有価証券報告書

【提出】
2021/06/22 15:01
【資料】
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【項目】
163項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、2021年4月1日より商船三井グループの企業理念、長期ビジョン、価値観・行動規範(MOL CHART)を以下の通り改定しました。今般、脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まるなか、輸送にとどまらない事業領域への拡大やそれに伴う価値観の変化を反映し、更なる成長を実現するために、社会における当社グループの存在意義を今一度確認するものです。加えて、この先10年を見据え、具体的に目指す姿についても、グループビジョンとして併せて改定することになりました。また、2015年に当社グループ社員が継承する価値観として制定した「MOL CHART」を「MOL CHART”S”」と改定しました。これまで「R(Reliability)」において「安全」に取り組んでまいりましたが、この度、「S(Safety)」として独立させ、安全の徹底に対する決意を新たにします。なお、「R(Reliability)」において信頼を得る対象を、ステークホルダーと再定義し、より社会的責任に注力します。
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(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は2017年度に経営計画「ローリングプラン」を導入して以来、相対的競争力NO.1事業の集合体を目指し、年度ごとの具体的な重点項目を設定しその実現に向けて取組んでまいりました。2020年度は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中、コロナ収束後までを見通したメガトレンド予測を実施の上、「守り」の面においては上半期に一歩踏み込んだ減船を行い、市況エクスポージャーの縮減や政策保有株式売却などの資産流動化に努めた一方、「攻め」の面では新規投資を厳選しながら海洋事業への重点投資を行うとともに、ばら積み船や自動車専用船事業では事業特性に応じた構造改革を実施しました。
新経営計画「ローリングプラン2021」では、依然コロナ禍の影響による荷動き低迷からの回復途上にある中で、2021年度を、回復のタイミングを見据えながら成長軌道復帰に向けて着実に基礎固めを行う年とします。また、環境問題を含む社会的な要請に応えつつ当社の10年先を意識したときに、当社が目下最優先で取り組むべきは環境戦略であると認識しています。新たなグループビジョン(「ローリングプラン2021」での目指す姿)に向けて、環境戦略を基軸とし、ポートフォリオ戦略・営業戦略と連関させながら、当社グループの成長戦略を推進します。
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<2020年度(ローリングプラン2020)で掲げたことに対する達成状況>
項目RP2020で掲げたこと2020年度の達成状況
守りの策の実行エクスポージャー縮減自動車船を中心に17隻の処分・実行
影響把握メガトレンド予測2020年12月にメガトレンド予測第2弾を取り纏め(回復時期はやや早まる)
攻めの戦略事業特性に応じた成長戦略・構造改革不定期船:商船三井ドライバルク㈱の発足決定
自動車船:日産専用船㈱との一体化(効率性追求)
ケミカル事業:組織、拠点統合による効率化
ポートフォリオ
戦略
新規投資は厳選。20-22年度で計1,000億円のフリーCFを確保約900億円新規投資を決定した一方、資産・事業のキャッシュ化を推進。計画通りフリーCF1,000億円を確保しながら、新規投資CF枠の上積みを検討中
海洋事業への重点投資既存事業への追加拠出も含め430億円の投資決定(上記900億円の内数)
営業戦略デジタルと環境で顧客満足度向上MOL Lighthouse※対象顧客の拡大
※ドライバルク船顧客を対象とした情報提供プラットフォーム
環境戦略環境・エミッションフリー事業の推進LNG・風力分野への投資を継続
世界の潮流を受け環境ビジョン見直し中
組織の力の
向上
既存組織に拘らないプロジェクト推進体制プロジェクトチーム立ち上げ(計16チーム)
グループ全体の生産性向上コーポレート業務の合理化実施
グループ会社の統合

<新経営計画(ローリングプラン2021)における主要なテーマ>(1) 環境戦略
①2021-23年度の3年間で低・脱炭素分野に約2,000億円を投資。
②環境ビジョン2.0を2.1に改定し、取り組みを加速する。
・ネットゼロエミッション目標時期の前倒し(2050年までに)
・GHG削減ロードマップの策定
・インターナルカーボンプライシング導入
・グリーン代替燃料の導入、省エネ技術の取り入れ、効率運航深度化の推進
③ 「環境低負荷」「低炭素」事業の拡大
・LNG需要増の取り込み(LNG船・FSRU・発電船)
・洋上風力発電事業への参入
④環境負荷と低減効果を可視化するサービスの展開(顧客の「見たい」に応え、ストレスフリーを実現)
・顧客ニーズを先取りしたカーボンフットプリントの開示とそれを可能にする体制・データ整備
・GHG排出削減に寄与する運航効率の改善とその見える化
(2) 地域戦略
営業戦略の肝として、「地域戦略」を掲げ、当社全体戦略にマッチする潜在案件を複眼的に追求し、アジアを重点に輸送に留まらない大型案件をグループ総合力を発揮して獲得します。
<ポートフォリオ戦略・営業戦略における主な取り組み>(1) 「ポートフォリオ戦略」
・ポートフォリオの継続的な見直し、入れ替え
・既存海運事業をキャッシュ・フロー貢献の視点から再評価
(2) 「営業戦略」
・LNG需要向け営業の連携(LNG船・FSRU・発電船)
・ワンストップ営業体制(商船三井ドライバルク)
・DXによる顧客の利便性向上(MOL Lighthouse※の販売促進など)
※ドライバルク船顧客を対象とした情報提供プラットフォーム
<ローリングプラン2021の定量目標(利益計画・財務計画・投資計画・株主還元策)>(1)利益計画
利益計画については、第2 事業の状況 3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(7)「経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。
(2)財務計画・投資計画
財務計画・投資計画については、第2 事業の状況 3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(7)「経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。
(3)株主還元策
株主還元策については第4 提出会社の状況 3「配当政策」をご参照ください。
<サステナビリティ課題(マテリアリティ)への取組み>当社は2019年4月に、当社の社会価値向上に向け事業活動を通じて優先的に取り組むべき社会課題として、サステナビリティ課題(マテリアリティ)を特定し、経営計画と密接に連動させて、解決へ向けた取り組みを推進しています。
また、2021年4月には、従来の「環境経営委員会」を「環境・サステナビリティ委員会」とし、サステナビリティ全般についての議論を行うとともに、社内の専門組織「環境・サステナビリティ戦略部」を新設し、サステナビリティ推進体制を強化しました。
2021年度においては、この体制のもと、サステナビリティ課題の一部見直しと取組推進のためのKPI(Key Performance Indicator)の設定を行うとともに、社会的懸念が高まっている環境問題への取り組みに関し、2020年6月にGHGの削減目標を掲げて策定した「環境ビジョン2.0」を「環境ビジョン2.1」へ改定し、その取り組みを加速していきます。
<当社のモーリシャス環境回復・社会貢献活動への取り組み>2020年8月、当社がチャーターしていたばら積み貨物船がモーリシャス共和国で座礁による油濁を起こし、現場水域と地域の自然環境や、地域社会とその産業にも大きな影響を及ぼすこととなりました。
当社は、船主との間における用船契約において本船を利用していた関係者として、現地のニーズに沿った支援を通じ、環境回復や地域社会への貢献に注力して取り組んでおり、今後もこれを継続してまいります。
具体的には、事故直後より当社社員を現地に派遣し様々な現地支援活動を行うとともに、専門家等を現地に派遣し事故影響のアセスメントを行いながら、現地NGO、学術機関等への寄付を実施、自然回復活動・現地住民支援活動をサポートいたしました。
また当社が委託者となり、国内における公益信託基金、さらにモーリシャスにおいても支援基金を設立いたします。これら総額8億円規模の基金を通じ、現地での自然環境保護・回復活動及び、水産、文化・教育などの地域社会産業各分野への貢献活動を助成し、モーリシャス国民の健康的な生活及び持続可能な経済発展に努めます。
<コンプライアンス上の対処すべき課題>当社グループは、2012年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟がカナダ、英国及びチリにおいて提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。