有価証券報告書-第44期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、企業の業績改善と、雇用・所得環境の向上を背景とした個人消費の持ち直しにより、緩やかな回復傾向が続いております。国際経済においては、米国景気の回復が続いているものの、長期化する米中の通商問題や英国のEU離脱問題など、各国の政策動向による不確実性には留意を要する状況にあります。
当業界においては、政府による「教育再生」に向けた具体的な取組みとして、大学入試制度の抜本的な改革や、グローバル化に対応した英語教育の見直し、AIやICTを活用した教育手法の開発などが活発に議論されるなか、必要とされる教育内容や質の変化に応じて、民間教育が担うべき役割や責務も、ますます大きなものになっております。各企業は、少子化による市場縮小に加え、他業種企業の参入や具体化してきた教育制度改革への対応、生徒、保護者が求める教育サービス水準の更なる高まりと厳しい選別にも直面しており、企業間競争は激しさを増しております。
このような環境の下、当社グループは、人財育成企業として、「独立自尊の社会・世界に貢献する人財の育成」という教育理念をグループ全体が共有し、その実現に取り組んでおります。
「心・知・体」の教育を総合的に行える体制の構築を目指し、高校生部門(東進ハイスクール、東進衛星予備校、早稲田塾等)、小・中学生部門(四谷大塚等)、スイミングスクール部門(イトマンスイミングスクール)を中心に、各部門が提供するコンテンツの充実や教育指導方法の深化、受講環境の整備などを進めてまいりました。
「学力を伸ばす模試」として実施してきた「全国統一テスト」は、2018年度から中学生テスト・高校生テストで6月開催を追加、小学生テストと同様に年2回実施とすることで、小学校から中学生、高校生まで一貫した全国模試として体制を整備いたしました。また、2020年度から導入される「大学入学共通テスト」の初年度生である高校1年生(現高校2年生)を対象とした「共通テスト対応模試」を新規に実施したほか、英語4技能評価への対応や、AIを活用した講座の開発など、新たな教育手法や講座の開発についても、前期から引き続き対応を進めました。5年目を迎える「夏の教育セミナー」には、2018年度も多くの高等学校の先生方にご参加いただき、公教育との連携強化の取り組みも進めるなど、当社の教育理念を具体的な形とする取組みをさらに深化させております。こうした取組みは、今春の東京大学現役合格者数において当社史上最高数を更新したほか、旧7帝大、早稲田、慶応など難関大学への高い合格実績として結実いたしました。また、2018年3月期に校舎体制の見直しを実施した早稲田塾では、経営資源の集中により、売上回復と経費圧縮の両面から事業の再建が順調に進んでおります。
こうしたなか、当連結会計年度の営業収益は、45,682百万円(前年同期比0.6%減)となりました。これは、小・中学生部門が堅調に推移した一方、高校生部門とスイミングスクール部門では期中の生徒数推移が前年並みに留まったことによるものであります。
費用面では、広告宣伝費が中学生・高校生の「全国統一テスト」6月追加開催に伴うテレビCMなどの広告活動を主因として対前年同期で1,135百万円増加したことに加え、上述の「共通テスト対応模試」や新規講座の開発、校舎現場の指導力強化・教務力充実など、教育機関の責務である学習の「成果」を追求するため、学力大巾向上の実現に焦点を絞った施策を進め、将来に向けた取り組みを引き続き前倒しで実施いたしました。このため費用全体としては対前年同期2,222百万円の増加となる43,015百万円(前年同期比5.4%増)となりました。
この結果、営業利益は2,666百万円(前年同期比48.3%減)、経常利益は2,396百万円(前年同期比49.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,016百万円(前年同期比61.1%減)となりました。
セグメント別の状況
当連結会計年度におけるセグメントごとの業績は次のとおりであります。なお、セグメント利益は連結損益計算書の営業利益に調整額を加えたものであります。
(高校生部門)
当部門は、東進ハイスクール、東進衛星予備校、早稲田塾等で、主に高校生を対象とした教育事業を行っており、質の高い授業と革新的な学習システムを提供する我が国最大級の予備校として、当社グループの主要事業となっております。
当部門では、2020年度の大学入試制度改革に向けた対応が求められるなか、学力を大巾に伸ばす指導を実現する施策を進めました。「全国統一テスト」において高校生テストの6月開催追加や、「大学入学共通テスト」に対応した「共通テスト対応模試」の新規実施などの施策を進めましたが、施策の効果発現、浸透までに一定の時間を要しており、期中の生徒数推移は前年並みに留まることとなりました。
費用面では、上述の「全国統一テスト」や「共通テスト対応模試」に加え、英語4技能評価への対応や、AIを活用した新規講座の開発など、将来に向けた取り組みを引き続き前倒しで積極的に進めました。
当連結会計年度末の校舎数は、直営校として東進ハイスクール99校(当連結会計年度に亀戸校、三鷹校、二子玉川校を開設)、早稲田塾12校、また東進衛星予備校のフランチャイズを構成する加盟校は、当連結会計年度末時点で1,023校となっております。
この結果、当連結会計年度のセグメント売上高は27,236百万円(前年同期比2.5%減)、セグメント利益は3,807百万円(前年同期比34.3%減)となりました。
(小・中学生部門)
当部門は、四谷大塚、東進四国、東進育英舎等で、主に小学生、中学生を対象とした教育事業を行っております。中学受験指導のパイオニアとして全国最大の中学受験模試「合不合判定テスト」を主催する四谷大塚、各地域に根差して展開する東進育英舎、東進四国(東進スクール)など、それぞれ特色を有し、事業を進めております。
当部門では、四谷大塚を中心に生徒数が引き続き増勢にある一方で、「全国統一テスト」において中学生テストの6月追加開催に伴う経費の増加があり、利益面では減少となりました。
当連結会計年度末時点の校舎数は、首都圏に四谷大塚27校(他にYTnet・四谷大塚NET加盟教室数873教室)、愛媛県で株式会社東進四国が運営する東進スクール17校、茨城県で株式会社東進育英舎が運営する東進育英舎4校となっております。
この結果、当連結会計年度のセグメント売上高は8,635百万円(前年同期比4.6%増)、セグメント利益は817百万円(前年同期比22.5%減)となりました。
(スイミングスクール部門)
当部門は、スイミングスクールの草分けであり、乳幼児から小中学生、成人に至る幅広い年齢層に支持されるイトマンスイミングスクールとして、国内最大級のスイミング事業を展開し、主に水泳教室、フィットネスクラブの運営を行っております。世界に通じる選手育成にも力を入れており、これまで30名以上のオリンピック選手を輩出し、スイミング界の名門として、高い評価をいただいております。
当部門では、生徒数は前年並みで推移しましたが、新規校舎の開設や一部校舎の移転に伴う費用等の支出により、利益面では減少となりました。
当連結会計年度末時点の校舎数は35校(当連結会計年度に「イトマングランドフィットネス」を開設、京都校を移転新設。他に提携校19校)となっております。
この結果、当連結会計年度のセグメント売上高は7,494百万円(前年同期比1.0%増)、セグメント利益は566百万円(前年同期比35.9%減)となりました。
(ビジネススクール部門)
当部門は、東進ビジネススクール等で、主に大学生、社会人を対象とした教育事業を行っております。大学入学前の未履修科目補習、入学後の教養・基礎分野教材提供など、大学生の基礎学力向上に貢献する大学事業部、企業向けに映像・インターネットを駆使した各種語学研修プログラムを提供する企業営業部、大学生を対象とした東進ビジネススクールを運営する学生部でそれぞれ事業を展開しております。
当部門では、企業営業部の研修受注が大手企業を中心に引き続き順調に伸びており、売上高、利益とも前年を上回りました。
当連結会計年度のセグメント売上高は1,539百万円(前年同期比8.3%増)、セグメント利益は578百万円(前年同期比17.6%増)となりました。
(その他部門)
その他部門には、出版事業部門、こども英語塾部門、国際事業部門を含んでおります。
出版事業部門では、“東進ブックス”として数多くの学習参考書・語学書を出版、高校生向けの「名人の授業」「レベル別問題集」「高速マスター」等のシリーズものが堅調です。また、特色ある「大学受験案内」の発行などを通し、東進のブランド力を高め、東進ハイスクール、東進衛星予備校等とのシナジー効果をあげております。
こども英語塾部門は、セサミ・ストリートを教材化した「セサミ・ストリート・イングリッシュ」を使用して「自ら進んで楽しみながら学習する」新しい英語学習を提案しております。
当連結会計年度のセグメント売上高は1,741百万円(前年同期比6.4%減)、セグメント利益は253百万円(前年同期比4.9%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、以下に記載のキャッシュ・フローにより15,118百万円となり、前連結会計年度に比べて2,575百万円減少いたしました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは2,453百万円の資金増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益1,922百万円の計上に対し、減価償却費2,160百万円及び減損損失352百万円、投資有価証券評価損益281百万円の加算、法人税等の支払額1,846百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは4,654百万円の資金減少となりました。これは、有形固定資産の取得による支出3,903百万円(事業用不動産取得他)、無形固定資産の取得による支出609百万円(ソフトウエア他)及び、投資有価証券の取得による支出142百万円などの要因によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、387百万円の資金減少となりました。これは長期借入れによる収入1,000百万円、社債の発行による収入1,909百万円に対し、長期借入金の返済による支出492百万円及び社債の償還による支出1,551百万円のほか、配当金の支払額1,153百万円、自己株式の取得による支出80百万円などの資金減少があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
当社グループは、生徒に対して授業を行うことを主な業務としておりますので、生産能力として表示すべき適当な指標はありません。
b.受注状況
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) |
高校生部門(千円) | 26,987,663 | 97.6 |
小・中学生部門(千円) | 8,592,603 | 104.6 |
スイミングスクール部門(千円) | 7,494,413 | 101.0 |
ビジネススクール部門(千円) | 1,539,578 | 108.3 |
その他(千円) | 1,068,243 | 86.0 |
合計(千円) | 45,682,501 | 99.4 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来の関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、当社経営陣が決算日現在における収入、費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に貸倒引当金、賞与引当金、固定資産の減損、及び資産除去債務であり、これらについては継続して評価を行っております。
なお、これらの見積り及び評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等
当連結会計年度の経営成績は、営業収益45,682百万円(前年同期比0.6%減)、営業利益2,666百万円(前年同期比48.3%減)、経常利益2,396百万円(前年同期比49.0%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,016百万円(前年同期比61.1%減)となりました。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの主要な事業のひとつである東進衛星予備校は、全国のフランチャイズ加盟校を結び、大学受験を中心として、中学生、高校生から高卒生までの生徒に豊富な講座を提供しております。これらフランチャイズ加盟校の業績は、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼします。これに対し、当社グループでは、教材や募集ツールの開発、提供に止まらず、東進ハイスクール直営校や衛星事業の各加盟校での成功事例の標準化や、運営スタッフの教育・研修など、踏み込んだ加盟校バックアップを進め、「本当に学力を伸ばす」実績を作り上げることで、各加盟校の業績向上を図っております。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、既存の事業活動継続のほか、事業拡大に必要な競争力獲得や、新規事業の立ち上げ等の営業費用であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
主な資金調達の手段としては、継続的な事業収益の計上による自己資金の積み上げを中心に、経営の機動性を確保するために金融機関からの借入・社債などを活用しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、32,551百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は15,118百万円となっております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主重視の立場から収益性の向上に努め、売上高経常利益率を重要な指標としてその向上に向け取り組んでおります。
当連結会計年度の売上高経常利益率は5.2%(前年同期比5.0%減)となりました。これは、中学生・高校生の「全国統一テスト」6月追加開催に伴うテレビCMなどの広告活動や、2020年度の大学受験制度改革に向けた講座開発などの取り組みを引き続き政策的に前倒しで進めたことによるもので、当社の将来の収益確保のために必要な措置として実施したものであります。