有価証券報告書-第136期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、政府の経済・金融政策により設備投資の増加や雇用・所得環境の改善により総じて穏やかな回復基調が続いたものの、不安定な海外経済の影響などにより不透明感がある中で推移した。
一方、地方の中小私鉄・バス業界においては、沿線人口の減少や少子高齢化による輸送需要の減退、労働力不足、更には老朽化施設の更新や安全対策費のコスト増が企業収益を圧迫するなど、依然厳しい経営環境が続いている。
このような情勢のもと、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は経営基盤の強化を図るため、積極的な増収策を展開するとともに、利用しやすく魅力的な地域交通の整備・構築に取り組み、様々な施策を展開した。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益11,807,870千円(前年同期比3.2%減)、営業利益47,885千円(前年同期比42.3%減)、経常損失33,992千円(前年同期比は経常利益5,555千円)、親会社株主に帰属する当期純利益99,625千円(前年同期比74.8%減)となった。
なお、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析」及び「第3 設備の状況」については消費税等抜きで記載している。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
また、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。
a.運輸事業
鉄道事業では、本年3月に不二越・上滝線に新駅「栄町駅(県立中央病院口)」を開業し、沿線地域の新規需要の利用促進に繋げた。また鉄道線の各駅に訪日外国人のお客様が安心してご乗車いただけるように、駅番号制「ナンバリング」を導入し、路線図や運賃モニターに表示するなどした。また人気の高い観光列車「アルプスエキスプレス」と「ダブルデッカーエキスプレス」の座席予約をホームページからできるWeb予約受付を開始し、県内外の観光客や訪日外国人客の利便性を高めた。更に、沿線自治体や他社と連携し様々な共同企画・イベントを企画し、利用促進と地域の活性化に努めたほか、人気イベント「ちてつ電車フェスティバル」でオリジナル鉄道グッズを発売するなど、鉄道ファンのニーズを機敏に捉えた営業活動を展開した。一方、施設面においては、本線をはじめ各線にわたり軌道基盤等の整備を実施したほか、列車集中制御装置の更新や上滝線久保踏切の1種化など、輸送安全対策の強化に努めた。
軌道事業では、鉄道線と同様に停留所番号制「ナンバリング」を導入したほか、富山グルメの鱒鮨や甘味処を食べ歩く「ぐるっとグルメぐりクーポン」やレトロ電車を活用したビール電車の運行など各種企画商品の販売促進に努めた。また夏休み、冬休み期間の平日には環状線を増発し輸送繁忙期に応じた利用促進に取り組んだ。施設面では、新富町~県庁前電停間の軌道改良工事を実施し、安全性と乗り心地の改良に努めた。
乗合バス事業では、国際大学付属高校線に高岡ルートの増設や東富山ルートの経路変更を行ったほか、富山短期大学関係路線を増便し学生輸送の増強に取り組んだ。また機動性の高い小型車両を神岡平湯温泉線などに導入し経費削減や乗務員不足に対応し、「ぶりかにバス」や「ぐるっとBUS」などでは観光路線を広くPRしながら営業増進に取り組んだ。また、カラーLED式行先表示機を搭載した大型低床ノンステップバス新車2両を導入し、バリアフリー化の推進に努めた。
都市間高速バスについては、新潟線では繁忙期に計画的な増便運行を実施したほか、東京線では昨年6月に東京発時間のダイヤ改正を行い、富山着後の公共交通の最終時間に接続させるなど利便性の向上を図った。また、山形・仙台線ではサマーキャンペーンの展開や、早期購入割引運賃を導入し、新規需要の開拓に取り組んだ。高速バスの全車両には「無料フリーWi-Fi」の設定を行い、最新の安全装置と充実した車内装備の高速バス新車1両を導入し安全性と快適性の向上に努めた。
貸切バス事業では、日本バス協会が実施する「安全性評価認定制度」において最高ランクの認定を受けている高い安全水準をPRしながら受注の拡大に繋げた。昨年11月には「第31回ねんりんピック富山2018」開催に伴う大型
輸送を滞りなく完遂した。また、世界25カ国1地域が加盟する「世界で最も美しい湾クラブ」の世界総会が本年富山県で開催されることに先駆け、昨年10月に屋根を開放した二階建て「オープントップバス(スカイバス)」で新湊大橋から富山湾を眺める新しい観光スタイルのイベントバスを運行し大盛況を得た。昨年12月には宇奈月温泉発「名水が生み出すとやまの幸めぐり」定期観光バスを運行し、冬の富山の魅力を活かした観光商品の企画と販売促進に努めた。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は、7,719,924千円と前連結会計年度に比べ47,398千円(前年同期比0.6%増)の増収となった。
(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)による。
(ロ)軌道事業
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)による。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)による。
貸切自動車
(業種別営業収益)
b.不動産事業
不動産賃貸業においては、賃貸物件の稼働率向上に努めた結果、前年並みとなったが、不動産分譲業においては、積極的な営業展開をしたものの、販売不振により不動産事業の当連結会計年度の営業収益は、500,740千円と前連結会計年度に比べ14,332千円(前年同期比2.7%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
c.建設事業
建設事業においては、大型工事の受注減少により当連結会計年度の営業収益は、797,638千円と前連結会計年度に比べ459,381千円(前年同期比36.5%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
d.保険代理事業
保険代理事業においては、新規顧客の獲得に努めたものの、ネット販売の普及等により依然として厳しい環境にあり当連結会計年度の営業収益は、414,531千円と前連結会計年度に比べ6,934千円(前年同期比1.6%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
e.航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、大連便増便により国際線は好調に推移したものの、国内線の販促業務手数料等各種手数料が減少した結果、当連結会計年度の営業収益は、815,754千円と前連結会計年度に比べ26,890千円(前年同期比3.1%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
f.ホテル業
ホテル業においては、充実した館内施設・サービスを積極的にアピールし、国内外からの集客に努めた結果、訪日外国人観光客の増加などにより好調に推移し、当連結会計年度の営業収益は、559,820千円と前連結会計年度に比べ8,090千円(前年同期比1.4%増)の増収となった。
(業種別営業収益)
g.自動車整備業
自動車整備業においては、当社グループ外からの受注拡大に努めた結果、当連結会計年度の営業収益は、865,263千円と前連結会計年度に比べ67,378千円(前年同期比8.4%増)の増収となった。
(業種別営業収益)
h.その他
その他においては、広告代理業ではイベント等の広告が増加し好調に推移した。一方で、娯楽・スポーツ業においては積極的な営業展開をしたものの伸び悩み、その他事業に含まれる物品販売業の飲食関係が振わず、当連結会計年度の営業収益は、1,908,709千円と前連結会計年度に比べ20,294千円(前年同期比1.0%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、投資活動によるキャッシュ・フローが増加した一方で、営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローが減少した結果、前連結会計年度に比べ371,646千円減少し、当連結会計年度末には2,480,405千円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,401,451千円(前連結会計年度は1,596,535千円の資金を得ている)となった。これは税金等調整前当期純利益が156,858千円と前連結会計年度に比べ455,754千円減少し、仕入債務の減少額が429,057千円(前連結会計年度は311,103千円の増加額)、固定資産圧縮損が303,363千円(前連結会計年度は552,352千円)、たな卸資産の減少額が35,147千円(前連結会計年度は57,384千円の増加額)であった一方で、売上債権の減少額が331,502千円(前連結会計年度は209,261千円の増加額)、減損損失が327,103千円(前連結会計年度は1,125千円)、工事負担金等受入額が410,612千円(前連結会計年度は708,917千円)であったことが主な要因である。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は289,603千円(前連結会計年度は402,780千円の使用)となった。これは有形固定資産の取得による支出が844,066千円と前連結会計年度に比べ51,817千円減少し、工事負担金等受入による収入が554,322千円と前連結会計年度に比べ58,368千円増加したことが主な要因である。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,483,494千円(前連結会計年度は903,348千円の使用)となった。これは借入金の純減額が前連結会計年度に比べ678,282千円減少し、割賦債務の返済による支出が前連結会計年度に比べ96,652千円減少したことが主な要因である。
③ 生産・受注及び販売の実績
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載していない。そのため生産、受注及び販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(1)経営成績等の状況の概要」の「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントごとに経営成績に関連付けて示している。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、各事業部門が攻めを中心に積極的な営業展開を図った営業収益は11,807,870千円(前年同期比3.2%減)となり、営業費は電気料、軽油、建設材料費の高騰を受けながら、経費削減の徹底管理を実施し11,759,985千円(前年同期比2.9%減)となった結果、営業利益は47,885千円(前年同期比42.3%減)、営業外収益の113,404千円と持分法会社の投資損失40,654千円を含む営業外費用195,281千円を加減した経常損失は33,992千円(前連結会計年度は5,555千円の経常利益)となった。これに補助金418,760千円と工事負担金等受入額410,612千円を含む特別利益836,013千円と固定資産圧縮損303,363千円と減損損失327,103千円を含む特別損失645,162千円を加減した結果、税金等調整前当期純利益は156,858千円となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純損失を加減した99,625千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比74.8%減)となった。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、北陸新幹線利用の定着や政府のインバウンド強化策による訪日外国人観光客の増加など県内への交流人口が拡大しつつある中、激変する環境への対応が急務である。また、全国的に慢性化しているバス運転手不足は当社グループも例外でなく、需要に応えられず今後も収益に悪影響を与えると予想している。加えて、バスの軽油の高騰が先行き不透明であり、昨年4月からの電気料金の値上げによる電車動力費、賃貸不動産の電気料の負担は今後も大きく収益を圧迫させると予測している。建設事業においては、建設材料費の高騰により収益へ悪影響を与えると予測している。航空輸送事業代理業においては、北陸新幹線開業から国内便の低迷が続いており今後の収益確保も厳しいものと予測している。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
運輸事業
鉄道事業は、地方私鉄においては93.2㎞の長い営業粁を有し、またトンネル、鉄橋も多数所有する中、維持管理費用は莫大であり、北陸新幹線による交流人口の拡大によって恩恵は受けているものの大きな営業赤字は解消できず、国、自治体から老朽化する設備維持への補助金がなくては事業の存続が厳しい状態が続いている。今後の展望も、鉄道沿線人口の減少に加え、昨年4月から電気料金の値上げにより電車動力費の増大が収支を圧迫させており、運行本数の見直しや走行キロの見直しを図り経費削減を実施しているが今後の事業存続には運賃改定も視野に入れ運行形態の見直しを図る必要があると認識している。また、富山駅付近連続立体交差事業における当社鉄道線の高架化について関係機関と連携し推し進めていく。
軌道事業は、北陸新幹線開業時に軌道線を富山駅まで延伸させたことが利便性の定着につながり、通勤・通学定期は昨年同期を上回る輸送客数と売上を得た。一般定期外についても富山市とのタイアップにより訪日外国人観光客に向けた優待乗車券の利用数が増加したが、暖冬の影響による利用客の減少により前年同期を下回る輸送客数と売上になった。また、2020年3月に当社軌道線と富山ライトレール線の南北接続営業にあたり、運行の効率化から富山ライトレール株式会社を吸収合併することとなり、インフラを担う当社の責務は益々大きくなった。
自動車事業は、乗合自動車の路線バス部門が依然として大きな営業損失を計上している。路線ダイヤの見直しやコミュニティバスの受注により収入確保に努め、更には、生活路線維持費補助金を毎期、国、自治体から支援を受けているが、軽油の高騰と運転手不足が経費増大と売上減少の悪循環を招いている状況である。高速バス部門では高山線、新潟線、名古屋線、大阪線は好調に推移しているが、仙台線については競合他社の乗入れにより前年同期を下回った。今年度も新造バスを導入しサービスの向上を図っているが、ソフト面でも満足度を得られるよう今後も努力していく所存である。貸切自動車では大雨や台風の影響が長引き、特に関西方面の観光客が激減し、収益は前年同期を大きく下回る結果となった。収益回復に向け今後営業展開を図っていく。
不動産事業
不動産事業は、不動産分譲業においては分譲団地販売がなく昨年度に引き続き営業損失となった。ここ数年の富山市内の不動産状況はマンション建設のラッシュが続いており、宅地開発への投資は慎重に検討していく必要があると判断している。不動産賃貸業においても営業利益が減少しており、富山市内近隣賃貸物件も空室が目立つ中、当社は積極的なテナント誘致活動を行った結果、2019年4月より1店舗入居している。今後も引き続き誘致活動を行い空室を埋めていく所存である。
建設事業
建設事業は、大きな公共工事事業がなく前年同期を大きく下回る売上高となった。また、建設材料費の高騰と下請け会社の確保が難しくなりつつあり、この影響は東京オリンピック開催まで続くと予想しており、粗利が低くともより多くの受注獲得を行い収益を確保していく所存である。
保険代理事業
保険代理事業は、毎期、減収減益となっており、競合他社が多い中、新規加入者の獲得と継続者の維持が課題であると認識しており、今後も積極的な販促活動を行っていく。
航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業は、北陸新幹線利用の流れが定着化し厳しい経営環境が続いている。また、当社の運行固定経費の削減は難しく、経営の重要課題と考えている。
ホテル業
ホテル業は、2018年4月に富山駅正面に同業他社の新規ホテルが開業したものの、収益は前年同期を上回り依然顕著な伸びを示している。2019年4月には更に富山駅正面に新規ホテルが開業し競争が激化しつつある。今後も、顧客獲得に向け魅力ある商品を打ち出し同業他社との差別化を図り、更なる増収増益を目指す。
自動車整備業
自動車整備業は、修理受注工事の増加により前年同期に比べ増収増益となった。引き続き顧客確保に向けより一層の満足度を得られるようサービス向上を図っていく。
その他
娯楽・スポーツ業は、前年同期と比べボウリングは増収増益となったが、スポーツドーム・エアーズは減収減益となり減損損失を計上する結果となった。エアーズについては、2019年度からテコ入れを行い利用者からの信頼回復に向け鋭意努力していく所存である。
広告代理業は、イベント広告が好調であったことから前年同期に比べ増収増益となった。一過性のもので終わらせないように今後も積極的に営業活動を展開し増収に繋げていく所存である。
物品販売業は、事務機器販売が盛り返したものの、飲食業の一部が営業不振から前年同期に比べ減収減益となった。飲食業の1店舗は本年3月に閉店し、お客様が求めるリーズナブルな飲食店の再開を検討している。
旅行代理店業は、前年同期に比べ増収増益となった。2018年9月から組織体制を見直し収益の回復を図ったものであるが、今後も積極的な営業展開を図り増収に繋げていく所存である。
総括として、当社グループは運輸事業を核とする企業体であり、富山県はマイカー所有率が全国でも高く、地方から首都圏への人口流出が続く中、老朽化施設の更新、バス運転手、鉄軌道運転士の確保、技術職の育成、燃料費高騰への対応等に対し、資金の確保と人員の確保が今後の最優先事項と考えており、長期的な企業の存続に向けた施策と、インフラ事業者としての使命を果たしていく所存である。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」の記載のとおりである。
(契約債務)
2019年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に、1年以内長期未払金は、未払金にそれぞれ含めている。
(財務政策)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備修繕費や販売費及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備の新設と改修等である。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としている。
短期運転資金は自己資金、当社グループ間短期借入及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金は自己資金、金融機関からの長期借入、リース及び補助金を活用し調達している。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務、割賦未払金、未払金を含む有利子負債の残高は5,616,367千円となっている。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は2,480,405千円となっている。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、富山地方鉄道は年度計画に基づき、社長を議長に毎週経営幹部会議を開催し、月次業績や経営計画、個別施策の進捗状況等について報告し、情報の共有化を図るとともに、多面的な対策検討を実施し、経営目標の適切な達成管理を行っている。
また、2018年4月に開催した取締役会において、中期事業計画を示し、多角的な事業へのテコ入れを図り、激変する事業環境の対応に即した経営戦略を推し進めている。また、連結子会社の経営管理については、年度計画に基づく業務執行状況等の報告を受け、その都度指導を行うとともに重要案件は合議稟議制により決裁を行い、地鉄グループ全体として経営基盤を固め、中長期的に発展・存続できる体制づくりを行っている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、政府の経済・金融政策により設備投資の増加や雇用・所得環境の改善により総じて穏やかな回復基調が続いたものの、不安定な海外経済の影響などにより不透明感がある中で推移した。
一方、地方の中小私鉄・バス業界においては、沿線人口の減少や少子高齢化による輸送需要の減退、労働力不足、更には老朽化施設の更新や安全対策費のコスト増が企業収益を圧迫するなど、依然厳しい経営環境が続いている。
このような情勢のもと、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は経営基盤の強化を図るため、積極的な増収策を展開するとともに、利用しやすく魅力的な地域交通の整備・構築に取り組み、様々な施策を展開した。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益11,807,870千円(前年同期比3.2%減)、営業利益47,885千円(前年同期比42.3%減)、経常損失33,992千円(前年同期比は経常利益5,555千円)、親会社株主に帰属する当期純利益99,625千円(前年同期比74.8%減)となった。
なお、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析」及び「第3 設備の状況」については消費税等抜きで記載している。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
また、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。
a.運輸事業
鉄道事業では、本年3月に不二越・上滝線に新駅「栄町駅(県立中央病院口)」を開業し、沿線地域の新規需要の利用促進に繋げた。また鉄道線の各駅に訪日外国人のお客様が安心してご乗車いただけるように、駅番号制「ナンバリング」を導入し、路線図や運賃モニターに表示するなどした。また人気の高い観光列車「アルプスエキスプレス」と「ダブルデッカーエキスプレス」の座席予約をホームページからできるWeb予約受付を開始し、県内外の観光客や訪日外国人客の利便性を高めた。更に、沿線自治体や他社と連携し様々な共同企画・イベントを企画し、利用促進と地域の活性化に努めたほか、人気イベント「ちてつ電車フェスティバル」でオリジナル鉄道グッズを発売するなど、鉄道ファンのニーズを機敏に捉えた営業活動を展開した。一方、施設面においては、本線をはじめ各線にわたり軌道基盤等の整備を実施したほか、列車集中制御装置の更新や上滝線久保踏切の1種化など、輸送安全対策の強化に努めた。
軌道事業では、鉄道線と同様に停留所番号制「ナンバリング」を導入したほか、富山グルメの鱒鮨や甘味処を食べ歩く「ぐるっとグルメぐりクーポン」やレトロ電車を活用したビール電車の運行など各種企画商品の販売促進に努めた。また夏休み、冬休み期間の平日には環状線を増発し輸送繁忙期に応じた利用促進に取り組んだ。施設面では、新富町~県庁前電停間の軌道改良工事を実施し、安全性と乗り心地の改良に努めた。
乗合バス事業では、国際大学付属高校線に高岡ルートの増設や東富山ルートの経路変更を行ったほか、富山短期大学関係路線を増便し学生輸送の増強に取り組んだ。また機動性の高い小型車両を神岡平湯温泉線などに導入し経費削減や乗務員不足に対応し、「ぶりかにバス」や「ぐるっとBUS」などでは観光路線を広くPRしながら営業増進に取り組んだ。また、カラーLED式行先表示機を搭載した大型低床ノンステップバス新車2両を導入し、バリアフリー化の推進に努めた。
都市間高速バスについては、新潟線では繁忙期に計画的な増便運行を実施したほか、東京線では昨年6月に東京発時間のダイヤ改正を行い、富山着後の公共交通の最終時間に接続させるなど利便性の向上を図った。また、山形・仙台線ではサマーキャンペーンの展開や、早期購入割引運賃を導入し、新規需要の開拓に取り組んだ。高速バスの全車両には「無料フリーWi-Fi」の設定を行い、最新の安全装置と充実した車内装備の高速バス新車1両を導入し安全性と快適性の向上に努めた。
貸切バス事業では、日本バス協会が実施する「安全性評価認定制度」において最高ランクの認定を受けている高い安全水準をPRしながら受注の拡大に繋げた。昨年11月には「第31回ねんりんピック富山2018」開催に伴う大型
輸送を滞りなく完遂した。また、世界25カ国1地域が加盟する「世界で最も美しい湾クラブ」の世界総会が本年富山県で開催されることに先駆け、昨年10月に屋根を開放した二階建て「オープントップバス(スカイバス)」で新湊大橋から富山湾を眺める新しい観光スタイルのイベントバスを運行し大盛況を得た。昨年12月には宇奈月温泉発「名水が生み出すとやまの幸めぐり」定期観光バスを運行し、冬の富山の魅力を活かした観光商品の企画と販売促進に努めた。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は、7,719,924千円と前連結会計年度に比べ47,398千円(前年同期比0.6%増)の増収となった。
(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 365 | 0.0 |
営業粁 | 粁 | 93.2 | 0.0 |
客車走行粁 | 千粁 | 4,710 | △4.4 |
乗車人員 | 千人 | 5,984 | 0.5 |
定期 | 〃 | 4,110 | 0.9 |
定期外 | 〃 | 1,873 | △0.1 |
旅客収入 | 千円 | 1,475,716 | 0.2 |
定期 | 〃 | 649,534 | 0.4 |
定期外 | 〃 | 826,139 | 0.1 |
手小荷物収入 | 〃 | 41 | △7.7 |
運輸雑収 | 〃 | 206,167 | 1.7 |
収入合計 | 〃 | 1,681,884 | 0.4 |
乗車効率 | % | 11.67 | 5.5 |
1日平均収入 | 千円 | 4,607 | 0.4 |
1日1粁平均収入 | 〃 | 49.44 | 0.4 |
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)による。
(ロ)軌道事業
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 365 | 0.0 |
営業粁 | 粁 | 7.6 | 0.0 |
客車走行粁 | 千粁 | 840 | △0.1 |
乗車人員 | 千人 | 5,329 | 1.6 |
定期 | 〃 | 2,815 | 4.0 |
定期外 | 〃 | 2,513 | △0.9 |
旅客収入 | 千円 | 665,803 | 0.0 |
定期 | 〃 | 236,584 | 2.2 |
定期外 | 〃 | 429,218 | △1.2 |
運輸雑収 | 〃 | 94,151 | 15.9 |
収入合計 | 〃 | 759,955 | 1.6 |
乗車効率 | % | 22.24 | 2.0 |
1日平均収入 | 千円 | 2,082 | 1.6 |
1日1粁平均収入 | 〃 | 273.95 | 1.6 |
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)による。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 365 | 0.0 |
営業粁 | 粁 | 2,489.5 | 0.2 |
車両走行粁 | 千粁 | 10,083 | 0.5 |
乗車人員 | 千人 | 6,291 | △0.3 |
定期 | 〃 | 2,633 | △0.6 |
定期外 | 〃 | 3,658 | △0.1 |
旅客収入 | 千円 | 2,214,049 | 3.3 |
定期 | 〃 | 445,911 | 0.0 |
定期外 | 〃 | 1,768,138 | 4.2 |
運輸雑収 | 〃 | 367,129 | 4.7 |
収入合計 | 〃 | 2,581,178 | 3.5 |
乗車効率 | % | 19.38 | 15.4 |
1日平均収入 | 千円 | 7,071 | 3.5 |
走行1粁当り収入 | 円 | 255.98 | 3.0 |
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)による。
貸切自動車
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 365 | 0.0 |
車両走行粁 | 千粁 | 1,175 | △11.1 |
乗車人員 | 千人 | 238 | △0.4 |
旅客収入 | 千円 | 506,952 | △7.7 |
運輸雑収 | 〃 | 82,728 | △5.8 |
収入合計 | 〃 | 589,680 | △7.4 |
1日平均収入 | 〃 | 1,615 | △7.4 |
走行1粁当り収入 | 円 | 501.61 | 4.1 |
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
鉄道事業(千円) | 1,681,884 | 0.4 |
軌道事業(千円) | 759,955 | 1.6 |
自動車事業(千円) | 5,444,366 | 0.5 |
調整額(千円) | △166,281 | - |
報告セグメント計(千円) | 7,719,924 | 0.6 |
b.不動産事業
不動産賃貸業においては、賃貸物件の稼働率向上に努めた結果、前年並みとなったが、不動産分譲業においては、積極的な営業展開をしたものの、販売不振により不動産事業の当連結会計年度の営業収益は、500,740千円と前連結会計年度に比べ14,332千円(前年同期比2.7%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
不動産分譲業(千円) | - | - |
不動産賃貸業(千円) | 500,740 | 0.1 |
報告セグメント計(千円) | 500,740 | △2.7 |
c.建設事業
建設事業においては、大型工事の受注減少により当連結会計年度の営業収益は、797,638千円と前連結会計年度に比べ459,381千円(前年同期比36.5%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
建設業(千円) | 797,638 | △36.5 |
報告セグメント計(千円) | 797,638 | △36.5 |
d.保険代理事業
保険代理事業においては、新規顧客の獲得に努めたものの、ネット販売の普及等により依然として厳しい環境にあり当連結会計年度の営業収益は、414,531千円と前連結会計年度に比べ6,934千円(前年同期比1.6%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
保険代理業(千円) | 414,531 | △1.6 |
報告セグメント計(千円) | 414,531 | △1.6 |
e.航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、大連便増便により国際線は好調に推移したものの、国内線の販促業務手数料等各種手数料が減少した結果、当連結会計年度の営業収益は、815,754千円と前連結会計年度に比べ26,890千円(前年同期比3.1%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
航空輸送事業代理業(千円) | 815,754 | △3.1 |
報告セグメント計(千円) | 815,754 | △3.1 |
f.ホテル業
ホテル業においては、充実した館内施設・サービスを積極的にアピールし、国内外からの集客に努めた結果、訪日外国人観光客の増加などにより好調に推移し、当連結会計年度の営業収益は、559,820千円と前連結会計年度に比べ8,090千円(前年同期比1.4%増)の増収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
ホテル業(千円) | 559,820 | 1.4 |
報告セグメント計(千円) | 559,820 | 1.4 |
g.自動車整備業
自動車整備業においては、当社グループ外からの受注拡大に努めた結果、当連結会計年度の営業収益は、865,263千円と前連結会計年度に比べ67,378千円(前年同期比8.4%増)の増収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
自動車整備業(千円) | 865,263 | 8.4 |
報告セグメント計(千円) | 865,263 | 8.4 |
h.その他
その他においては、広告代理業ではイベント等の広告が増加し好調に推移した。一方で、娯楽・スポーツ業においては積極的な営業展開をしたものの伸び悩み、その他事業に含まれる物品販売業の飲食関係が振わず、当連結会計年度の営業収益は、1,908,709千円と前連結会計年度に比べ20,294千円(前年同期比1.0%減)の減収となった。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
娯楽・スポーツ業(千円) | 429,153 | △2.8 |
広告代理業(千円) | 761,507 | 0.3 |
その他事業(千円) | 718,048 | △1.3 |
調整額(千円) | - | - |
その他計(千円) | 1,908,709 | △1.0 |
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、投資活動によるキャッシュ・フローが増加した一方で、営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローが減少した結果、前連結会計年度に比べ371,646千円減少し、当連結会計年度末には2,480,405千円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,401,451千円(前連結会計年度は1,596,535千円の資金を得ている)となった。これは税金等調整前当期純利益が156,858千円と前連結会計年度に比べ455,754千円減少し、仕入債務の減少額が429,057千円(前連結会計年度は311,103千円の増加額)、固定資産圧縮損が303,363千円(前連結会計年度は552,352千円)、たな卸資産の減少額が35,147千円(前連結会計年度は57,384千円の増加額)であった一方で、売上債権の減少額が331,502千円(前連結会計年度は209,261千円の増加額)、減損損失が327,103千円(前連結会計年度は1,125千円)、工事負担金等受入額が410,612千円(前連結会計年度は708,917千円)であったことが主な要因である。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は289,603千円(前連結会計年度は402,780千円の使用)となった。これは有形固定資産の取得による支出が844,066千円と前連結会計年度に比べ51,817千円減少し、工事負担金等受入による収入が554,322千円と前連結会計年度に比べ58,368千円増加したことが主な要因である。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,483,494千円(前連結会計年度は903,348千円の使用)となった。これは借入金の純減額が前連結会計年度に比べ678,282千円減少し、割賦債務の返済による支出が前連結会計年度に比べ96,652千円減少したことが主な要因である。
③ 生産・受注及び販売の実績
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載していない。そのため生産、受注及び販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(1)経営成績等の状況の概要」の「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントごとに経営成績に関連付けて示している。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、各事業部門が攻めを中心に積極的な営業展開を図った営業収益は11,807,870千円(前年同期比3.2%減)となり、営業費は電気料、軽油、建設材料費の高騰を受けながら、経費削減の徹底管理を実施し11,759,985千円(前年同期比2.9%減)となった結果、営業利益は47,885千円(前年同期比42.3%減)、営業外収益の113,404千円と持分法会社の投資損失40,654千円を含む営業外費用195,281千円を加減した経常損失は33,992千円(前連結会計年度は5,555千円の経常利益)となった。これに補助金418,760千円と工事負担金等受入額410,612千円を含む特別利益836,013千円と固定資産圧縮損303,363千円と減損損失327,103千円を含む特別損失645,162千円を加減した結果、税金等調整前当期純利益は156,858千円となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純損失を加減した99,625千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比74.8%減)となった。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、北陸新幹線利用の定着や政府のインバウンド強化策による訪日外国人観光客の増加など県内への交流人口が拡大しつつある中、激変する環境への対応が急務である。また、全国的に慢性化しているバス運転手不足は当社グループも例外でなく、需要に応えられず今後も収益に悪影響を与えると予想している。加えて、バスの軽油の高騰が先行き不透明であり、昨年4月からの電気料金の値上げによる電車動力費、賃貸不動産の電気料の負担は今後も大きく収益を圧迫させると予測している。建設事業においては、建設材料費の高騰により収益へ悪影響を与えると予測している。航空輸送事業代理業においては、北陸新幹線開業から国内便の低迷が続いており今後の収益確保も厳しいものと予測している。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
運輸事業
鉄道事業は、地方私鉄においては93.2㎞の長い営業粁を有し、またトンネル、鉄橋も多数所有する中、維持管理費用は莫大であり、北陸新幹線による交流人口の拡大によって恩恵は受けているものの大きな営業赤字は解消できず、国、自治体から老朽化する設備維持への補助金がなくては事業の存続が厳しい状態が続いている。今後の展望も、鉄道沿線人口の減少に加え、昨年4月から電気料金の値上げにより電車動力費の増大が収支を圧迫させており、運行本数の見直しや走行キロの見直しを図り経費削減を実施しているが今後の事業存続には運賃改定も視野に入れ運行形態の見直しを図る必要があると認識している。また、富山駅付近連続立体交差事業における当社鉄道線の高架化について関係機関と連携し推し進めていく。
軌道事業は、北陸新幹線開業時に軌道線を富山駅まで延伸させたことが利便性の定着につながり、通勤・通学定期は昨年同期を上回る輸送客数と売上を得た。一般定期外についても富山市とのタイアップにより訪日外国人観光客に向けた優待乗車券の利用数が増加したが、暖冬の影響による利用客の減少により前年同期を下回る輸送客数と売上になった。また、2020年3月に当社軌道線と富山ライトレール線の南北接続営業にあたり、運行の効率化から富山ライトレール株式会社を吸収合併することとなり、インフラを担う当社の責務は益々大きくなった。
自動車事業は、乗合自動車の路線バス部門が依然として大きな営業損失を計上している。路線ダイヤの見直しやコミュニティバスの受注により収入確保に努め、更には、生活路線維持費補助金を毎期、国、自治体から支援を受けているが、軽油の高騰と運転手不足が経費増大と売上減少の悪循環を招いている状況である。高速バス部門では高山線、新潟線、名古屋線、大阪線は好調に推移しているが、仙台線については競合他社の乗入れにより前年同期を下回った。今年度も新造バスを導入しサービスの向上を図っているが、ソフト面でも満足度を得られるよう今後も努力していく所存である。貸切自動車では大雨や台風の影響が長引き、特に関西方面の観光客が激減し、収益は前年同期を大きく下回る結果となった。収益回復に向け今後営業展開を図っていく。
不動産事業
不動産事業は、不動産分譲業においては分譲団地販売がなく昨年度に引き続き営業損失となった。ここ数年の富山市内の不動産状況はマンション建設のラッシュが続いており、宅地開発への投資は慎重に検討していく必要があると判断している。不動産賃貸業においても営業利益が減少しており、富山市内近隣賃貸物件も空室が目立つ中、当社は積極的なテナント誘致活動を行った結果、2019年4月より1店舗入居している。今後も引き続き誘致活動を行い空室を埋めていく所存である。
建設事業
建設事業は、大きな公共工事事業がなく前年同期を大きく下回る売上高となった。また、建設材料費の高騰と下請け会社の確保が難しくなりつつあり、この影響は東京オリンピック開催まで続くと予想しており、粗利が低くともより多くの受注獲得を行い収益を確保していく所存である。
保険代理事業
保険代理事業は、毎期、減収減益となっており、競合他社が多い中、新規加入者の獲得と継続者の維持が課題であると認識しており、今後も積極的な販促活動を行っていく。
航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業は、北陸新幹線利用の流れが定着化し厳しい経営環境が続いている。また、当社の運行固定経費の削減は難しく、経営の重要課題と考えている。
ホテル業
ホテル業は、2018年4月に富山駅正面に同業他社の新規ホテルが開業したものの、収益は前年同期を上回り依然顕著な伸びを示している。2019年4月には更に富山駅正面に新規ホテルが開業し競争が激化しつつある。今後も、顧客獲得に向け魅力ある商品を打ち出し同業他社との差別化を図り、更なる増収増益を目指す。
自動車整備業
自動車整備業は、修理受注工事の増加により前年同期に比べ増収増益となった。引き続き顧客確保に向けより一層の満足度を得られるようサービス向上を図っていく。
その他
娯楽・スポーツ業は、前年同期と比べボウリングは増収増益となったが、スポーツドーム・エアーズは減収減益となり減損損失を計上する結果となった。エアーズについては、2019年度からテコ入れを行い利用者からの信頼回復に向け鋭意努力していく所存である。
広告代理業は、イベント広告が好調であったことから前年同期に比べ増収増益となった。一過性のもので終わらせないように今後も積極的に営業活動を展開し増収に繋げていく所存である。
物品販売業は、事務機器販売が盛り返したものの、飲食業の一部が営業不振から前年同期に比べ減収減益となった。飲食業の1店舗は本年3月に閉店し、お客様が求めるリーズナブルな飲食店の再開を検討している。
旅行代理店業は、前年同期に比べ増収増益となった。2018年9月から組織体制を見直し収益の回復を図ったものであるが、今後も積極的な営業展開を図り増収に繋げていく所存である。
総括として、当社グループは運輸事業を核とする企業体であり、富山県はマイカー所有率が全国でも高く、地方から首都圏への人口流出が続く中、老朽化施設の更新、バス運転手、鉄軌道運転士の確保、技術職の育成、燃料費高騰への対応等に対し、資金の確保と人員の確保が今後の最優先事項と考えており、長期的な企業の存続に向けた施策と、インフラ事業者としての使命を果たしていく所存である。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」の記載のとおりである。
(契約債務)
2019年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。
年度別要支払額(千円) | |||||
契約債務 | 合計 | 1年以内 | 1年超3年以内 | 3年超5年以内 | 5年超 |
短期借入金 | 110,000 | 110,000 | - | - | - |
長期借入金 | 4,385,876 | 1,586,790 | 2,219,346 | 572,140 | 7,600 |
リース債務 | 1,108,060 | 432,455 | 573,393 | 95,091 | 7,120 |
未払金 | 3,094 | 3,094 | - | - | - |
割賦未払金 | 9,336 | 9,336 | - | - | - |
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に、1年以内長期未払金は、未払金にそれぞれ含めている。
(財務政策)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備修繕費や販売費及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備の新設と改修等である。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としている。
短期運転資金は自己資金、当社グループ間短期借入及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金は自己資金、金融機関からの長期借入、リース及び補助金を活用し調達している。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務、割賦未払金、未払金を含む有利子負債の残高は5,616,367千円となっている。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は2,480,405千円となっている。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、富山地方鉄道は年度計画に基づき、社長を議長に毎週経営幹部会議を開催し、月次業績や経営計画、個別施策の進捗状況等について報告し、情報の共有化を図るとともに、多面的な対策検討を実施し、経営目標の適切な達成管理を行っている。
また、2018年4月に開催した取締役会において、中期事業計画を示し、多角的な事業へのテコ入れを図り、激変する事業環境の対応に即した経営戦略を推し進めている。また、連結子会社の経営管理については、年度計画に基づく業務執行状況等の報告を受け、その都度指導を行うとともに重要案件は合議稟議制により決裁を行い、地鉄グループ全体として経営基盤を固め、中長期的に発展・存続できる体制づくりを行っている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している。