訂正有価証券報告書-第35期(令和1年6月1日-令和2年5月31日)

【提出】
2022/10/04 14:34
【資料】
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【項目】
123項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当事業年度(以下、「当期」)における当社の属する国内の情報サービス産業においては、システム更新需要の他、モバイル対応、IoT等デジタルデータを活用した業務効率化、エンドユーザーとの接点強化など企業成長、競争力強化を目的とするクラウドおよびIT投資が堅調に推移しております。
今般の新型コロナウイルスについて、当社としても、社員および顧客企業をはじめとするあらゆるステークホルダーの安全と健康を守り、安定的に事業運営を継続していくための対策を講じることが最重要課題のひとつと捉えております。速やかなリモートワークへのシフトと顧客企業への安定的なサービスの提供、営業体制の構築を実施してまいりました。
このような取り組みの結果、売上高211,357百万円(前年同期比4.4%増)、営業利益68,865百万円(前年同期比10.5%増)、経常利益68,857百万円(前年同期比10.6%増)、当期純利益47,686百万円(前年同期比10.0%増)と、期初に公表した売上高の業績予想を達成し、売上高は10期連続、営業利益、経常利益、当期純利益ともに9期連続で過去最高記録を更新いたしました。
各セグメント別の営業の概況は次のとおりであります。
市場展開方針
当社は、クラウドサービスやデータを活用し、顧客企業のイノベーションの実現とビジネスの変革を支援することにより、さらなる企業成長をめざしております。
また、当社はシステムを構築するために必要なプラットフォーム製品、業務アプリケーション、ハードウェアまでを、クラウド、オンプレミスいずれの環境においても展開可能な総合的製品ポートフォリオを有しております。特にソフトウェア・ライセンス製品は、長年、高度なセキュリティ、可用性と高速処理性能が求められるミッションクリティカル領域で広く採用されております。新たな事業の柱として注力しているオラクルクラウドは、このソフトウェア・ライセンスと同じ設計思想、同じ技術で構築しており、オラクルのソフトウェア・ライセンスで構築したオンプレミス・システムとオラクルクラウドとの連携、双方向の移行を可能とすることを強みとしております。
これらの強みを活かし、注力ポイントである「大型案件の獲得」、オラクルクラウドにAIを組み込み、パッチ適用やパフォーマンス・チューニングなどの保守運用の自律化を行う「Oracle Autonomous Database」へのアップグレード、「ERPアップグレード」をさらに加速させるため、2019年5月東京地域に開設したデータセンターに加え、2020年2月には大阪地域にデータセンターの稼働を開始し、Disaster Recovery(災害被害からの回復、事業継続マネジメント)に対応したサービス提供の体制を調え、エンタープライズのワークロード、セキュリティに対応したクラウドサービス提供に注力してまいりました。
また、市場規模に応じたあらゆる業種のお客様向けに営業部隊を構築し、当社の価値を訴求し続けております。
[用語解説]
(1)クラウドサービス:企業等のITシステムに利用されるソフトウェアやハードウェアのリソースを、インターネットを通じてサービスとして提供する形態。
(2)オンプレミス:ITシステムを自社所有で構築・運用する形態。
[クラウド&ライセンス]
売上高は172,573百万円(前年同期比6.0%増)、営業利益は69,431百万円(前年同期比12.1%増)となりました。内訳につきましては、クラウドライセンス&オンプレミスライセンスの売上高は54,972百万円(前年同期比4.2%増)、クラウドサービス&ライセンスサポートの売上高は117,601百万円(前年同期比6.8%増)となりました。
当セグメントは企業等のIT基盤に利用される、データベース管理ソフトウェア、各種ミドルウェア、ERP等の業務アプリケーションソフトウェアのソフトウェア・ライセンスを販売する「クラウドライセンス&オンプレミスライセンス」とライセンスを利用されているお客様に更新版等のアップデートや技術サポートを提供する「ライセンスサポート」、これらのソフトウェアやハードウェアのリソースを、インターネットを通じてサービス提供する「クラウドサービス」から構成されます。
全般的な需要動向としては、四半期毎の変動はあるものの、ミッションクリティカル・システム向けへのOracle Databaseを中心とするオンプレミス・ライセンスは通信、金融、製造、流通サービス、公共にわたる幅広い業種のお客様からの引き合いが引き続き堅調に推移いたしました。上記の市場展開方針により、当社製品・サービスの価値訴求を積極的に展開し、大型から中堅、小規模に亘る様々な案件を引き続き獲得することができました。
また、「Oracle Autonomous Database Cloud」を始めとするクラウドサービスについては、パフォーマンスやセキュリティ、費用対効果を重視されるお客様からの引合いが多く、当期の戦略のひとつであるエンタープライズ向けERPアップグレード(オンプレミスからクラウドへのリフト&シフト)についても多くの実績を残すことができました。これに伴い、2019年5月に開設した東京地区データセンターおよび2020年2月に新設した大阪地区データセンターの利用量は引き続き順調に増加しており、適宜設備増設を行っております。
[ハードウェア・システムズ]
売上高は17,362百万円(前年同期比5.3%減)、営業利益は758百万円(前年同期比7.7%減)となりました。
当セグメントは、サーバー、ストレージ、エンジニアド・システム、ネットワーク機器等のハードウェアの販売およびそれらのオペレーティングシステム(OS)や関連ソフトウェアを提供する「ハードウェア・システムズ・プロダクト」、ハードウェア製品の技術サポート、修理、メンテナンスの提供およびOS等関連ソフトウェアの更新版等の提供を行う「ハードウェア・システムズ・サポート」から構成されます。
2019 年9 月に提供を開始したインテル社製の“Persistent Memory(永続性メモリ)” を搭載した、“OracleExadata Database Machine X8M” は引き続き多くの引き合いをいただいております。Exadata X8Mは、ストレージ・ボトルネックを排除し、オンライン・トランザクション処理(OLTP)、アナリティクス、IoT、不正検出、高頻度取引など、最も過酷なワークロード向けにパフォーマンスを大幅に向上させます。
[サービス]
売上高は21,420百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益は3,372百万円(前年同期比14.5%減)となりました。
当セグメントは、当社製品の導入支援を行う「コンサルティングサービス」、予防保守サービスやお客様のIT環境の包括的な運用管理サービスを提供する「アドバンストカスタマーサポートサービス」、技術者や利用者向けの研修事業や技術資格の認定事業を提供する「エデュケーションサービス」から構成されております。コンサルティングサービスでは、オンプレミス環境からIaaS・PaaS環境への基盤移行、ERPクラウドを始めとするSaaSとの連携案件など、当社の総合的な製品サービス・ポートフォリオを活かした複合型案件が順調に推移しております。
<報告セグメント別売上高の状況>
区分2019年5月期2020年5月期
金額構成比金額構成比対前年
同期比
百万円%百万円%%
クラウドライセンス&
オンプレミスライセンス
52,74726.154,97226.04.2
クラウドサービス&
ライセンスサポート
110,06654.4117,60155.66.8
クラウド&ライセンス162,81380.4172,57381.76.0
ハードウェア・システムズ18,3409.117,3628.2△5.3
サービス21,23410.521,42010.10.9
合計202,389100.0211,357100.04.4

(注) 金額は単位未満を切り捨て、構成比ならびに対前年同期比は単位未満を四捨五入で表示しております。
(2) キャッシュ・フロー
当期におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、42,309百万円(前年同期比3,143百万円減)となりました。これは主に、税引前当期純利益(68,872百万円)の計上、未収入金の減少(4,084百万円)によるキャッシュ・インがある一方で、法人税等の納付(20,054百万円)、売上債権の増加(6,255百万円)、仕入債務の減少(5,409百万円)等によるキャッシュ・アウトがあった結果によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、30,584百万円(前年同期比51,593百万円減)となりました。これは主に、追加で実施したオラクル・ジャパン・ホールディング・インク(当社の親会社)に対する最長で2019年2月より2年間を貸付期間とする関係会社貸付けによる支出(30,000百万円)および有形固定資産の取得による支出(708百万円)があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、17,097百万円(前年同期比1,003百万円増)となりました。これは主に配当金の支払いによるものであります。
以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物は前事業年度末と比べ、5,413百万円減少し、60,091百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
クラウド&ライセンス79,1173.3
ハードウェア・システムズ14,838△5.3
サービス15,1554.5
合計109,1102.2

(注) 1 金額は、売上原価によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注状況
当社の事業はオラクル・コーポレーションの開発した製品の販売およびそれに付随する関連サービスの提供が主体であり、個別受注生産という概念に該当する業務の金額に重要性がないため、記載を省略しております。
(3) 販売状況
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
クラウド&ライセンス
クラウドライセンス&オンプレミスライセンス54,9724.2
クラウドサービス&ライセンスサポート117,6016.8
クラウド&ライセンス計172,5736.0
ハードウェア・システムズ
ハードウェア・システムズ計17,362△5.3
サービス
サービス計21,4200.9
合計211,3574.4

(注) 1 主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度当事業年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
日本電気㈱25,93012.823,58311.2

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
本項における将来に関する記載は、本有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績の分析
イ 売上高
全社売上高は211,357百万円(前年同期比4.4%増)となりました。セグメント別の売上の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」をご参照ください。
ロ 営業利益および経常利益
ハードウェア・システムズセグメント及びサービスセグメントでは前事業年度を下回りましたが、クラウド&ライセンスセグメントが引き続き堅調に推移したため、全社として営業利益は68,865百万円(前年同期比10.5%増)となりました。
売上原価は、クラウド&ライセンスセグメントにおいてロイヤルティが増加した一方で、業務委託費が減少しました。サービスセグメントにおいては、人件費が増加しました。また、ハードウェア・システムズにおいては、当期仕入高及び人件費が減少しました。
販売費及び一般管理費では、広告宣伝費及び人件費が増加した一方で、業務委託費が減少しました。また、新型コロナウイルスの影響により旅費及び交通費等が減少しました。
営業外損益8百万円の費用(純額)を計上した結果、経常利益は68,857百万円(前年同期比10.6%増)となりました。
ハ 当期純利益
特別利益として新株予約権戻入益(14百万円)及び法人税等(21,186百万円)を計上した結果、当期純利益は47,686百万円(前年同期比10.0%増)となりました。
ニ 1株当たり当期純利益(EPS)
上記の結果、1株当たり当期純利益(EPS)は33.60円増加し、372.52円(前年同期比9.9%増)となりました。
②財政状態の分析
当事業年度末における総資産は294,139百万円(前期末比24,620百万円増)となりました。
(資産の部)
オラクル・ジャパン・ホールディング・インク(当社の親会社)に対する最長で2019年2月より2年間を貸付期間とするローンの追加実施(30,000百万円)及び関係会社貸付金の固定資産から流動資産への振替(160,000百万円)等により、流動資産は249,832百万円(前期末比156,826百万円増)となり、固定資産は44,306百万円(前期末比132,206百万円減)となりました。
(負債の部)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末比で6,454百万円減少し、102,776百万円となりました。これは主に、買掛金の減少(5,409百万円)、前受金の減少(3,041百万円)によるものです。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末比で31,074百万円増加し、191,362百万円となりました。これは主に、ストック・オプションの行使による資本金、資本剰余金の各々の増加(204百万円)、当期純利益の計上(47,686百万円)及び剰余金の配当(17,419百万円)による利益剰余金の増加(30,266百万円)によるものです。この結果、自己資本比率は65.0%(前期末比5.6ポイントアップ)となりました。
なお、当社では、経営の意思決定上、資産及び負債を各セグメントに配分していないため、セグメントごとの財政状態の状況に関する記載を省略しております。
(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの分析
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
②資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社における資金の使途の主な内容としましては、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用並びに各種税金の納付等であります。売上原価の内訳は、主に「クラウド&ライセンス」に係るロイヤルティ、原価部門における労務費及び業務委託費、「ハードウェア・システムズ」セグメントにおける仕入原価であります。その他の資金の使途の主な内容としましては、クラウド事業に関連する設備投資、各種税金の納付、配当金の支払となっております。これらの資金需要は、営業キャッシュ・フローから生じる自己資金によって賄っております。
当社の資金管理・運用については、当社が定める資金管理・運用規程(オラクル・コーポレーションが定めるglobal policy)に則り、高い安全性と適切な流動性の確保を図っております。
また、当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しております。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社においては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載した各種の要因が、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表等は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。この財務諸表等の作成にあたっては、期末日における資産および負債、会計期間における収益および費用に影響を与えるような仮定や見積りを必要とします。過去の経験および状況下において妥当と考えられた見積りであっても、仮定あるいは条件の変化により、実際の結果と異なる可能性があります。
当社の財務諸表で採用する重要な見積りは、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
なお、当事業年度の財務諸表の作成にあたって、新型コロナウイルス感染症の収束時期については合理的に見積もることは出来ないものの、事業への影響が2020年内において、一定程度継続するとの仮定に基づき、会計上の見積り(繰延税金資産の回収可能性の評価や固定資産の減損会計の検討等)を行っております。なお、これによる当社の経営成績および財政状態に与える影響については、現時点において重要性はありません。ただし、今後の状況の変化によって判断を見直した結果、翌事業年度以降の財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。