有価証券報告書-第139期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/27 13:36
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139項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、年度を通して新型コロナウイルス感染の波が断続的に押し寄せ、ワクチンの接種が進められたものの、感染力の強い変異株の流行を背景に経済社会活動が制限され、個人消費の低迷を招き景気停滞が長期化し、引続き大変厳しいものとなりました。
地方の中小私鉄・バス業界におきましても、新型コロナウイルス感染拡大に伴う人流の抑制、在宅勤務への移行、観光自粛、会食制限、インバウンド需要消失など前年度と同様の厳しい事業環境が続きました。そして、ロシアによるウクライナへの軍事侵略の影響で、原油価格の高騰に拍車がかかりました。
このような情勢のもと、当社では、鉄道線においては、特急電車を中心に減便を実施し、バス事業では、富山地鉄北斗バス㈱を吸収合併し、運営の効率化に努めました。高速バスにおいては、前年に引続き東京・大阪・名古屋など大都市を往来する路線を中心に、運休や減便を実施し、仙台・山形線を廃止しました。貸切バスにおいては、団体ツアーや学校行事が中止となったことから、最大33両の車両休車を実施するなど、感染状況により変動する利用動向を見極めながら柔軟な運行体制の構築に取り組み、動力費、経費の削減に努めました。
付帯事業におきましても新型コロナウイルスの影響は依然大きく、不動産事業では、地鉄ビルや電鉄富山駅ビル「エスタ」のテナント退店の充足に努めました。ボウリング事業では、SNSで発行する利用券の適用範囲を広げたほか、高校遠足時のボウリング利用の時間対応を柔軟に行いました。
更に、保有する有価証券や遊休地の売却を進め、金融機関からの借入金の圧縮に努めました。また、部門ごとの収支管理の徹底や、残業の抑制などによる経費削減、そして雇用調整助成金など国や富山県並びに沿線自治体の補助金を最大限に活用しながら、公共交通機関として、地域住民の生活路線の確保に全力をあげて取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益7,348,085千円(前年同期は営業収益7,153,866千円)、営業損失1,958,935千円(前年同期は営業損失2,907,809千円)、経常損失1,544,206千円(前年同期は経常損失3,819,438千円)、親会社株主に帰属する当期純利益1,365,755千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失2,996,238千円)となりました。
なお、当連結会計年度より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、前年同期比較は基準の異なる算定方法にもとづいた数値を用いております。そのため、当連結会計年度における経営成績に関する説明は、売上高については前連結会計年度と比較しての前年同期比(%)を記載せずに説明しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a. 運輸事業
鉄道事業では、西武鉄道㈱より購入した車両を改造し、20020形として運行開始し、車内の快適性の向上、ラッシュ時の混雑緩和に努めました。また、県内の小学・中学・高校生を対象に、15名以上の団体を5割引きとする新商品「フラット割引50」を期間限定で販売しました。富山駅付近連続立体交差事業における本線の高架化工事においては、3月に仮1番ホームの一部使用を開始しました。
軌道事業では、全国交通系ICカード(10カード)の利用サービス開始と、とやまロケーションシステムへの運行情報追加により、お客様へのサービス向上に努めました。
乗合バス事業では、地域住民の生活を支える公共交通機関として、運行確保とダイヤの維持に努めるとともに、新港東口線の一部を国立高専射水キャンパス構内経由に、八幡経由四方線を富山まちなか病院前まで延伸したほか、平湯温泉線を廃止するなど、お客様のニーズと利用状況に即した運行経路の整備と生活路線の活性化に努めました。また、富山市と連携し、富山市が推奨するエコ通勤(環境にやさしい交通手段で通勤すること)の促進のため、富山市内の企業へのバス通勤者を対象に、「E―定期券」の割引販売を期間限定で実施しました。
貸切バス事業では、2階建てオープントップバス「スカイバス」を使用し、富山市内周遊コースなどを企画運行しました。富山県による県在住者を対象として運賃を半額とする割引キャンペーンの効果もあり好評を博し、コロナ禍で大打撃を受け停滞する観光需要の回復と富山県観光の新しい魅力の発見、発信に繋げました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は4,584,272千円(前年同期は営業収益4,310,253千円)となりました。
(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
項目単位当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
営業粁93.20.0
客車走行粁千粁4,207△5.3
乗車人員千人4,8142.0
定期3,589△0.5
定期外1,22410.6
旅客収入千円1,019,4753.2
定期564,6460.2
定期外454,7037.1
手小荷物収入1254.9
運輸雑収133,14010.9
収入合計1,152,6154.0
乗車効率%10.108.1
1日平均収入千円3,1574.0
1日1粁平均収入33.884.0

(注)乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によるものです。
(ロ)軌道事業
項目単位当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
営業粁15.20.0
客車走行粁千粁1,1940.0
乗車人員千人6,22912.2
定期3,62810.2
定期外2,60115.1
旅客収入千円730,12710.1
定期303,2207.1
定期外426,90712.3
運輸雑収160,386△14.7
収入合計890,5144.6
乗車効率%18.2612.0
1日平均収入千円2,4394.6
1日1粁平均収入160.514.6

(注)乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によるものです。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
項目単位当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
営業粁2,227.5△11.7
車両走行粁千粁7,763△0.2
乗車人員千人5,0208.9
定期2,5807.6
定期外2,43910.4
旅客収入千円1,306,80013.4
定期435,8399.7
定期外870,96115.3
運輸雑収346,885△4.8
収入合計1,653,6869.0
乗車効率%11.6615.0
1日平均収入千円4,5309.0
走行1粁当たり収入213.009.3

(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)によるものです。
貸切自動車
項目単位当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数3650.0
車両走行粁千粁48266.8
乗車人員千人10495.4
旅客収入千円271,45785.9
運輸雑収27,83428.4
収入合計299,29278.4
1日平均収入81978.4
走行1粁当たり収入620.346.9

(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
鉄道事業(千円)1,152,6154.0
軌道事業(千円)890,5144.6
自動車事業(千円)2,541,4092.3
調整額(千円)△266-
報告セグメント計(千円)4,584,2726.3

b. 不動産事業
不動産事業においては、分譲土地の販売や仲介を積極的に行い、不動産賃貸業においては、賃貸収入や駐車場収入の増加により、当連結会計年度の営業収益は530,241千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
不動産分譲業(千円)39,814663.2
不動産賃貸業(千円)490,4265.3
報告セグメント計(千円)530,24112.6

c. 建設事業
建設事業においては、全ての工事について履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識したことにより、当連結会計年度の営業収益は1,071,468千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
建設業(千円)1,071,46818.7
報告セグメント計(千円)1,071,46818.7

d. 保険代理事業
保険代理事業においては、コロナ禍の中、対面営業の制限やインターネット販売の格安保険商品による他保険会社への乗り換えなど、収益確保は依然として厳しい状況が続いており、当連結会計年度の営業収益は378,270千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
保険代理業(千円)378,270△5.0
報告セグメント計(千円)378,270△5.0

e. 航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う国際線の全便運休や国内線の減便と、収益認識に関する会計基準の適用により純額表示となったことから、当連結会計年度の営業収益は189,429千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
航空輸送事業代理業(千円)189,429△53.9
報告セグメント計(千円)189,429△53.9

f. ホテル業
ホテル業においては、昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い休業を余儀なくされておりましたが、今期はほぼ営業し、客室稼働率も増加したため、当連結会計年度の営業収益は350,608千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
ホテル業(千円)350,60837.6
報告セグメント計(千円)350,60837.6

g. 自動車整備業
自動車整備業においては、昨年度に引き続き修理受注工事が減少し、当連結会計年度の営業収益は537,497千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
自動車整備業(千円)537,497△23.3
報告セグメント計(千円)537,497△23.3

h. その他
その他においては、娯楽・スポーツ業では、昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、時短営業や休業を余儀なくされておりましたが、当年度は時短営業のみであったことに加えて緩やかな回復基調となり、増収となりました。広告代理業においては、積極的に販促活動を行った結果、広告の取扱いが増加傾向に転じました。その他事業に含まれる物品販売業では、昨年度下期に飲食店3店舗が閉店しており、旅行代理店業においては依然として、一般団体と海外旅行の取扱いが激減している状況が続いていたことから、減収となりました。また、広告代理業とその他事業において、収益認識に関する会計基準の適用により純額表示となったことから、当連結会計年度の営業収益は609,301千円となりました。
(業種別営業収益)
業種別当連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前年同期比(%)
娯楽・スポーツ業(千円)308,44126.4
広告代理業(千円)188,199△61.7
その他事業(千円)112,660△45.7
その他計(千円)609,301△35.4

②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ1,149,429千円増加し、当連結会計年度末に5,224,001千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は811,159千円(前連結会計年度は745,166千円の使用)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が1,667,206千円(前連結会計年度は2,431,257千円の税金等調整前当期純損失)、新型コロナウイルス感染症に係る助成金の受取額が1,336,037千円(前連結会計年度は675,311千円)、賞与引当金の増加額が47,886千円(前連結会計年度は92,826千円の減少額)、仕入債務の減少額が79,995千円(前連結会計年度は185,102千円の減少額)、工事負担金等受入額が215,740千円(前連結会計年度は317,364千円)であった一方で、固定資産売却益が1,402,413千円(前連結会計年度は6,940千円の売却損)、持分法による投資損失が63,741千円(前連結会計年度は1,307,935千円の投資損失)、契約資産の増加額が313,145千円、投資有価証券売却益が200,583千円(前連結会計年度は45,357千円の売却損)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は2,265,751千円(前連結会計年度は239,074千円の獲得)となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入が1,627,889千円と前連結会計年度に比べ1,620,641千円増加したことや、工事負担金等受入による収入が1,844,999千円と前連結会計年度に比べ729,972千円増加したこと、有形固定資産の取得による支出が1,553,614千円と前連結会計年度に比べ259,377千円増加したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,927,481千円(前連結会計年度は2,464,470千円の獲得)となりました。これは主に借入金の純減額が1,602,417千円(前連結会計年度は2,893,374千円の純増額)であったこと等が主な要因であります。
③生産・受注及び販売の状況
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載しておりません。そのため生産、受注及び販売の状況については、「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントごとに経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、各事業部門において新型コロナウイルス感染症の蔓延による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令、変異株の出現等により経済活動の活発化は抑えられ極めて厳しい状況となった結果、営業収益は7,348,085千円(前年同期は7,153,866千円)となりました。一方、営業費は原油を中心としたエネルギー価格の急上昇により動力費が増加する中、設備投資の縮小や徹底的なコスト削減に努め、9,307,021千円(前年同期は10,061,676千円)となった結果、1,958,935千円の営業損失となり、雇用調整助成金505,874千円を含む営業外収益の605,563千円と持分法による投資損失63,741千円を含む営業外費用190,833千円を加減した経常損失は1,544,206千円(前年同期は3,819,438千円の経常損失)となりました。これに固定資産売却益1,403,396千円と、新型コロナウイルス感染症に係る助成金1,000,362千円を含む特別利益3,377,816千円と固定資産圧縮損137,344千円を含む特別損失166,403千円を加減した結果、1,667,206千円の税金等調整前当期純利益となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額並びに非支配株主に帰属する当期純損失を加減した1,365,755千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期は2,996,238千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、新型コロナウイルス感染症拡大による影響が長期化する中、ワクチン接種が順調に進み、段階的な行動制限の解除がされ、景気回復に期待が持てる一方、インバウンド需要の回復が見込めないことや、感染者の再拡大の恐れが懸念されております。加えて、原油価格の高騰や物価上昇基調の中、バスの動力費、電車・賃貸ビルの電力費、建設事業における建設材料費等、事業環境の厳しさが増していくと予測しております。
財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度における流動資産の残高は7,479,056千円となり、前連結会計年度末に比べ1,110,930千円増加しました。この主な要因は運転資金の確保として保有する資産を売却したことや、新型コロナウイルス感染症に係る助成金により現金及び預金が増加したことであります。
(固定資産)
当連結会計年度における固定資産の残高は15,362,965千円となり、前連結会計年度末に比べ516,588千円増加しました。この主な要因はコロナ禍の中、先行き不透明なことから運転資金の確保として土地や投資有価証券を売却した一方で、富山駅付近連続立体交差事業に伴い建設仮勘定が増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は14,927,076千円となり、前連結会計年度末に比べ402,436千円増加しました。この主な要因は新規借入金を抑制し借入金の圧縮に努めた一方で、富山駅付近連続立体交差事業に係る長期前受工事負担金が増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は7,914,946千円となり、前連結会計年度末に比べ1,225,082千円増加しました。この主な要因は新型コロナウイルス感染症に係る助成金の増加や固定資産の売却により利益剰余金が大きく増加したことによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」の記載のとおりであります。
(契約債務)
2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
年度別要支払額(千円)
契約債務合計1年以内1年超3年以内3年超5年以内5年超
長期借入金5,473,042989,8571,566,5141,203,0021,713,669
リース債務286,703152,325118,89414,3481,135
割賦未払金62,62923,43339,196--

上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
(財務政策)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備修繕費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備の新設と改修等であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金、当社グループ間短期借入及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金は自己資金、金融機関からの長期借入、リース及び補助金を活用し調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務、割賦未払金を含む有利子負債の残高は5,822,376千円となっております。 また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は5,224,001千円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、富山地方鉄道は年度計画に基づき、社長を議長に毎週経営幹部会議を開催し、月次業績や経営計画、個別施策の進捗状況等について報告し、情報の共有化を図るとともに、多面的な対策検討を実施し、経営目標の適切な達成管理を行っております。また、連結子会社の経営管理については、年度計画に基づく業務執行状況等の報告を受け、その都度指導を行うとともに重要案件は合議稟議制により決裁を行い、地鉄グループ全体として経営基盤を固め、中長期的に発展・存続できる体制づくりを行っております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の長期化に加え、資源価格の高騰もあり、当社グループが受ける影響は計り知れず、今後の展望は不透明であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響は不確定要素が多く、将来事業計画の見込数値に反映させることが難しいところではありますが、期末時点で入手可能な情報をもとに検証等をしております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
運輸事業
鉄道事業は、地方私鉄において93.2㎞の長い営業粁を有し、また、トンネル・鉄橋も多数所有する中、維持管理費用は莫大であります。また、2020年7月に発生した脱線事故に対し、国土交通省の運輸安全委員会より鉄道事故調査報告書が発表され、安全確立と信頼回復が急務であり、更なる設備投資が必要とされており、国、自治体からの補助金がなくては事業の存続が厳しい状態が続いております。今後の展望としては、鉄道沿線の人口減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響拡大・長期化により、鉄道利用者の減少に歯止めが利かない状況であり、運賃改定、運行形態、勤務体系の見直しや、車両管理、施設管理体制の見直しを早急に整備し、収支改善に努める一方、沿線自治体と協議を継続し、これからの鉄道事業のあり方を模索する所存であります。
軌道事業は、富山駅周辺が賑わう中、2020年3月21日に市内軌道線と富山港線との南北接続の効果がようやく出始めております。又、2021年10月から全国交通系ICカード(10カード)の利用サービスも開始されており、今後の新型コロナウイルス感染症の動向が見通せないものの、利便性のアピールに努め、事業運営に努めるところであります。
自動車事業は、乗合自動車の路線バス部門においては、新型コロナウイルス感染症の影響から、ある程度までは回復してきている状況ではありますが、路線別収支状況によっては、路線の再編も含め改革を進めてまいります。高速バス部門においては、新型コロナウイルス感染症が流行して以来、出張やレジャー等の都道府県をまたぐ移動の自粛が定着しており、回復の糸口が見えない状況であります。今後は、需要に応じたきめ細かな運行体制を構築し、建て直しを図ってまいります。貸切バス部門においては、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、インバウンド需要の消失や団体旅行の自粛により、需要が伸び悩んでいる状況でありますが、事業縮小や撤退も視野に入れ、今後状況に応じた運行体制を図ってまいります。当社グループとしては、今後も車内の3密対策、車内消毒、車内換気等の万全な体制を維持し、お客様の信頼を得る所存であります。
不動産事業
不動産宅造事業は、固定資産から流動化した分譲土地を加えて積極的に販売し収益増加を図ります。不動産賃貸業においては、アフターコロナを見据え、好立地条件をPRし、テナントの誘致・充足に努め、収益向上を図ってまいります。
建設事業
建設事業は、人材不足による工期の遅れや、原材料の価格高騰により、収益に悪影響を与えると予想されますが、損益管理を徹底し、収益を確保してまいります。
保険代理事業
保険代理事業は、コロナ禍での厳しい営業活動環境のなかで、顧客のニーズにあった商品販売を積極的に行い、新規開拓に努めてまいります。
航空輸送事業代理業
航空輸送代理業は、航空業界全体が新型コロナウイルスの影響で甚大な影響を受けており、先行きが見通せない状況です。富山空港においては国内線のみの運航で、国際線については運航再開の目途が立っておらず、収支改善策を立てようもありません。今後の運営については、アフターコロナを見据えて、関係各所と協議する段階であると考えております。
ホテル業
ホテル業は、度重なる緊急事態宣言の発令により、極めて厳しい状況での営業活動となりました。今後の展開としましては、好立地条件を前面に同業他社との差別化を図り、お客様に選んで貰えるようサービスの向上を図ります。
自動車整備業
自動車整備業は、新型コロナウイルス感染症が沈静化しつつあるものの、依然として高速バスや貸切バスの稼働に増加が伴わず、車両点検・修理の受託についても増加が見込めないことから、新規顧客の開拓を図り増収に繋げてまいります。
その他
娯楽・スポーツ業は、富山地鉄ゴールデンボウルについては、個人客の利用は回復しつつあり、法人や団体客の利用にも積極的にPR展開し、集客に努めてまいります。一方、スポーツドームエアーズについては、施設維持費が増大する中、利用者の回復が見通せず、事業継続の可否について検討しているところであります。
広告代理業は、コロナ禍からの回復に伴う景況感や消費者心理の改善により、広告業界全体に明るい兆しが見え始めております。今後は、時代の流れを先読みし、顧客のニーズに合った事業展開を図ってまいります。
物品販売業は、ウィズコロナを見据え、感染対策に万全を尽くし、お客様が安心できる環境を提供してまいります。
旅行代理店業は、個人旅行の増加が顕著である一方、団体旅行についてはほぼ学校団体に限られており、法人等の一般団体や企画旅行については新型コロナウイルスへの警戒感が未だ強く、低調な状況であります。しかしながら、ワクチン接種の浸透や、コロナ規制の緩和等がマスコミ等で取り沙汰され、旅行需要回復への機運が高まりつつあることから、魅力ある商品を企画し、積極的な営業展開を図ってまいります。
総括として、当社グループは運輸事業を核とする企業体であり、富山県はマイカー所有率が全国でも高く、地方から首都圏への人口流出が続く中、老朽化施設の更新、バス運転手や鉄軌道運転士の確保、技術職の育成への対応等に対し、資金の確保と人材の確保・育成が今後の最優先事項と考えております。
加えて、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、生活交通維持の使命と今後のあるべき姿を、官民一体となって知恵を絞り、経営難を乗り越える所存であります。また、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、安定的な事業運営を図るため、早急な抜本的改革と中・長期的な改革を推し進めるべく、中期計画を策定しました。今後、この計画を円滑に推し進めるため、関係各所と更なる連携を密にし、交通インフラ事業者として使命を果たし、経営難を乗り越える所存であります。