有価証券報告書-第12期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/21 15:02
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148項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表及び当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表及び財務諸表の作成にあたりまして、当社経営陣は当連結会計年度の財政状態、経営成績に影響を与える重要な会計方針の採用及び見積りを行っております。この見積りは過去の実績や当連結会計年度末の状況に基づいて行っておりますが、実際の結果と異なる場合があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しの動きや、国内の企業収益、雇用環境の改善を背景として、緩やかに回復しております。
当社グループを取り巻く環境としては、メディア事業の分野では既存の有料放送市場が成熟している一方で、定額制又は無料のインターネット動画配信サービスが台頭してきており、コンテンツ獲得及び顧客獲得の両面で国内外の事業者との競争が激化しております。宇宙事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や携帯電話基地局向けバックホール回線の需要が拡大する一方で、グローバルマーケットにおいて海外衛星オペレーターとの厳しい価格競争に直面しております。また、ベンチャー投資の増加に伴い、世界レベルで新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、安価なロケットの開発や大規模な低軌道衛星通信システムプロジェクトを推進するなど、ビジネスの環境が大きく変化しようとしております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
区分前期
(百万円)
当期
(百万円)
前期比
(百万円)
増減率
(%)
営業収益145,501164,01418,51312.7%
営業利益15,65215,290△361△2.3%
経常利益16,71216,640△71△0.4%
税金等調整前当期純利益17,24415,515△1,728△10.0%
親会社株主に帰属する当期純利益11,3539,681△1,671△14.7%

視聴料収入が43億円減少いたしましたが、Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業(以下「Xバンド事業」)の衛星1号機引渡による売上230億円の計上により営業収益は増加いたしました。一方、メディア事業利益の減少により、営業利益が減少したことに加え、特別損失に投資有価証券評価損12億円を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益が減少いたしました。
当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「宇宙・衛星事業」としていたセグメントの名称を「宇宙事業」に変更しております。
区分主要な事業内容
メディア事業プラットフォーム事業及びコンテンツ事業
宇宙事業衛星通信事業、放送事業者向け衛星回線提供及び宇宙関連事業


当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(業績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
<メディア事業>・コンテンツの差別化
オリジナル番組投入による競合サービスとの差別化として、連続オリジナルアニメ「グラゼニ」及び連続ドラマ「I"s(アイズ)」を放送いたしました。
スポーツコンテンツでは、ドイツ・ブンデスリーガ、ベルギーリーグ、ポルトガルリーグ及びイタリア・セリエAの放送権・配信権を獲得し、2018年8月より放送を開始するとともに、「欧州サッカーセット」を「スカパー!サッカーセット」に統合いたしました。海外のトップリーグに加え、ルヴァンカップや天皇杯といった国内サッカーや様々なオリジナル番組も多数放送し、サッカーファンの期待に応えております。
また、プロ野球2019シーズンでは、2019年3月よりセ・パ12球団の公式戦全試合の生中継に加え、「スカパー!オンデマンド」で同時配信しております。
・サービスの差別化
2017年12月より2018年3月末まで実施し好評を博した「スカパー!新基本パック複数台無料キャンペーン」を2018年9月末まで延長いたしました。10月には、テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネルが見放題となる「スカパー!基本プラン」を発売いたしました。同商品の契約件数は2019年3月末時点で302,746件となり、新規加入件数の増加に寄与しております。引き続き視聴環境を整備することにより、接触人数・接触時間の増加及び満足度の向上を図り、解約抑止と加入者数の増加を目指してまいります。
また、サービスの高画質化に向けた取り組みとして、「スカパー!」において、標準画質チャンネルのHD(ハイビジョン)化を推進しており、2019年3月末時点で56チャンネルがHDとなっております。
さらに、2018年12月より「新4K8K衛星放送」を開始し、新たに9つの4Kチャンネルを放送しております。なお、「スカパー!」の4Kチャンネル「スカチャン 4K」において、2019年3月より開幕した「F1グランプリ2019」全セッションの完全生中継を行っております。
・新たな収益の獲得及び事業領域の拡大
2018年6月に㈱電通、㈱アカツキ、㈱東北新社と共同で㈱THReee entertainment(以下「THReee entertainment社」)を設立いたしました。THReee entertainment社は、音楽ライブコンテンツの海外向け放送権・配信権の販売、スポーツ・音楽におけるファンコミュニケーションアプリの開発・提供など、エンタテインメント領域においてコンテンツホルダーと共にコンテンツの企画・制作・運用を行うことを目的として設立した新会社であり、当社グループは、今後THReee entertainment社との連携により、新規事業領域への取り組み強化を図ってまいります。
また、2018年8月からは、LINE、Amazon、Googleの各社が展開するスマート・スピーカー向けに、「スカパー!番組検索」及び「スカパー!おすすめ番組」の機能提供を開始いたしました。
以上の結果、当連結会計年度における加入件数は次のとおりとなりました。
新規加入件数再加入件数解約件数純増減数累計加入件数
当期457千件186千件658千件△15千件3,248千件
前期比増減87千件7千件51千件43千件△15千件


当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前期
(百万円)
当期
(百万円)
前期比
(百万円)
増減率
(%)
営業収益
外部顧客への営業収益102,63898,314△4,323△4.2%
セグメント間の内部営業収益等3,1603,181200.7%
105,798101,495△4,302△4.1%
セグメント利益3,2332,528△704△21.8%

視聴料収入の減少43億円や、それに伴う番組供給料の減少27億円があった一方で、コンテンツ費が19億円減少いたしましたが、減価償却費の増加6億円等により、セグメント利益が減少いたしました。
<宇宙事業>・宇宙・防衛ビジネス
防衛省より受注したXバンド事業衛星1号機につきましては、2018年4月の打ち上げに成功し、その後も安定的な運用を継続しております。
・グローバル・モバイルビジネス
インド洋や太平洋の船舶向けインターネット接続サービスとして、従来の「OceanBB」よりも高速な通信を実現する次世代サービス「OceanBB plus」の提供を2018年4月より開始いたしました。 また、航空機向けインターネット接続サービス事業者に対する衛星回線の提供については、導入機数の増加や機内利用の拡大により、堅調に推移しております。 2018年9月にIntelsat S.A.(以下「Intelsat社」)との4機目の共同調達衛星であるHorizons 3eの打ち上げに成功いたしました。本衛星は当社グループにおいて初めて導入するハイスループット衛星(以下「HTS」:従来よりも伝送容量を大幅に拡張した衛星)であり、アジア・太平洋地域で高まる航空機・船舶等のモバイル需要に対応いたします。
・低軌道衛星関連事業領域の拡大への取り組み
Planet Labs Inc.(以下「Planet社」)の保有する多数の超小型地球観測衛星群により高頻度で撮影された衛星画像販売サービスに関しては、政府系機関や、民間の農業・災害対策・遠隔監視等の分野で需要が拡大しており、順調に契約を獲得しております。
なお、当期において以下の出資及び業務提携等を行っております。
2018年12月に衛星画像とAI技術の融合による新規分野の共同開拓を目的として、Planet社へ出資いたしました。また、㈱アクセルスペースとの間で、低軌道衛星用地上局サービスを同社の超小型地球観測衛星に向けて提供する契約を締結いたしました。なお、同サービスは、当社グループとKongsberg Satellite Services ASと共同で提供するサービスであります。
2019年1月に関係強化や技術・ノウハウ獲得を目指し、当社グループと販売代理店契約を締結しているOrbital Insight Inc.へ出資いたしました。
2019年3月に㈱パスコとの間で、低軌道周回衛星に関するサービスの効率化・市場拡大を図ると共に、付加価値の高いサービス創出を目指すための業務提携に合意いたしました。
・衛星運用の安定性及び信頼性の確保と効率化
2018年4月にSuperbird-B2(軌道位置:東経162度)の後継衛星であるSuperbird-8(軌道上名称:Superbird-B3)の打ち上げに成功し、7月より運用を開始しております。この衛星はKuバンドとKaバンドの高性能トランスポンダを搭載し、主に国内のお客様向けに衛星通信サービスを提供いたします。
当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前期
(百万円)
当期
(百万円)
前期比
(百万円)
増減率
(%)
営業収益
外部顧客への営業収益42,86365,70022,83653.3%
セグメント間の内部営業収益等7,5367,6891522.0%
50,40073,38922,98945.6%
セグメント利益13,13713,4302922.2%

Xバンド事業衛星1号機引渡による売上230億円を計上いたしました。また、減価償却費が16億円減少いたしましたが、Xバンド事業衛星1号機引渡しによる売上原価の計上等により営業費用が227億円増加いたしました。
なお、営業損益以外の主な損益の状況は、次のとおりであります。
・営業外損益
有利子負債の増加により支払利息が前期比6億増加の16億円となった一方で、Horizons-3 Satellite LLCへの貸付金及びXバンド事業債権の増加により受取利息が前期比9億円増加の22億円となったことや、受取利息以外の営業外収益を8億円計上したこと等により、営業外損益は純額で13億円の利益となりました。
・特別損益
特別損失に非上場株式の投資有価証券評価損12億円を計上したこと等により、特別損益は純額で11億円の損失となりました。
・法人税等合計
税金等調整前当期純利益155億円に対し、法人税等合計60億円(税効果会計適用後の法人税等の負担率は38.9%)を計上致しました。
また、EBITDAは前期比23億円減少の407億円となっております。
(注) EBITDAは、親会社株主に帰属する当期純利益、法人税等合計、支払利息、減価償却費、のれん償却額の合計として算定しております。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
a. 生産実績
当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
b. 受注実績
当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前期比(%)
メディア事業(百万円)98,314△4.2
宇宙事業(百万円)65,70053.3
合計(百万円)164,01412.7

(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。
(注2) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
防衛省24,46114.9

前連結会計年度における防衛省に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(注3) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は3,761億円となり、前期比168億円増加いたしました。
流動資産は、仕掛品が125億円減少した一方で、売掛金の増加195億円や、現金及び現金同等物の増加18億円等により、前期比84億円増加いたしました。なお、仕掛品は、JCSAT-17の調達による増加の一方で、Xバンド事業衛星1号機打ち上げに伴う売上原価への振替により減少いたしました。また、売掛金は、Xバンド事業衛星1号機打ち上げに伴う債権計上等により増加いたしました。
有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資238億円があった一方で、減価償却費225億円、のれん償却額9億円等により、前期比1億円の減少となりました。
投資その他の資産は、投資有価証券が20億円、長期貸付金が71億円増加したこと等により、前期比85億円増加いたしました。なお、投資有価証券は、持分法適用関連会社であったエキサイト社株式の売却や、投資有価証券評価損の計上があった一方で、持分法適用関連会社Horizons-3 Satellite LLCへの投資を行ったこと等により増加いたしました。また、長期貸付金は、Horizons-3 Satellite LLCへの貸付により増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は1,521億円となり、前期比124億円増加いたしました。
主な増加はXバンド事業やHorizons 3e事業に関する借入れ等による有利子負債の増加153億円であります。
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,240億円となり、前期比44億円増加いたしました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益等による利益剰余金の増加43億円であります。また、自己資本比率は58.9%となり、前期比1.4ポイント減少いたしました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、のれん償却額の合計389億円に加え、売上債権の増加195億円、たな卸資産の減少127億円、法人税等の支払70億円等により259億円の収入(前期は225億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出225億円、長期貸付けによる支出71億円、関係会社株式の取得による支出46億円等により、335億円の支出(前期は272億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入491億円、長期借入金の返済による支出343億円、配当金支払による支出53億円等により、94億円の収入(前期は49億円の収入)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比18億円増加し、481億円となりました。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの設備投資資金は主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、一定の流動性を確保するため、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。
また、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計153億円)を締結し、資金の流動性リスクに備えるとともに、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
なお、Xバンド事業やHorizons 3e事業の資金調達は、取引金融機関からの借入によって行いました。当連結会計年度末におけるこれらの借入金残高は、Xバンド事業が619億円、Horizons 3e事業が247億円となっておりますが、Xバンド事業に関する借入金は当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する借入金は当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。