活動によるキャッシュ・フローが増加した結果、前連
結会計年度に比べ290,406千円増加し、当連結会計年度末には2,852,052千円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,596,535千円(前連結会計年度は1,024,319千円の資金を得ている)となった。これは税金等調整前当期純利益が612,613千円と前連結会計年度に比べ50,694千円減少し、売上債権の増加額が209,261千円(前連結会計年度は1,328千円の増加額)であった一方で、仕入債務の増加額が311,103千円(前連結会計年度は50,829千円の減少額)、未払消費税等の増加額が21,310千円(前連結会計年度は85,208千円の減少額)、たな卸資産の増加額が57,384千円(前連結会計年度は13,892千円の減少額)であったことが主な要因である。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は402,780千円(前連結会計年度は164,891千円の使用)となった。これは有形固定資産の取得による支出が895,884千円と前連結会計年度に比べ84,120千円増加し、工事負担金等受入による収入が495,954千円と前連結会計年度に比べ204,665千円減少したことが主な要因である。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は903,348千円(前連結会計年度は1,005,544千円の使用)となった。これは借入金の純増額が前連結会計年度に比べ162,282千円増加し、割賦債務の返済による支出が前連結会計年度に比べ10,141千円減少した一方で、リース債務の返済による支出が前連結会計年度に比べ68,942千円増加したことが主な要因である。
③ 生産・受注及び販売の状況
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載していない。そのため生産、受注及び販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントごとに経営成績に関連付けて示している。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、北陸新幹線開業3年目を迎え、開業効果が薄れるかと危惧していたが、社員一丸となり積極的な営業展開をし、営業収益は12,200,014千円(前年同期比1.0%増)となり、営業費は徹底的なコスト削減を図ったが、軽油と建設材料費の高騰に加え、大雪による除雪費用が嵩み12,116,979千円(前年同期比0.8%増)となった結果、営業利益は83,035千円(前年同期比67.2%増)、営業外収益に含まれる持分法会社の投資利益が4,404千円(前年同期比94.7%減)であったため、経常利益は5,555千円(前年同期比84.0%減)にとどまった。これに補助金417,874千円と工事負担金等受入額708,917千円を含む特別利益1,178,013千円と固定資産圧縮損552,352千円を含む特別損失570,955千円を加減した結果、税金等調整前当期純利益は612,613千円となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を加減した395,414千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比52.0%減)となった。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、北陸新幹線開業から3年が過ぎ、新幹線利用の定着や政府のインバウンド強化策による訪日外国人観光客の増加など県内への交流人口が拡大しつつある中、激変する環境への対応が急務である。また、全国的に慢性化しているバス運転手不足は当社グループも例外ではなく、需要に応えられず今後も収益に悪影響を与えると予想される。加えて、バスの軽油が高騰のままであり、更に平成30年4月から電気料の値上げによる電車動力費、賃貸不動産の電気料の負担は大きく収益を圧迫させると予想する。建設事業においては、建設材料費の高騰により収益へ悪影響を与えると予測する。航空輸送事業代理業においては、北陸新幹線開業時から国内便の低迷が続いており今後の収益確保も厳しいものと予測する。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、設備投資資金に対して、自己資金、金融機関からの長期借入、リース及び補助金を活用し、短期運転資金に対しては、自己資金、当社グループ間短期借入及び金融機関からの短期借入により資金を調達している。
この背景のもと当連結会計年度の経営成績は、税金等調整前当期純利益が前連結会計年度に比べ50,694千円減少したが、持分法による投資利益が前連結会計年度に比べ79,343千円減少したことが主な要因である。
現金及び預金は前連結会計年度に比べ290,406千円の増加となった。受取手形及び売掛金は前連結会計年度に比べ209,261千円増加したが、建設事業の受注が好調に推移したことが主な要因である。未収金は前連結会計年度に比べ301,020千円増加したが、運輸事業を営む富山地方鉄道、富山地鉄北斗バス、加越能バスの補助金及び工事負担金等受入額が主な要因である。分譲土地建物は前連結会計年度に比べ12,352千円減少したが、富山地方鉄道が分譲宅地を昨年度は5区画販売したが今年度は2区画にとどまったことである。未成工事支出金は前連結会計年度に比べ40,953千円減少したが、富山地鉄建設の建設中の受注工事が減少したことである。この結果、流動資産は前連結会計年度に比べ735,963千円増加し5,176,016千円となった。有形固定資産と無形固定資産の合計は前連結会計年度に比べ149,236千円増加したが、それぞれ減価償却費が進む中、運輸事業の安全対策に係る設備投資、訪日外国人観光客対策への設備投資、輸送サービス増強への設備投資を充実させ、お客様に安心、安全、快適性を提供し収益力アップを図った。投資その他の資産は前連結会計年度に比べ113,839千円減少したが、上場株式の時価評価が大幅に下落したことが主な要因である。この結果、固定資産は前連結会計年度に比べ35,397千円増加し、資産総額は、前連結会計年度に比べ771,361千円増加の24,091,300千円となった。一方、負債については支払手形及び買掛金が前連結会計年度に比べ328,921千円増加したが、富山地鉄建設の受注材料費が前連結会計年度に比べ297,229千円増加したことが主な要因である。借入金は前連結会計年度に比べ242,062千円減少したが、借入金の圧縮を図り支払利息の軽減に努めたものである。リース債務は前連結会計年度に比べ160,253千円増加したが、運輸事業のバス購入債務が主な要因である。割賦未払金は前連結会計年度に比べ110,499千円減少したが、富山地方鉄道本社ビルの耐震工事費が完済したことによる。この結果、負債総額は、前連結会計年度に比べ366,108千円増加し13,860,824千円となった。また親会社株主に帰属する当期純利益395,414千円にその他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額、非支配株主持分及び配当金を加減した結果、純資産は10,230,476千円となり前連結会計年度に比べ405,252千円の増加となった。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、富山地方鉄道は年度計画に基づき、社長を議長に毎週経営幹部会議を開催し、月次業績や経営計画、個別施策の進捗状況等について報告し、情報の共有化を図るとともに、多面的な対策検討を実施し、経営目標の適切な達成管理を行っている。また平成30年4月に開催した取締役会において、中期事業計画を示し、多角的な事業へのテコ入れを図り、激変する事業環境の対応に即した経営戦略を推し進めていく。また、連結子会社の経営管理については、年度計画に基づく業務執行状況等の報告を受け、その都度指導を行うとともに重要案件は合議稟議制により決裁を行い、地鉄グループ全体として経営基盤を固め、中長期的に発展・存続できる体制づくりを行っている。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
運輸事業
鉄道事業は、地方私鉄においては93.2㎞の長い営業粁を有し、またトンネル、鉄橋も多数所有する中、維持管理費用は莫大であり、北陸新幹線開業効果はあったものの大きな営業赤字は解消できず国、自治体からの補助金がなくては事業の存続が厳しい状態が続いている。今後の展望も人口減少に加え、施設の老朽化への設備投資は必要不可欠である。更には、電力料の値上げが赤字拡大につながることは確実である。また、連続立体交差事業が動き始めてきた中で、当社の費用負担が重くのしかかっている。このような状況下のもと、運賃改定の検討も視野に入れた事業経営が必要と認識している。
軌道事業は、北陸新幹線開業時に富山駅まで延伸させたことが更なる利便性につながり、通勤・通学定期は顕著に伸び、一般定期外も好調に推移し安定した営業利益確保となっている。平成29年11月には4次車目となる純国産の軌道超低床車両を補助金を活用し1編成新造し、更なるサービス向上に努めている。
自動車事業は、乗合自動車の路線バス部門では営業利益は依然として赤字が続いている。路線ダイヤの見直しやコミュニティバスの受注により収入確保に努め、更に、生活交通路線維持費補助金を毎期、国、自治体から受け事業の存続に努めている。一方で、高速バス部門では北陸新幹線開業時から東京線は低迷が続いているものの新潟線、名古屋線、大阪線、高山線は好調な伸びを示しており、毎期、新造バスの投入によりサービスの向上を図り、お客様の獲得に努める。貸切自動車では営業利益は確保するも、北陸新幹線開業効果が薄れてきており減収となった。今後、課題となっている冬期間の商品開発を推し進め増収を図る。
不動産事業
不動産事業は、不動産分譲業の分譲団地が2区画の販売にとどまり初めての営業損失となった。既存物件の販売にとどまっている中、ここ数年の富山市内の不動産状況はマンション建設のラッシュが続いており、宅地開発への投資は慎重に検討していく必要があると判断している。不動産賃貸業においても営業利益が減少しており、富山市内近隣賃貸物件も空室が目立ち、当社も例外ではなく空室が埋まらない状況である。今後も引き続きテナント誘致に向け販促活動を行っていく。
建設事業
建設事業は、売上高は伸びているものの建設材料費の高騰と下請け会社の確保が難しくなりつつあり、この影響は東京オリンピック開催まで続くと予測しており、粗利が低くともより多くの受注獲得を行い収益を確保する。
保険代理事業
保険代理事業は、毎期、減収増益となっている。競合他社が多い中、新規加入者の獲得と継続者の維持が課題であると認識にており、今後も積極的な販促活動を行っていく。
航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業は、国際線は立山黒部アルペンルートへの訪日外国人観光客が顕著に伸びているものの、羽田・富山間の国内便は北陸新幹線開業後、6便から4便へと減便された影響と北陸新幹線へのお客様の流れが定着化したこともあり、厳しい経営環境が続くと思われる。このような状況化の中、当社の運行固定経費の削減は難しく、今後の経営の重要課題と考えている。
ホテル業
ホテル業は、北陸新幹線開業後、V字回復を見せ今期も増収増益となったが、平成30年4月に富山駅正面に新規ホテルが開業し、当社への売上に影響を及ぼすと思われる。今後、顧客獲得に向け魅力ある商品を打ち出し更なる増収増益を図る。
その他
自動車整備事業は、減収増益となった。受注工事が減少したものの原価を抑えた結果、増益となったものである。
娯楽・スポーツ業は、ボウリングは増収増益であったがスポーツドーム・エアーズは減収減益となった。ボウリングはLINE会員が顕著に伸び、来店者数も伸びつつあるが、スポーツドーム・エアーズはライバル店も多く、会員数が減少してきていることもあり、今後の施策が急務と認識している。
広告代理業は、減収減益となった。依然として、企業の新聞広告、電波広告の減少が止まらない現状であり、今後も積極的に営業活動を展開し増収に繋げていく。
物品販売業は、減収減益となった。飲食関係は前年並みであったが、事務機器販売は大きく前年を下回った。今後の販促活動の立て直しが必要と考えている。
旅行代理店業は、昨年に引き続き営業損失となった。増収ではあったものの人件費の増大により利益率が低下したことが原因であり、平成30年度から組織体制の見直しを図り収益の回復に努める。
総括として、当社グループは運輸事業を核とする企業体であり、富山県はマイカー所有率も全国でも高く、地方から首都圏への人口流出が続く中、老朽化施設の更新、バス運転手、鉄軌道運転士の確保、技術職の育成、燃料費高騰への対応等に対し、資金の確保と人員の確保が今後の最優先事項と考えており、長期的な企業の存続に向けた施策と、インフラ事業者としての使命を果たしていく。