有価証券報告書-第34期(平成30年6月1日-令和1年5月31日)

【提出】
2019/08/20 11:58
【資料】
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【項目】
125項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当事業年度(以下、「当期」)における日本国内の経済環境は、引き続き緩やかな改善基調にありましたが、米国をはじめとする政策の変更、貿易摩擦の拡大等の動きがあり、今後の動向について注視する必要があります。
また現在、社会、企業活動においては生産年齢人口の減少、グローバル対応、新規事業の開拓などの課題に対し、デジタル技術を活用し問題解決に取り組んでいくことが重要となっております。当社の属する国内の情報サービス産業におきましても、システム更新需要の他、モバイル対応、IoT等デジタルデータを活用した業務効率化、エンドユーザーとの接点強化など企業成長、競争力強化を目的とするIT投資が堅調に推移しております。
このような事業環境のもと、当社は、クラウドサービスやデータを活用し、顧客企業のイノベーションの実現とビジネスの変革を支援するベストパートナーになることを目指し、社員への継続的な投資を行い、社員の専門性を高めるとともに、営業、コンサルティングサービス、サポートサービスの連携による複合提案力の強化を行ってまいりました。
2018年12月には中堅・中小企業のIT・クラウド活用を推進・支援するための営業拠点として「Oracle Digital Hub Tokyo」を開設しました。当該マーケットをカバーする営業組織「Oracle Digital」と、クラウドERP「Oracle NetSuite」の部門を当拠点に配置し、全国のお客様のニーズにダイレクトに対応できるよう、最新のデジタルツールを活用し、オラクルのクラウド・ソリューション提案を推進しております。
また2019年5月には、ミッションクリティカルなワークロードに対応する次世代型データセンターを東京地域に開設し、「Oracle Autonomous Database」を始めとする「Oracle Cloud」の拡販を行っております。
このような取り組みの結果、当期の経営成績につきましては、売上高202,389百万円(前年同期比9.1%増)、営業利益62,337百万円(前年同期比11.3%増)、経常利益62,284百万円(前年同期比11.3%増)、当期純利益43,360百万円(前年同期比11.9%増)と、期初に公表した業績予想レンジを上回り、売上高は9期連続、営業利益、経常利益、当期純利益ともに8期連続で過去最高記録を更新しました。
各セグメント別の営業の概況は次のとおりであります。
市場展開方針
当社は、システムを構築するために必要なプラットフォーム製品、業務アプリケーション、ハードウェアまでを、クラウド、オンプレミスいずれの環境においても展開可能な、総合的製品ポートフォリオを有しております。特にソフトウェア・ライセンス製品は、長年、高度なセキュリティ、可用性と高速処理性能が求められるミッションクリティカル領域で広く採用されております。新たな事業の柱として注力しているオラクルクラウドは、このソフトウェア・ライセンスと同じ設計思想、同じ技術で構築しており、オラクルのソフトウェア・ライセンスで構築したオンプレミス・システムとオラクルクラウドとの連携、双方向の移行を可能とすることを強みとしております。
現在当社ではこの強みを活かし、お客様が当社の製品サービスを最適な状態でご利用できるよう、社員の専門性を高め、営業、コンサルティングサービス、サポートサービスが連携し、「大型案件の獲得」、「Autonomousアップグレード」、「ERPアップグレード」の3点にフォーカスし、ビジネスを推進しております。
製品・サービス面では、他のクラウドサービスとの差別化の1つとして、オラクルクラウドにAIを組み込み、パッチ適用やパフォーマンス・チューニングなどの保守運用の自律化を推進しております。2018年3月に提供を開始した「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud」に続き、同年8月にはオンライントランザクションを管理する「Oracle Autonomous Transaction Processing」の提供を開始しました。また、ERPアップグレードを推進するためのサービスとして、オンプレミス環境で稼働している「Oracle E-Business Suite」をオラクルのERPクラウドに短期間で移行する「Oracle Soar」の提供を開始しました。
また、2019年2月に当社と日本オラクルインフォメーションシステムズ合同会社は、クラウドサービス販売に関する代理店契約(当社を日本国内の販売代理店とする)を締結いたしました。
購入形態については、より幅広いお客様にオラクルのテクノロジーをより柔軟にご利用いただくため、お客様が既にお持ちのオラクル・ソフトウェア・ライセンスを「Oracle PaaS」に持ち込むことを可能とする「Bring Your Own License (BYOL)」と、シンプルな契約を1つ結ぶだけで、「Oracle PaaS」、「Oracle IaaS」のあらゆるサービスを利用することができる「Universal Credits」を提供し、クラウド&ライセンスビジネスの拡大に取り組んでおります。
[用語解説]
(1)クラウドサービス:企業等のITシステムに利用されるソフトウェアやハードウェアのリソースを、インターネットを通じてサービスとして提供する形態。
(2)SaaS(Software as a Service):財務会計や給与・人事管理などのソフトウェアの必要な機能を必要な分だけ、インターネットを経由して提供するサービス。
(3)PaaS(Platform as a Service):ITシステムを構築、稼働させるための基盤となるデータベース管理ソフトウェアや、異なるソフトウェア間を円滑に連携させる中間層のソフトウェアを、インターネットを経由して提供するサービス。
(3)IaaS(Infrastructure as a Service):ITシステムを構築、稼働させるための基盤(サーバーマシンやストレージなどのハードウェアやネットワークなど)そのものを、インターネットを経由して提供するサービス。
(4)オンプレミス:ITシステムを自社所有で構築・運用する形態。
[クラウド&ライセンス(*)]
売上高は162,813百万円(前年同期比11.1%増)、営業利益は61,917百万円(前年同期比12.3%増)となりました。内訳につきましては、クラウドライセンス&オンプレミスライセンスの売上高は52,747百万円(前年同期比13.3%増)、クラウドサービス&ライセンスサポートの売上高は110,066百万円(前年同期比10.1%増)となりました。当セグメントは企業等のIT基盤に利用される、データベース管理ソフトウェア、各種ミドルウェア、ERP等の業務アプリケーションソフトウェアのソフトウェア・ライセンスを販売する「クラウドライセンス&オンプレミスライセンス」とライセンスを利用されているお客様に更新版等のアップデートや技術サポートを提供する「ライセンスサポート」、これらのソフトウェアやハードウェアのリソースを、インターネットを通じてサービス提供する「クラウドサービス」から構成されます。
(*) 当期より、従来の「クラウドおよびソフトウェア」を「クラウド&ライセンス」、「新規ライセンス」を「クラウドライセンス&オンプレミスライセンス」、「アップデート&プロダクトサポート」と「クラウド(SaaS/PaaS/IaaS)」を統合し、「クラウドサービス&ライセンスサポート」に変更致しました。
第1四半期会計期間では、サービス、通信、流通を中心にデータ、デジタルテクノロジーを積極的に活用し、顧客接点の強化を行い、売上成長を図られているお客様や、企業の急速な成長に対応するため基幹業務システムの増強を推進されている複数のお客様から、クラウドサービス、ソフトウェアライセンスを組み合わせた大型案件を受注いたしました。
第2四半期会計期間では、製造、流通・サービス、公共・公益を中心に幅広い業種・事業規模のお客様からご採用いただきました。当社の強みを活かした営業活動の結果、グローバル展開されている製造業のお客様から海外拠点向けのERPクラウドを受注したほか、小売業のお客様からERPクラウド、顧客接点強化のためのマーケティングおよび営業管理とカスタマーサービスの機能を統合したエンゲージメントクラウド、それらの追加機能をPaaSで構築する総合型クラウド案件を受注しました。
第3四半期会計期間では、前年同期の大型案件の反動減の影響がありましたが、流通・サービス、製造のお客様から店舗販売管理、決済サービス、生産管理のシステム基盤として、当社の「Oracle Exadata」をご採用いただきました。
第4四半期会計期間では、当社がこれまで推進してきた複合提案の結果、複数の大型案件を獲得しました。産業区分においても、製造、金融、流通・サービス、公共公益を中心とする幅広いお客様から、次世代のテクノロジーに対応するためのIT基盤の刷新、セキュリティ対策、トランザクション、データ量の増加に対応するための基盤強化を目的として、当社のデータベース製品を始めとするテクノロジー製品をご採用いただきました。
全般的な需要動向としては、四半期毎の変動はあるものの、ミッションクリティカル・システム向けへのOracle Databaseを中心とするオンプレミス・ライセンスが堅調です。また、クラウドサービスについてはオンプレミス・システムとの親和性やPaaS、IaaSの機能の豊富さから、「Oracle Cloud Platform」に対する需要の他、解析処理やリスク計算など、セキュリティを確保しつつ、高負荷処理に対応し、高いコスト・パフォーマンスを必要とするお客様向けに、「Oracle Cloud Infrastructure」に対する需要が増加しております。SaaSにつきましても、特にミッドマーケットにおいて企業規模の拡大に伴い経営管理・リスク統制の強化、業務の効率化を目的とするお客様から、短期導入が可能であるとしてERPクラウドを始めとするSaaSの検討、採用が進んでおります。
[ハードウェア・システムズ]
売上高は18,340百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は822百万円(前年同期比1.3%減)となりました。
当セグメントは、サーバー、ストレージ、エンジニアド・システム、ネットワーク機器等のハードウェアの販売およびそれらのオペレーティングシステム(OS)や関連ソフトウェアを提供する「ハードウェア・システムズ・プロダクト」、ハードウェア製品の技術サポート、修理、メンテナンスの提供およびOS等関連ソフトウェアの更新版等の提供を行う「ハードウェア・システムズ・サポート」から構成されます。
[サービス]
売上高は21,234百万円(前年同期比1.6%増)、営業利益は3,943百万円(前年同期比19.7%減)となりました。
当セグメントは、当社製品の導入支援を行う「コンサルティングサービス」、予防保守サービスやお客様のIT環境の包括的な運用管理サービスを提供する「アドバンストカスタマーサポートサービス」、技術者や利用者向けの研修事業や技術資格の認定事業を提供する「エデュケーションサービス」から構成されております。コンサルティングサービスでは、オンプレミス環境からIaaS・PaaS環境への基盤移行、ERPクラウドを始めとするSaaSとの連携案件など、当社の総合的な製品サービス・ポートフォリオを活かした複合型案件が順調に推移しております。
<報告セグメント別売上高の状況>
区分2018年5月期2019年5月期
金額構成比金額構成比対前年
同期比
百万円%百万円%%
クラウドライセンス&
オンプレミスライセンス
46,55725.152,74726.113.3
クラウドサービス&
ライセンスサポート
99,96053.9110,06654.410.1
クラウド&ライセンス146,51879.0162,81380.411.1
ハードウェア・システムズ18,0639.718,3409.11.5
サービス20,89811.321,23410.51.6
合計185,481100.0202,389100.09.1

(注) 金額は単位未満を切り捨て、構成比ならびに対前年同期比は単位未満を四捨五入で表示しております。
(2) キャッシュ・フロー
当期におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、45,453百万円(前年同期比5,428百万円減)となりました。これは主に、税引前当期純利益(62,305百万円)の計上、仕入債務の増加(2,515百万円)等によるキャッシュ・インがある一方で、法人税等の納付(19,518百万円)、未収入金の増加(3,305百万円)等によるキャッシュ・アウトがあった結果によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、82,178百万円(前期は42,778百万円の収入)となりました。これは主に、オラクル・ジャパン・ホールディング・インク(当社の親会社)に対する最長で2年間を貸付期間とする関係会社貸付けによる支出(130,000百万円)及び定期預金の預入による支出(52,000百万円)の一方、定期預金の払戻による収入(103,000百万円)があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、16,093百万円(前年同期比2,735百万円増)となりました。これは主に剰余金の配当の支払いによるものであります。
以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物は前事業年度末と比べ、52,821百万円減少し、65,505百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
クラウド&ライセンス76,56211.8
ハードウェア・システムズ15,6724.3
サービス14,5009.9
合計106,73510.4

(注) 1 金額は、売上原価によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当事業年度よりセグメントの名称を変更いたしました。セグメント変更の内容については、「第5 経理の状況 2.財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 セグメント情報等」に記載のとおりであります。
(2) 受注状況
当社の事業はオラクル・コーポレーションの開発した製品の販売およびそれに付随する関連サービスの提供が主体であり、個別受注生産という概念に該当する業務の金額に重要性がないため、記載を省略しております。
(3) 販売状況
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
クラウド&ライセンス
クラウドライセンス&オンプレミスライセンス52,74713.3
クラウドサービス&ライセンスサポート110,06610.1
クラウド&ライセンス計162,81311.1
ハードウェア・システムズ
ハードウェア・システムズ計18,3401.5
サービス
サービス計21,2341.6
合計202,3899.1

(注) 1 主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度当事業年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
日本電気㈱26,37414.225,93012.8

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
本項における将来に関する記載は、本有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社の財務諸表等は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。この財務諸表等の作成にあたっては、期末日における資産および負債、会計期間における収益および費用に影響を与えるような仮定や見積りを必要とします。過去の経験および状況下において妥当と考えられた見積りであっても、仮定あるいは条件の変化により、実際の結果と異なる可能性があります。
(2) 経営成績の分析
① 売上高
全てのセグメントで増収となった結果、全社売上高は202,389百万円(前年同期比9.1%増)となりました。セグメント別の売上の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」をご参照ください。
② 営業利益および経常利益
ハードウェア・システムズセグメント及びサービスセグメントでは前事業年度を下回りましたが、クラウド&ライセンスセグメントが好調だったため、営業利益は62,337百万円(前年同期比11.3%増)となりました。
ハードウェア・システムズセグメント及びサービスセグメントにおいて減益となりましたが、クラウド&ライセンスセグメントが堅調に推移したこと等により、全社として営業利益は増加しました。
売上原価は、クラウド&ライセンスセグメントにおいてロイヤルティが増加しました。また、サービスセグメントにおいては、コンサルティング・サービスにおける業務委託費及び人件費が増加しました。
販売費及び一般管理費では、賃借料等のファシリティコストが増加しました。
営業外損益52百万円の費用(純額)を計上した結果、経常利益は62,284百万円(前年同期比11.3%増)となりました。
③ 当期純利益
特別利益として新株予約権戻入益(20百万円)及び法人税等(18,944百万円)を計上した結果、当期純利益は43,360百万円(前年同期比11.9%増)となりました。
④ 1株当たり当期純利益(EPS)
上記の結果、1株当たり当期純利益(EPS)は35.67円増加し、338.92円(前年同期比11.8%増)となりました。
(3) 財政状態の分析
当事業年度末における総資産は269,518百万円(前期末比33,009百万円増)となりました。
(資産の部)
当事業年度におけるオラクル・ジャパン・ホールディング・インク(当社の親会社)に対する最長で2年間を貸付期間とするローンの実施(130,000百万円)等により、流動資産は93,005百万円(前期末比99,285百万円減)、固定資産は176,512百万円(前期末比132,294百万円増)となりました。
(負債の部)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末比で4,146百万円増加し、109,230百万円となりました。これは主に、ロイヤルティ等の増加による買掛金の増加(2,823百万円)、前受金の増加(909百万円)によるものです。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末比で28,862百万円増加し、160,288百万円となりました。これは主に、ストック・オプションの行使による資本金、資本剰余金の各々の増加(198百万円)、当期純利益の計上(43,360百万円)、剰余金の配当(15,489百万円)、会計方針の変更による累積的影響額の当事業年度の期首の利益剰余金への反映(1,258百万円)の結果による利益剰余金の増加(29,129百万円)によるものです。この結果、自己資本比率は59.4%(前期末比3.9ポイントアップ)となりました。
なお、当社では、経営の意思決定上、資産及び負債を各セグメントに配分していないため、セグメントごとの財政状態の状況に関する記載を省略しております。
(4) キャッシュ・フロー
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(5) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社における資金の使途の主な内容としましては、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用並びに各種税金の納付等であります。売上原価の内訳は、主に「クラウド&ライセンス」に係るロイヤルティ、原価部門における労務費及び業務委託費、「ハードウェア・システムズ」セグメントにおける仕入原価であります。その他の資金の使途の主な内容としましては、クラウド事業に関連する設備投資、各種税金の納付、配当金の支払となっております。これらの資金需要は、営業キャッシュ・フローから生じる自己資金によって賄っております。
当社の資金管理・運用については、当社が定める資金管理・運用規程(オラクル・コーポレーションが定めるglobal policy)に則り、高い安全性と適切な流動性の確保を図っております。
また、当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しております。
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社においては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載した各種の要因が、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。