有価証券報告書

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2014/06/24 14:11
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対処すべき課題

当社は平成26年3月31日、新たな中期経営計画「STEER FOR 2020」を発表しました。
“STEER”とは、目指す針路に向かって船の舵を取ることを意味します。2020年3月期に目指す姿に向けて大きく舵を切っていくとの思いを込めて名付けたこの計画のもと、当社が今後どのような方向に進んでいくのかにつき、説明します。
■ 事業環境認識とメインテーマ「変革を通じた確かな成長」
現在、先進国を中心とする景気回復に伴い世界の海上荷動きは拡大し、船腹需給は改善しつつありますが、船の種類によって改善には時差があり、また、引き続き存在する過剰造船設備に鑑みれば、市場環境の構造的な好転にはなお年月を要すると考えられます。一方で「シェール革命」に代表される新たな物流、またその影響も含めたLNGの長距離輸送需要の急速な拡大は、我々に全力で取り組むべき商機をもたらしています。
このような事業環境認識に基づき、当社は新中期経営計画「STEER FOR 2020」を策定し、右肩上がりの海運市況の上昇を前提とする経営とは一線を画し、新たな物流機会を捉えて長期的な安定利益を積み上げていく方向に大きく舵を切っていきます。新中期経営計画のメインテーマである「変革を通じた確かな成長」には、こうした意味が込められています。
■ 全体戦略「3つの変革」
I. 事業ポートフォリオの変革
高い成長が見込まれ、長期安定利益を獲得できるビジネスに、大胆かつ迅速に経営資源を投入します。その中心となるのは資源・エネルギー分野であり、中でも世界最大級のプレゼンスを擁する当社のLNG船事業と、新たな事業領域として開拓している海洋事業に積極的な設備投資を行います。
II. 事業モデルの変革
日々マーケットと対峙する在来の海運業においては、市況変動の影響を抑制し、市況水準にかかわらず確実に利益をあげられる体制の構築を目指します。このため、特にドライバルク船・油送船において、営業サイドで中長期契約比率を増やし、調達サイドでは短期傭船比率を増やすことにより、市況変動に対する耐性を高めた柔軟な船隊を作り上げます。
このような収益構造のもとで確実に利益をあげていくには、トレードの最適な組み合わせによって効率的な配船を行うことと、顧客ニーズに応えて付加価値を提供し得る輸送分野に注力することが不可欠になります。シンガポールを始め、世界最適地に展開した事業拠点、そして多様な船種と輸送ノウハウを活かして、これを実現していきます。
III. 事業領域の変革
当社はこれまで世界各地へ海運業の水平展開を進めてきましたが、海上輸送の上流又は下流といった垂直方向への事業領域の拡大にも目を向けていきます。既に、コンテナターミナル事業では強力なパートナーと提携し、今後の事業拡大の基盤を整備しました。原油・LNG等のエネルギーの輸送から上流に踏み込んだ海洋事業もこの方向性にあるものであり、積極的に拡大していきます。
■ 経営基盤の再強化
以上述べてきた計画を実行するにあたり、これらを支える経営基盤の再強化にも取り組んでいく必要があります。中でも、先に公正取引委員会によって発表されたとおり自動車輸送に関連する独占禁止法違反行為(注)が存在したこと、また、当社がリーマンショック以降の市況悪化期に過大な市況エクスポージャーを持ってしまったことに鑑み、コンプライアンスの再強化とトータル・リスク・コントロールの徹底は喫緊の課題として取り組んでおります。また、海運会社のコアコンピタンスである安全運航の再構築とビジネス・インテリジェンスの高度化も、当社の持続的成長を根底で支えるものであり、継続して取り組んでいきます。
(注)
平成26年3月18日、公正取引委員会より特定自動車運送業務の取引に関連して、複数の事業会社に対し排除措置命令及び課徴金納付命令がなされた旨の発表がありました。本件は当社を含めた関係事業者に対し、独占禁止法違反の行為があったとして平成24年9月6日に同委員会の立入調査を受けていたものです。当該発表においては、当社についても独占禁止法に違反する行為があった旨の言及がありますが、当社は上記立入調査より前に違反のある行為を取り止めていたこと、及び同委員会に対し課徴金減免制度の適用を申請し、これが認められたこと等から、上述の命令のいずれも受けておりません。なお、当社連結子会社の日産専用船株式会社は課徴金減免制度の適用を申請し、課徴金の減額を認められましたが、排除措置命令及び課徴金納付命令を受けております。
当社グループは米国、欧州その他海外の競争法当局による調査の対象にもなっており、これら調査には引き続き全面的に協力しております。また、他船社と完成自動車車両の海上輸送サービスの価格調整等を行ったとして、当社グループに損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が米国等において提起されています。