有価証券報告書-第141期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍収束後の経済活動の正常化が進み景気回復への期待が高まりましたが、ウクライナや中東情勢等の地政学リスクの高まりによる資源高騰や記録的な円安の進行、更には2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」が北陸地方の地域経済に打撃を与えるなど、先行き不透明で厳しい状況が続きました。
地方の中小私鉄・バス業界におきましては、コロナ禍中の在宅勤務の定着化などから地元客の需要が完全には回復しない中、一方でインバウンドを含めた観光需要の回復が見受けられるものの、著しい運転手不足が足枷となり、貸切バスの受注を制限せざるを得ないなどの大変厳しい事業環境が続きました。
このような情勢のもと、当社ではコロナ禍からの回復と経営基盤の強化を図るため、積極的な増収策を展開し収益の確保に努めるとともに、富山市双代町の富山自動車営業所を移転し、富山市牛島本町の西部自動車営業所との統合を実施することで、要員の効率化や回送時分の削減を行うなど経費の削減ならびに業務の効率化に資する取り組みにも全力を傾注してまいりました。
また、2023年4月11日に発生した保線作業中の社員の死亡事故を厳粛に受け止め、事故発生直後から早急にとるべき対策を行い、4月11日を「安全の誓いの日」と定め役職員一丸となって、このような事故を二度と起こさないよう安全を第一に再発防止に全力で取り組んで参りました。これからも関係機関のご指導のもと、「安全は輸送の最大の使命」であることを肝に銘じ、再発防止と安全対策に万全を期してまいります。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益9,465,022千円(前年同期比3.9%増)、営業損失905,913千円(前年同期は営業損失515,171千円)、経常損失483,498千円(前年同期は経常損失457,520千円)、親会社株主に帰属する当期純利益1,240,071千円(前年同期比160.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a. 運輸事業
運輸事業においては、鉄道事業では2023年4月に実施したダイヤ改正において、前連結会計年度にて一時的に運行を再開した電鉄富山~立山間の特急列車および休日の宇奈月温泉発立山行き特急列車の運行期間を夏季ダイヤ期間通期に拡大し、また、新黒部駅にて北陸新幹線との接続時間の短縮と速達性を高めたエリア特急「くろべ」の運行を再開するとともに、昼間帯ダイヤの等間隔化、上市行き最終列車の繰り下げ、朝ラッシュ時の上り急行列車に特定停車駅を設定するなどいたしました。更に、「とやまロケーションシステム」へリアルタイム運行情報の提供を行うなど、観光客回復への対応と利便性向上を図りました。その他、「立山黒部ジオパーク写真ギャラリー号」や宇奈月温泉開湯100周年を記念した「記念ギャラリー号」と「記念ラッピング電車」の運行を継続し、沿線観光地への誘客PRに努めました。
施設面においては、鉄道線橋梁補修および橋梁架け替え工事、踏切の連接軌道更新工事、軌条および枕木交換工事、第4種踏切の第1種化格上げ工事、軌道線の軌道改良工事など安全対策を進めました。
富山駅付近連続立体交差事業における本線の高架化工事においては、高架橋の基礎工事、高架駅整備に向けた改札口の移設等を進めました。
自動車事業では、乗合バス事業においては、富山地方鉄道㈱では、2023年4月に実施したダイヤ改正にて富山駅前~中央病院線を新設し中央病院へのアクセス向上を図るなど、地域住民の生活を支える公共交通機関として運行確保に努めるとともに、2階建てオープントップバス「スカイバス」を使用した運行、宇奈月温泉~立山室堂線「アルペンライナー」の運行、「富山ぶりかにバス」の運行を行い県内観光の需要回復に対応しました。また、10月からは富山駅前~笹津線において朝の通勤時間帯にファストバス(速達便)の実証運行を実施いたしました。加越能バス㈱では、2023年4月に利用状況に合わせてダイヤや運行経路の見直しを行ったダイヤ改正を実施いたしました。また、観光路線「世界遺産バス」、「わくライナー」は一部減便、運休を継続しつつも、県内観光の需要を見極めながら運行いたしました。その他、インバウンド需要が高い世界遺産バス車両へクレジットカードのタッチ決済システムの導入や、南砺市を舞台としたアニメーション作品のラッピングを施すなど、各関係先と連携しながら利用促進に努めました。一方で、「令和6年能登半島地震」の発生を受けて、「富山ぶりかにバス」、「わくライナー」が約1ヶ月に渡って運休するなどの影響がありました。
高速バス事業においては、富山地方鉄道㈱では、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて休止していた富山~白川郷・高山線の運行を2023年4月より再開し、また、夏季期間には首都圏から立山黒部アルペンルートや立山登山への利用者の需要喚起のために東京~立山室堂線を新たに運行し、氷見・高岡・富山~東京線においては上市スマートインターバス停を新設するなど営業増進に努めました。加越能バス㈱では、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて減便していた高岡~白川郷・高山線を2023年12月より増便し、また、砺波~金沢線を「三井アウトレットパーク北陸小矢部」経由にすることで新たな需要の掘り起こしに務めました。しかし、著しいバス運転手不足により、2023年8月には加越能バス㈱は氷見・高岡・富山~東京線の共同運行から撤退し、富山地方鉄道㈱は2023年12月からは富山~京都・大阪線の昼行便の運休、2024年3月には富山~金沢線の廃止を余儀なくされました。
貸切バス事業では、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、観光需要が回復したものの、著しいバス運転手不足の影響を受けて、乗合バスの運行確保を優先し貸切バスの受注制限を行ったことや、第4四半期には「令和6年能登半島地震」によって大量のキャンセルが生じたこともあり、富山地方鉄道㈱、加越能バス㈱とも稼働は前連結会計年度を下回る結果となりました。
MaaS(マース)アプリ「my route(マイルート)」においては、沿線の文化施設をお得に巡る「まちなかぐるっとアートチケット」の発売、軌道線の運行情報機能の追加など、付加価値を高め、デジタル乗車券の普及に努めました。
その他、夏休み期間中に沿線市町村と共同で小学生を対象に電車・バス運賃を無料とする「親子でおでかけ事業」を実施し、公共交通利用の啓発と沿線の魅力発見に繋げました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は6,064,713千円(前年同期比9.8%増)となりました。
(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
(注)乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によるものです。
(ロ)軌道事業
(注)乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によるものです。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)によるものです。
貸切自動車
(業種別営業収益)
b. 不動産事業
不動産事業においては、電鉄富山駅ビル「エスタ」への新規テナントの入居や、既存テナントの店舗拡張による賃貸収入の増加、加越能バス㈱における社有地の新規賃借契約の締結があり、増収となりました。一方で、不動産分譲業では積極的に販売促進に努めたものの、分譲地の売却が無かったことから大幅な減収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は516,372千円(前年同期比26.2%減)となりました。
(業種別営業収益)
c. 建設事業
建設事業においては、国内企業の設備投資需要の増加を受けて受注工事が増加したことに加えて、2023年5月には富山駅付近連続立体交差事業の電鉄富山駅および本線高架化の本体工事が着工したことや、2023年11月の富山地方鉄道㈱におけるバス営業所の移転工事もあり、増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は1,744,257千円(前年同期比16.6%増)となりました。
(業種別営業収益)
d. 保険代理事業
保険代理事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響で依然として対面での営業が難しく、ダイレクトメールやオンラインを活用して顧客との接点を増やすなど、積極的な販売活動に努めたものの、インターネット保険の普及や人口減少、少子高齢化の影響を受けた個人保険の新規契約者数の減少や、保険料率の改定による手数料収入の減少が影響し、減収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は349,907千円(前年同期比4.4%減)となりました。
(業種別営業収益)
e. 航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅行需要、ビジネス需要の回復や、富山空港における海外からの航空便の受け入れ再開、訪日外国人旅行者の増加などで航空便利用者が回復し、大幅な増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は307,757千円(前年同期比38.7%増)となりました。
(業種別営業収益)
f. ホテル業
ホテル業においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅行需要、ビジネス需要の回復や、訪日外国人旅行者の増加などで、客室稼働率が増加しました。第4四半期には「令和6年能登半島地震」の発生による北陸地方への旅行需要の減少や、富山地鉄ホテル㈱において館内設備の大規模改修工事に伴う全館休業の影響があったものの、年間を通しては増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は494,226千円(前年同期比11.3%増)となりました。
(業種別営業収益)
g. 自動車整備業
自動車整備業においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による高速バス、貸切バスの需要回復によって、グループ内外での取引が増加したことにより、増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は536,451千円(前年同期比17.9%増)となりました。
(業種別営業収益)
h. その他
娯楽・スポーツ業では、富山地鉄ゴールデンボウルにおいて個人利用客の増加や料金改定による増収があった一方で、第4四半期に「令和6年能登半島地震」の発生によって、施設の損傷による休業を余儀なくされたことや、加越能バス㈱において前連結会計年度にスポーツドーム・エアーズが閉館した影響が大きく、年間を通しては減収となりました。
広告代理業では、新聞、テレビ等のマスメディア広告が低調だったものの、ラッピング広告が堅調に推移したことや、新型コロナウイルス感染症の5類移行による各種イベントの再開などによって、年間を通しては増収となりました。
その他事業に含まれる物品販売業においては、物価高騰による個人消費の落ち込みの影響はあったものの、法人向けにおいてコロナ禍での買い控えからの回復や、夏の記録的猛暑による季節商品の大幅な売り上げ増加によって増収となり、旅行代理店業においては、第4四半期に「令和6年能登半島地震」による北陸地方への旅行需要の減少の影響を受けたものの、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅行需要の回復によって、年間を通しては増収となりました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は837,389千円(前年同期比16.0%増)となりました。
(業種別営業収益)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ578,223千円減少し、当連結会計年度末に3,754,643千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,263,468千円(前連結会計年度は879,466千円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が1,322,981千円(前連結会計年度は664,066千円)、減価償却費が604,004千円(前連結会計年度は679,454千円)、固定資産売却益が1,177,750千円(前連結会計年度は5,579千円の固定資産売却損)、売上債権の減少額が450,593千円(前連結会計年度は616,260千円の増加額)であった一方で、工事負担金等受入額が732,111千円(前連結会計年度は3,934,562千円)、固定資産圧縮損が1,253,915千円(前連結会計年度は3,845,514千円)、契約資産の増加額が368,319千円(前連結会計年度は287,520千円の減少額)、法人税等の支払額が132,765千円(前連結会計年度は354,440千円)などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は869,286千円(前連結会計年度は602,027千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入が1,241,012千円(前連結会計年度は16,804千円)、工事負担金等受入による収入が2,651,053千円(前連結会計年度は1,531,749千円)であった一方で、有形固定資産の取得による支出が4,703,436千円(前連結会計年度は2,174,409千円)などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は972,404千円(前連結会計年度は1,168,573千円の使用)となりました。これは主に借入金の純減額が866,255千円(前連結会計年度は989,857千円の純減額)、リース債務の返済による支出が82,421千円(前連結会計年度は155,282千円の支出)などによるものであります。
③ 生産・受注及び販売の状況
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載しておりません。そのため生産、受注及び販売の状況については「① 財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントごとに経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の営業収益は9,465,022千円(前年同期は9,105,288千円)となりました。これは、主に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に移行したことに伴う観光需要、ビジネス需要の増加や、訪日外国人旅行者の増加によるものであります。
一方、当連結会計年度の営業費は10,370,936千円(前年同期は9,620,460千円)となりました。これは、主に不安定な中東情勢や記録的な円安による原油価格、仕入価格の増加や、電気料金の値上げに伴う動力費、水道光熱費の増加によるものであります。
その結果、営業収益から営業費を差し引いた営業損益は905,913千円の営業損失(前年同期は515,171千円の営業損失)となり、持分法による投資利益435,979千円を含む営業外収益561,004千円と支払利息70,641千円を含む営業外費用138,589千円を加減した経常損失は483,498千円(前年同期は457,520千円の経常損失)となりました。
これに、固定資産売却益1,178,480千円、補助金1,251,462千円と、工事負担金等受入額732,111千円、新型コロナウイルス感染症に係る助成金116,957千円を含む特別利益3,279,012千円と固定資産圧縮損1,253,915千円を含む特別損失1,472,532千円を加減した結果、1,322,981千円の税金等調整前当期純利益となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を減じた親会社株主に帰属する当期純利益は1,240,071千円(前年同期は475,333千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、コロナ禍からの反動や北陸新幹線金沢~敦賀間開業などによる観光需要の増加、円安を背景としたインバウンド需要に大きな期待が持てる一方、日本社会における深刻な問題である人口減少、人手不足による競争力の低下や成長機会の損失、人件費の高騰、長期化する不安定な国際情勢や円安による原油高をはじめとした全般的な物価高騰による仕入価格や動力費の上昇などが、企業収益を圧迫することとなり、依然として事業環境は厳しいと予測しております。
b.財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度における流動資産の残高は7,254,622千円となり、前連結会計年度末に比べ1,269,810千円減少しました。この主な要因は、工事負担金等受入額や補助金等による未収金が減少したことであります。
(固定資産)
当連結会計年度における固定資産の残高は16,882,941千円となり、前連結会計年度末に比べ2,681,712千円増加しました。この主な要因は、富山駅付近連続立体交差事業における本線の高架化工事において、建設仮勘定の増加によるものであります。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は14,085,281千円となり、前連結会計年度末に比べ105,432千円減少しました。この主な要因は、新規借入金や新規リースを抑制し、負債の圧縮に努めたことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は10,052,282千円となり、前連結会計年度末に比べ1,517,334千円増加しました。この主な要因は、利益剰余金が増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」の記載のとおりであります。
(契約債務)
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
(財務政策)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備修繕費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備の新設と改修等であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資や長期運転資金は自己資金、リース及び補助金を活用し調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務、割賦未払金を含む有利子負債の残高は3,751,221千円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は3,754,643千円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[運輸事業]
当社グループが主に事業展開を行う富山県は、全国的にもマイカー所有率が高く、また、人口減少や少子高齢化も進んでおり、厳しい経営環境が続いております。新型コロナウイルス感染症の5類移行による行動制限の撤廃や、記録的な円安による訪日外国人旅行者の増加などによって定期外旅客人員は増加しているものの、人口減少に加えてコロナ禍による生活様式の変化もあり、鉄道利用の多くを占める定期旅客人員は減少しているため、利用者数はコロナ禍以前には戻っておりません。
当社の鉄道事業は、中小私鉄において93.2kmの営業粁を有しており、駅舎、鉄橋、トンネル等、多くの設備を自社で保有しております。これらの設備の維持、管理、補修に係る費用は莫大で、また、老朽化も進んでいることから増加傾向にあります。加えて、電力料金の高騰による動力費の増加が、費用の増加に拍車をかけております。
当社では、運行の効率化やデジタル化の推進等による経費の削減と、企画商品の販売や沿線資源の活用、イベントの開催など、営業施策による増収策を投じて収支の改善を図っております。しかし、この状況を一民間企業である当社の経営努力だけで改善することは厳しく、国や自治体の支援がなくては事業の存続が厳しい状況となっております。
当社の軌道事業は、市内軌道線と富山港線との南北接続の利便性の浸透や、「マルート」等の開業による富山駅周辺の再開発により、利用者数は着実に増加しております。しかし、電力料金の高騰による動力費の増加が、収支に大きな影響を及ぼしております。そのような状況の中、営業施策や沿線自治体との連携などで更なる利用者数の拡大や、ラッピング広告の拡大などで営業収益の増加を図ることが今後の課題であると認識しております。
当社グループの自動車事業は、路線バスは鉄道事業と同様、人口減少や少子高齢化の影響を受けているものの、高速バスや貸切バスは新型コロナウイルス感染症の5類移行によって利用者数は回復傾向にあります。しかし、全国的な問題となっているバス運転手不足の影響は、当社グループにおいても例外ではなく、路線バスの運行を確保するために高速バスの運休や貸切バスの受注制限を行うなど、需要に応えられない状況が生じており、自動車事業の収支に大きな影響を及ぼしております。
当社グループでは、入社支度金の増額や退職者に対する「カムバック制度」などで運転手の採用・育成に努めておりますが、運転手不足の解消には至っておりません。加えて、2024年4月1日からはバス運転手の改善基準告示が改正されたことで、バス運転手不足はより一層厳しさを増しております。当社グループでは、生活路線を確保すべく試行錯誤を重ねておりますが、この状況が改善されない場合、路線バスの大幅な運行形態の見直しを迫られる可能性があります。
[不動産事業]
不動産事業は、コロナ禍を受けたリモートワークの拡大によるオフィス需要の減少や、オンラインショッピングの拡大による実店舗需要の減少に加えて、国内の金融政策の転換により金利が上昇局面にあることから、今後はより厳しい経営環境が予想されます。そのような状況の中、市場のニーズに応えて不動産商品の販売やテナントの誘致等に努め、収益向上を図ることが今後の課題であると認識しております。
[建設事業]
建設事業は、コロナ禍で抑えられていた国内設備投資需要が回復したことで、受注工事が増加しており、営業収益は増加しております。しかし、物価高騰による材料費等、売上原価の増加が損益に影響を及ぼしていることに加えて、建設作業員の不足による受注工事の制限や外注費の増加もあり、これらの問題への対処が課題であると認識しております。
[保険代理事業]
保険代理事業は、当社グループが主力とする自動車保険は人口減少や若い世代を中心に車離れが進み、新規契約者数が減少しており、減収傾向が続いております。今後は、自動車保険を重視とする営業体制からの転換を図り、自然災害の激甚化により需要が増加している損害保険や地震保険など、顧客のニーズにあった商品販売を行い、増収へ転換することが課題であると認識しております。
[航空輸送事業代理業]
航空輸送事業代理業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行による航空便利用者の増加や、富山空港における国際線の復便、訪日外国人旅行者の増加により、営業収益は大幅に増加しております。しかし、富山空港の利用者数は北陸新幹線開業前と比べて大幅に減少している状況に変わりはなく、航空会社や自治体などと連携して富山空港の利用者数を更に増加させることが課題であると認識しております。
[ホテル業]
ホテル業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行や訪日外国人旅行者の増加などで、営業収益は増加しております。しかし、富山駅周辺ではホテルの新規開業が相次いでおり、競争が激しくなっております。競争が激しくなる中、お客様のニーズに応えたサービスやおもてなしの提供を続けていくことが、今後の課題であると認識しております。
[自動車整備業]
自動車整備業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行によって高速バスや貸切バスの需要が回復し、営業収益は増加しております。しかし、物価高騰による費用の増加や、整備士不足による外注費の増加で、営業損益は依然として営業損失を計上する状況が続いております。整備料金の見直しによる収支改善や、新規顧客の開拓による営業収益の増加で、営業利益へ転換することが急務であると認識しております。
[その他]
その他事業に含まれる娯楽・スポーツ業、広告代理業、物品販売業及び旅行代理業は、コロナ禍からの反動や季節的要因により営業収益は増加しております。しかし、これらの事業は他社の参入障壁が低く、市場環境が変化しやすいことから常に激しい競争に晒されており、加えて物価高騰による個人消費の低迷が影を落としております。市場環境を分析して、顧客のニーズにあった商品やサービスを提供していくことが、今後の課題であると認識しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍収束後の経済活動の正常化が進み景気回復への期待が高まりましたが、ウクライナや中東情勢等の地政学リスクの高まりによる資源高騰や記録的な円安の進行、更には2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」が北陸地方の地域経済に打撃を与えるなど、先行き不透明で厳しい状況が続きました。
地方の中小私鉄・バス業界におきましては、コロナ禍中の在宅勤務の定着化などから地元客の需要が完全には回復しない中、一方でインバウンドを含めた観光需要の回復が見受けられるものの、著しい運転手不足が足枷となり、貸切バスの受注を制限せざるを得ないなどの大変厳しい事業環境が続きました。
このような情勢のもと、当社ではコロナ禍からの回復と経営基盤の強化を図るため、積極的な増収策を展開し収益の確保に努めるとともに、富山市双代町の富山自動車営業所を移転し、富山市牛島本町の西部自動車営業所との統合を実施することで、要員の効率化や回送時分の削減を行うなど経費の削減ならびに業務の効率化に資する取り組みにも全力を傾注してまいりました。
また、2023年4月11日に発生した保線作業中の社員の死亡事故を厳粛に受け止め、事故発生直後から早急にとるべき対策を行い、4月11日を「安全の誓いの日」と定め役職員一丸となって、このような事故を二度と起こさないよう安全を第一に再発防止に全力で取り組んで参りました。これからも関係機関のご指導のもと、「安全は輸送の最大の使命」であることを肝に銘じ、再発防止と安全対策に万全を期してまいります。
この結果、当連結会計年度の経営成績は営業収益9,465,022千円(前年同期比3.9%増)、営業損失905,913千円(前年同期は営業損失515,171千円)、経常損失483,498千円(前年同期は経常損失457,520千円)、親会社株主に帰属する当期純利益1,240,071千円(前年同期比160.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a. 運輸事業
運輸事業においては、鉄道事業では2023年4月に実施したダイヤ改正において、前連結会計年度にて一時的に運行を再開した電鉄富山~立山間の特急列車および休日の宇奈月温泉発立山行き特急列車の運行期間を夏季ダイヤ期間通期に拡大し、また、新黒部駅にて北陸新幹線との接続時間の短縮と速達性を高めたエリア特急「くろべ」の運行を再開するとともに、昼間帯ダイヤの等間隔化、上市行き最終列車の繰り下げ、朝ラッシュ時の上り急行列車に特定停車駅を設定するなどいたしました。更に、「とやまロケーションシステム」へリアルタイム運行情報の提供を行うなど、観光客回復への対応と利便性向上を図りました。その他、「立山黒部ジオパーク写真ギャラリー号」や宇奈月温泉開湯100周年を記念した「記念ギャラリー号」と「記念ラッピング電車」の運行を継続し、沿線観光地への誘客PRに努めました。
施設面においては、鉄道線橋梁補修および橋梁架け替え工事、踏切の連接軌道更新工事、軌条および枕木交換工事、第4種踏切の第1種化格上げ工事、軌道線の軌道改良工事など安全対策を進めました。
富山駅付近連続立体交差事業における本線の高架化工事においては、高架橋の基礎工事、高架駅整備に向けた改札口の移設等を進めました。
自動車事業では、乗合バス事業においては、富山地方鉄道㈱では、2023年4月に実施したダイヤ改正にて富山駅前~中央病院線を新設し中央病院へのアクセス向上を図るなど、地域住民の生活を支える公共交通機関として運行確保に努めるとともに、2階建てオープントップバス「スカイバス」を使用した運行、宇奈月温泉~立山室堂線「アルペンライナー」の運行、「富山ぶりかにバス」の運行を行い県内観光の需要回復に対応しました。また、10月からは富山駅前~笹津線において朝の通勤時間帯にファストバス(速達便)の実証運行を実施いたしました。加越能バス㈱では、2023年4月に利用状況に合わせてダイヤや運行経路の見直しを行ったダイヤ改正を実施いたしました。また、観光路線「世界遺産バス」、「わくライナー」は一部減便、運休を継続しつつも、県内観光の需要を見極めながら運行いたしました。その他、インバウンド需要が高い世界遺産バス車両へクレジットカードのタッチ決済システムの導入や、南砺市を舞台としたアニメーション作品のラッピングを施すなど、各関係先と連携しながら利用促進に努めました。一方で、「令和6年能登半島地震」の発生を受けて、「富山ぶりかにバス」、「わくライナー」が約1ヶ月に渡って運休するなどの影響がありました。
高速バス事業においては、富山地方鉄道㈱では、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて休止していた富山~白川郷・高山線の運行を2023年4月より再開し、また、夏季期間には首都圏から立山黒部アルペンルートや立山登山への利用者の需要喚起のために東京~立山室堂線を新たに運行し、氷見・高岡・富山~東京線においては上市スマートインターバス停を新設するなど営業増進に努めました。加越能バス㈱では、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて減便していた高岡~白川郷・高山線を2023年12月より増便し、また、砺波~金沢線を「三井アウトレットパーク北陸小矢部」経由にすることで新たな需要の掘り起こしに務めました。しかし、著しいバス運転手不足により、2023年8月には加越能バス㈱は氷見・高岡・富山~東京線の共同運行から撤退し、富山地方鉄道㈱は2023年12月からは富山~京都・大阪線の昼行便の運休、2024年3月には富山~金沢線の廃止を余儀なくされました。
貸切バス事業では、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、観光需要が回復したものの、著しいバス運転手不足の影響を受けて、乗合バスの運行確保を優先し貸切バスの受注制限を行ったことや、第4四半期には「令和6年能登半島地震」によって大量のキャンセルが生じたこともあり、富山地方鉄道㈱、加越能バス㈱とも稼働は前連結会計年度を下回る結果となりました。
MaaS(マース)アプリ「my route(マイルート)」においては、沿線の文化施設をお得に巡る「まちなかぐるっとアートチケット」の発売、軌道線の運行情報機能の追加など、付加価値を高め、デジタル乗車券の普及に努めました。
その他、夏休み期間中に沿線市町村と共同で小学生を対象に電車・バス運賃を無料とする「親子でおでかけ事業」を実施し、公共交通利用の啓発と沿線の魅力発見に繋げました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は6,064,713千円(前年同期比9.8%増)となりました。
(提出会社の運輸成績表)
(イ)鉄道事業
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 366 | 0.2 |
営業粁 | 粁 | 93.2 | - |
客車走行粁 | 千粁 | 4,052 | 2.3 |
乗車人員 | 千人 | 5,146 | 4.1 |
定期 | 〃 | 3,496 | △0.1 |
定期外 | 〃 | 1,649 | 14.5 |
旅客収入 | 千円 | 1,284,973 | 12.8 |
定期 | 〃 | 554,340 | △0.0 |
定期外 | 〃 | 730,414 | 25.0 |
手小荷物収入 | 〃 | 218 | 54.3 |
運輸雑収 | 〃 | 134,947 | △2.3 |
収入合計 | 〃 | 1,419,921 | 11.1 |
乗車効率 | % | 11.68 | 5.5 |
1日平均収入 | 千円 | 3,879 | 10.8 |
1日1粁平均収入 | 〃 | 41.62 | 10.8 |
(注)乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によるものです。
(ロ)軌道事業
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 366 | 0.2 |
営業粁 | 粁 | 15.2 | - |
客車走行粁 | 千粁 | 1,193 | 0.0 |
乗車人員 | 千人 | 7,264 | 3.1 |
定期 | 〃 | 3,881 | 0.5 |
定期外 | 〃 | 3,382 | 6.2 |
旅客収入 | 千円 | 886,353 | 5.2 |
定期 | 〃 | 325,007 | 1.9 |
定期外 | 〃 | 561,345 | 7.2 |
運輸雑収 | 〃 | 151,175 | 12.4 |
収入合計 | 〃 | 1,037,528 | 6.2 |
乗車効率 | % | 21.05 | 2.7 |
1日平均収入 | 千円 | 2,834 | 5.9 |
1日1粁平均収入 | 〃 | 186.49 | 5.9 |
(注)乗車効率の算出は延人粁/(客車走行粁×1車平均定員)によるものです。
(ハ)自動車事業
乗合自動車
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 366 | 0.2 |
営業粁 | 粁 | 2,170.8 | △2.5 |
車両走行粁 | 千粁 | 8,525 | 3.9 |
乗車人員 | 千人 | 5,506 | 4.5 |
定期 | 〃 | 2,488 | △1.8 |
定期外 | 〃 | 3,017 | 10.4 |
旅客収入 | 千円 | 1,867,575 | 17.9 |
定期 | 〃 | 431,974 | △0.4 |
定期外 | 〃 | 1,435,600 | 24.8 |
運輸雑収 | 〃 | 359,092 | 2.8 |
収入合計 | 〃 | 2,226,667 | 15.1 |
乗車効率 | % | 15.41 | 13.6 |
1日平均収入 | 千円 | 6,083 | 14.8 |
走行1粁当たり収入 | 円 | 261.18 | 10.8 |
(注) 乗車効率の算出は延人粁/(車両走行粁×1車平均定員)によるものです。
貸切自動車
項目 | 単位 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
営業日数 | 日 | 366 | 0.2 |
車両走行粁 | 千粁 | 791 | △13.6 |
乗車人員 | 千人 | 141 | △12.1 |
旅客収入 | 千円 | 405,298 | △7.4 |
運輸雑収 | 〃 | 66,173 | △1.7 |
収入合計 | 〃 | 471,471 | △6.6 |
1日平均収入 | 〃 | 1,288 | △6.9 |
走行1粁当たり収入 | 円 | 595.63 | 8.0 |
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
鉄道事業(千円) | 1,419,921 | 11.1 |
軌道事業(千円) | 1,037,528 | 6.2 |
自動車事業(千円) | 3,607,753 | 10.4 |
調整額(千円) | △490 | - |
報告セグメント計(千円) | 6,064,713 | 9.8 |
b. 不動産事業
不動産事業においては、電鉄富山駅ビル「エスタ」への新規テナントの入居や、既存テナントの店舗拡張による賃貸収入の増加、加越能バス㈱における社有地の新規賃借契約の締結があり、増収となりました。一方で、不動産分譲業では積極的に販売促進に努めたものの、分譲地の売却が無かったことから大幅な減収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は516,372千円(前年同期比26.2%減)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
不動産分譲業(千円) | 5,208 | △97.5 |
不動産賃貸業(千円) | 511,163 | 4.1 |
報告セグメント計(千円) | 516,372 | △26.2 |
c. 建設事業
建設事業においては、国内企業の設備投資需要の増加を受けて受注工事が増加したことに加えて、2023年5月には富山駅付近連続立体交差事業の電鉄富山駅および本線高架化の本体工事が着工したことや、2023年11月の富山地方鉄道㈱におけるバス営業所の移転工事もあり、増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は1,744,257千円(前年同期比16.6%増)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
建設業(千円) | 1,744,257 | 16.6 |
報告セグメント計(千円) | 1,744,257 | 16.6 |
d. 保険代理事業
保険代理事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響で依然として対面での営業が難しく、ダイレクトメールやオンラインを活用して顧客との接点を増やすなど、積極的な販売活動に努めたものの、インターネット保険の普及や人口減少、少子高齢化の影響を受けた個人保険の新規契約者数の減少や、保険料率の改定による手数料収入の減少が影響し、減収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は349,907千円(前年同期比4.4%減)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
保険代理業(千円) | 349,907 | △4.4 |
報告セグメント計(千円) | 349,907 | △4.4 |
e. 航空輸送事業代理業
航空輸送事業代理業においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅行需要、ビジネス需要の回復や、富山空港における海外からの航空便の受け入れ再開、訪日外国人旅行者の増加などで航空便利用者が回復し、大幅な増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は307,757千円(前年同期比38.7%増)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
航空輸送事業代理業(千円) | 307,757 | 38.7 |
報告セグメント計(千円) | 307,757 | 38.7 |
f. ホテル業
ホテル業においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅行需要、ビジネス需要の回復や、訪日外国人旅行者の増加などで、客室稼働率が増加しました。第4四半期には「令和6年能登半島地震」の発生による北陸地方への旅行需要の減少や、富山地鉄ホテル㈱において館内設備の大規模改修工事に伴う全館休業の影響があったものの、年間を通しては増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は494,226千円(前年同期比11.3%増)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
ホテル業(千円) | 494,226 | 11.3 |
報告セグメント計(千円) | 494,226 | 11.3 |
g. 自動車整備業
自動車整備業においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による高速バス、貸切バスの需要回復によって、グループ内外での取引が増加したことにより、増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業収益は536,451千円(前年同期比17.9%増)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
自動車整備業(千円) | 536,451 | 17.9 |
報告セグメント計(千円) | 536,451 | 17.9 |
h. その他
娯楽・スポーツ業では、富山地鉄ゴールデンボウルにおいて個人利用客の増加や料金改定による増収があった一方で、第4四半期に「令和6年能登半島地震」の発生によって、施設の損傷による休業を余儀なくされたことや、加越能バス㈱において前連結会計年度にスポーツドーム・エアーズが閉館した影響が大きく、年間を通しては減収となりました。
広告代理業では、新聞、テレビ等のマスメディア広告が低調だったものの、ラッピング広告が堅調に推移したことや、新型コロナウイルス感染症の5類移行による各種イベントの再開などによって、年間を通しては増収となりました。
その他事業に含まれる物品販売業においては、物価高騰による個人消費の落ち込みの影響はあったものの、法人向けにおいてコロナ禍での買い控えからの回復や、夏の記録的猛暑による季節商品の大幅な売り上げ増加によって増収となり、旅行代理店業においては、第4四半期に「令和6年能登半島地震」による北陸地方への旅行需要の減少の影響を受けたものの、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅行需要の回復によって、年間を通しては増収となりました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は837,389千円(前年同期比16.0%増)となりました。
(業種別営業収益)
業種別 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
娯楽・スポーツ業(千円) | 221,093 | △16.6 |
広告代理業(千円) | 193,682 | 10.1 |
その他事業(千円) | 422,613 | 50.7 |
その他計(千円) | 837,389 | 16.0 |
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ578,223千円減少し、当連結会計年度末に3,754,643千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,263,468千円(前連結会計年度は879,466千円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が1,322,981千円(前連結会計年度は664,066千円)、減価償却費が604,004千円(前連結会計年度は679,454千円)、固定資産売却益が1,177,750千円(前連結会計年度は5,579千円の固定資産売却損)、売上債権の減少額が450,593千円(前連結会計年度は616,260千円の増加額)であった一方で、工事負担金等受入額が732,111千円(前連結会計年度は3,934,562千円)、固定資産圧縮損が1,253,915千円(前連結会計年度は3,845,514千円)、契約資産の増加額が368,319千円(前連結会計年度は287,520千円の減少額)、法人税等の支払額が132,765千円(前連結会計年度は354,440千円)などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は869,286千円(前連結会計年度は602,027千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入が1,241,012千円(前連結会計年度は16,804千円)、工事負担金等受入による収入が2,651,053千円(前連結会計年度は1,531,749千円)であった一方で、有形固定資産の取得による支出が4,703,436千円(前連結会計年度は2,174,409千円)などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は972,404千円(前連結会計年度は1,168,573千円の使用)となりました。これは主に借入金の純減額が866,255千円(前連結会計年度は989,857千円の純減額)、リース債務の返済による支出が82,421千円(前連結会計年度は155,282千円の支出)などによるものであります。
③ 生産・受注及び販売の状況
当社グループの販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注販売形態をとらない品目も多く、セグメントに関連付けて記載することが困難であるので記載しておりません。そのため生産、受注及び販売の状況については「① 財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントごとに経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の営業収益は9,465,022千円(前年同期は9,105,288千円)となりました。これは、主に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に移行したことに伴う観光需要、ビジネス需要の増加や、訪日外国人旅行者の増加によるものであります。
一方、当連結会計年度の営業費は10,370,936千円(前年同期は9,620,460千円)となりました。これは、主に不安定な中東情勢や記録的な円安による原油価格、仕入価格の増加や、電気料金の値上げに伴う動力費、水道光熱費の増加によるものであります。
その結果、営業収益から営業費を差し引いた営業損益は905,913千円の営業損失(前年同期は515,171千円の営業損失)となり、持分法による投資利益435,979千円を含む営業外収益561,004千円と支払利息70,641千円を含む営業外費用138,589千円を加減した経常損失は483,498千円(前年同期は457,520千円の経常損失)となりました。
これに、固定資産売却益1,178,480千円、補助金1,251,462千円と、工事負担金等受入額732,111千円、新型コロナウイルス感染症に係る助成金116,957千円を含む特別利益3,279,012千円と固定資産圧縮損1,253,915千円を含む特別損失1,472,532千円を加減した結果、1,322,981千円の税金等調整前当期純利益となり、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を減じた親会社株主に帰属する当期純利益は1,240,071千円(前年同期は475,333千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、コロナ禍からの反動や北陸新幹線金沢~敦賀間開業などによる観光需要の増加、円安を背景としたインバウンド需要に大きな期待が持てる一方、日本社会における深刻な問題である人口減少、人手不足による競争力の低下や成長機会の損失、人件費の高騰、長期化する不安定な国際情勢や円安による原油高をはじめとした全般的な物価高騰による仕入価格や動力費の上昇などが、企業収益を圧迫することとなり、依然として事業環境は厳しいと予測しております。
b.財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度における流動資産の残高は7,254,622千円となり、前連結会計年度末に比べ1,269,810千円減少しました。この主な要因は、工事負担金等受入額や補助金等による未収金が減少したことであります。
(固定資産)
当連結会計年度における固定資産の残高は16,882,941千円となり、前連結会計年度末に比べ2,681,712千円増加しました。この主な要因は、富山駅付近連続立体交差事業における本線の高架化工事において、建設仮勘定の増加によるものであります。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は14,085,281千円となり、前連結会計年度末に比べ105,432千円減少しました。この主な要因は、新規借入金や新規リースを抑制し、負債の圧縮に努めたことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は10,052,282千円となり、前連結会計年度末に比べ1,517,334千円増加しました。この主な要因は、利益剰余金が増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」の記載のとおりであります。
(契約債務)
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
年度別要支払額(千円) | |||||
契約債務 | 合計 | 1年以内 | 1年超3年以内 | 3年超5年以内 | 5年超 |
長期借入金 | 3,616,930 | 700,259 | 1,203,002 | 801,545 | 912,124 |
リース債務 | 118,822 | 51,859 | 42,214 | 24,232 | 516 |
割賦未払金 | 15,468 | 15,468 | - | - | - |
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
(財務政策)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備修繕費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、運輸事業の設備の新設と改修等であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資や長期運転資金は自己資金、リース及び補助金を活用し調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務、割賦未払金を含む有利子負債の残高は3,751,221千円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は3,754,643千円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[運輸事業]
当社グループが主に事業展開を行う富山県は、全国的にもマイカー所有率が高く、また、人口減少や少子高齢化も進んでおり、厳しい経営環境が続いております。新型コロナウイルス感染症の5類移行による行動制限の撤廃や、記録的な円安による訪日外国人旅行者の増加などによって定期外旅客人員は増加しているものの、人口減少に加えてコロナ禍による生活様式の変化もあり、鉄道利用の多くを占める定期旅客人員は減少しているため、利用者数はコロナ禍以前には戻っておりません。
当社の鉄道事業は、中小私鉄において93.2kmの営業粁を有しており、駅舎、鉄橋、トンネル等、多くの設備を自社で保有しております。これらの設備の維持、管理、補修に係る費用は莫大で、また、老朽化も進んでいることから増加傾向にあります。加えて、電力料金の高騰による動力費の増加が、費用の増加に拍車をかけております。
当社では、運行の効率化やデジタル化の推進等による経費の削減と、企画商品の販売や沿線資源の活用、イベントの開催など、営業施策による増収策を投じて収支の改善を図っております。しかし、この状況を一民間企業である当社の経営努力だけで改善することは厳しく、国や自治体の支援がなくては事業の存続が厳しい状況となっております。
当社の軌道事業は、市内軌道線と富山港線との南北接続の利便性の浸透や、「マルート」等の開業による富山駅周辺の再開発により、利用者数は着実に増加しております。しかし、電力料金の高騰による動力費の増加が、収支に大きな影響を及ぼしております。そのような状況の中、営業施策や沿線自治体との連携などで更なる利用者数の拡大や、ラッピング広告の拡大などで営業収益の増加を図ることが今後の課題であると認識しております。
当社グループの自動車事業は、路線バスは鉄道事業と同様、人口減少や少子高齢化の影響を受けているものの、高速バスや貸切バスは新型コロナウイルス感染症の5類移行によって利用者数は回復傾向にあります。しかし、全国的な問題となっているバス運転手不足の影響は、当社グループにおいても例外ではなく、路線バスの運行を確保するために高速バスの運休や貸切バスの受注制限を行うなど、需要に応えられない状況が生じており、自動車事業の収支に大きな影響を及ぼしております。
当社グループでは、入社支度金の増額や退職者に対する「カムバック制度」などで運転手の採用・育成に努めておりますが、運転手不足の解消には至っておりません。加えて、2024年4月1日からはバス運転手の改善基準告示が改正されたことで、バス運転手不足はより一層厳しさを増しております。当社グループでは、生活路線を確保すべく試行錯誤を重ねておりますが、この状況が改善されない場合、路線バスの大幅な運行形態の見直しを迫られる可能性があります。
[不動産事業]
不動産事業は、コロナ禍を受けたリモートワークの拡大によるオフィス需要の減少や、オンラインショッピングの拡大による実店舗需要の減少に加えて、国内の金融政策の転換により金利が上昇局面にあることから、今後はより厳しい経営環境が予想されます。そのような状況の中、市場のニーズに応えて不動産商品の販売やテナントの誘致等に努め、収益向上を図ることが今後の課題であると認識しております。
[建設事業]
建設事業は、コロナ禍で抑えられていた国内設備投資需要が回復したことで、受注工事が増加しており、営業収益は増加しております。しかし、物価高騰による材料費等、売上原価の増加が損益に影響を及ぼしていることに加えて、建設作業員の不足による受注工事の制限や外注費の増加もあり、これらの問題への対処が課題であると認識しております。
[保険代理事業]
保険代理事業は、当社グループが主力とする自動車保険は人口減少や若い世代を中心に車離れが進み、新規契約者数が減少しており、減収傾向が続いております。今後は、自動車保険を重視とする営業体制からの転換を図り、自然災害の激甚化により需要が増加している損害保険や地震保険など、顧客のニーズにあった商品販売を行い、増収へ転換することが課題であると認識しております。
[航空輸送事業代理業]
航空輸送事業代理業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行による航空便利用者の増加や、富山空港における国際線の復便、訪日外国人旅行者の増加により、営業収益は大幅に増加しております。しかし、富山空港の利用者数は北陸新幹線開業前と比べて大幅に減少している状況に変わりはなく、航空会社や自治体などと連携して富山空港の利用者数を更に増加させることが課題であると認識しております。
[ホテル業]
ホテル業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行や訪日外国人旅行者の増加などで、営業収益は増加しております。しかし、富山駅周辺ではホテルの新規開業が相次いでおり、競争が激しくなっております。競争が激しくなる中、お客様のニーズに応えたサービスやおもてなしの提供を続けていくことが、今後の課題であると認識しております。
[自動車整備業]
自動車整備業は、新型コロナウイルス感染症の5類移行によって高速バスや貸切バスの需要が回復し、営業収益は増加しております。しかし、物価高騰による費用の増加や、整備士不足による外注費の増加で、営業損益は依然として営業損失を計上する状況が続いております。整備料金の見直しによる収支改善や、新規顧客の開拓による営業収益の増加で、営業利益へ転換することが急務であると認識しております。
[その他]
その他事業に含まれる娯楽・スポーツ業、広告代理業、物品販売業及び旅行代理業は、コロナ禍からの反動や季節的要因により営業収益は増加しております。しかし、これらの事業は他社の参入障壁が低く、市場環境が変化しやすいことから常に激しい競争に晒されており、加えて物価高騰による個人消費の低迷が影を落としております。市場環境を分析して、顧客のニーズにあった商品やサービスを提供していくことが、今後の課題であると認識しております。