有価証券報告書-第33期(平成29年6月1日-平成30年5月31日)

【提出】
2018/08/21 14:18
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80項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当事業年度(以下、「当期」)においては、日本国内の経済環境は、米国をはじめとする海外の政策動向や地政学リスクに留意する必要があるものの、金融政策、経済政策により、引き続き緩やかな改善基調にあります。
また社会、企業活動においては生産年齢人口の減少、グローバル対応、新規事業の開拓などの課題に対し、デジタル技術を活用し問題解決に取り組んでいくことが重要となっております。当社の属する国内の情報サービス産業におきましても、システム更新需要の他、モバイル対応、IoT等デジタルデータを活用した業務効率化、エンドユーザーとの接点強化など企業成長、競争力強化を目的とするIT投資が堅調に推移しております。
このような事業環境のもと、柔軟なIT投資と迅速なシステム構築を実現するクラウドサービスへのニーズが高まっております。当社は、クラウドサービスやデータを活用し、顧客企業のイノベーションの実現と成長を支援するベストパートナーになることを目指しております。クラウドの導入アプローチである「Journey to the Cloud」を推進し、顧客企業の経営課題に最適なソリューションを提供するために、社員教育への投資の強化を重要な経営方針の一つとしております。
これらの施策の結果、特に第3四半期および第4四半期(下半期6ヶ月間)において、通信、公共公益、製造
の分野で、経営戦略としてデータ活用に取り組まれている複数のお客さまから大型案件を受注しました。
以上の結果、当期の経営成績につきましては、売上高185,481百万円(前年同期比7.1%増)、営業利益
56,009百万円(前年同期比6.6%増)、経常利益55,978百万円(前年同期比6.6%増)、当期純利益38,751百万
円(前年同期比6.6%増)となり、期初に公表した業績予想レンジを達成し、売上高は8期連続、営業利益、経常
利益、当期純利益はともに7期連続で過去最高を更新しました。
各セグメント別の営業の概況は次のとおりであります。
[クラウドおよびソフトウェア (*)]
(*) 当事業年度より、従来の「新規ライセンスおよびクラウド(SaaS/PaaS/IaaS)と「アップデート&プロダクト・サポート」を統合し、「クラウドおよびソフトウェア」セグメントに変更いたしました。
売上高は146,518百万円(前年同期比8.3%増)、営業利益は55,126百万円(前年同期比6.7%増)となりました。内訳につきましては、クラウド(SaaS/PaaS/IaaS)の売上高は13,203百万円(前年同期比44.2%増)、新規ライセンスの売上高は46,557百万円(前年同期比7.3%増)、アップデート&プロダクト・サポートの売上高は86,757百万円(前年同期比4.9%増)となりました。
当セグメントは企業等のIT基盤に利用される、データベース管理ソフトウェア、各種ミドルウェア、ERP等の業務アプリケーションソフトウェアの新規ライセンスを販売する「新規ライセンス」とライセンスを利用されているお客様に更新版等のアップデートや技術サポートを提供する「アップデート&プロダクト・サポート」、これらのソフトウェアやハードウェアのリソースを、インターネットを通じてサービス提供する「クラウド(SaaS/PaaS/IaaS)」から構成されます。
[用語解説]
(1)SaaS(Software as a Service):財務会計や給与・人事管理などのソフトウェアの必要な機能を必要な分だけ、インターネットを経由して提供するサービス。
(2)PaaS(Platform as a Service):ITシステムを構築、稼働させるための基盤となるデータベース管理ソフトウェアや、異なるソフトウェア間を円滑に連携させる中間層のソフトウェアを、インターネットを経由して提供するサービス。
(3)IaaS(Infrastructure as a Service):ITシステムを構築、稼働させるための基盤(サーバーマシンやストレージなどのハードウェアやネットワークなど)そのものを、インターネットを経由して提供するサービス。
(4)オンプレミス:ITシステムを自社所有で構築・運用する形態。

⦅ クラウド(SaaS/PaaS/IaaS)⦆
SaaSについては、引き続き競争力強化、効率化を目的としたグローバルの間接購買や統合会計ソリューションを提供するERP・EPMクラウドの需要が増加しております。当社の強みである現行システムとのシームレスな連携や、クラウドならではの早期導入とPaaSによる機能拡張が可能であることが評価され、第2四半期においては、現行システムと海外拠点向けに新規導入するERPクラウドを2階層としてご利用いただく案件を受注した他、既存システムをクラウド上に移行するとともに、お客様に特有の業務をPaaSにより追加開発し、新たに導入するERPクラウドとの連携を行う刷新案件を受注いたしました。
またクラウドサービスのメリットである導入容易性、運用コストの低減、常に最新アップデートされた環境上でITシステムの利用が可能なことから、中堅・中小企業を含む幅広いお客様からの受注が増加しております。
また新しい分野では、日本の地球温暖化対策計画を達成するための環境省の取り組みに対し、公益業界向けクラウドサービス「Opower Energy Efficiency Cloud Service」が採用されました。日本全国5つの主要エネルギー事業者が管轄する地域の約30万世帯に向け、行動科学に基づいた省エネレポートを各家庭向けに提供し、自発的な省エネ行動を促す実証実験を支援しております。
PaaS/IaaSについては、お客様の新規システムの開発・検証用途で採用される他、製造業のIoTソリューション向けに、デバイス・システム連携やデータ処理を支援するPaaS製品や、お客様のデータセンター内にオラクルのクラウド環境を設置し、パブリックIaaSおよびPaaSを提供する「Oracle Cloud at Customer」への引き合いが増加しております。
営業・マーケティングにおいては、第2四半期より、クラウド利用を促進するためのプログラムとして、お客様が既にお持ちのオラクル・ソフトウェアライセンスを「Oracle PaaS」に持ち込むことを可能とする「Bring Your Own License(BYOL)」と、シンプルな契約を1つ結ぶだけで、「Oracle PaaS」、「Oracle IaaS」のあらゆるサービスを利用することができる「Universal Credits」の販売を開始いたしました。クラウドサービスの購入方法や利用形態が柔軟になるということで、幅広いお客様にPaaS/IaaSをご利用いただいております。
また平成30年4月には機械学習によって人手を介さずに、バックアップ、最適化、攻撃からの保護、障害から修復を自律的に行う「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud」の提供を開始しました。複雑なITシステムやデータ管理を自動化することで、システム運用の効率化を図り、データのより高度な活用を促進することで、管理・運用コストの削減とイノベーションや新規ビジネス機会の創出に貢献してまいります。
⦅ 新規ライセンス ⦆
主力製品である「Oracle Database 12c」は、マルチテナント機能を活用することで、データベースの運用基盤の統合を可能とし、保守運用作業を軽減するとともに、将来のスムーズなクラウド移行を可能とします。
データ量増加に伴うシステム対応やITシステム基盤統合に関する需要が引き続き堅調に推移しております。第1四半期では金融、公共分野で、第2四半期では製造、金融、公共分野で、第3四半期では、製造、流通、通信公益分野で、第4四半期では通信、公共公益の分野で ITシステムの運用効率化を図る一方、データ活用による事業成長を戦略として推進されているお客様から大型案件を受注いたしました。
⦅ アップデート&プロダクト・サポート ⦆
導入製品や利用環境に応じたプロアクティブ(事前対処的)、かつプリベンティブ(予防的)なサポートを提供する「My Oracle Support」等、製品を利用されているお客様へのサポートの価値訴求や、パートナー企業様との協業を推進した結果、新規のサポート契約、および既存のサポート契約の更新が堅調に推移いたしました。
[ハードウェア・システムズ]
売上高は18,063百万円(前年同期比7.6%減)、営業利益は833百万円(前年同期比10.4%減)となりました。
当セグメントは、サーバー、ストレージ、エンジニアド・システム、ネットワーク機器等のハードウェアの販売およびそれらのオペレーティングシステム(OS)や関連ソフトウェアを提供する「ハードウェア・システムズ・プロダクト」、ハードウェア製品の技術サポート、修理、メンテナンスの提供およびOS等関連ソフトウェアの更新版等の提供を行う「ハードウェア・システムズ・サポート」から構成されます。
[サービス]
売上高は20,898百万円(前年同期比13.8%増)、営業利益は4,912百万円(前年同期比6.0%増)となりました。
当セグメントは、当社製品の導入支援を行う「コンサルティング・サービス」、予防保守サービスやお客様のIT環境の包括的な運用管理サービスを提供する「アドバンストカスタマーサポートサービス」、技術者や利用者向けの研修事業や技術資格の認定事業を提供する「エデュケーション・サービス」から構成されております。
コンサルティング・サービスでは、オンプレミス環境からIaaS・PaaS環境への基盤移行、ERPクラウドを始めとするSaaSとの連携案件など、当社の総合的な製品サービス・ポートフォリオを活かした複合案件が順調に推移しており、またエデュケーション・サービスでは、クラウドアプリケーション開発向けのJavaへの研修需要が増加しております。
<報告セグメント別売上高の状況>
区分平成29年5月期平成30年5月期
金額構成比金額構成比対前年
同期比
百万円%百万円%%
クラウド(SaaS/PaaS/IaaS)9,1595.313,2037.144.2
新規ライセンス43,38625.146,55725.17.3
アップデート&プロダクト・サポート82,72747.886,75746.84.9
クラウドおよびソフトウェア135,27378.1146,51879.08.3
ハードウェア・システムズ19,55111.318,0639.7△7.6
サービス18,36510.620,89811.313.8
合計173,190100.0185,481100.07.1

(注) 金額は単位未満を切り捨て、構成比ならびに対前年同期比は単位未満を四捨五入で表示しております。

(2) キャッシュ・フロー
当期におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、50,881百万円(前年同期比7,794百万円増)となりました。
これは主に、税引前当期純利益(56,082百万円)の計上、前受金の増加(7,267百万円)によるキャッシュ・インがある一方で、法人税等の納付(15,382百万円)等によるキャッシュ・アウトがあった結果によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、42,778百万円(前年同期比26,655百万円増)となりました。これはオラクル・コーポレーション(当社の親会社)の子会社であるOracle America, Inc.からの前期の貸付金の回収による収入(90,300百万円)、定期預金の純増加額(46,000百万円)があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、13,357百万円(前年同期比53,471百万円減)となりました。これは主に配当金の支払いによるものであります。
以上の結果、当期末における現金及び現金同等物は前期末と比べ、80,301百万円増加し、118,326百万円となりました。

(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
クラウドおよびソフトウェア68,45510.9
ハードウェア・システムズ15,022△5.3
サービス13,19521.2
合計96,6739.2

(注) 1 金額は、売上原価によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当事業年度よりセグメントを変更いたしました。セグメント変更の内容については、「第5 経理の状況
2.財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 セグメント情報等」に記載のとおりであります。
4 前期比は、前年同期の数値をセグメント変更後に組み替えて算出しております。
(2) 受注状況
当社の事業はオラクル・コーポレーションの開発した製品の販売およびそれに付随する関連サービスの提供が主体であり、個別受注生産という概念に該当する業務の金額に重要性がないため、記載を省略しております。
(3) 販売状況
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
クラウドおよびソフトウェア
クラウド(SaaS/PaaS/IaaS)13,20344.2
新規ライセンス46,5577.3
アップデート&プロダクト・サポート86,7574.9
クラウドおよびソフトウェア計146,5188.3
ハードウェア・システムズ
ハードウェア・システムズ計18,063△7.6
サービス
サービス計20,89813.8
合計185,4817.1

(注) 1 主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度当事業年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
日本電気㈱18,39010.626,37414.2

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
本項における将来に関する記載は、本有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社の財務諸表等は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表等の作成にあたっては、期末日における資産および負債、会計期間における収益および費用に影響を与えるような仮定や見積りを必要とします。過去の経験および状況下において妥当と考えられた見積りであっても、仮定あるいは条件の変化により、実際の結果と異なる可能性があります。
(2) 経営成績の分析
① 売上高
ハードウェア・システムズセグメントを除く全てのセグメントで増収となった結果、全社売上高は185,481百万円(前期比7.1%増)となりました。セグメント別の売上の分析については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」をご参照ください。
② 営業利益および経常利益
ハードウェア・システムズセグメントを除く全てのセグメントで前事業年度を上回ったため、営業利益は56,009百万円(前年同期比6.6%増)となりました。
ハードウェア・システムズセグメントにおいて減益となりましたが、高採算のアップデート&プロダクト・サポート事業が堅調に推移したこと等により、全社として営業利益は増加しました。
売上原価は、クラウドおよびソフトウェアセグメントにおいてロイヤルティとクラウド事業に係る業務委託費等が増加しました。また、サービスセグメントにおいては、コンサルティング・サービスにおける業務委託費が増加しました。
販売費及び一般管理費は、クラウドおよびソフトウェアセグメントにおいて人員の増加等により人件費が増加しました。
営業外損益30百万円の費用(純額)を計上した結果、経常利益は55,978百万円(前年同期比6.6%増)となりました。
③ 当期純利益
特別利益として新株予約権戻入益(103百万円)を計上した結果、当期純利益は38,751百万円(前期比6.6%増)となりました。
(3) 財政状態の分析
(資産の部)
当事業年度末における流動資産合計は、前事業年度末比で36,992百万円増加し、192,290百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加(126,301百万円)の一方、オラクル・コーポレーション(当社の親会社)の子会社であるOracle America, Inc.からの前期の貸付金の回収による短期貸付金の減少(90,300百万円)によるものです。
当事業年度末における固定資産合計は、前事業年度末比で785百万円増加し、44,218百万円となりました。これは主に、繰延税金資産の増加(906百万円)によるものです。
(負債の部)
当事業年度末における流動負債合計は、前事業年度末比で12,135百万円増加し、105,075百万円となりました。これは主に、サポート及びクラウド等に関する前受金の増加(7,267百万円)、未払法人税等の増加(2,717百万円)によるものです。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末比で25,642百万円増加し、131,425百万円となりました。これは主
に、ストック・オプションの行使による資本金、資本剰余金の各々の増加(725百万円)、当期純利益の計上(38,751百万円)および配当金の支払(14,559百万円)の結果による利益剰余金の増加(24,191百万円)によるものです。この結果、自己資本比率は55.5%(前期末比2.6ポイントアップ)となりました。
なお、当社では、経営の意思決定上、資産及び負債を各セグメントに配分していないため、セグメントごとの財政状態の状況に関する記載を省略しております。
(4) キャッシュ・フロー
当期におけるキャッシュ・フローの状況については、
「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(5) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社における資金の使途の主な内容としましては、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用並びに各種税金の納付等であります。売上原価の内訳は、主に「クラウドおよびソフトウェア売上」に係るロイヤルティ、原価部門における労務費及び業務委託費、「ハードウェア・システムズ」セグメントにおける仕入原価であります。その他の資金の使途の主な内容としましては、クラウド事業に関連する設備投資、各種税金の納付、配当金の支払となっております。これらの資金需要は、営業キャッシュ・フローから生じる自己資金によって賄っております。
平成30年5月31日末現在の運転資本(ワーキングキャピタル)(注)は、87,214百万円であります。
当社の資金管理・運用については、当社が定める資金管理・運用規程(オラクル・コーポレーションが定めるglobal policy)に則り、高い安全性と適切な流動性の確保を図っております。
また、当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しております。
(注)運転資本=流動資産-流動負債
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社においては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載した各種の要因が、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。