有価証券報告書-第137期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/07/22 10:05
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147項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、相次ぐ自然災害や消費税率の引き上げなどありましたが、政府の経済・金融政策により設備投資の増加や雇用・所得環境の改善により総じて穏やかな回復基調が続いていました。しかしながら世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響により、生産や個人消費が大きく落ち込み、景気の先行きは予断を許さない深刻な状況となりました。
一方、地方の中小私鉄・バス業界におきましても、沿線人口の減少や少子高齢化による輸送需要の減退、労働力不足、更には老朽化施設の更新や安全対策費のコスト増に加え、新型コロナウイルスの直撃により貸切・高速バスの需要が激減し、企業収益を圧迫する厳しい経営環境へ一変しました。
このような情勢のもと、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は経営基盤の強化を図るため、積極的な増収策を展開するとともに、利用しやすく魅力的な地域交通の整備・構築に取り組みました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益11,986,689千円(前年同期比1.5%増)、営業損失106,465千円(前年同期は営業利益47,885千円)、経常損失491,939千円(前年同期は経常損失33,992千円)、親会社株主に帰属する当期純損失391,394千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益99,625千円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a.運輸事業
鉄道事業では、黒部市の中学校統合に伴い新年度より本線「荻生駅」を多くの生徒が利用することから、昨年12月に駅舎を新築移転し踏切を渡らずに学校へ通えるよう安全に快適な利用に繋がるようにしました。更に東急電鉄より鉄道車両2編成を導入し輸送サービスの強化に努めたほか、老朽化した駅舎の補修を順次計画的に進めました。また沿線自治体や他社と連携し各種フリーきっぷや企画乗車券等の販売促進に努め、昨年4月には黒部市宮野運動公園で開催された大規模コンサートの臨時輸送や関連グッズの発売を行いました。また鉄道線引退車両の写真撮影会や本線、立山線、不二越・上滝線を全線走破する特別企画を実施するなど、「引退記念イベント」を4回に亘り開催したほか、人気イベント「ちてつ電車フェスティバル」では引退車両グッズやオリジナル新商品を発売するなど、鉄道ファンのニーズを的確に捉えた営業活動を展開しました。一方、施設面においては、本線をはじめ各線にわたり軌道基盤等の整備を実施したほか、魚津変電所整流器の更新や立山線日俣踏切の1種化など、輸送安全対策の強化に努めました。
軌道事業では、富山の街中を走る種類に富んだ電車車両を観光資源としてPRし、富山の名産であるます寿しや甘味処を食べ歩きながら市内観光施設を巡る「ぐるっとグルメぐりクーポン」の販売促進や、大手旅行会社のツアー団体が「レトロ電車」を貸切とする受注拡大に取り組みました。施設面では、新富町~県庁前電停間の軌道改良工事を実施したほか、路面電車南北接続に伴い当社と富山ライトレール株式会社のICカードシステムの統合を図りました。更に、各電停の案内放送装置を2ヶ国語対応に改修し、訪日外国人のお客様が安心してご乗車いただけるようにサービスの向上を図りました。
乗合バス事業では、地域や行政と連携し「婦中コミュニティバスすいせん号」やハイエース小型車両による「富山市堀川南地域コミュニティバス」の運行を受託し、地域住民の需要に応じた生活路線の維持と活性化に努めました。また、富山県が進める「とやまロケーションシステム」を導入し、お客様のスマートフォンやパソコンから路線バスのルートや位置情報をリアルタイムに検索できるシステムの運用を開始しました。更に大型低床ノンステップバス新車3両を導入し、左折時や合流の際における最新の安全装備を搭載し車両のバリアフリー化の拡充を図りました。
都市間高速バスにつきましては、共同運行会社と連携を強め昨年12月より京都・大阪線の夜行便をユニバーサルスタジオジャパン(USJ)まで延伸運行し、新規需要の開拓に取り組みました。また、最新の安全装置を搭載し充実した車内装備の高速バス新車2両を導入し安全性と快適性の向上に努めました。しかしながら新型コロナウイルスの影響を受け、3月には東京、名古屋、高山などの高速バスの減便を余儀なくされました。
貸切バス事業では、他社との競合が強まるなか、日本バス協会が実施する「安全性評価認定制度」において最高ランクの「三ツ星」認定を受けている高い安全水準をPRしながら、継続的に県内外の旅行会社へ営業活動を展開し受注の拡大に繋げました。そして富山県観光の新しい魅力の発見と発信に繋げるため、二階建てオープントップバス「スカイバス」を使用し富山市内周遊コースをはじめ様々なコースを企画運行しました。そして昨年10月には「世界で最も美しい湾クラブ」の世界総会開催に合わせ運行し、隠れた富山湾の魅力と景観を国内外に発信し好評を博しました。また、冬期間に宇奈月温泉を訪れる観光客の方々が宇奈月・黒部の観光を満喫できる「ぶらっとくろべ周遊バス」を運行し、冬の富山の魅力を活かし趣向を凝らした観光商品の企画と販売促進に努めました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は、7,407,850千円と前連結会計年度に比べ312,073千円(前年同期比4.0%減)の減収となりました。

(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
項目単位当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3660.2
営業粁93.20.0
客車走行粁千粁4,646△1.3
乗車人員千人5,948△0.5
定期4,1410.7
定期外1,807△3.5
旅客収入千円1,439,615△2.4
定期646,858△0.4
定期外792,659△4.0
手小荷物収入96133.1
運輸雑収230,89211.9
収入合計1,670,507△0.6
乗車効率%11.45△1.9
1日平均収入千円4,564△0.9
1日1粁平均収入48.97△0.9

(注) 乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によります。
(ロ)軌道事業
項目単位当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3660.2
営業粁15.2100.0
客車走行粁千粁8774.4
乗車人員千人5,4251.8
定期2,9203.7
定期外2,505△0.3
旅客収入千円673,7681.1
定期250,1565.7
定期外423,611△1.3
運輸雑収110,60617.4
収入合計784,3743.2
乗車効率%21.24△4.5
1日平均収入千円2,1432.9
1日1粁平均収入254.83△6.9

(注)1.乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によります。
2.当連結会計年度において、営業粁等に著しい変動がありました。これは富山ライトレール㈱を吸収合併したことによるものです。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
項目単位当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3660.2
営業粁2,502.50.5
車両走行粁千粁10,011△0.7
乗車人員千人6,141△2.3
定期2,6540.8
定期外3,486△4.6
旅客収入千円2,169,966△1.9
定期443,919△0.4
定期外1,726,046△2.3
運輸雑収367,2860.0
収入合計2,537,253△1.7
乗車効率%17.93△7.5
1日平均収入千円6,932△1.9
走行1粁当り収入253.43△0.9

(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)によります。
貸切自動車
項目単位当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3660.2
車両走行粁千粁1,1971.8
乗車人員千人224△5.8
旅客収入千円503,556△0.6
運輸雑収77,331△6.5
収入合計580,887△1.4
1日平均収入1,587△1.7
走行1粁当り収入484.95△3.3

(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
鉄道事業(千円)1,670,507△0.6
軌道事業(千円)784,3743.2
自動車事業(千円)5,117,156△6.0
調整額(千円)△164,187-
報告セグメント計(千円)7,407,850△4.0

b.不動産事業
不動産賃貸業においては、賃貸物件へのテナント誘致に努めたものの当連結会計年度の営業収益は、498,452千円と前連結会計年度に比べ2,287千円(前年同期比0.4%減)の減収となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
不動産分譲業(千円)352-
不動産賃貸業(千円)498,100△0.5
報告セグメント計(千円)498,452△0.4

c.建設事業
建設事業においては、富山市内軌道線と富山港線の南北接続事業による受託工事の特需があったことにより、当連結会計年度の営業収益は、1,856,386千円と前連結会計年度に比べ1,058,748千円(前年同期比132.7%増)の増収となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
建設業(千円)1,856,386132.7
報告セグメント計(千円)1,856,386132.7

d.保険代理事業
保険代理事業においては、新規開拓に努めたもののネット販売の普及や他代理店との競争など厳しい環境が続き当連結会計年度の営業収益は、414,660千円と前連結会計年度に比べ129千円の微増となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
保険代理業(千円)414,6600.0
報告セグメント計(千円)414,6600.0

e.航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、国内線及びチャーター便は好調に推移したものの国際線は9月からソウル便の全便運休、3月には新型コロナウイルス感染症の影響による全便欠航により、当連結会計年度の営業収益は、808,530千円と前連結会計年度に比べ7,224千円(前年同期比0.8%減)の減収となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
航空輸送事業代理業(千円)808,530△0.8
報告セグメント計(千円)808,530△0.8

f.ホテル業
ホテル業においては、上期は順調に推移したものの2月以降の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う出控えにより観光客、ビジネス客が大幅に減少し、当連結会計年度の営業収益は、535,695千円と前連結会計年度に比べ24,124千円(前年同期比4.3%減)の減収となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
ホテル業(千円)535,695△4.3
報告セグメント計(千円)535,695△4.3

g.自動車整備業
自動車整備業においては、受注拡大に努めたものの伸び悩み当連結会計年度の営業収益は、782,202千円と前連結会計年度に比べ83,061千円(前年同期比9.5%減)の減収となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
自動車整備業(千円)782,202△9.5
報告セグメント計(千円)782,202△9.5

h.その他
その他においては、娯楽・スポーツ業においてはスポーツジムの競争が激化しており、広告代理業では積極的な営業展開をしたものの企業の広告費削減に歯止めがかからず、当連結会計年度の営業収益は、1,771,869千円と前連結会計年度に比べ136,840千円(前年同期比7.1%減)の減収となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
娯楽・スポーツ業(千円)395,968△7.7
広告代理業(千円)679,304△10.7
その他事業(千円)696,595△2.9
その他計(千円)1,771,869△7.1

② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ364,211千円減少し、当連結会計年度末には2,116,194千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は827,065千円(前連結会計年度は1,401,451千円の資金を得ています)となりました。これは税金等調整前当期純損失が3,367千円(前連結会計年度は156,858千円の税金等調整前当期純利益)、工事負担金等受入額が1,360,411千円(前連結会計年度は410,612千円)、売上債権の増加額が158,723千円(前連結会計年度は331,502千円の減少額)、減損損失が118,632千円(前連結会計年度は327,103千円)、未払消費税等の減少額が34,192千円(前連結会計年度は74,290千円の増加額)であった一方で、固定資産圧縮損が1,190,130千円(前連結会計年度は303,363千円)、仕入債務の増加額が157,989千円(前連結会計年度は429,057千円の減少額)、持分法による投資損失が370,266千円(前連結会計年度は40,654千円の投資損失)であったことが主な要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は358,811千円(前連結会計年度は289,603千円の使用)となりました。これは有形固定資産の取得による支出が1,418,825千円と前連結会計年度に比べ574,758千円増加し、無形固定資産の取得による支出が150,690千円と前連結会計年度に比べ143,851千円増加した一方で、工事負担金等受入による収入が870,097千円と前連結会計年度に比べ315,774千円増加し、連結の範囲の変更を伴う子会社の取得による収入が266,517千円あったことが主な要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は832,464千円(前連結会計年度は1,483,494千円の使用)となりました。これは借入金の純減額が前連結会計年度に比べ606,554千円減少したことが主な要因であります。
③ 生産・受注及び販売の状況
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載しておりません。そのため生産、受注及び販売の状況については、「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントごとに経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、運輸事業を中心に積極的な営業展開を図り上期は順調に売上を伸ばしてきたものの、台風19号により北陸新幹線が長期にわたり運休となった影響を受け秋の行楽シーズンの需要を獲得できず、また記録的な暖冬による公共交通利用者の利用減少、県内スキー客輸送がほぼゼロとなったことに加え、2月からの新型コロナウイルスの影響を受け、高速バス、貸切バスの利用客の激減により運輸事業の売上が前年を大きく下回る結果となりました。一方、建設事業は市内軌道線と富山港線を結ぶ南北接続事業を受託したため前年を大きく上回る売上を計上した結果、営業収益は11,986,689千円(前年同期比1.5%増)となり、営業費は電気料、軽油の値下がりはあったものの、鉄道、軌道の修繕費、建設材料費の高騰等により12,093,155千円(前年同期比2.8%増)となった結果、106,465千円の営業損失となり、営業外収益の112,959千円と持分法による投資損失370,266千円を含む営業外費用498,433千円を加減した経常損失は491,939千円(前連結会計年度は33,992千円の経常損失)となりました。これに補助金441,328千円と工事負担金等受入額1,360,411千円を含む特別利益1,832,622千円と固定資産圧縮損1,190,130千円と減損損失118,632千円を含む特別損失1,344,050千円を加減した結果、3,367千円の税金等調整前当期純損失となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純損失を加減した391,394千円の親会社株主に帰属する当期純損失(前連結会計年度は99,625千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、新型コロナウイルスの収束が見えず鉄道、軌道、乗合バス、高速バス、貸切バス、タクシーの運輸事業は軒並み運行休止や利用客の激減により売上が2020年3月以降、急速に悪化、航空輸送事業代理業は国外、国内全便運航休止状態、ホテル業、娯楽・スポーツ業も休館状態となり、更に、広告代理業もスポンサー離れが如実に表れ、収益の悪化はどこまで落ち込むのか予測できない状況となっております。また、事業を営むうえでの運転資金も急激に悪化しつつあり、緊急的に支援銀行に対し多額の長期運転資金の借入を要請しているところであります。
財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度における流動資産の残高は4,695,903千円となり、前連結会計年度末に比べ427,431千円増加しました。この主な要因は、運輸事業の市内軌道線と富山港線の南北接続事業費を含む工事負担金等受入額の未収金が増加したことであります。
(固定資産)
当連結会計年度における固定資産の残高は17,296,174千円となり、前連結会計年度末に比べ762,859千円減少しました。この主な要因は、投資有価証券の上場株式の評価が下がったことと、持分法適用会社が多額の損失を計上したため関係会社株式が減少したこと、繰延税金資産を取り崩したことであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は12,391,938千円となり、前連結会計年度末に比べ232,819千円増加しました。この主な要因は、有利子負債の圧縮のため借入金を減少させた一方で、運輸事業の市内軌道線と富山港線の南北接続事業工事費を含む未払金が増加したことであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は9,600,139千円となり、前連結会計年度末に比べ568,247千円減少しました。この主な要因は、利益剰余金が大きく減少したことと、投資有価証券の時価評価が下がったため、その他有価証券評価差額金が減少したことであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」の記載のとおりであります。
(契約債務)
2020年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
年度別要支払額(千円)
契約債務合計1年以内1年超3年以内3年超5年以内5年超
短期借入金450,000450,000---
長期借入金3,732,0861,366,6261,902,352444,28418,824
リース債務922,539398,373424,60090,8978,668
割賦未払金108,62622,85446,57539,196-

上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
(財務政策)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備修繕費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備の新設と改修等であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金、当社グループ間短期借入及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金は自己資金、金融機関からの長期借入、リース及び補助金を活用し調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務、割賦未払金、未払金を含む有利子負債の残高は5,213,252千円となっています。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は2,116,194千円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、富山地方鉄道は年度計画に基づき、社長を議長に毎週経営幹部会議を開催し、月次業績や経営計画、個別施策の進捗状況等について報告し、情報の共有化を図るとともに、多面的な対策検討を実施し、経営目標の適切な達成管理を行っております。また、連結子会社の経営管理については、年度計画に基づく業務執行状況等の報告を受け、その都度指導を行うとともに重要案件は合議稟議制により決裁を行い、地鉄グループ全体として経営基盤を固め、中長期的に発展・存続できる体制づくりを行っております。しかしながら、本年2月から急速に新型コロナウイルスが日本はもとより世界規模で発生し収束が見えず経済が疲弊する中で当社グループも例外ではなく、今後の展望は不透明であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響は不確定要素が多く、将来事業計画の見込数値に反映させることが難しいところではありますが、期末時点で入手可能な情報をもとに検証等をしております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
運輸事業
鉄道事業は、地方私鉄においては93.2㎞の長い営業粁を有し、トンネル、鉄橋も多数所有する中、その維持管理費用は収支を圧迫させる大きな要因となっています。一方、北陸新幹線による国内外の交流人口の拡大を受け、国、県、自治体からの補助金を活用し、バリアフリー化、老朽施設の整備、訪日外国人観光客対応整備の充実化を図り、より便利で、安心、安全をアピールするとともに、鉄道沿線自治体と連携し多彩な施策を打ち出し需要喚起を推し進めてまいりました。昨年4月に開催された大規模コンサートをはじめ、小学生の利用を無料とする「こどもの日キャンペーン」や、夏休み期間においては公共交通利用の啓発と富山市から黒部市までの沿線の魅力発見に繋がる「親子でおでかけ事業」を実施し、好調に推移しておりましたが台風19号の影響により北陸新幹線が長期にわたり運休したため、秋の行楽シーズンの需要は全て無くなり、加えて新型コロナウイルスの発生による電車利用客の激減と学生の通学定期払い戻し等を要因として、一気に前年度を上回る大きな赤字と資金の喪失に陥ってしまいました。本年4月には緊急事態宣言が全国に発せられ、更なる収入の激減が続く中でお客様への安心・安全と運転士への安全を重視し常時マスク着用と運転席の防護シートを設置し、3密への取り組み、車内消毒、車内換気の徹底等に日々努力しているところであります。他方では、富山駅付近連続立体交差事業が本年度からいよいよ着工することとなり、関係機関と連携して推し進めてまいります。
軌道事業は、軌道線の富山駅までの延伸の利便性への定着が通勤・通学定期利用の安定した支持を受け、順調に売上を伸ばしている中、2020年3月21日に市内軌道線と富山港線の南北接続直通運転を開始し、更なる利便性による需要を生み出すと期待していた矢先に、新型コロナウイルスの影響を受け本年5月までは、お客様が利用されない厳しい状況が続いております。鉄道同様に運転士の常時マスク着用、運転席の防護シート設置、3密への取り組み、車内消毒、車内換気等を図り、安心・安全をアピールし、お客様への信頼回復に努めているところであります。
自動車事業は、乗合自動車の路線バス部門では富山県呉東地区は売上を維持してきたものの、呉西地区は利用客の減少に歯止めがかからず、路線の廃止、ダイヤの見直しで費用削減を図ってきたところ、新型コロナウイルスの影響で、一気にお客様が利用されない状況となり、この状態は本年4月以降も更に悪化している状態となっており、手の打ちようがない状況であります。当社グループとしては、3密対策、車内消毒、車内換気等の万全の体制であることをアピールしご利用を図るところであります。高速バス部門では東京、仙台、名古屋、大阪、新潟、金沢、高山の7路線を運行しており、本年2月初めまでは前年度を上回る売上で推移しておりましたが、新型コロナウイルスの影響を受け一気に利用が落ち込み3月末には金沢を除き、ほぼゼロとなってしまい、4月以降は運休が続いていました。6月に入り少しずつ複便に向け動き始めておりますが、非常に厳しい経営環境であることに変わりはありません。自動車事業においても運転手の常時マスク着用、防護シート設置、3密への取り組み、車内消毒、車内換気等を図り、安心・安全をアピールし、お客様への信頼回復に努め、少しでも早く正常な経営環境を整えていく所存であります。
不動産事業
不動産事業は、不動産分譲業においては分譲団地販売がなく引き続き営業損失となりました。今後の展望を見据えると、新型コロナウイルスの影響を受けますます景気が悪化するものと予測され、現状を打破する解決策はないと判断しております。不動産賃貸業においては2019年4月に地鉄本社ビルに事務所が1店舗、電鉄富山駅ビルに飲食店が2店舗入居し売上を伸ばしておりましたが、新型コロナウイルスの影響を受け電鉄富山駅ビルに入居中の飲食店、物販店の売上が軒並み悪化し休業をするテナントも出てきており、今後、退店も出てくることが予測され、近隣の同業他社の動向も注視しながら対処してまいります。
建設事業
建設事業は、上期の大型受注工事の完了と下期の南北接続事業の完了に伴い、前年度より10億円以上の売上を伸ばした結果、連結会計年度末の売上を底上げした要因となりました。今後の展望では新型コロナウイルスの影響をどの程度受けるのか不透明ではありますが、堅実に収益確保に向け営業展開を図ってまいります。
保険代理事業
保険代理事業は、増収減益となっており、競合他社が多い中、新規加入者の獲得と継続者の維持が課題であり、新型コロナウイルスの影響を受けお客様との直接対話ができない中で、新たな事業スタイルを模索し顧客の獲得を図ってまいります。
航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業は、北陸新幹線利用の流れが定着し国内便は厳しい経営環境が続いている中、国際便はソウル便が激減したため、エアソウル富山支店が撤退した一方で、中国便、上海便が顕著に売上を伸ばしていましたが、新型コロナウイルスの影響を受け2月から3月にかけ国際便が次々と運休状態に入り、国内便利用者も激減の一途を辿った結果、減収減益となりました。また、本年4月には国内便も全便運休となり今後の展望は、全く予測がつかない状況となっております。
ホテル業
ホテル業は、富山地鉄ホテル㈱が富山駅横に隣接する好立地を生かし、毎年売上を伸ばしてきましたが、2019年4月と12月に相次いで新規ホテルがオープンし、競争が激化しつつある中で新型コロナウイルスの影響によりお客様が激減したため、急激に収支が悪化し、本年5月から6月までは休館とせざるを得ない状態に陥っております。また、黒部観光開発㈱が経営する黒薙旅館も黒部峡谷鉄道のトロッコ電車が新型コロナウイルスの影響で運休となり、同旅館も本年4月末から6月上旬まで休館となってしまいました。今後の展望については、新型コロナウイルスの収束が見えないため全く予測がつかない状況となっております。
自動車整備業
自動車整備業は、車両整備士不足により一般車両整備の需要に応えられず、減収減益となりました。車両整備士不足は売上に直結しており今後の事業運営に大きな支障を及ぼすことから、雇用者確保と事業体系の見直しが急務と認識しております。また、新型コロナウイルスの影響によりグループのバス車両が休車となっていることから、今後バスの整備が激減し収益を圧迫することは避けられない状況になると予測しております。
その他
娯楽・スポーツ業は、ボウリングは本年1月までは前年度を上回る売上で推移していましたが、新型コロナウイルスの影響を受け利用者が激減した結果、減収減益となりました。また、本年4月から5月にかけては休館とし、6月は状況を見ながら一部営業を再開させておりますが今後の見通しは予測できません。スポーツドーム・エアーズは昨年度減損損失を計上し、2019年度から態勢の立て直しと破損した屋根の張替えを昨年8月に予定しておりましたが、抜本的な運営の見直しの遅れと、それによる張替え工事が11月まで延長したことに加え、新型コロナウイルスの影響により利用客が激減したため、2度目の減損損失を計上することとなりました。また、本年4月以降は休館を余儀なくされ5月末まで続いており、6月に状況を見ながら時間短縮で営業を再開させましたが、今後の展望は予測できません。
広告代理業は、減収減益となりました。上期から新聞広告の企画ものが激減しておりましたが、新型コロナウイルスの影響を受け更に、テレビ、ラジオCMから企業が撤退しつつあり、この状況は本年4月以降も続いており先行きが見えない状況となっております。
物品販売業は、減収減益となりました。電鉄富山駅ビルに昨年4月から飲食店を2店舗オープンさせ、合わせて4店舗の飲食店を展開しておりますが新型コロナウイルスの影響を受け、急速に売上が悪化し、本年4月以降は休業としましたが5月以降一部店舗を再開させ、状況を見ながら全店舗の再開を目指していますが、今後の展望は不透明であります。
旅行代理店業は、減収減益となりました。上期は好天にも恵まれ増収増益でありましたが、台風19号の影響、更には、新型コロナウイルスの影響を受け、本年2月以降は売上がない状態が続きました。本年4月以降は、事業を休業させ今なお従業員は自宅待機の状態が続いており、今後の展望は予測できません。
総括として、当社グループは運輸事業を核とする企業体であり、富山県はマイカー所有率が全国でも高く、地方から首都圏への人口流出が続く中、老朽化施設の更新、バス運転手、鉄軌道運転士の確保、技術職の育成、燃料費高騰への対応等に対し、資金の確保と現業者の確保が今後の最優先事項と考えております。加えて、近年の自然災害に対する防災意識を高めるとともに対応策を早急に整備する必要があると認識しております。また、新型コロナウイルスとどう共存しながら事業を守り、インフラ事業者としての使命を果たしていくのかが問われる非常に厳しい年度になると位置付けており、全社一丸となりこの経営難を乗り越える所存であります。