有価証券報告書-第13期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/07/30 14:09
【資料】
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【項目】
145項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
なお、本文中の記載金額は、億円単位の表示は億円未満四捨五入とし、百万円単位の表示は百万円未満切捨てとし
ております。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しの動きや雇用環境の改善を背景として、緩やかな回復基調が続いておりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、年度末にかけて急速に悪化いたしました。
当社グループを取り巻く環境としては、メディア事業の分野では既存の有料放送市場が成熟している一方で、定額制又は無料のインターネット動画配信サービス市場は急拡大しており、コンテンツ獲得及び顧客獲得の両面で国内外の事業者との激しい競争が続いております。宇宙事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や5Gを活用した新たなサービスの登場による携帯電話基地局向けバックホール回線の需要が拡大する一方で、グローバルマーケットにおいて海外衛星オペレーターとの厳しい価格競争に直面しております。また、ベンチャー投資の増加に伴い、世界レベルで新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、安価なロケットの開発や大規模な低軌道衛星通信システムプロジェクトを推進するなど、ビジネスの環境が大きく変化しております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
区分前期
(百万円)
当期
(百万円)
前期比
(百万円)
増減率
(%)
営業収益164,014139,541△24,472△14.9%
営業利益15,29015,263△27△0.2%
経常利益16,64016,088△552△3.3%
税金等調整前当期純利益15,51515,492△22△0.1%
親会社株主に帰属する当期純利益9,68112,0272,34524.2%

なお、EBITDAは前期比8億円増加し、415億円となっております。
当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。
区分主要な事業内容
メディア事業メディア事業及びFTTH事業
宇宙事業衛星通信事業、放送事業者向け衛星回線提供及び宇宙関連事業

当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(業績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
なお、当連結会計年度より、セグメント利益を「営業利益」から「親会社株主に帰属する当期純利益」に変更しております。
<メディア事業>・サービスの拡充及び差別化
(サービスの拡充)
テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネルが見放題となる「スカパー!基本プラン」の契約件数は、2020年3月末時点で500千件(前期末比200千件増加)となりました。引き続き視聴環境を整備することにより、視聴人数・視聴時間の増加及び満足度の向上を図り、解約抑止と加入者数の増加を目指してまいります。
「スカパー!4K」では、2019年9月から11月にわたり開催された「ラグビーワールドカップ2019」全48試合4K生中継などのコンテンツを提供いたしました。また、テレビ視聴サービス(光ファイバーによる地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービス)では、2019年9月よりBS/110度CS左旋4K8K放送の提供を開始し、現在放送されている新4K8K衛星放送全チャンネルを視聴することが可能となりました。
お客様のさらなる利便性拡大に向けた取り組みとして、従来の「スカパー!プレミアムサービス」に加え、「スカパー!サービス」でも2019年10月よりWOWOWの放送を開始いたしました。今後、スカパー!の豊富なチャンネルとWOWOWのコンテンツを連動させ視聴料の拡大を図ってまいります。
(コンテンツの差別化)
プロ野球はセ・パ12球団公式戦のテレビ生中継に加え、「スカパー!オンデマンド」でも同時ライブ配信をしております。海外サッカー「ドイツ ブンデスリーガ」は、全試合放送のほか、オンデマンド専用商品である「ブンデス・ポルトガルLIVE」を配信しております。また、2020年3月1日には総合スポーツチャンネルスポーツライブ+(プラス)を開局し、2020年シーズンの放送権を獲得したプロ野球福岡ソフトバンクホークスの主催試合を中心に、海外サッカーや国内サッカー、B.LEAGUE等のスポーツ中継を行い、スポーツコンテンツをより多くのお客様にお楽しみいただけるようになりました。
音楽コンテンツでは、2020年1月に行われた「東方神起 LIVE TOUR 2019 ~XV~」最終公演を、ホーム・ライブ・ビューイング形式により「BSスカパー!」で独占生中継いたしました。
当連結会計年度における加入件数は次のとおりとなりました。
新規(注)解約純増減累計
当期615千件693千件△78千件3,170千件
前期比△28千件35千件△63千件△78千件

(注)従来の「新規加入件数」及び「再加入件数」を合算して表示しております。
以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前期
(百万円)
当期
(百万円)
前期比
(百万円)
増減率
(%)
営業収益
外部顧客への営業収益98,31494,382△3,932△4.0%
セグメント間の内部営業収益等3,1813,263822.6%
101,49597,645△3,849△3.8%
営業利益2,5283,07654721.6%
セグメント利益(親会社株主に帰属する当期純利益)1,8764,5462,670142.3%

視聴料収入の減少39億円により営業収益が減少いたしましたが、番組供給料の減少20億円や販売促進費用等の減少22億円に加え、連結子会社間の吸収合併に伴う繰越欠損金の利用により法人税等が22億円減少したため、セグメント利益は増加いたしました。
なお、当期における新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は軽微でありましたが、今後は自宅で過ごす時間が増えることによるテレビ視聴時間増大が見込まれる一方、各種シーズンスポーツの開催期間短縮や音楽ライブの中止・延期等で、視聴料関連収入の減少を見込んでおります。
<宇宙事業>・既存事業の強化
移動体通信の既存顧客による長期利用を目的として、2020年2月にJCSAT-17の打ち上げを実施いたしました。今後、静止軌道上での性能確認試験を経て運用を開始する予定です。
航空機向けインターネット接続サービス事業者への衛星回線の提供は、導入機数の増加や機内利用の拡大により、2019年度は堅調に推移しました。
グローバル・モバイルビジネスの拡大及び競争力の強化のため、2019年12月にHTSであるJCSAT-18の打ち上げを実施し、2020年1月より運用を開始いたしました。また、前期に打ち上げたHTSのHorizons 3eは、順調に収益を拡大しております。
・新たな技術の活用や事業領域拡大への取り組み
Planet Labs Inc.の保有する多数の超小型地球観測衛星群により高頻度で撮影された衛星画像販売サービスに関しては、政府系機関や民間の農業・災害対策・遠隔監視等の分野で順調に契約を獲得しております。さらに2019年11月より、高頻度に船舶動静把握ができる「高頻度船舶検出サービス」の提供を開始いたしました。
宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)が公示した「技術試験衛星9号機(ETS-9)バスの定常運用及び相乗りペイロードの追加搭載等」について、2019年7月に当社グループが契約先として選定されました。今後は当該衛星の運用を請け負うとともに、当社グループの静止軌道光学モニタを同衛星に相乗りさせ、新たなサービスの検討などに活用いたします。また、JAXAより小型実証衛星4型を2019年12月に譲り受けました。これにより当社グループは低軌道衛星を初めて自ら保有・運用することとなりました。
以上の結果、当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前期
(百万円)
当期
(百万円)
前期比
(百万円)
増減率
(%)
営業収益
外部顧客への営業収益65,70045,159△20,540△31.3%
セグメント間の内部営業収益等7,6898,3736848.9%
73,38953,533△19,855△27.1%
営業利益13,43012,901△528△3.9%
セグメント利益(親会社株主に帰属する当期純利益)8,2318,029△201△2.5%

前期のXバンド事業衛星1号機引渡による売上230億円の剥落等により、営業収益が減少いたしました。また、Horizons 3eの収益は順調に拡大しておりますが、同衛星にかかる固定費の発生等により、セグメント利益は減少しております。
なお、当期における新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は軽微でありましたが、今後は主に航空機の減便等の影響により、移動体向けに提供している衛星回線利用の減少を見込んでおります。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
a. 生産実績
当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
b. 受注実績
当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前期比(%)
メディア事業(百万円)94,382△4.0
宇宙事業(百万円)45,159△31.3
合計(百万円)139,541△14.9

(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。
(注2) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
防衛省24,46114.9--

当連結会計年度における防衛省に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(注3) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は3,784億円となり、前連結会計年度末比(以下「前期比」)23億円増加いたしました。
流動資産は、現金及び現金同等物の減少45億円に加え、Xバンド事業に関する債権回収等により売掛金が32億円減少いたしましたが、JCSAT-17の調達等により仕掛品が157億円増加いたしました。
有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資により195億円増加いたしましたが、減価償却費及びのれん償却額により242億円減少いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は1,494億円となり、前期比27億円減少いたしました。
主な要因はXバンド事業に関する借入金の返済等による有利子負債の減少56億円であります。
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,289億円となり、前期比49億円増加いたしました。
主な増加は親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加67億円であり、主な減少は子会社であるWAKUWAKU JAPAN㈱の株式を追加取得したこと等による非支配株主持分の減少17億円であります。なお、2019年5月8日開催の取締役会決議に基づき、2019年5月20日付で、自己株式47,595,852株の消却を実施いたしました。これにより、資本剰余金及び自己株式がそれぞれ262億円減少しております。また、自己資本比率は60.3%となり、前期比1.4ポイント増加いたしました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、のれん償却額の合計397億円に加え、売上債権の減少31億円がありましたが、たな卸資産の増加159億円及び法人税等の支払55億円等により、289億円の収入(前期は259億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出198億円等により208億円の支出(前期は335億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出52億円、配当金支払による支出53億円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出19億円等により125億円の支出(前期は94億円の収入)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比45億円減少し、436億円となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(財務戦略の基本的な考え方)
衛星という社会性の高いインフラを保有し、かつメディア事業を展開している当社グループは、放送と通信が融合した総合的な事業の拡大と経営の効率化を通じて企業価値を最大限に高めるため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進してゆくことを財務戦略の基本方針としています。
(資金需要の主な内容及び資金調達)
当社グループにおける主な資金需要は、事業活動上の必要な運転資金、放送設備や通信衛星設備の調達等の設備投資資金、戦略的なM&A資金等です。これらの資金需要は、主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。また、機動的な資金調達を可能とすべく400億円の社債発行登録枠を確保しております。
なお当社グループでは、一定の手元流動性を維持する資金計画を作成・実行するとともに、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計153億円)を締結して資金の流動性リスクに備えております。また、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
(借入金の状況と返済方針)
当連結会計年度末における借入金残高は824億円となっておりますが、このうちXバンド事業に関する金融機関からの借入金569億円については当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する金融機関からの借入金240億円については当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって当社グループが用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は、今後の感染症の広がり方や収束時期等を予測することが困難であるため、当連結会計年度末時点で入手可能な情報に基づき見積りを行っております。
詳細につきましては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)をご参照ください。
① 貸倒引当金
売上債権や貸付金等の貸倒損失に備えるため、過去の債権回収実績や債務者の財政状態より算出した回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。このため、将来債務者の財政状態悪化により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② 固定資産の減損
管理会計上の区分に基づいた各事業用資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナス又はマイナスの見込みの場合、当該資産グループの回収可能価額を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、その差額を減損損失として計上しております。このため、将来事業用資産グループの収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
③ 投資の減損
所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値が著しく下落した場合、回復する見込があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。このため、将来の市況悪化や投資先の業績悪化により、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生した場合や投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来回収が見込まれる一時差異等に係る税金の額を計上しておりますが、その回収可能性は将来の合理的な課税所得の見積りにより判断しております。このため、業績悪化による課税所得の見積りの変更等により回収可能性の見直しが必要となる場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。