有価証券報告書-第11期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/22 14:00
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【項目】
103項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表及び当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表及び財務諸表の作成にあたりまして、当社経営陣は当連結会計年度の財政状態、経営成績に影響を与える重要な会計方針の採用及び見積りを行っております。この見積りは過去の実績や当連結会計年度末の状況に基づいて行っておりますが、実際の結果と異なる場合があります。
(2)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しの動きや、国内の企業収益、雇用環境の改善を背景として、緩やかに回復しております。
当社グループを取り巻く環境としては、メディア事業の分野では既存の有料放送市場が成熟している一方で、巨大資本を背景としたインターネット動画配信事業者が次々と参入し、コンテンツ獲得及び加入者獲得の両面で競争が激化しております。宇宙・衛星事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や携帯電話基地局向けバックホール回線需要が拡大する一方で、グローバルマーケットにおいて海外衛星オペレーターとの厳しい価格競争に直面しております。また、世界レベルで多くのベンチャー企業が立ち上がるとともに巨大資本を背景とする新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、安価なロケットの開発や大規模な低軌道衛星通信システムプロジェクトを推進するなど、ビジネスの環境が大きく変化しようとしております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
区分前 期
(百万円)
当 期
(百万円)
前期比
(百万円)
増 減 率
(%)
営業収益192,875145,501△47,373△24.6%
営業利益24,43315,652△8,781△35.9%
経常利益24,87516,712△8,162△32.8%
税金等調整前当期純利益24,29617,244△7,052△29.0%
親会社株主に帰属する当期純利益17,41511,353△6,062△34.8%

前期に計上したXバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業(以下「Xバンド事業」)の衛星2号機引渡しによる売上369億円の剥落や、Jリーグ放映権喪失等に伴うサッカー関連コンテンツ収入の減少52億円及びサッカー以外の視聴料収入の減少36億円等により、営業収益は前期比474億円減少致しました。
また、減価償却費が20億円増加した一方で、前期のXバンド事業衛星2号機売上原価剥落等による衛星事業原価の減少316億円や、サッカー関連コンテンツ費用の減少47億円等により、営業費用は前期比386億円減少致しました。
当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「有料多チャンネル事業」としていたセグメントの名称を「メディア事業」に変更しております。
区 分主 要 な 事 業 内 容
メディア事業プラットフォーム事業及びコンテンツ事業
宇宙・衛星事業衛星通信事業、放送事業者向け衛星回線提供及び宇宙関連事業

当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(業績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
<メディア事業>・コンテンツの差別化
オリジナル番組投入による競合サービスとの差別化として、音楽コンテンツでは、『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』、『BIGBANG JAPAN DOME TOUR 2017 -LAST DANCE-』、『YUZU 20th Anniversary DOME TOUR 2017 ゆずイロハ』、オリジナルドラマでは、『弱虫ペダル Season2』、時代劇専門チャンネル(日本映画放送株式会社)との共同制作による『橋ものがたり3部作』を放送致しました。
スポーツコンテンツでは、UEFAチャンピオンズリーグ17/18、B.LEAGUE 2017-18シーズンを放送致しました。なお、プロ野球2018年シーズンではセ・パ12球団公式戦を全試合放送致します。
・サービスの差別化
「スカパー!オンデマンド」では配信チャンネルを拡大し、衛星放送のチャンネルや番組をリアルタイムでスマートフォン・PC・タブレット等で視聴できる“IPリニア”を推進しております。平成30年3月末には80チャンネルを配信しております。
平成29年12月には、テレビとインターネットのシームレスな融合サービスであるハイブリッドキャスト機能をお楽しみいただける「スカパー!ハイブリッド」を開始致しました。
「スカパー!プレミアムサービス」における4K専門チャンネル視聴環境整備のため、平成29年7月より4K対応プレミアムサービスチューナーの販売を開始致しました。
この他、平成29年6月から7月及び9月に「加入料0円キャンペーン」を実施し、さらに10月からは加入料を無料と致しました。また、12月より2台目・3台目のスカパー!新基本パックを無料とする「スカパー!新基本パック複数台無料キャンペーン」を開始致しました。
以上の結果、当連結会計年度における加入件数は次のとおりとなりました。
新規加入件数再加入件数解約件数純増減数累計加入件数
370,203件178,935件606,616件△57,478件3,262,393件

新規加入件数は前期比20千件増、再加入件数は前期比13千件増、解約件数は前期比72千件減、純増減数は前期比105千件増となりました。
以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前 期
(百万円)
当 期
(百万円)
前期比
(百万円)
増 減 率
(%)
営業収益
外部顧客への営業収益113,479102,638△10,841△9.6%
セグメント間の内部営業収益等3,2973,160△136△4.2%
116,777105,798△10,978△9.4%
セグメント利益4,5713,233△1,338△29.3%

Jリーグ放映権喪失等に伴うサッカー関連コンテンツ収入の減少52億円や、サッカー以外の視聴料収入の減少36億円等により、営業収益は前期比110億円減少致しました。また、サッカー関連のコンテンツ費用が47億円減少したこと等により、営業費用が前期比96億円減少致しました。
<宇宙・衛星事業>・国内衛星ビジネス
携帯電話基地局向けバックホール回線の提供拡大や、既存顧客に対する長期契約の更新を着実に進めることにより、衛星通信市場の基盤を強化しております。
・宇宙・防衛ビジネス
防衛省より受注したXバンド事業に関し、平成29年1月に打ち上げた衛星2号機は、安定的な運用を継続しております。また、平成28年6月に射場のギアナ宇宙センターへの輸送中事故により損傷したXバンド事業衛星1号機につきましても修理が無事完了し、平成30年4月の打ち上げに成功しております。
この他、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めている光データ中継衛星について、衛星バスの準備期間を含めた運用・維持管理に係る業務を受注致しました。
・国際衛星ビジネス
Intelsat社と共同で調達しているHTSであるHorizons 3eの製造は順調に進捗しており、平成30年度下期の打ち上げを予定しております。なお、携帯電話事業者による一部利用が既に決定しております。
・移動体衛星通信ビジネス
船舶向けインターネット接続サービス「OceanBB」や、航空機内のインターネット接続用の衛星回線の利用が堅調に推移しております。なお、KVH社との間で、次世代海洋ブロードバンドサービス「OceanBBplus」(従来の「OceanBB」より高速で、広いエリアに通信を提供するサービス)に関する協業合意書を締結するとともに、協業体制強化のため、KVH社に出資致しました。
・成長への取り組み
静止軌道上の通信衛星による従来型のビジネスに加え、低軌道衛星ビジネスにも参入しております。米国のLeoSat社に対する出資に加えて、日本の㈱アクセルスペース、米国のPlanet Labs Inc.、ノルウェーのKongsberg Satellite Services ASといった低軌道衛星ビジネスにおける各分野のトップ企業と様々な業務提携をしております。この他、当社グループの地上局設備を用いた低軌道衛星向け地上局サービス事業も開始致しました。
ドローン事業では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で、通信衛星と目視外ドローンをつなぐ中継基地として導入を想定している高高度無人航空機の飛行・通信実験を実施致しました。また、国土交通省の定める空中写真測量の作業要領に準拠し、標定点が不要な測量システムを搭載したドローンの販売を世界に先駆けて開始するなど、産業用としての利用拡大を図っております。
さらに、当社グループが出資しているKymeta社の開発した平面アンテナ端末を用いた大容量衛星通信にアジアで初めて成功致しました。この平面アンテナ端末は、車両・電車・航空機・船舶など様々な移動体への搭載が可能であり、当社グループの衛星回線と組み合わせることで、将来的に移動体からの双方向の通信が可能となります。
・衛星運用の安定性及び信頼性の確保と効率化
平成30年4月にSuperbird-B2(軌道位置:東経162度)の後継衛星であるSuperbird-8(軌道上名称:Superbird-B3)の打ち上げに成功致しました。この衛星はKuバンドとKaバンド高性能トランスポンダを搭載し、主に国内のお客様向けに衛星通信サービスを提供致します。
以上の結果、当連結会計年度の宇宙・衛星事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前 期
(百万円)
当 期
(百万円)
前期比
(百万円)
増 減 率
(%)
営業収益
外部顧客への営業収益79,39642,863△36,532△46.0%
セグメント間の内部営業収益等8,3527,536△815△9.8%
87,74850,400△37,348△42.6%
セグメント利益20,52713,137△7,389△36.0%

防衛省へのXバンド事業衛星2号機引渡しによる売上の剥落369億円等により、営業収益は前期比373億円減少致しました。また、減価償却費が16億円増加した一方で、Xバンド事業衛星2号機売上原価剥落等による衛星事業原価の減少316億円等により、営業費用は前期比300億円減少致しました。
なお、上記に記載した項目以外の主な損益の状況は、次のとおりであります。
・営業外損益
有利子負債の増加により支払利息は前期比6億増加の11億円となりましたが、Xバンド事業債権に係る受取利息増加等により受取利息は前期比10億円増加の13億円となりました。これらに加え、受取利息以外の営業外収益を10億円計上したこと等により営業外損益は純額で11億円の利益となりました。
・特別損益
特別損失に減損損失12億円を計上した一方で、特別利益にXバンド事業衛星1号機に係る受取損害賠償金18億円を計上したこと等により特別損益は純額で5億円の利益となりました。
・法人税等合計
税金等調整前当期純利益172億円に対し、法人税等合計63億円(税効果会計適用後の法人税等の負担率は36.3%)を計上致しました。
また、EBITDAは前期比47億円減少の430億円となっております。
(注)EBITDAは、親会社株主に帰属する当期純利益、法人税等合計、支払利息、減価償却費、のれん償却額の合計として算定しております。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
a.生産実績
当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
b.受注実績
当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
前期比(%)
メディア事業(百万円)102,638△9.6
宇宙・衛星事業(百万円)42,863△46.0
合計(百万円)145,501△24.6

(注1)セグメント間取引については相殺消去しております。
(注2)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 平成28年4月1日
至 平成29年3月31日)
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
防衛省37,54919.5--

当連結会計年度における防衛省に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(注3)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)財政状態
当連結会計年度末における資産合計は3,593億円となり、前期比1億円減少致しました。
流動資産は、JCSAT-17の調達等により仕掛品が67億円増加した一方で、前期に計上したXバンド事業衛星2号機に係る債権回収等により売掛金及びリース債権が合計で106億円減少したこと等から、前期比15億円減少しました。なお、当連結会計年度末における仕掛品残高441億円は、主に平成30年4月に防衛省へ引き渡したXバンド事業衛星1号機の調達原価や、打ち上げ後に国内顧客への貸し手側ファイナンス・リース取引として会計処理を予定しているJCSAT-17の調達原価であります。また、現金及び預金と有価証券の合計額は、前期とほぼ同水準の463億円となっております。
有形固定資産及び無形固定資産は、通信衛星設備の調達等の設備投資159億円があった一方で、減価償却費235億円、のれん償却額9億円等により、前期比89億円減少致しました。
投資その他の資産は、持分法適用関連会社であるHorizons-3e Satellite LLC(以下「Horizons-3e社」)への投資及び貸付等により、投資有価証券が30億円、長期貸付金が62億円増加したため、前期比103億円増加致しました。なお、Horizons-3e社は当社グループとIntelsat社が共同事業(以下「Horizons 3e事業」)を行う目的で設立したものであります。
当連結会計年度末における負債合計は1,397億円となり、前期比59億円減少致しました。
主な減少は未払金の減少141億円であり、主な増加はXバンド事業やHorizons 3e事業に関する借入れ等による有利子負債の増加100億円であります。なお、Xバンド事業やHorizons 3e事業に必要となる資金調達は、取引銀行と締結したコミットメントライン契約によっております。
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,196億円となり、前期比57億円増加致しました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益等による利益剰余金の増加57億円であります。また、自己資本比率は60.3%となり、前期比1.7ポイント増加致しました。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、のれん償却額の合計416億円に加え、Xバンド事業衛星2号機に係る債権回収等による売上債権の減少97億円がありましたが、たな卸資産の増加67億円、未払金の減少141億円、法人税の支払額65億円等により225億円の収入(前期は70億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出166億円、長期貸付けによる支出62億円、関係会社株式の取得による支出31億円等により、272億円の支出(前期は229億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入223億円、長期借入金の返済による支出116億円、配当金支払による支出56億円等により、49億円の収入(前期は135億円の収入)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比2億円増加し、463億円となりました。